独占禁止調査の脅しに関して、Amazonはすでにホワイトハウスの標的になっている。これは特定のものを標的にするトランプ流の猛攻なのだと言う人もいるが、このほどeMarketerの研究員が発表した数字は、火に油を注ぐことになるかもしれない。
eMarketerの数字によると、Amazonの米国内における2018年の小売売上高は2582億2000万ドルを超えそうだ。これは米国全体のオンライン小売売上の49.1%を占め、総小売売上の5%にあたる。
Amazonはオンラインブックストアとして始まったが、グロサリーからファッションに至るまで、その幅をまだ拡大させつつあるサードパーティ業者による強力なMarketplaceネットワークと、Primeという人気のロイヤルティープログラムにより、今やあらゆるものを扱う巨大なeコマースとなっている。
人々がオンラインショッピングをする時、Amazonで買うのか、それともAmazon以外の業者(全てひっくるめて)で買うのかというその割合は転換点にかなり近づいている。eコマース売上高でAmazonの次にくるのがeBayだが、Amazonとはかなりの差がついていて、シェアは6.6%だ。そしてAppleが3.9%で3位にくる。実在店舗では世界最大の小売のWalmartは3.7%でAppleの後塵を拝している。
この図は、調査会社や政府機関、メディア、企業、そして幹部の新聞インタビュー、広告バイヤー、広告代理店などからの膨大な量のデータをもとに推測したもの、とeMarketerは説明している。この図で驚くべき点は、Amazonの販売規模ではなく、Amazonの販売ペースが落ちていないことだ。eコマース全体の売上の43%を占めた1年前に比べて売上は29.2%アップしている。
Amazonの成長の起爆剤は今のところMarketplaceだ。このプラットフォームではサードパーティ業者がそこで販売し(もし選択すれば)ロジスティックインフラも使ってAmazonの顧客に販売・配達できる。直近では販売の68%をMarketplaceが占めていて、額にすると1760億ドル。これに対し、Amazon直販は32%だ。今年末までにMarketplaceのシェアはAmazonの直販の倍以上となることが見込まれる(すでに倍に近い)。
他の多くのオンラインコマース事業がマーケットプレスモデルを追随するのは無理もない。このモデルでは、プラットフォームオペレーターにとって2通りの取引が必然的に発生する。それゆえに、直販しないことで減りそうなマージンは実は伸びるのだ。
「AmazonのMarketplaceが今後も伸びることはあらゆる数字が物語っている」とeMarketerの主任アナリストAndrew Lipsmanはレポートの中で述べている。「多くの人がAmazonで購入すればするほど、サードパーティ業者を惹きつける。サードパーティとの取引は利益が多いため、Amazonはプラットフォームを利用する業者にとってその利用プロセスが可能な限りシームレスなものになるように努めている」。
人気のカテゴリーに関していえば、家庭用電気機器とテクノロジー関係がプロダクトカテゴリーを牽引している。eMarketeは売上658億2000万ドルは総売上高の4分の1にあたると算出している。次にくるのがアパレルとアクセサリーで、売上は398億8000万ドルだ。そして3番目はヘルス・パーソナルケア・美容で、売上は160億ドル。4番目は食品・飲料で、こちらの売上はぐっと下がって47億5000万ドルだ。
こうした売上はすでに1年前に比べ38%超アップしている(下の表を参考)。しかしここで最も注目すべきは、Amazonが全カテゴリーの直販においていかに投資しているかということだろう。
テック分野では、数ある中でもKindleやFireタブレット、Fireテレビ、そして大ヒットとなっているAlexa搭載のEchoなどが挙げられる。アパレル分野ではプライベートレーベルを売り込んでいる。Amazonはつい先日、オンライン薬局のPillPackを10億ドルで買収することを発表したが、この買収はヘルス関連の商品・サービス戦略をより広汎なものにすると予想される。そして最後に、Whole Foodsの買収。食事キットの販売や実店舗という面で大きな役割を果たしている。このカテゴリーでは実店舗の存在感は大きいとeMarketer はみている。
「食品・飲料カテゴリーにおけるAmazonの戦略はいくつかの点では本の販売とさほど差はない」。eMarketerシニアアナリストのPatricia Orsiniはレポートでこう述べている。「しかしながらグロサリー部門のeコマースは難しい。ほとんどの人が実在店舗での食品の購入を好むため、このカテゴリーのオンライン売上は低い。Amazonの客はオンラインショッピングに慣れているので、この点はアドバンテージとなる。Whole Foodsの利用者についていうと、Amazonにとって実在店舗でグロサリーを購入する人をオンラインでの購入へと導く絶好のチャンスとなる」。
こうした投資は、全てのカテゴリーでアマゾンの直販を増やすだけでなく、人々が破格の値段の商品あるいは他のブランドのものがないかAmazonをみてみようか、という環境づくりに貢献する。
これまでのところ、Amazonが独占禁止の調査の対象となるとは考えにくい。というのも、eコマースはまだ小売全体の中では小さい存在だからだ(全小売の売上においてeコマースの売上は5%というのがその証拠だ)。“オムニコマース”業界においてAmazonはまだ弱小プレイヤーだ、とAmazonは主張するだろう。しかしながらeコマースだけをみたとき、Amazonの支配は明らかだ。
イメージクレジット: David Ryder/Stringer / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)