激戦区の中国オーディオコンテンツ市場に社運を賭けるTencent Music

マーケティング会社のiiMediaによる第三者調査によれば、中国内のポッドキャスト、オーディオブック、その他のオーディオショーのリスナーは、今年は5億4200万人に達すると推定されている。これは、2019年の4億8900万人からの順調な増加であり、新しいプレイヤーがこの競争に引き付けられているのは間違いない。

そのプレイヤーの1つがTencent Music Entertainment(TME、テンセント・ミュージック・エンターテイメント)だ。同社はTencent(テンセント)からのスピンオフ企業で、しばしば中国版Spotify(スポティファイ)と呼ばれることもあるが、実際には多くの面で異なっている。グループの主な事業ラインは、音楽ストリーミングを超えて、バーチャルカラオケ、ライブストリーミング、そして同社が最近力を入れ始めたオーディオコンテンツを網羅している。

新しく発表された四半期報告書の中でTMEは、人気の高い既存作品や独立系プロデューサーの作品を追加したことで、オーディオライブラリの拡大に「大きな進展」があったと述べている。これにより、すでに混雑していたスペースでの競争が激化している。

Spotifyと同様に(未訳記事)TMEは音声コンテンツへの参入は遅かった。ここで言う音声コンテンツとは、ポッドキャスト、オーディオブック、ラジオ局などからオーディオライブストリーミングのような、より革新的なリスニングエクスペリエンスまでのすべてを含む包括的な用語だ。中国のこの分野は、サンフランシスコに拠点を置くポッドキャスティング会社Himalayaの主要投資家であるXimalayaや、NASDAQに上場するLizhi(未訳記事)などの大手企業が何年も独占してきた。

TMEのオーディオコンテンツへの取り組みは、収益性への明確な道筋がまだ見えていないため、すぐに将来性が期待できるものではない。中国のユーザーはデジタルコンテンツへの支払いに消極的であることが知られている。例えば、教育や自己啓発のポッドキャストにお金を払っても、その熱意は急速に薄れていく傾向がある。資金力のあるプラットフォームは、しばしば市場シェアを得るために無料でコンテンツを提供し、小規模な競争相手を容赦なく追い出そうとする。その結果、誰もが間接的に収益をあげる方法を見つける必要に迫られることになる。

例えばLizhiは、ライブやインタラクティブオーディオセッション内での仮想アイテムの販売を通して主要な収益を得ているが、リスナーからのサブスクリプションや広告からの収入はわずかなものだ。7年の歴史を持つこの会社はまだ利益を上げておらず、昨年は1億3300万人民元(約20億円)の純損失を記録した。

間接的な収益化は、中国のインターネット業界では新しいものではない。 WeChatによってその名を知られるテンセントは、ソーシャルネットワーキング製品があと押しするゲームの収益に特に依存している。TMEも同様に、音楽をテーマにしたライブストリームで仮想アイテムを販売することにより、大部分の収益を挙げているが、音楽ストリーミングアプリの月間アクティブユーザー6億5700万人の中で支払いをしているのはわずか6%に過ぎない。また、中国のオンライン音楽市場が飽和状態にあることから、月間アクティブユーザー(MAU)の成長も足踏み状態となり、2017年から2020年までの間に、TMEが獲得した音楽ストリーミングサービスの新規ユーザー数は5000万人にとどまっている。問題は、この音楽の巨人が隣接するオーディオ部門に新しい命を吹き込むことができるかどうかだ。

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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