Uberが、ペルシャ湾地域でボイコット運動に直面している。この地域は近年、同社の配車サービス事業に何十億ドルもの投資を注いできたところだ:Saudi Arabia’s Public Investment Fund(PIF)を通じて直接的に、そしてUberの別の大きな投資家であるSoftbankのVision Fundにサウジが主要インベスターとして出資しているのを通して間接的に投資を行なってきた。
この地域が呼びかけているUberボイコットはサウジ同盟が昨日火をつけた。BloombergとReutersの報道によると、バーレーンの外相がUberボイコットを求めるハッシュタグをリツイートした。
Uberのスボークスマンはこの件についてコメントを拒否している。
ツイッター上でのボイコット呼びかけでは、Uberアプリを同業ライバルCareemにかえるようユーザーに促している。ただし、このUber以外の選択肢がすでに当地で展開されているのかは定かではない。
Uberへの怒りは、UberのCEOであるDara Khosrowshahiのサウジ記者Jamal Khashoggi失踪事件への反応が引き金となっている。Khashoggiは米国居住者で、トルコ市民の女性と結婚するための書類を入手しようと、アポを入れていた10月2日にイスタンブールにあるサウジ総領事館に入って以来、姿を消している。
新聞の報道ではKhashoggiは、殺人を目的にトルコに入国したサウジの暗殺チームによって総領事館の中で殺害された。サウジ出身の国外在住ジャーナリストは皇太子の体制に批判的な記事を書いていた。
独立系のケーブルテレビの映像では、Khashoggiが総領事館に入るところが映っているが、そこを出てきたことを示すものは何もない。しかし、サウジ政府は関与を否定していて、サウジ市民はトルコを観光目的で訪れているだけだと主張した。
Khashoggi失踪に関する懸念の高まりを受け、企業トップが相次いで今月下旬にサウジの首都で開かれる投資会議への出席取りやめを発表し、UberのCEOはそのうちの一人だった。
Khosrowshahiは先週、「Jamal Khashoggiについての今日までの報道を大変憂慮している。この件を注意深く見守り、かなり異なる事実が出てこない限りはリヤドで開かれるFII会議には出席しないだろう」との声明を出している。
Uberは今日TechCrunchに対し、Khosrowshahiが未来投資イニシアチブ会議に出席しないことを認めた。この会議はサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子、別名MBSが主催するものだ。彼はPIFのチェアマンで、Uberの役員会のメンバーでもあり、Uberにとって鍵となるインベスターだ。
こうしたつながりが、今回の件を自身の方針にどう照らすのか、Khosrowshahiにとって複雑なものにしているーKhosrowshahiはUberのCEOに就任したとき、ルールの一つとして「終始正しいことをやる」と示した。
Uberが2年前にサウジPIFから35億ドルの出資を受けたとき、「正しいことをやる」はたった一つのことしか意味していなかった。それはUberを成長させるということだ。CEOで創業者のTravis Kalanickにとって交渉時は特に懸念事項はなかった。
サウジから資金を調達したとき、Kalanickは「我々はグローバルでのプレゼンスを拡大し続けるが、我々のビジネスを後押ししてくれるのはありがたい。サウジアラビアでの経験は、Uberがいかに乗客、ドライバー、そして街に貢献できるか良い例となる。サウジアラビアの経済・社会刷新をサポートするためのパートナーとなることを楽しにみにしている」と言っていた。
当時のサウジは、改革のイメージとなるようなプロジェクトを探していて、と同時にイエメンに軍事介入し、さらには国内の批判を抑圧するという長い歴史を抱えていた。そうした保守的なレジームから投資を受けることの倫理的、政治的リスクについて、Kalanickが考慮したかどうかは定かではない。
しかし2016年に、そしてSoftBankを介して昨年末に再びサウジの投資を受けるという選択はいま、Khosrowshahiの大きな悩みのタネとなっている。
Mangrove Capital Partnersの創業者でCEOのMark Tluszczは、UberそしてインベスターのSoftBankに“アップサイドはない”とツイートし、UberのCEOはKhashoggiの運命についての懸念を自分自身に向けるべきだと提案している。
続いてあった人権についての質問に対する返事として、Tluszczはまた「CEOは個人的に自分のしたいことをしてもいい。しかし個人的な意見を表明するのに肩書きを使うべきではない。個人的な考えが全ての株主の益になるかは疑わしい」と述べている。
Bloombergはまた、Khashoggi失踪についての抗議が高まるにつれ、そしてVision Fundとともにとったアプローチにインベスターが疑いの眼差しを向けるにつれ、SoftBankによる株保有は厄介なものになり続ける、と指摘している。
Uberの場合、Khosrowshahiは治外法権のジャーナリスト失踪について、サウジ政府に対し批判的なことは何も言っていない、ともいえる。しかしこれが、‘正しいことをする’と声高にPRしていたCEOを難しい立場に追いやっている。
‘Uber:時々我々は正しいことをする’は、‘終始我々は正しいことをする’とは同じ意味とならない。Uberブランドにある悪を出し切ることは、明らかにKhosrowshahiがUberにい続けられるかどうか鍵を握る要素となる。
にもかかわらず、同時にUberは何十億ドルものサウジ投資に浸かったままだ。PRメッセージだけでは、社の投資ストラクチャーの問題にもつながる過去の問題ある決断を洗い清めることはできない。
それは言葉以上のものを要する。
だからUberはいま、Khosrowshahiの発言のために地域限定の逆風の中にいる。偽善者のように見える可能性もあるが、自らを大株主と対峙させることになっているーこれは新たなインベスターがらみのいざこざとなるリスクがある。
過去の問題が経営に深くかかわるとき、近道はないといってもいいだろう。
もちろん、サウジの資金を活用しているのはUberだけではない。TechCrunchが先週報道したように、他にも多くのシリコンバレー企業が最近のMBSの歩み寄りを歓迎していて、少なからずSoftBankのvision fundを通じてサウジのPIF資金を受け入れている。
MBSについて、ボストン拠点のFlybridge Capital PartnersのJeff Bussgangは先週我々に対し、ベンチャーや未公開企業は何年も中東のキャピタル筋から資金を調達している、と語った。そして、「通常、起業家は政治にフォーカスするのを好まず、歴史的に金の出どころに多くの注意を払わない(“PLOやイランから”の金でない限り)」と付け加えた。
将来の起業家が、投資がどこからくるのかさほど気にかけなくていいほどにおごっていられるのかは、現時点では不透明だ。政治的、そして地政学的なリスクは間違いなく起業家のレーダーで大きな存在になるに違いない。
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(翻訳:Mizoguchi)