米移民局や検察局などが採用中の顔認識技術が一般企業にも売られていた

激しい論争のさなかにある顔認識技術を、法執行機関にしか売らないと宣言した米国ニューヨークのClearview AIは、最近の報道によると顧客ベースにはっきりしない点がある。すなわちBuzzFeed Newsによると、この小さな謎の企業は、その技術を相当広範囲に買われているらしい。Clearviewが挙げる有料顧客は移民関税執行局(移民局)やニューヨーク南部地区検察局、リテール大手のMacy’s(メーシーズ)などだが、30日間の無料試用期間を利用してその技術をテストしている企業はもっと多い。Clearviewの顧客リストに載っている法執行機関でない企業や団体は、Walmart(ウォルマート)、オンラインチケットサービスのEventbrite(イベントブライト)、NBA(全米バスケットボール協会)、Coinbase、Equinoxなどとても多い。

その記事によると、Clearviewにユーザーとして登録していない企業や団体でも、社員や職員が個人的にテストしていることはありえる。BuzzFeed Newsの記事から引用すると「そういう企業や団体が、社員や職員の個人的利用を知らなかったり、あるいは顔認識技術を試していることを否定する場合もある」そうだ。

一例として、ニューヨーク市警察はClearviewとの関係を否定しているが、しかし署のログによると、実際には30人もの警察官が、そのソフトウェアで1万1000回も検索している。

1週間前にClearviewのCEOであるHoan Ton(ホアン・トン)氏は、Fox Business誌上の引用の中で、同社の技術は「法執行機関にしか提供していない」とコメントしている。でも同社の最近の顧客リストと彼のその言葉は矛盾しているようだ。

米国自由人権協会(ACLU)のスタッフで弁護士のNathan Freed Wessler(ネイサン・フリード・ウェスラー)氏によると、「そのリストが正確なものであるならば、それはプライバシーとセキュリティと市民的自由にとっての悪夢だ。政府機関が国民の顔を、いかがわしいデータベースで検索すべきではない。その何十億という写真は本人に無断で使われており乱用を防ぐ手段もない」という。

顔認識技術は、侵襲的なテクノロジーであるという評判以上に論者たちの主張では、重大な結果をもたらすような状況で使ってよいほど十分に正確ではない。特に顔認識技術は、非白人で非男性の顔を正確に同定できないとして悪名を買っている。それは、現実世界では甚大な被害をもたらすという顔認識技術に対する批判を裏打ちするような結果だ。

Clearviewのソフトウェアが使っているアルゴリズムについては、ほとんど何も知られていない。そしてその精度を知る手がかりは、インターネット上に公開されている大量の画像を使ったマッチングのデモのみだ。Clearviewがソーシャルネットワーク上の画像をそのために使っていることに対し、FacebookとYouTubeとTwitterは、利用規約に違反しているとしてそれぞれ停止命令書簡を送っている。

Clearviewの初期の投資家の小さなプールの中には、プライベート・エクイティ企業のKirenaga Partnersと、高名な投資家で、強い影響力のある保守派のPeter Thiel氏がいる。同氏はFacebookの取締役でPalantirの共同創業者だが、後者は法執行機関お気に入りのデータ分析企業だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

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TechCrunch Japan

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