自動運転システムを開発するGhost Locomotion(ゴースト・ロコモーション)は、シリーズDラウンドで1億ドル(約111億円)の資金調達を実施した。このラウンドはSutter Hill Ventures(サッター・ヒル・ベンチャーズ)が主導し、前回投資したFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)も、Coatue(コーチュー)とともに参加した。この資金は、同社が高速道路上の自動運転や衝突防止技術の開発を続ける上で、研究開発費に充てられる。
Ghost Locomotionは、ユニバーサルな衝突回避技術の開発に取り組んでいる。このシステムは、自動運転システムが物体との衝突を回避する前に、その物体を認識して分類する必要はないという考えを前提としている。これは大きなパラダイムシフトだ。多くの自動運転システムは、まず物体を認識し、位置を特定することで、物体の大きさや距離などを判断する。
「私たちはその段階をスキップします」と、GhostのJohn Hayes(ジョン・ヘイズ)CEOは、TechCrunchに語った。「私たちの技術は、シーンに表れたあらゆる物体、あらゆる大きさを検知し、それに対する距離と相対速度を得ることが可能です。分類を行う前に、データから直接意思決定を始めることができるのです」。
Ghostの技術では、カメラが捉えたシーンの中で、ピクセルのクラスターの動きを追跡する。ヘイズ氏は、システムが物体の分類を間違えた場合や、学習していない物体を認識してしまった場合には、不具合の原因になると指摘し、分類が衝突回避の前提条件である必要はないと説明している。重要なのはシステムが行う判断の確実性だ。画像認識から始める自動運転システムは、不確実になる機会が多く、道路における安全な行動がそれだけ少なくなると、同社は主張する。
これに対する明白な反論の1つとしては、車両と歩行者では行動が異なるため、分類することによってシステムが行動を予測できるという意見があるだろう。しかし、ヘイズ氏は「分類ではなく、衝突回避から始めるべきだ」という。「その上で予測したいのであれば、それから分類すればよいのです」。
Ghostによると、このシステムの利点の1つは、必要な計算能力が少なくて済むことだという。これは特に、電気自動車のオーナーにとって重要だ。処理要求が高いと電力消費効率が悪化するからだ。バッテリー駆動の電気自動車に搭載された自動運転システムでは、システムが必要とするコンピュータの電力が1ワット増えるごとに、走行可能距離が短くなるとヘイズ氏は指摘する。
Ghostはこれまで公道以外の場所で、物理的な障害物を設置したり、拡張現実を使ったりしながら、実際の車両を走らせて、ほとんどのテストを行ってきた。判断の複雑さが格段に増す都市部における衝突回避システムのテストには、まだ着手していない。公的な高速道路でのテストもまだ始めていないが、これは2021年中に開始し、来年には規模を拡大していく予定だと、ヘイズ氏は述べている。公道の高速道路では、安全のために人間のドライバーが運転席に座った状態でテストを行う。
この会社は、2019年にTechCrunchが取材した時から、市場展開のロードマップをわずかに変更したようだ。Ghostは当時、個人がすでに所有している乗用車に、高速道路での自動運転機能を追加することができる一般消費者向けキットを開発していた。同社によれば、そのキットは2020年に、Tesla(テスラ)のAutopilot(オートパイロット)パッケージ(当時は約7000ドル≒約80万円)よりも安い価格で発売できる見込みだった。
この製品企画は完全に中止されたわけではなく、ヘイズ氏は「お客様にお届けしたい」と語っているものの、現在では自動車メーカーと直接協力して、販売前の車両に同社の技術スタックを搭載することも検討している。
「どのような形であれ、市場に参入する方法はみつかるでしょう」と、ヘイズ氏は付け加えた。消費者に直接販売する後付けキットという形では、対応する車種が限られており、システムに必要な最低限の技術要件を満たすために、比較的新しい車であることが条件となる。
今回の資金調達のニュースと同時に、Ghostは米国道路交通安全局の元主任顧問兼長官代理だったJacqueline Glassman(ジャクリーン・グラスマン)氏を法務統括責任者として迎え入れることも発表した。4月に同社に参加したグラスマン氏は、他の自動運転技術開発企業と並んで商業化を目指すGhostにとって、重要な役割を果たすことになりそうだ。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:Ghost Locomotion、自動運転、資金調達
画像クレジット:Ghost
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)