AIを社内の一般教養に、製造業など50社が使うオンラインAI研修サービスをアイデミーが正式公開

AIプログラミング学習サービス「Aidemy」を提供するアイデミーは4月16日、これまでβ版として展開していた企業向けのオンラインAI研修サービス「Aidemy Business」を正式ローンチした。今回のタイミングよりリーダー層に対するコンサルティングサービスも提供する。

Aidemyの基盤を研修用として企業に提供

Aidemyは2017年12月にリリースされたオンラインプログラミング学習サービスだ。特徴はAIを軸にブロックチェーンやネットワーク分析など先端技術に特化していること。前回も紹介したように、プログラミング初学者や未経験者よりも、現役のエンジニアが「日常業務にAIの知識を応用する」目的で使っているケースが多い。

実践重視で実際にコードを書きながら学んでいくスタイルで、プログラミング学習は全てブラウザ上で完結。特別な環境を用意することなくすぐに始められるスピード感もウリだ。

現在の会員登録数は3万5千人を突破。「Python入門」「ビジネス数学」「ディープラーニング基礎」「異常検知入門」など33のコースを提供している。

このAidemyを社内研修用として企業に展開しようというのが「Aidemy Business」の位置付けだ。昨年6月にβ版とローンチしていたものにアップデートを加えて、本日正式ローンチを迎えた。基本的な特徴はAidemyと同様で、環境構築の手間をかけずにブラウザ上ですぐに学習をスタートすることができ、33コースを全て受講可能だ。

法人版ならではの機能としては管理者向けのものがいくつかある。たとえばエンドユーザー(社員)向けにオーダーメイドのカリキュラムを設計したり、管理画面を通じて各メンバーの進捗を確認したり。

面白いものだとAidemy Businessの導入企業が自社のオリジナル教材をアップロードできる機能もある。たとえば社内の勉強会などで使っているようなコンテンツや、外部のエンジニア向けイベントで話すような内容を動画に撮影しておけば社内リソースとして使える。

また撮影した動画コンテンツは通常のAidemy内でリリースすることもできるので、技術プロモーションの一環として活用することも可能だ。

アイデミー代表取締役CEOの石川聡彦氏によると、今後は同社が作成する教材に加えて、企業が提供する教材や本をベースにした教材(著者が講師となる)を開発しながらコースを拡充していく予定。外部の講師が作成するコースについては収益を分配する仕組みで、「Udemy」ほどオープンな形にはならずとも、今後はプラットフォーム型に近づいていく計画のようだ。

ちなみに先日アイデミーのオフィスを訪ねる機会があったのだけど、オフィスとは別の場所に撮影用のスタジオが開設されていた。そこでオリジナルの教材だけでなく、企業が作成する教材の撮影も行えるという。

製造業を中心に約50社が導入、リーダー向けの新サービスも

Aidemy Businessのβ版が公開されてから約10ヶ月。すでに製造業や情報通信業を中心に約50社が同サービスを導入している。IT系の企業名がほとんどかと思いきや、ダイキン工業や三菱重工など非IT系の大手企業も多いという。

もう少し掘り下げると、まずは研究開発部門など一部門に導入されるケースが一般的だそう。背景には現場のAIリテラシーがネックとなり、AIを活用したプロジェクトの進捗がイマイチな点に課題意識を持っている企業が少なくないようだ。

「SIerから提案を受けたり、AIベンチャーに発注したりするような形でAIの活用を始めるものの、なかなかPoC(試作品)の域を脱しないことが1つの課題となっている。プロジェクトを上手く進めるには、発注者側が『AIで何ができるのか、AIを用いて解くべき課題は何か』を明確に理解できていることが重要だ」(石川氏)

今回新しくスタートしたリーダー向けのコンサルティングサービスもまさにそのニーズに応えるためのもの。通常のAidemy Businessが社内でAIエンジニアを育てるためのツールだとすれば、こちらはAIビジネスリーダーを育成するための短期集中型ブートキャンプだ。

課題の設定方法や投資対効果の見極め方、実際の運用フローなどAIプロジェクトを企画する際に必要なスキルを独自のフレームワークを使いながらレクチャーしていくのが特徴。オンラインレッスンに加えて対面のコンサルティングプログラムも提供する。

元々はコンシューマー向けのAIプログラミング学習サービスとして始まったAidemyだが、その受講者が所属先で法人版の導入を主導するなど、両サービスが上手く作用しながら成長を続けてきた。

今後もコンテンツの数を増やしつつ、ビジネスの核としてAidemy Businessを中心に法人向けのサービスを強化していく計画だ。

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TechCrunch Japan

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