もしあなたが最近、電子メールの山に埋もれたことがないとしたら、電子メールのアカウントを持っていないか、マーケティング担当者がまだ気づいていない若い人かのどちらかだろう(彼らはいずれ気づく)。
このような状況を打開するため、ベイエリアを拠点とする設立10カ月のGated(ゲーテッド)というスタートアップが登場した。同社は、メールに圧倒されている人を助け、できれば社会全体に利益をもたらすようなアプローチをとる。もし見知らぬ送信者が、あなたの受信トレイにメールを送りたいなら、あなたが選んだ非営利団体に寄付をしなければならない、というのがその構想だ。まったく知らない人に、来月のイベントや、会社の売り込みや、機器のセールスをしたいなら構わない。でも、それにはコストがかかる。誰にリーチするかにもよるが、かなりのコストがかかるだろう。
Gatedは、エンジェル投資家で、直近では従業員エンゲージメントのスタートアップCultureAmp(カルチャーアンプ)で成長事業担当副社長を務めていたAndy Mowat(アンディ・モワッ卜)氏が創業した。Gatedは、Gmailアカウントにフォルダを作成すると機能する。モワッ卜氏によると、このソフトウェアは、メール所有者が以前にやり取りをした人の情報から「許可した送信者」のリストを自動的に作成する。見知らぬ送信者が接触してきた場合は、作成した別フォルダにメールが移され、メール受信者が選んだ慈善事業に寄付をした場合のみ受信箱に届くよう設定される。メール1通あたり2ドル(約244円)からで、その70%が非営利団体に支払われ、残りはGatedに流れる。同社のソフトウェアは無料だ。
当然のことながら、毎日何百もの売り込みのターゲットになるベンチャーキャピタリストらは、このアイデアを気に入っている。実際、Corazon Capitalがリードし、Precursor Ventures、Burst Capital、Tuesday Capital、その他のアーリーステージのファンドが参加したシードラウンドで330万ドル(約4億円)を調達したとGatedは発表した。
もちろん、このコンセプトは潜在的なユーザーの共感を得るかもしれないが(手を振って)、何よりもまずプライバシーの問題を含め、疑問も投げかけている。
それについてGatedは、同社がメッセージの中身を読むことはないという。「私たちが見ているのはメタデータ、『to』と『from』だけです」とモワット氏は話す。とはいえ、知らない人からの依頼が殺到している人は非常に多数にのぼるため、Gmailのフィルターでは不十分だ。その中には、自らのやり方で影響力を及ぼす人もいるはずで、Gatedが時間をかけて自身の連絡先をマッピングしていくことを好まない人もいるかもしれない。
もう1つの課題は、誰もがGmailを使っているわけではないことだ。Gmailは、これまでGatedのソフトウェアの使用を承認した唯一のプラットフォームだ(モワット氏によると、同社はMicrosoftと「次の審査」を進めているという。また、いくつかの電子メールプラットフォームが「過去に他のパートナーのせいで損害を受けた」ため「すべてのパートナーをセキュリティ審査の対象としている」とも指摘した)。
Gatedはまた、儲かるビジネスとしてスタートしていない。ほとんどのスタートアップがそうであるように、もちろん変わる可能性がある。モワット氏が語るように、Gatedが受け取る収益の大部分は、取引にかかる決済手数料に充てられることになりそうだ。モワット氏と彼の小さなチームは、Gatedがマイクロペイメントの仕組みをすでに考えており、クレジットカードの手数料に取って食われないようにと思っているが、まだそこまでには至っていない。
Gatedがどのように成長していくかについては、この記事のような紹介以外では、まず口コミ的要素に頼っているようだ。モワット氏によれば、2週間前の時点で、Gatedはまだ公開されていないにもかかわらず、すでに2500人のウェイティングリストを抱えていたというから、このアプローチは合理的なものだと思われる。
今後、GatedはB2B(法人向け)の製品も開発する予定だ。マーケティング担当者がGatedと協力して財源を確保し、営業チームが月に一定数のメールを送信できるようにするのだという。
ちなみに、気になる方にお伝えすると、Gatedを利用するメール受信者は、誰かが金を払ってGmailアカウントに侵入してきたとしても、メールに返信する義務はない。
モワット氏によれば、利用し始めたユーザーからの回答率は平均よりも高いという。「寄付の対象となったメールの40〜60%が返信されています。中には、自分の時間を大切にしてくれる人に感謝して、すべてのメールに返信するユーザーもいます」。「ただし」と同氏は付け加え「非常にまれにしか」返信しないユーザーもいるという。
また「寄付者」は、メール受信者の受信トレイに永遠に自由なアクセスが与えられるわけではないことも注目すべき点だ。「それについては微妙なところがあります」とモワッ卜氏は話す。しかし、基本的には、受信者がメールに返信すると、そのメール送信者はデフォルトで既知の送信者グループに分類される。ただ、その送信者をいつでもGatedフォルダに戻すことができ、また『ミュート』モードにすることもできる。
モワット氏はいう。「これは基本的に、『もうチャレンジメールを送らないで欲しい。私の受信トレイにも入れないでください』という意味です」。
画像クレジット:erhui1979 / Getty Images
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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi)