触覚ありVRを体験せよ! TechCrunch Tokyoにモトクロス体験型VRやハコスコ1000個を用意

hacoscoOculusのようなVR映像で感動したことは4回ある。1度目は、2013年9月に初めてOculus Riftを装着して戦闘機もののフライトシミューレーターを体験したとき。コックピットからキョロキョロと上下左右を見れば別の飛行機が空中を滑るように飛んでいるのが見える。360度映像というのはこれまでにもあったが、三半規管と映像がシンクロすると、こんなに没入感があるのかということと、それが300ドル程度の安価なデバイスで実現されていることに驚いた。

2度めに感動したのは、初めてハコスコを試したとき。1000円というお手頃価格のダンボール製簡易ビューワーとスマホだけでも十分な没入体験ができることに驚いた。3度めに感動したのは半年ほど前のこと。シリコンバレー滞在中に3Dの360度カメラを1000ドル以下で作るんだとハッカーハウスに引きこもってRaspberryPiによる自作の2眼カメラモジュールを製作しているハッカーと出会った。彼は2眼モジュール4つを四角い箱に貼り付けてFPGAでリアルタイムスティッチ処理をするコードを書いていた。ちなみに両眼視差を使った立体VRと、普通のVRは相当に違うものだ。サブ1000ドルのカメラで奥行きも分かる360度映像が作れてストリーミングが可能となるとなると、これまでと全く違う映像カルチャーや応用が生まれるんじゃないかという彼の話も面白かったが、何よりもその彼に見せてもらったポルノ映像に鼻血が出た。エロ本とエロビデオが違うという以上にエロビデオとエロVRは違う。ぼくは体験する前から「ああ、分かるよ、分かるよ。スゴいってのは想像できるよ」と言っていたが、それは全く過小評価だった。体験してみないと分からないことはあるのだ。たとえバーチャルな体験であっても。

home360-moto

あまりパブリックな場でエロの話をするわけにはいかないので、もう1つVRで感動したことを書こう。これは2015年の初夏のことだが、日本のHOME360という会社が作った上の写真にあるようなモトクロス体験型VRを試したときも「なるほど!」という感動があった。それは室内に設置したモトクロスにまたがってOculusを装着して体験するセットだった。コースを走り回り、土でできた小山をジャンプして高みから見下ろすと、足元にレース場が見える。身体全体で感じる加速度や傾きといった触覚とVRを組み合わせると、さらにスゴい体験が生まれるのだということを、ぼくはこれで理解した。

HOME360のモトクロス体験型VRコンテンツというのは、実はモトクロスの後ろに立った人間が(!)、画面をみながらタイミングを見計らってモトクロスのおしりをガツンと持ち上げたり下ろしたりしているだけだったのだが、その事実を後から知って、ぼくはなおさら感心した。モトクロスの前には大きな扇風機も置いてあって風を切って空中を舞うような爽快な体感が生まれるのだけど、この扇風機も人間がコントールしているのだった。Maker精神を感じるブリコラージュによって、これほどの体験が生み出せるのか、とぼくは感動してしまった。

2015-06-21 10.40.00

会場にモトクロスVRを展示、VRパネル・セッションもやるぞ!

モトクロスをガツンガツンと動かし、乗っているヒトに身体感覚込みのVR体験を提供するのはHOME360代表の中谷孔明さんだ。来週火曜日、水曜日のTechCrunch Tokyo 2015では中谷さん自らが会場の展示スペースに来て、ガツン、ガツンとやってくれることになったのでお知らせしたい。Oculus未体験のヒトも、すでにある種のVR映像は見たことがあるというヒトも、ぜひ会場に遊びに来て試してみてほしい。中谷さんに聞けば、これまでにもモトクロスVR展示は各地で行っていて、1日500人ぐらいならこなせますよ、と笑っていた。

HOME360はモトクロスVRをやっている会社ではなく、実はB向けに360度コンテンツの企画・製作、コンサルをやっている会社だ。旅行代理店のH.I.S向けにハワイ旅行の体験コンテンツを作ったり、スバル向けに自家用車の仮想試乗体験を360度映像で提供するということをやっている。中谷氏は2001年ごろから360度映像に取り組んでいて、この方面では良く知られた人物だ。ぼくはライブ・コンサートを最前列で見るというVRコンテンツも体験させてもらったのだけど、低音に合わせて椅子がバイブレートする状態でVR体験をするのは、かなり新鮮だった。

筋肉を電気で制御して「フィードバック」をVR体験に付加するUnlimitedHand

もう1人、触覚とVRの融合という点で注目の日本のスタートアップ企業「H2L」創業者の岩﨑健一郎氏もご紹介したい。岩﨑氏には今回TechCrunch Tokyoの会場に来てステージ上でデモをして頂くほか、来場者が体験ができる形で展示もして頂けることになっている。

H2Lについては、TechCrunch Disrupt SF 2015で米国デビューしたので記事を見た記憶のあるヒトもいるかもしれない。H2Lが提供するUnlimitedHandは、VRそのものではなく、腕に巻き付けてVRとともに使う「入力センサー+フィードバック」のデバイスだ。モーションセンサーと筋変位センサーにより、ユーザーの腕や指の動きを読み取れるほか、電気刺激によって触覚をユーザーにフィードバックできるという。

uh01EMS(Electrical Muscle Stimulation)という電気刺激で筋肉を外部から動かしてしまう技術は、これまで筋トレマシンなどフィットネス家電で使われてきたが、H2LはそれをVRやVRゲームと結び付けようとしている。UnlimitedHandがスゴいのは、複数の電極を使った「マルチチャンネルEMS」と呼ばれる技術を使っていること。EMSというのは周波数によってターゲットとする筋肉を変えられるそう。皮膚からの深さや個人差によって20Hzから1000Hzほどの周波数の交流電流を流すのだが、周波数が高いほど身体の奥にある筋肉に作用する。この原理と複数電極をうまく制御することによって、指の1本1本まで制御できてしまう。ちょっとにわかに信じがたいのだけど、本人の意図と関係なく特定の指を動かせるというのだ。

つまり、VRで映像を見せつつ仮想の感触をユーザーに与えることができるわけで、VR空間の物体に「触れる」ような体験を提供できるのだそうだ。あまり激しい電流を流すと人によってはチクチク感じるという事情もあるので今は模索段階というが、テーブルを叩いたときに平面に手のひらがあたって止まるような、そんな印象をユーザーに与える強い筋肉の制御すら原理的にはできるという。もともと生物化学や情報工学分野の研究者だったH2Lの岩﨑氏によれば、触覚というのは進化論的に古い感覚なので騙しにくいそう。一方、触覚に比べると視覚というのは比較的新しく生物が獲得した感覚なので騙しやすい(だから錯視というのがたくさんある)。つまり、VRの普及によって視覚と触覚を組み合わせた新しい体験を生み出せる可能性が広がっているということだと思う。

uh02ちなみにマルチチャンネルEMSの制御は、ユーザーの体型や脂肪率など個人差にあわせてキャリブレーションが必要になる。ここの処理は機械学習の学習機を搭載することで対応しているそうだ。この学習機に大量のセンサーデーターを「教師信号」として突っ込んで結果を出す。こうした膨大な計算処理が現実的にやれるようになってきたということも、UnlimitedHandのようなものが2015年まで登場してこなかった背景にあるのではないかと岩﨑氏は話している。

さて、TechCrunch TokyoのVR関連は展示だけでなく、パネル・ディスカッションも予定している。「VR最戦前:360度動画が開く新しい世界とビジネス」と題して、日本語で読めるVR専門ウェブメディア「Panora」編集長の広田稔氏、ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏、HOME360代表取締役の中谷孔明氏の3人に登壇して頂く予定だ。なぜVRが今注目されていて、どういうビジネスや可能性が開けつつあるのか? OculusやFacebook、ソニー、サムスンなど注目プレイヤーの動向はどうなっているのか? VRに関心のあるヒトには見逃せないセッションだ。

先着1000名様と数に限りがあるのだが、会場にはTechCrunchオリジナルデザインのハコスコ1000個も用意してある。ぜひ事前にアプリをダウンロードの上、早めに会場に遊びに来てほしい。

TechCrunch Tokyo 2015チケットはこちらから→

TechCrunch Tokyo 2015学割チケットはこちらから→

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。