米国食品医薬品局(FDA)の承認プロセスは、認可を得て、米国内での一般販売を開始したいと望んでいる健康スタートアップにとっては、地雷原を進むようなものである。YC(Y Combinator)出身の企業であるEnzyme.comは、そうした小規模ビジネスたちを、プロセスを自動化することで手助けしようとしている。
バイオメディカルエンジニアのJared Seehaferは、Genentechのようなヘルスケア会社を相手にしたコンサルティング経験を通して、このアイディアを思いついた。彼はコンプライアンスに従うためのすべての書類をきちんと用意することが、単に大変なだけではなく、小企業の動きを鈍くしている原因の多くを占めていることに気が付いたのだ。
Seehaferは、TechCrunchに対してこう語っている。「企業が、仕事の結果を文書化するのに、仕事そのものを行っていた時間とほぼ同程度の時間を費やしていることに気が付きました。これは数兆ドル規模の産業なのです、そこで私は『なぜこの処理を自動化するソフトウェアがないのだろう?』と考えたのです」。
Seehaferによると、コンプライアンスは創業者たちにとって、資金調達に続く第2の難問であると言う。そこで彼は意を決して、共同創業者として規制の専門家であるJake Grahamに声を掛け、Enzymeを設立した。同社のソフトウェアは昨年の夏にベータ版がリリースされたが、企業はその自動化ソフトをJira、Trello、GitHubなどのプラットフォームと統合を行うことが可能だ。
世の中にはコンプライアンスに役立つ代替手段も存在しているものの、それらはしばしば専門家の関与が必要であり、様々なソフトウェアシステムを複雑に組み合わせなければならない。
Seehaferによれば、Enzymeを使うことで、スタートアップたちは規制上の課題に関する背景を理解する必要がなくなり、事務処理から二度手間が排除される。彼らは単にそれを導入して、FDA対応の準備を整えることができる。
これまでのところEnzymeは、Refactor Capital、Data Collective、Soma Capital、そしてRock Health、ならびにScience ExchangeのElizabeth Iornsといった様々なエンジェルたちから、185万ドルの資金を調達している。
同スタートアップは現在約10社と協力しているが、Seehaferは2018年には積極的な成長目標を掲げている。特にこうしたサービスを必要としている、初期調達を行ったデジタルヘルス企業に狙いを絞っていく予定だ。彼はまた、アクセラレーターやVC企業とのパートナーシップを通じて、そうした企業との橋渡しも行う。
もちろん、各企業はこうした作業を自分自身で行い、FDAのウェブサイトに置かれたガイドラインに従うべく努力をすることもできる。しかし、Seehaferによれば、たとえガイドラインがはっきりしていたとしても、結局は多くの企業がコンサルタントやフルタイムのコンプライアンス担当者を雇ったり、次のフェーズに進めるために大量の費用を使うことが多い。
「(コンプライアンスにどのように合致させるかを)明確化することに対する阻害要因があり、異なるステージで異なるレベルの承認があるのです」と彼は言う。
Seehaferは、Enzymeが創業者たちのプロセスをより円滑に導くだけでなく、コミュニティを教育し、アイデアを持った人がイノベーションにさらに集中し、書類仕事に時間を割かなくても良いようにしたいと考えている。
どこかEnzymeのような企業が(医療スキャンダルを引き起こした)Theranosのプロセスをナビゲートする手伝いをしたのだろうか?Seehafer笑いながら、あの非難が集中している血液検査会社は「そもそも、FDAの基本的なコンプライアンスにさえ従っていなかったのですよ」と付け加えた。
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(翻訳:sako)