AIを用いた契約書レビュー支援サービスを展開するLegalForceは5月18日、同社にとって新事業となるクラウド契約書管理システム「Marshall」の事前登録受付をスタートした。
Marshallでは「LegalForce」を通じて培ってきた自然言語処理技術と機械学習技術を活用。締結済み契約書のPDFデータをアップロードすれば、自動で契約書のデータベースが構築される。現在は社内やLegalForceの導入企業にてクローズドβ版を運用しながら機能をブラッシュアップしている状況で、今年の8月を目処にオープンβ版をローンチ予定する予定だ。
LegalForceでCOOを務める川戸崇志氏によると、これまで多くの企業では締結版の契約書を管理するためにエクセルなどで作成した台帳に必要情報を手作業で入力してきた。そのやり方では業務負担が大きい上に網羅性を担保するのが難しく、必要な情報へたどり着くまでに時間がかかるなどの課題があったという。
Marshallではテクノロジーを活用して契約書を自動で整理することによりその課題を解決する。特徴は「契約書のデータを取り込むだけで契約締結日や契約当事者名などの情報がテキストデータとして自動で抽出される」点だ。
要はデータベースを作るための膨大な入力業務が必要ないことに加え(ただし紙の契約書の場合にはスキャンしてPDF化する作業は必要)、情報がテキストデータ化されることで「ある契約書の中に特定の条文や文言が入っているかどうか」を調べたいと思った時などに、ピンポイントで検索できるようになる。
クラウド上で契約書を管理できるシステム自体はすでに存在するが、川戸氏の話では「自動でテキストデータ化する機能がついたものはほとんどない」ので、単にファイルをアップロードするだけではタイトルなど限られた情報しか検索できなかった。そのため欲しい情報を得るには結局全文をチェックする手間がかかり、それを避けるには人手をかけてデータを整備する必要があったという。
「法務部門はそんなに人も多くないので、通常の業務に加えて自分たちで細かいデータを手入力していくとなると大変だ。Marshallは後から検索しやすい形で、契約書の情報が自動ですっと入っていくのが特徴。(人力で対応するよりも)データ化の作業工数が減り、紙で管理する場合と比べれば必要な情報を探すのも簡単だ。紙の契約書を確認する必要もないので、在宅勤務にも対応できる」(川戸氏)
MarshallはLegalForce自身が社内で抱えていた課題を解決するために開発したプロダクトでもある。
同社でも細かい契約内容を確認するために締結版の契約書を見返すことがよくあったそうだが、その際に必要な情報がなかなか見つからないのが課題になっていたとのこと。また直近では新型コロナウイルスの影響で管理部門を在宅勤務に切り替えていることもあり、その環境下であってもスムーズに契約書をチェックできる仕組みが必要だったという。
現在クローズドβ版に搭載されている機能については上記の通りだが、今後はオープンβ版の公開に向けていくつかのアップデートを行っていく計画。契約書レビューサービスでは実装済みの仕組みを使って「締結版の契約書についても自動でリスクチェックをする機能」なども予定しているそうだ。
「契約書の中の情報を単に抜き出すだけでなく、テキストデータ化した後でいかに活用していけるかを追求していく。条項単位でリスクを細かく分析できる仕組みもその1つ。LegalForceを通じて締結前の契約書に対してやってきたことを、締結版の契約書に対してもできるようにしていきたいと考えている」(川戸氏)