産業や気候変動モニタリングで重要な赤外線と熱放射を観測する衛星画像のSatellite Vuが5.4億円調達、2022年に衛星打ち上げへ

地球観測の分野はますます競争が激しくなっているが、Satellite Vu(サテライトヴ)は産業や気候変動モニタリングにとって重要なものである赤外線と熱放射にフォーカスするという異なるアプローチを取っている。TechCrunchのStartup Battlefieldを経て、同社はシードラウンドで360万ポンド(約5億4000万円)を調達し、2022年に初の衛星を打ち上げる予定だ。

Satellite Vuのテックとマスタープランの基本はTechCrunchのSatellite Vu紹介記事にあるが、要旨はこうだ。Planetのような企業が地球の表面のほぼリアルタイムの画像を儲かる商売にした一方で、熱画像のようなニッチな部分は比較的開拓されていない。

建物や地上の特徴的なもの、あるいは人々の集まりから放射される熱は非常に興味深いデータポイントだ。オフィスビルや倉庫が使用されているのかどうか、温められているのか冷やされているのか、そのプロセスがどれくらい効率的かを示すことができる。地下水や送電線、熱影響を受ける他の物体の存在をうかがわせる温かい、あるいは冷たいエリアを見つけ出すことも可能だ。また、何人がコンサートあるいは就任式に参加しているかを推量することもできる。もちろん、夜でも使える。

たとえば発電所のどの部分がいつ稼働しているかを確認できる(画像クレジット:Satellite Vu)

汚染や他の物質の排出も簡単に特定して追跡でき、地球の赤外線観測を気候変動という観点から産業を監視するのに重要な役割を果たす。これこそがSatellite Vuが初の調達で現金を、それから英国政府からの140万ポンド(約2億円)の助成金、5億ポンド(約748億円)のインフラ基金の一部を引きつけたものだ。

「やはり我々の考えは正しかったのです」。創業者でCEOのAnthony Baker (アンソニー・ベイカー)氏は、同社がこの資金で初の衛星の製造を開始し、追加の資金のクロージング手続きを開始したと話した。

宇宙を専門とするVCファームのSeraphim Capitalは同社への助成金基金をマッチングし、その後の助成金と合わせて調達総額は目標の500万ドル(約5億4000万円)を超えた。Seraphim Capitalの最重要のベンチャーはおそらく合成開口衛星スタートアップICEYEだろう。

「Satellite Vuの魅力はいくつかあります。これについて我々は2020年いくつかの調査を発表しました。小型衛星コンステレーションを打ち上げる計画を持っている企業は180社以上です」とSeraphimのマネージングパートナーJames Bruegger(ジェームズ・ブルガー)氏は話した。しかし、赤外線あるいはサーマルの分野に目を向けている企業はかなり少数だと指摘した。「それで我々の好奇心がかき立てられました。なぜなら、赤外線はかなりのポテンシャルを持っていると常々考えていたからです。そして当社の2019年の宇宙アクセラレーターを通じてアンソニーとSatellite Vuを知っていました」。

Satellite Vuは資金を必要とする。衛星そのものはかなり安いように思える。衛星は合計1400万〜1500万ドル(約15億〜16億円)で、全体をカバーするのに衛星7基が必要となり、それだけで今後数年で1億ドル(約108億円)超はかかる。

画像クレジット:Satellite Vu

しかしSeraphimはひるんでいない。「宇宙を専門とする投資家として、当社は忍耐の価値を理解しています」とブルガー氏は話した。そしてSatellite Vuが同社のアプローチで「広告塔」になっていて、これによりSeraphimのアクセラレーターを通じてアーリステージの企業を導き、エグジットするまでサポートする、と付け加えた。

Seraphimはベイカー氏が関心のある企業から得られそうな収入について計算するのを手伝っている。あらゆるもののための資金を工面する必要があるからだ。「商業的なトラクションは最後に話したときから改善しました」とTechCrunchのDisrupt 2020 Startup Battlefieldでプレゼンする前にベイカー氏は話した。

同社は現在、26件の仮契約を抱えており、ベイカー氏の推定では1億ドルの事業になる。もちろん求められているサービスを提供できればの話だ。そのために同社は未来の軌道カメラを普通の飛行機に設置して飛ばし、衛星ネットワークから送られてくると予想するものに似せるために出力を修正してきた。

衛星からの画像に関心のある企業は現在、事前に撮影された画像を購入でき「本当の」プロダクトへの移行は比較的大変ではないはずだ。Satellite Vuのサイドでパイプラインを構築するのにも役立ち、テスト衛星やサービスは必要ない。

模擬の衛星画像の別例。同じカメラが軌道に設置されることになるが、遠くからの画像に似せるために質を低下させた(画像クレジット:Satellite Vu)

「我々はそれを疑似衛星データと呼んでいます。ほぼ実用最小限の製品です。顧客企業が必要とするフォーマットやスタッフについてともに取り組んでいます」とベイカー氏は話した。「次のステージとして、当社はグラスゴーのような都市全体をとらえてサーマルでマッピングする計画です。これに関心のある組織は多いのではないかと考えています」。

Satellite Vuのオペレーションや打ち上げはPlanetやStarlink、そして AmazonのKuiperのものに比べると小さいが、調達した資金、仮の収入、そして抱えている見込み客からするにSatellite Vuは注目を引く準備ができているようだ。2022年に仮予定されている初の打ち上げ後、残る6基の衛星を軌道に乗せるのに必要な打ち上げは2回で、ライドシェアの打ち上げロケットに1度に3基を載せる、とベイカー氏は話した。

しかし打ち上げ前にさらなる資金調達が行われ、おそらく早ければ数カ月内だろう。結局のところ、Satellite Vuが倹約的であっても、本格的に事業を展開するには巨額の現金が必要となる。

カテゴリー:宇宙
タグ:Satellite Vu気候変動赤外線人工衛星資金調達

画像クレジット:Satellite Vu

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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