D3 LLCがバイオ/創薬やデジタルヘルス/ヘルステック特化型1号ファンドを30億円規模で組成

D3 LLCがバイオ/創薬やデジタルヘルス/ヘルステック特化型1号ファンドを30億円規模で組成

D3 LLCは12月24日、30億円規模の1号ファンド「D3バイオヘルスケアファンド1号投資事業有限責任社員」のセカンドクローズを行ったと発表した。

投資対象は、バイオ/創薬、デジタルヘルス/ヘルステックを中心に、広く医療健康への貢献を志すスタートアップ企業。また、日本にとどまらず、世界に通用し海外市場まで視野に入れうる企業の支援を重視する。

同ファンドでは、「日本発・世界の医療健康に貢献」をミッションに、サイエンス・ビジネス双方の専門性を持つメンバーが、投資・経営支援に取り組む。

これまでに同ファンドには、新規事業創造を通じて医療健康への貢献を志す日米の大手事業会社4社がLP(有限責任組合員)として出資。LPと投資先の積極的な連携は、戦略コンサルティングにて一定以上の戦略構築の経験を積んだメンバーが触媒する。

また同ファンドからは、すでに、新モダリティのバイオ創薬、医療機関向けSaaS、新規機能性素材を用いた製品開発などに取り組むスタートアップに出資しており、2021年より投資活動を加速する。

2017年創業のD3 LLCは、ヘルスケア領域特化の、投資・事業・コンサルティング会社。「世界の医療健康への貢献」をミッションに、有望な科学技術シーズや事業アイデアへの資金提供(Discovery)に留まらず、経営者と伴に、有意義なプロダクト・サービスの創造とそれらを顧客に届けるためのビジネスモデルの構築(Development)を通じて、科学技術・アイデアの社会実装(Deployment)を志している。

ベンチャーキャピタルに関しては、投資の数を目的とせず、バイオヘルスケア領域のグローバル・スタンダードにも従い、少数の投資先に丁寧な支援を行うとしている。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:創薬(用語)D3 LLCVC / ベンチャーキャピタル(用語)ヘルスケア日本(国・地域)

Facebookが初のヘルスケアツールを公開

Facebookのヘルスケア事業への新規参入を妨げたと言われるCambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)スキャンダルから1年半、ソーシャルメディアの巨人はPreventive Health(予防衛生)という名前のツールを公開し、ユーザーに定期的な健康チェックを促しサービス提供者と繋ごうとしている。

新サービスの立案者は同社のヘルスケア研究責任者であるFreddy Abnousi(フレディ・アブヌーシ)博士で、かつては匿名の医療データを収集し「ハッシング」という技術を使って2つのデータセットに存在する個人のデータを(CNBCの報道によると研究目的で)マッチングする秘密プロジェクトに関わっていた。

American Cancer Society(米国ガン協会)、American College of Cardiology(米国心臓学会議)、American Heart Association(米国心臓協会)、およびCenters for Disease Control and Prevention(米国疾病予防管理センター)の協力を得て、Facebookはユーザーが一定年齢層の健康を維持するために必要な一連の標準的検査を受けるよう促すデジタル催促状を開発している。

最初に焦点を当てたのは、米国の2大死亡原因である心臓病とガンに加えて、毎年数百万人の米国人が罹病するインフルエンザだ。

「心臓病は世界中の男女の最大の死亡原因であり、多くの場合100%予防が可能だ。人々が毎日アクセスするプラットフォームに予防リマインダーを導入することで、心臓の健康に関する事前行動を起こすためのツールをユーザーに提供できる」とアメリカ心臓学会議のRichar Kovacs(リチャード・コヴァクス)会長が声明で語った。

Preventive Healthツールを利用したい人は、Facebookのモバイルアプリの中で、どの協力企業がユーザーの年齢性別に応じて必要な検診を薦めているかを知ることができる。

このツールを使ってFacebookは検査が完了したことを記録し、将来の検査日程のリマインダーを設定してFacebook上で通知することができる。Facebookは検査を受ける機関の情報も教えてくれる。やらないことはと言えば、Facebookはいかなるテストの結果も収集しないことをユーザーに確約している。

「健康は特に私的なものであり、プライバシーと安全については最初から考慮している。たとえば、Preventive Healthを使ってユーザーは将来の検査のリマインダーを設定し、完了の印をつけることができるが、検査結果には当社も協力医療機関もアクセスできない」と同社が声明で語った。「Preventive Healthの利用に関する個人情報は、医療機関や保険会社と共有こともないので、保険の資格審査などに利用されることはない。

新しい健康ツールの利用者は、インフルエンザ予防注射を接種できる場所を探すためにも利用できる、と同社は言う。「インフルエンザワクチンには病気予防以上の効果がある。入院によるリスクを軽減し、慢性疾患を持つ人の深刻な医療状態を防ぎ、妊娠中や産後の女性を守る」と予防接種と呼吸器疾患国立センターのディレクターであるNancy Messonnier(ナンシー・メッソニエ)博士が声明で語った。「このような新しいツールがあるとユーザーは自分たちのコミニュティーで先陣を切ってインフルエンザと戦うための情報や設備をすぐに利用できるようになる」。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

その道約20年のベテラン医師が「内視鏡AI」で医療の発展目指す、AIメディカルサービスが約46億円を調達

写真左からグロービス・キャピタル・パートナーズ 福島智史氏(シリーズBラウンドリード投資家)、AIメディカルサービス 代表取締役CEO多田智裕氏、代表取締役COO山内善行氏、インキュベイトファンド 村田祐介氏(シリーズAラウンドリード投資家)

近年日本でも医師が立ち上げたヘルステックスタートアップや弁護士が創業したリーガルテックスタートアップを始め、さまざまな業界の専門家がテクノロジーを活用して「現場に新しい風を吹き込む」ような事例が増えているように思う。

今回紹介するAIメディカルサービス(以下AIM)もまさにその1社。約20年にわたり内視鏡医を務めてきた多田智裕医師が、“現場の困りごと”をAI技術を用いて解決しようと創業したスタートアップだ。

そのAIMは10月4日、グロービス・キャピタル・パートナーズなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により約46億円を調達したことを明らかにした。今回は同社にとってシリーズBラウンドの調達。投資家陣は以下の通りだ。

  • Globis Fund VI, L.P.およびグロービス6号ファンド投資事業有限責任組合(グロービス・キャピタル・パートナーズ)
  • WiL Fund II, L.P.(WiL)
  • 未来創生2号投資事業有限責任組合(スパークス・グループ)
  • Sony Innovation Fund by IGV(ソニーと大和キャピタルホールディングスが創設したInnovation Growth Ventures)
  • 日本ライフライン
  • 日本郵政キャピタル
  • Aflac Ventures
  • 菱洋エレクトロ
  • 次世代企業成長支援2号投資事業有限責任組合(SMBCベンチャーキャピタル)
  • DCIベンチャー成長支援投資事業有限責任組合(大和企業投資)
  • その他個人投資家1名

現在AIMが研究開発を進めているのは胃や食道、大腸、小腸といった消化器に対する内視鏡検査を支援するAIプロダクトだ。「AIを用いた医療画像診断」と言うとピンとくる人も多いかもしれないけれど、内視鏡で撮影した静止画や動画から病変の検出や状態の判別、範囲表示までを一貫してサポートする。

これまでは学習データの整備や研究開発を中心に取り組んできた同社だが、今回の調達を機に日本発のリアルタイム内視鏡AIの製品化を見据えて、薬事承認に向けた準備なども加速させていく計画だ。

多い時には「1時間で3000枚もの画像」をチェック

「1番の課題は現場の仕事量が医師の処理能力を大幅に超えているということ。アナログからデジタルフィルムの時代へと進化した結果、内視鏡で撮影される画像の量が爆発的に増え、目視でチェックすることに限界を感じていた」

多田氏は内視鏡医の現状についてそう話す。東京大学医学部付属病院や虎ノ門病院など複数の病院を経て、2006年にただともひろ胃腸科肛門科を開業。自身が院長を務めるこのクリニックでは年間約9000件の内視鏡検査を行う。

多田氏が所属する医師会では月に数回専門医によるダブルチェックを実施するそうなのだけど、多い時には1人の医師が1時間で3000枚もの内視鏡画像をチェックしなければならない。

アナログフィルムだった時代に比べると画像の量は約3倍。専門医の数はほぼ横ばいのため、1人当たりの負担がそのまま3倍に膨らんだようなものだ。しかも日中は通常通り診療を行なっているから、チェックをするのはもっぱら業務終了後の夜。多田氏自身、数年前からこの働き方は厳しいと限界を感じていたという。

とは言えこの仕事はその道のプロである専門医以外が担うことはできない。これまでは特に革新的な解決策も生まれてこなかったので、現場で医師がひたすら頑張るしかなかった。

そんな時に多田氏が“たまたま”出会ったのがAIテクノロジーだ。2016年にAIの研究者として有名な東京大学の松尾豊氏の講演会で、AIによる画像認識能力の進歩と現状を知り「画像診断が得意なAIなら自分たちの課題を解決できる」と感じた。

そこで松尾氏に内視鏡にもAIの力を使えるか尋ねたところ「CTやMRIの領域ではそのような研究事例があるが、内視鏡に関しては国内外でやっている人を知らない」という旨の答えが返ってきたという。

「誰もやっていないなら自分でやってみよう」。そう考えた多田氏は後輩から紹介してもらったAIエンジニア、繋がりのある医師や地元のクリニックなどと一緒に内視鏡AIのPoC(概念実証)に自ら取りかかる。

最初に研究開発を進めていたのは、内視鏡で撮影した画像から胃がんの原因である「ピロリ菌」の有無を区別するAI。約4〜5ヶ月にわたる研究の末に開発した製品の実力は、医師の平均値を上回った。正答率は約9割、人間の医師も含めたテストでは23人中4位の結果だったという。

そうは言ってもピロリ菌の診断だけでは十分ではない。PoCを通じて手応えを掴んだ多田氏が次に取り組んだのは胃がんを診断するAIの開発だ。

当時はまだ個人で取り組むプロジェクトでしかなかったが、より本格的に研究開発を進めるべく2017年9月にAIMを創業。そこから正式に会社としての挑戦がスタートした。

研究では6mm以上の胃がん検出感度約98%を実現

AIMが開発する内視鏡AIでは撮影された画像において「何が」「どこに」あるのかを識別したり、「その画像が何なのか」のカテゴリ分けを行う。たとえば同社は「早期の胃がん」に対応したAIを最初の製品にしようと考えているが、このAIでは胃の写真からどこに病変があるかをあっという間に検出する。

2018年1月には研究結果として静止画から6mm以上の胃がんを98%の精度で
発見(検出感度約98%)できたことを発表。ちなみに画像1枚あたり0.02秒で診断するというスピード感だ。

現在は静止画に加えて動画からリアルタイムで胃がんを検出するAIの開発にも着手。こちらは静止画に比べて難易度が上がるため少し精度は落ちるものの、それでも検出感度は約92%ほどを誇る。

研究としてはすでに食道がんや大腸がんにも取り組んでいるが、製品化の第一弾は胃がんの計画。なぜ胃がんが最初なのか、多田氏にその理由を聞いてみたところ「専門医でも見分けるのが難しい場合も多く、現場のニーズが最も大きいから」だという。

実際に「胃がんは1割程度が見逃されている」と推定されているそう。仮に内視鏡AIを使うことで早い段階から胃がんの可能性に気づけるようになれば、医療の質も上がりインパクトは大きい。もちろん技術的なハードルは上がるが、現場を経験しているからこそ、胃がんから始めることにはこだわった。

「イメージとしては優秀なアシスタントがついてくれるようなもの。今までは見逃してしまっていたような病変に気づけるようになれば、より良い医療が実現できる。患者さんは今よりも高精度の検査が受けられるようになり、医師側の検査の負荷も減らせる」(多田氏)

今は消化器内視鏡分野で日本を代表する医療機関約80施設と共同で研究開発を進めている。当初こそプロダクトの構想を知った人から「医者がいらなくなるのでは?」という声も多かったそうだが、時間が経つに連れて便利だねという声が増えた。

「あくまでAIは診断の補助となる確率を示すだけであり、確定診断を下すわけではない。そういう意味で医師とAIは対立するのではなく、医師プラスAIという構造で良い医療を実現するために協力する関係になる」(多田氏)

内視鏡AIなら世界で戦えるチャンスがある

多田氏が内視鏡AIに可能性を感じてから約3年。現在までの間にこの領域で徐々に新たなプロジェクトも立ち上がり始めている。

日本国内でもNECが国立がん研究センターとともに、AIを活用したリアルタイム内視鏡診断サポートシステムの実用化に向けた取り組みを発表。オリンパスは今年3月にAIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェアを発売した。ちなみに同社は2018年10月にエルピクセルへ出資もしている。

一口に内視鏡AIと言っても対応している症例やフォーマットが異なるので単純には比べられないが、この領域でもAIの活用が進み始めているのは間違いないだろう(今の所は「大腸ポリープ」「静止画」に関する取り組みが多い一方で、AIMでは「早期の胃がん」を最初のターゲットとし、「動画」対応も進めているという)。

画像診断AI系のプロダクトにおいて、1つのポイントになるのが学習させる教師データの質と量だ。内視鏡AIの判断精度を高めていく上では、簡単には見分けがつかないような画像に対しても正しい情報を与えることのできる専門医の協力が不可欠。このアノテーションを支える仕組みが、実はAIMの大きな特徴と言えるかもしれない。

上述したように同社は現在約80施設の医療機関とタッグを組んでいる。がん研究会有明病院や大阪国際がんセンター、東大病院などに所属する世界的に有名な医師たちとのネットワークはなかなかすぐに真似できるものではないだろう。多田氏自身も約20年間にわたって複数の病院や自身のクリニックで内視鏡医を続けてきた、この分野のエキスパートだ。

AIM代表取締役COOの山内善行氏(過去に自身で創業したQLifeをエムスリーに売却した経験を持つシリアルアントレプレナー)の言葉を借りれば、病院や大学の垣根を超えて「オールジャパンに近いような、強力な体制で取り組めている」状況。すでに数万枚に及ぶ診断済みの内視鏡画像をAIに学習させてきた。

世界最大の消化器系学会とされるDDW(Digestive Disease Week)では、12本もの演題が採択。そのうち1題は「Best of DDW」にも選ばれた。今後はこの技術の実用化に向けて取り組むフェーズになる

そもそも内視鏡は日本で開発された医療機器。現在も日本製の内視鏡が多くのシェアを獲得していて、世界でブランドも確立されている。この分野において優れた専門医が集まっているのも日本だ。

近年AIの研究開発や社会実装においては中国やアメリカが最先端を走っている印象が強いが、内視鏡AIに関しては日本初のスタートアップが世界で戦っていけるチャンスもある。

「一矢報いたい気持ちはあるし、その基盤もある。データがあって、現場で内視鏡を使いこなしている専門医もたくさんいる日本が1番ノウハウを貯めているので開発にあたってのアドバンテージは大きいし、しっかり活かさないといけない。それができれば『日本の内視鏡は質が高い』というブランドがすでに確立されているので、その上に乗っかることでスピーディーに拡販できる可能性がある」(山内氏)

多田氏によると「世界で見てもまだ類似製品がない状態と考えている」ので、当然AIMでは最初からグローバル展開も視野に入れながら事業を進めていく方針だ。

現場感を基に研究開発、薬事承認に向けた取り組みも加速

冒頭で触れたように今回AIMは複数の投資家から約46億円を調達した。同社では2018年8月にインキュベイトファンドから約10億円を調達しているほか、経営陣の出資や国の助成などを含めると創業2年で累計62億円近い資金を集めたことになる。

前回調達からの約1年は学習データを集める部分に特に力を入れていたが、ここからは製品化を見据えた取り組みを本格化する。臨床試験の推進やパイプラインの拡充、優秀な人材の獲得、設備投資などに投資をして、日本発のリアルタイム内視鏡AIの開発および薬事承認を目指していく。

多田氏と山内氏に今後のAIMの事業におけるカギとなる要素を聞いたところ、まさにこの「薬事承認」がネックになるとのことだった。

内視鏡AIは薬機法の規制を受けるので、まずは認可承認を得なければ実際に製品化することはできない。薬事承認に入ると2年ほどの審査の間はプロダクトのバージョンアップもできなくなるので、どのタイミングで、どのような製品として薬事承認を迎えるかという薬事戦略は非常に重要だ。

逆にこの薬事承認の壁を乗り越えられれば、一気に事業がスケールするイメージもあるそう。「今までいろんな医療機器がでてきたが、(内視鏡AIは)患者さんにとって追加の負担がない。医師にとっても通常の業務フローを大きく変えずに利用できるのは大きな特徴」(多田氏)だという。

創業以来スタートアップとしてハイスピードで研究開発を進めてきたAIMだが、多田氏はそんな今でも同社の代表を勤めながら、内視鏡医として現場にも立ち続けている。

「(この領域は)内視鏡の医療現場を深く知っている人じゃないと、現場の人にとって本当に使い勝手の良い本質的な製品は作れないと思っているので、医療現場にも立ち続けていく」(多田氏)。そこまでしてチャレンジを続けるのは何より自分自身がペインを大きく感じていて、このプロダクトを欲しているからだ。

「よく技術先行の知財ベンチャーだと思われがちだけど、自分たちはそうじゃない。先に現場の課題があって創業者の多田自身がそれを体感して、それを何とか解決できないかという思いから始まった。その過程で偶然AIに出会い、技術者を誘ってきて今がある。完全に現場のニーズから生まれた事業であり、その考え方は今も大事にしている」(多田氏)

だからこそAIMでは内視鏡の分野以外に事業を広げるつもりはない。海外には出ていくが、調達した資金も含めてリソースは全て内視鏡につぎ込む。

日本から生まれた内視鏡という発明。その内視鏡をテクノロジーを用いてアップデートするAIMの挑戦はまだまだ始まったばかり。実際に製品を世に出すまで、そして出して以降も様々な壁はあると思うけれど、スタートアップとしてこの領域でチャレンジする同社の今後に注目だ。

アップルが健康調査のためのResearchアプリを米国で年内にリリース

アップルはApple Watchユーザー向けのResearchアプリを新たにリリースする。これは、Apple Watchとその多くのセンサーやヘルスケアアプリから収集されたデータを共有することで、ユーザーが健康調査に個人的に貢献できるようにするアプリだ。米国時間9月10日のイベントで、新しいApple Watch Series 5や健康に関する最新の研究ともに発表された。

ユーザーがApple Watchを通じてデータを共有し貢献できる例として、アップルはミシガン大学、WHO(世界保健機関)、ハーバード公衆衛生大学院、NIH(米国立衛生研究所)、米国心臓協会、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院と連携した最新の研究をいくつか紹介した。

研究テーマには、音が聴覚に与える長期的な影響、月経周期をもとにした不妊症と骨粗鬆症のスクリーニング、活動と運動が健康全般に与える影響などがある。

これまで、アップルとのパートナーシップを通じて健康に関する研究に参加したいユーザーは、その研究専用のアプリをiOSデバイスにインストールする必要があった。新しいResearchアプリは、参加できる研究がまとめられたポータルになる。

アップルは、研究への参加に際し「どのデータを共有するかはユーザー自身が決める」と説明し、また個人を直接特定する情報にアップルは一切アクセスできないとして、ユーザーのデータのプライバシーを尊重することを約束している。

Researchアプリは年内に米国でリリースされる予定だ。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

アップルがヘルスケアアプリにヘッドフォン難聴の防止機能新設

最近のWHOITUの共同調査によれば、世界の12歳から35歳までの人々のほぼ半数が聴力に深刻な障害を受けるリスクにさらされている。これは11億人という驚くべき数だ。

問題はスマートフォンの普及とともにパーソナルリスニングデバイス、つまりヘッドフォンやイヤフォンの利用も拡大したところにある。若い層はヘッドフォンなどのボリュームを目一杯にアップして大音量で音楽を聞きたがる。これがヘッドフォン難聴と呼ばれる回復不可能の外傷性難聴を引き起こす大きな原因になっている。

昨日(米国時間6月3日)のWWDCのキーノートでアップルが触れなかったヘルスケアアプリの新機能の1つがヘッドフォンのボリュームコントロールだ。この機能はAirPods、Beatsなどのヘッドフォン類のボリューム・レベルをモニターし、音量が大きすぎるとユーザーに警告を発する。

Apple WatchのノイズアプリはWatch内蔵のマイクで環境ノイズを測定する。ヘルスケアアプリはこの情報とヘッドフォンのボリュームを比較し、音量が90dBに達している場合、「音量が大きすぎる」と通知する。このレベルの音量に長時間さらされると聴力の喪失を招く危険がある。

残念ながらこの音量モニターの動作はプロアクティブではない。まずユーザーは音量モニター機能にオプトインする必要がある。それでもこうした機能が設けられたのは良いことだ。私自身、ジムで運動をしているとき、不快なBGMが流されていたのでついヘッドフォンのボリュームをアップして対抗していたことがある。このときの音量は長時間聴くには危険なレベルに達していた可能性がある。

12歳から35歳までの層も当然歳を取る。つまり問題は今後はるかに深刻化するだろう。大音量は聴力に重大な危険を及ぼすことが早急に認識される必要がある。

【Japan編集部追記】日本耳鼻咽喉科学会のページにヘッドフォン難聴の危険性が解説されている。ヘッドフォンなどは1日1時間以上の利用で危険性が増大する。またノイズキャンセリング機能は予防効果があるという。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook

AI活用でインフルエンザの早期発見へ、アイリスが12.5億円を調達

AI医療機器を開発するアイリスは5月7日、塩野義製薬とBeyond Next Venturesを引受先とする第三者割当増資により12億5千万円を調達したことを明らかにした。

塩野義製薬側の発表によると両社では4月25日付で資本業務提携を締結済み。塩野義製薬がアイリスに12億円を出資し株式の約14%を取得するとともに、アイリスが開発するAI医療機器を対象とした将来のライセンス契約に関する優先交渉権を得たという。

アイリスではインフルエンザ患者ののどにできる「インフルエンザ濾胞(ろほう)」と呼ばれる腫れ物に注目。撮影したのどの写真をAIで解析することで、インフルエンザの高精度・早期診断をサポートするAI医療機器を開発中だ。

同社によると、2018年の国内インフルエンザ患者数は2000万人を越え、過去10年で最大の流行となった。現状の検査方法では発症してから24時間以上が経過しないと診断精度が十分ではなく、6割程度にとどまるとの研究報告もあるそう。検査法の改善は進んでいるが、抜本的な解決には至っていない段階だという。

この問題へのアプローチとしてアイリスが目をつけつけたのが、上述したインフルエンザ濾胞だ。風邪をひいている場合や健康な状態でものどの奥には膨らみが存在するものの、インフルエンザ濾胞には「インフルエンザの場合にだけ」現れる特徴があることを日本の医師が発見した。

表面の色調や艶やかさ、大きさや盛り上がり方などからインフルエンザ特有の特徴を見分けるのは、その道に精通するベテラン医師だからこそ成し得ること。アイリスでは画像解析AIを通じてこの技術の再現を目指している。

具体的には鼻の奥に綿棒を入れて行う検査の代わりに、のどの写真を撮影。その写真を解析することで高精度かつ早期にインフルエンザを診断できる機器を作る。

アイリスによると臨床研究法に則った臨床試験を既に実施しているそうで、今後は治験や薬事承認に向けて開発を加速させていく計画だ。

左からアイリス代表取締役社長の沖山翔氏、取締役副社長CSOの加藤浩晃氏

 

肩こり・腰痛対策アプリで企業の生産性アップ、京大医学研究科発のバックテックが2億円を調達

バックテックの経営陣と投資家陣。中央が代表取締役社長の福谷直人氏

近年、働き方改革や健康経営への関心が高まっている。

今後ますます生産年齢人口が減っていく日本においては、社員が働きやすい環境を作ることで個々のパフォーマンスや生産性を最大限まで高めていくことが重要だ。その対策として、社内に働き方改革や健康経営を推進する専門チームを発足するようなケースもちらほら耳にするようになった。

“健康経営銘柄”という表現が適切かは分からないけれど、この領域に関するスタートアップも増えてきていて、今回紹介するバックテックもまさにその1社と言えるだろう。

企業の生産性向上を目的とした肩こり・腰痛対策アプリ「ポケットセラピスト」を運営する同社は3月20日、エムスリーとMTG Venturesを引受先とする第三者割当増資により2億円を調達したことを明らかにした。

バックテックは2016年4月の創業。今回は2016年8月にサイバーエージェント・ベンチャーズから、2018年5月に日本ベンチャーキャピタルとJR東日本スタートアップから資金調達をして以来、3度目の外部調達となる。

社員の「肩こり・腰痛」は会社のコスト損失に直結する

冒頭でも触れた通り、バックテックが展開するポケットセラピストは健康経営に力を入れたい法人向けのサービスだ。現在は社員の労働生産性やワークエンゲージメント、フィジカル/メンタルの状態などを見える化できるサーベイツールと、医学的エビデンスを基にした肩こり・腰痛対策アプリをセットで提供している。

もしかしたら「企業向けに社員の肩こり・腰痛対策アプリ?」とあまりピンとこない人もいるかもしれないけれど、バックテック代表取締役社長の福谷直人氏の話では肩こりや腰痛が会社のコスト損失と密接な関係にあるのだという。

もう少し紐解くと、現在会社のコスト損失の要因として「プレゼンティズム」という概念が注目されているそう。これは「出勤はしているが、健康面の影響などで社員の業務パフォーマンスが下がってる状態」を指していて、会社のコスト損失の中でも大きな割合を占める。

では具体的にどんな体調不良が企業のコストに繋がっているのか。そのトップ3が「肩こり、睡眠不足、腰痛」(福谷氏)であるからこそ、それを改善したいという企業側のニーズもあるわけだ。

ポケットセラピストのサーベイツール(アセスメントプラン)では、プレゼンティズムに関連するものも含めて社員の労働生産性や健康状態をスコアとして可視化する。

一般的なサーベイと同じく社員にオンラインアンケートを実施し、その結果からスコアを測定。部門ごとに「睡眠の質が悪いメンバーが多い」といったリスクを洗い出すほか、各項目の関連分析や生産性低下におけるコスト損失額の算出機能まで備えている点が特徴だ。

代表の福谷氏はもともと理学療法士として7年間病院に勤めていた経験があり、並行して大学院で健康経営に関連する研究を続けてきた研究者でもある。現在も京都大学で研究を続けていて、現場の知見とアカデミックな理論・エビデンスを踏まえたサービスとなっているのがユニークな部分だろう。

バックテック自体も福谷氏が京都大学大学院医学研究科で博士号を取得した後立ち上げた、同大学発のスタートアップという位置付けだ。

タイプ判定から最適な対応策の提供までを遠隔でサポート

肩こり・腰痛対策アプリもサーベイツールと同様に、福谷氏のバックグラウンドが活かされている。

このアプリは大きく「リスク評価」「タイプ判定」「チャットを活用した遠隔サポート」という流れで、社員の肩こり・腰痛を軽減しようというもの。ウリは肩こりや腰痛の“タイプ”を独自アルゴリズムに基づいてオンライン上で識別し、それに合わせた対応策を提供できる点だ。

「『腰痛』と一口に言っても、医学的には12種類ほどに分けられ、それぞれ適切な対応策は違う。運動をすることで治るものもあれば、それが全く効かないものもある。ポケットセラピストでは各社員がどのタイプに該当するのかを判定した上で、理学療法士がチャットを通じて適切なサポートをするのが特徴だ」(福谷氏)

タイプ判定に関してはオンライン問診票のような形で、提示される質問に回答していけば「自分はどのタイプの肩こりや腰痛なのか」がわかる仕組み。ポケットセラピストにはスタンダードプランとアドバンスプランがあり、後者の場合は各ユーザーに理学療法士が付き個々に合わせたアドバイスを送る。

たとえば導入企業の約6割は社員のうつ病対策として使っているが、福谷氏によると「体の痛みを直すとうつも治ることがわかっていて、その対策としてエビデンスがあるのがヨガ」なのだそう。そこでポケットセラピストでは300種類ほどのヨガの動画コンテンツを準備し、各ユーザーにマッチしたものをピックアップして提供している。

「特に数年間に渡って慢性的な肩こりや腰痛に悩まされていたユーザーからの反響が良い。今までは痛みが酷くて病院に行っても結局湿布を渡されるくらいで改善せずに治らないと諦めている人も多かった。そもそも最近の肩こりや腰痛はストレス状態など、心に要因があるものも増えていて、そういった人たちにマッサージなどをしても効果がでないのは当たり前のこと。個々の症状に本当に合った解決策を提示することが重要だ」(福谷氏)

チャット上で各ユーザーを支える専門家スタッフは現在200名ほどいて、基本的には病院勤めをしながら昼休みや帰宅後などの空き時間でポケットセラピストを使っているそう。各メンバーごとに毎月スコアが算出され、それに応じて待遇も変わるのだという。

最適なサポートを最速で受けられる痛みのプラットフォームへ

現在ポケットセラピストはコニカミノルタや日本ユニシス、JR東日本など10社以上の企業で導入されていて、その全てが上場企業とのこと。来年度の予算申請をしてもらっている企業が50社弱あり、製薬会社などヘルスケア関連が増えているようだ。

福谷氏によると導入背景は大きく「プレゼンティズムの要因が肩こり腰痛だったため解決したい」「ストレス対策などメンタルヘルスを懸念している」という2つに分かれるそう。このどちらかに課題を感じ、その解決策としてポケットセラピストが使われているのだという。

収益モデルは社員数に応じて発生する固定料金がメインで、ここにサーベイツールと肩こり・腰痛対策アプリのスタンダードプランが含まれる形。1対1のチャットサポートに関してはアドバンスプランとして追加で料金が発生する。

バックテックでは今回調達した資金を活用してエンジニアやセールスなど人材採用を加速させるほかマーケティング面も強化していく計画。来期は上場企業50社と中小企業200社への導入が目標だ。

また今回の調達先であるエムスリーとMTGとはそれぞれ事業上の連携も検討していく。エムスリーに関しては医師と理学療法士 / 作業療法士を組み合わせたソリューションの構築や非保険(自費リハビリテーション)領域でのサービス開発、オンライン医療との協業などが主なテーマ。

MTGとはWELLNESSブランドとのデータ連携を基にしたサービス内容の拡大、ヘルスケアサービス展開に向けた新商品の開発、MTG社のブランド開発力を活かしたバックテックおよびポケットセラピストのブランド開発などが軸になるという。

「腰痛や肩こりで悩む人の多くは、自分にとっての最適解にたどり着くのに膨大な時間がかかっている。それに対して最速で最適なソリューションを提供できる『体の痛みのプラットフォーム』を目指していく。実はオフラインとの連携も少しずつ進めていて、(ジムや整骨院に)ポケットセラピストのユーザーが行くと割引を受けられたり、オンライン上に溜まったデータに基づいたオーダーメイドのメニューを選べたりといった形で、ユーザーにより良い選択肢を届けられるようにしたい」(福谷氏)

指輪で睡眠をモニターするOuraが2000万ドル調達――投資家はマイケル・デル始めウィル・スミス他オールスター

睡眠のモニタリングと改善を目指すプラットフォーム、Oura Healthが2000万ドルの資金調達に成功した。マイケル・デルの個人資産運用ファンド、MSD Capitalがラウンドをリードした。参加した投資家にはYouTubeの共同ファウンダー、Steve Chen、Twitchの共同ファウンダー、Kevin Lin、Sunriseのファウンダー、Dave Morin、JUMPのファウンダー、Ryan Rzepeckiらの著名人が含まれている。

Ouraはフィンランド企業で、MIT Media Labのディレクター、Joi Itoらから2年前に500万ユーロを調達している。

Ouraのスマート・リングは着用者の睡眠パターンをモニターし、睡眠の質の改善に役立てる。Ouraリングは指の手掌動脈で血圧、脈拍を計測すると同時に3D加速度センサーとジャイロ・センサーで体の動きや向きを測定する。また体温を測定するNTC温度センサーを内蔵する。

マイケル・デルはこの投資に関して、「Ouraはわれわれが直面する大きな課題の一つ、いかにして睡眠の質を高めるかに対する回答となり得ると信じる。Ouraリングはきわめて優秀なデザインとテクノロジーを用いており、世界の多くの消費者を益することになるだろう」と声明で述べている。

オールスターの投資家リストにはシャキル・オニール、ランス・アームストロング、ウィル・スミスらの名前が見える。

Oura HealthのCEO Harpreet Raiは声明で「われわれは創立グループに優れたエンジニア、デザイナーなどを集められたことに感激しているが、今回チームに素晴らしい投資家が加わった。驚くほど多様なバックグラウンドを持つ投資家がそろってが睡眠の質の重要性を認めたことは嬉しい」と述べた。

ただし睡眠のトラッキングと改善というテーマはこれまでもスタートアップ、大企業ともに手がけてきており、特に目新しいものではない。たとえばBasis HealthはIntelが買収した。FitbitもMotivという睡眠トラッキングのスマート・リングを発売している。

TechCrunchではまだOura製品をテストしていないが、その機会があれば結果をレポートする。Oura Healthの製品の価格は299ドルから999ドルで、現在100以上の国で販売されている。ちなみにFitbitのMotivは199ドルだ。

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滑川海彦@Facebook Google+

ベルリンのBattlefield勝者は晩婚者のために元気な精子を冷凍保存するLegacyに決定

最初は13社だった。そして二日間の激しい競争の結果、勝者が決まった。

これらStartup Battlefieldの参加社は全参加社の中から書類選考で選ばれ、いずれも甲乙つけがたい優秀なスタートアップとして、このコンペに参加した。彼らはみな、VCたちとテクノロジー業界のリーダーから成るジャッジの前でプレゼンを行い、5万ドルの優勝賞金と優勝カップDisrupt Cupを争った。

数時間に及ぶ討議を経て本誌TechCrunchの編集者たちは、ジャッジのノートを熟読し、5社のファイナリストを決めた: それらは、Imago AI, Kalepso, Legacy, Polyteia, そしてSpikeだ。

5社は決勝のステージで、新たなジャッジたちの前で再度デモを行った。決勝のジャッジは、Sophia Bendz(Atomico), Niko Bonatsos(General Catalyst), Luciana Luxandru(Accel), Ida Tin(Clue), Matt Turck (FirstMark Capital), そしてMatthew Panzarino(TechCrunch)だ。

そしてついに、ベルリンで行われたTechCrunch Disrupt Berlin 2018 Startup Battlefieldの優勝者が決まった。

優勝: Legacy

Legacyは、おもしろい問題を探究している。それは、加齢に伴う精子の活動低下だ。スイス出身の同社は、人間の精子を冷凍保存して、本人が高齢者になっても元気で安全な精子を使えるようにする。晩婚だけど自分たちの子どもがほしい、という人びとにとっては、これは重要な問題だ。

Legacyに関する本誌記事は、ここにある〔未訳〕。

準優勝: Imago AI

Imago AIはAIを使って作物の収量を増やし、無駄に廃棄される食品を減らして、世界の人口増に対応する。同社はコンピュータービジョンと機械学習の技術を使って、作物の収量と品質を、誰でも容易に予測できるようにする。

Imago AIに関する本誌記事は、ここにある〔未訳〕。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

AmazonのComprehend Medicalサービスは機械学習を利用して患者の記録から有意な医療データを取り出す

【抄訳】
Amazonが、機械学習を利用して患者の記録から重要なデータを取り出し、病院などのヘルスケアプロバイダーや研究者たちの費用節約や治療方針の決定、臨床試験(治験)の管理などを助ける新しいサービスを立ち上げた。AmazonがAmazon Comprehend Medicalとよぶこのサービスの発表は、火曜日(米国時間11/27)に、The Wall Street Journalがそれを報じた直後に行われた。

このクラウドソフトウェアはテキスト分析と機械学習を組み合わせて、処方や注記、面談の音声、検査の結果、などから成る患者の記録を読む。これらの記録がデジタイズされてComprehend Medicalにアップロードされると、診断や処置、薬の処方、そして症状などに関する情報が拾い上げられてまとめられる。

〔参考記事: Amazon Comprehendとは…「Amazon Comprehendでは機械学習の技術とは無縁なデベロッパーでも専門用語で自然言語処理モデルを訓練できる」〕

Amazonの最近のヘルスケアへの進出としては、オンラインの処方箋サービスPillPackを10億ドル近くで買収したことや、Amazonの社員のヘルスケアを改善するための、Berkshire HathawayとJP Morgan Chaseとのジョイントベンチャーが挙げられる。これらにより同社は、最近ますますヘルスケアにフォーカスしているそのほかの大手テクノロジー企業の仲間入りをしている。

たとえば今年初めにAppleは、iPhoneのユーザーが自分の病院の医療記録を見られるための機能をiPhone上に導入した。またGoogleは最近、大手医療法人Geisingerの前CEODavid Feinbergを雇用して、検索やGoogle Brain, Google Fit, Nestなど多岐にわたるGoogleの各事業部門が抱えるヘルスケア企画の、一元化と全体的な指揮を彼に委ねた。

今日の発表声明の中でAmazonはこう言っている: “これまでは、この情報を見つけるために長時間の手作業を要し、しかもそのために、高度な技能を持つ医療エキスパートによるデータ入力や、情報を自動的に取り出すためにデベロッパーのチームがカスタムのコードとルールを書く必要があった”。そして同社の主張によるとComprehend Medicalは、患者の記録の中に“医療の状態、解剖学的専門用語、医療検査の詳細、治療内容、処置”、などを正確に見つける。一方、患者は、このサービスを利用して自分の治療のさまざまな側面を管理し、通院のスケジュールや薬の処方、保険の適用の判断などを明確に把握できる。

【後略】
●データは暗号化され、どこにも保存・利用されないのでプライバシーの問題はない。
●すでにいくつかの大手製薬企業や医学研究所がComprehend Medicalを試験的に導入し、とくに治験の適正な実施に必要な膨大な量のデータ作業の省力化や迅速化などに貢献している。“これまで数時間を要したデータ作業が数秒で終わる”そうである。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

医療×ITの土壌作りへ、メドレーが30億円規模の出資プロジェクトーー鍵は“技術のオープン化”

「医療業界全体を良くするために、もっと業界をインターネットテクノロジー色に染めていきたい」

医療ヘルスケア分野のサービスを複数展開するメドレーで取締役CTOを担う平山宗介氏は、新たに発足したプロジェクトへの意気込みについてそう話す。

プロジェクト名は「MEDLEY DRIVE」。医療ヘルスケア分野における技術のオープン化および情報活用を推進していくことで、業界全体がインターネットテクノロジーの恩恵を十分に受けられるようにするのが目的だ。

具体的には医療ヘルスケア業界で旧来から事業を展開してきた企業や、新たな医療情報システムサービスを開発するスタートアップに出資するとともに、プロダクト開発やマーケティング、コンプライアンス面でのナレッジ共有・体制構築を支援する。当初の投資総額枠は30億円規模と大きい。

子会社設立やファンドの組成を伴うものではなく、あくまでひとつのプロジェクト。位置付けとしては過去に紹介したメルカリの「メルカリファンド」などにも近いだろう。

それにしても、自身もスタートアップであるメドレーがなぜこのようなプロジェクトを実施するに至ったのか。今回はMEDLEY DRIVEのプロジェクトオーナーであるCTOの平山氏と執行役員の加藤恭輔氏に、背景や目指している世界観について聞いた。

業界全体が“インターネットテクノロジーの恩恵”を受けられるように

メドレー取締役CTOの平山宗介氏

まずは改めてMEDLEY DRIVEの全貌を紹介したい。同プロジェクトは大きく3つのターゲットに対して、出資を始めさまざまな形のサポートを実施するものだ。

  • 医療ヘルスケア分野において長く事業を展開しており、今後インターネットテクノロジーを活用したさらなる課題解決を模索している企業
  • 医療ヘルスケア分野において、将来デファクトスタンダードとなりうるインターネットプロダクトの開発をおこなう企業
  • 医療ヘルスケア分野において、次世代標準になりうる要素技術の開発をおこなう企業

ポイントは支援の内容が資金面だけでなく、技術的な支援を中心としたプロダクト開発周りやマーケティング、コンプライアンス領域にまで及ぶこと。CTOの平山氏がプロジェクトオーナーを務めることからもわかるように、むしろ“資金面以外”のサポートを充実させたい意向もある。

メドレーではオンライン診療アプリ「CLINICS」やクラウド型電子カルテ「CLINICS カルテ」など医療とテクノロジーを掛け合わせたプロダクトを複数展開してきた。これらのプロダクトは地道に成長しているが、その一方で平山氏は「今後を見据えた時に超えなければならない大きな壁がある」と話す。

それが現在の医療業界におけるインターネットテクノロジーの浸透具合の問題だ。歴史が長い業界であるからこそ「たとえば技術的な標準化においても古い技術をベースに議論がされたりする」(平山氏)など、テクノロジーの活用がスムーズにはいかない部分も少なくない。

そういった要素はメドレーの電子カルテを普及させる上ではもちろん、テクノロジーを強みとする新規のプレイヤーがこの業界で挑戦したり、業界全体をアップデートしたりする上でもネックになりうる。

だからこそMEDLEY DRIVEではスタートアップだけではなく、すでに業界内で長期に渡って事業を展開してきた企業とも積極的にタッグを組むことを重要視しているのだという。そのような企業に「インターネットや技術に対する知見」を積極的に共有していくことが、業界のスタンダードや基幹システムのあり方、テクノロジーに対する考え方を変えていくことに繋がるからだ。

培った知見や経験を、業界に還元する

また医療ヘルスケア分野でチャレンジするスタートアップや、AIなど医療分野においても今後の基準となりうる要素技術を開発する企業には違った面からもサポートができるという。

この分野においては法規制やガイドラインとの向き合い方、多様なステークホルダーとの関係性の築き方など、業界特有の“難しさ”がある。メドレーが実際に蓄積してきた知見や経験をシェアするという点は、このプロジェクトならではの大きな特徴だ。

特にコンプライアンス体制の構築など、業界に精通していないと相応の時間と労力がかかりそうな面もサポートしてもらえることは、スタートアップにとって心強いだろう。

「CLINICSを2年間運営する中でいろいろと苦戦することも多かった。ガイドラインを考慮しながら同時に未来のプロダクトのあるべき姿を考える必要もある上に、日本の医療や医師会の考え方も踏まえて一企業としてどのように振る舞うかを常に求められる。(プロダクト開発やマーケティングだけでなく)そういった知見や経験も溜まってきたので、どんどん業界に還元していきたい」(平山氏)

現時点で決まっているのはスタート時の投資総額枠が30億円ということと、出資の対象となる企業の属性くらい。出資対象となる企業のステージや1社あたりの出資総額などは特に縛ることはなく、個々の事案ごとに柔軟に対応していく方針だ。30億円の枠にもとらわれすぎず、インパクトのある投資を実行したいという。

インターネットを前提とした議論がされるような業界へ

近年はインターネットテクノロジーの進歩が凄まじく、いろいろな業界が大きく変わり始めている。

医療分野においても、2010年2月の厚生労働省の通達により診療録等の保管場所がクラウド上に広がったことを機に変化が訪れた。今では関連ガイドラインの改訂を経て、電子カルテだけでなく、オンライン診療システムなど様々なサービスが現場で活用され始めている。

とはいえ、そこにはまだギャップがあるというのが平山氏や加藤氏の見解。特に業界を変えていく上では必須となる“人材面”で課題感を感じているようだ。

「テクノロジーに強い優秀な人材がなかなか入ってこないことには危機感を感じている。(人の生死に関わる領域なので)法律やガイドラインなど考慮するべきことや、ステークホルダーの数が多かったりすると、プロダクトの開発だけに集中できず大変なイメージを持たれて敬遠されることもある。そのイメージを変えていくためには、技術のオープン化を進めて空気作りをしていくことが大切だ」(加藤氏)

そのような背景も踏まえ、これまでメドレーでは「ORCA API」のオープンソース公開や、ブロックチェーンを活用した電子処方せん管理方式の技術公開といった活動に取り組んできた。

ただ業界内のカルチャー自体を変えていくには、メドレー1社だけではなく他のプレイヤーを巻き込んでいくことも必要だ。MEDLEY DRIVEには、共に医療×ITの土壌作りを加速させる“仲間集め”の意味合いもあるのだという。

「(今後活動を続ける中で)医療業界で挑戦したいと思うクリエイターや、そういう人材を積極的に採用しようという企業が増えたり、業界で長く事業をやっている企業の方々がよりインターネットに関心を持つように変わったりするのが理想。インターネットを駆使することで医療がどのように変わるのか、その世界観をしっかりと広げられれば、議論も当然のようにインターネットを前提としたものになるのではないか」(平山氏)

ゆくゆくは医療現場のIT化が進むことで、医療従事者が今まで以上に診療に専念できる環境が整い、患者にとっても「納得できる医療」を実現することがMEDLEY DRIVEの大きな目標。とはいえ、いきなり文化を変えると言ってもそう簡単ではないので「まずはひとつひとつ積み上げながら、業界を少しずつ変えていきたい」(加藤氏)という。

“病理医不足”をAI画像診断サービスで改善、九大発メドメインが1億円を調達

患者から採取した細胞組織を顕微鏡で観察するなどして、「がん細胞や腫瘍はないか」といった疾患の有無を判断する病理診断。この診断を専門に行う病理医が今、国内外で不足傾向にあるという。

そんな現状を「AIによる病理画像診断ソフト」を通じて改善しようと試みているのが、福岡に拠点を構える九州大学発ベンチャーのメドメインだ。同社は8月17日、 DEEPCOREとドーガン・ベータを引受先とした第三者割当増資により1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

病理医が気づきにくい病気もAIが発見

そもそも病理診断に関してあまり馴染みがない人も多いかもしれないが、これは病院で大きな病気の疑いがあった際に実施される精密診断のこと。メドメイン代表取締役社長の飯塚統氏によると、「精密診断が必要です」と言われた時の精密診断とは病理診断を指すことが多いのだそうだ。

この病理診断を専門の病理医(病理専門医)が担当するのだけど、その数は日本国内で約2000人強。割合にすると医者全体のだいたい0.6%ほどしかいないという。

当然全ての病院やクリニックに病理医がいるわけではなく、通常は病理医がいる病院へ採取した細胞組織を郵送し、診断結果が出るのを順番に待つことになる。

「結果が出るまでにだいたい1〜3週間かかる。その期間が長くなれば患者の負担も増えるし、病気によっては進行してしまうものもある」(飯塚氏)

その問題を解決すべくメドメインが開発しているのが「PidPort (ピッドポート)」というAIによる病理画像診断ソフト。大量の病理画像をAIに学習させることで、細胞組織の画像をもとに高精度かつスピーディーに病理診断できる仕組みの構築を目指している。

たとえば他の病院に病理診断を依頼していた病院でも、画像データを用意すればPidPortを用いて1分ほどで診断結果ができるようになるという(その後病理医によるチェックは必要)。もちろん病理医がいる病院や病理診断を請け負っている検査センターでも、担当医の業務を支援するツールとして活用できる。

「病理医はキャリアの中でどれだけ病理画像を見てきたか、症例を見てきたかの積み重ね。その点ではある意味ディープラーニングに近いことをしている側面もある。(AI活用によって)短時間で膨大な量を学習できることに加え、病理医の先生が知らない病気に気づけることも特徴。PidPortが使われている他の病院で一度画像データを見ていれば、珍しい病気もAIが発見してくれる可能性がある」(飯塚氏)

まずは特にニーズの多い胃と大腸の診断を強化したα版を10月にクローズドでリリースする予定。複数の病院でテスト運用をしながら、β版を経て2019年10月を目処に正式版を公開する計画だ。

「将来的には今まで病理医の先生がやってきた病理診断をPidPortでもできるようにしたい。メディアなどで『病理診断をAIでやります』といった話題も目にするが、現状では胃ガンなど限定的なものも多い状況。(PidPortでは)全身、全疾患をカバーすることを目指していく」(飯塚氏)

九大起業部発のスタートアップ、医学部や大学病院とも連携

写真最前列の右がメドメイン代表取締役社長の飯塚統氏

メドメインは2018年1月の創業。九州大学医学部に在学中の飯塚氏を中心に、同大学の起業部から発足したスタートアップだ。現在はPidPortのほか、医学生向けクラウドサービス「Medteria (メドテリア)」も開発している。

飯塚氏自身がかつて病理診断を経験し、結果を待っている時間が長いと感じたことが根本にあるそう。医学部でデータ解析をする際などに学んだプログラミングスキルを活用して「他の人にも使ってもらえるサービス」「きちんとマネタイズして事業化できるもの」を検討した結果、現在の事業アイデアに決めたという。

医療領域で画像診断を効率化するプロダクトについては、以前エルピクセルが手がける「EIRL(エイル)」を紹介したが、人手不足などもあってAIを含むテクノロジーの活用に期待が集まっている。

ただし飯塚氏によると研究開発は国内外で進んでいるものの、商用化されたアプリケーションという観点ではこれといったものが国内外で生まれていないそうだ。

その理由の一つが「データ集めの難易度の高さ」にある。PidPortでいえば病理画像に当たるが、これらのデータの多くは病院が保有しているもので、一般企業が集めるにはハードルが高い。メドメインは九大医学部、九大病院と連携しているため、データ集めにおいては他社にない強みを持っていると言えるだろう。

アドバイザーという形も含めて10名程度の医師が開発に携わっていて、データのチェックや現場視点でのフィードバックも行なっているそう。加えてスーパーコンピューターを用いるなど、開発体制の整備も進めてきた。

メドメインでは今回調達した資金を活用してアルゴリズムの強化、組織体制の強化をしながら10月のα版、そして1年後の正式版リリースに向けて事業を加速する計画。

飯塚氏が「日本国内だけではなく、アフリカや東南アジアなど病理診断の土壌がない国にも展開していきたい」と話すように、世界各国の医療機関への提供を目指していくという。

ハイテク企業が公開に足踏みをする一方で、バイオテックのIPOは上向き

収益と売上予想に基いて投資の判断を行う人びとにとっては、バイオテックのIPOは魅力的なものではない。新しい市場参入者たちは、基本的に利益を挙げないどころか、その大部分は売上さえ立っていないのだ。株式公開は多くの場合、治験に向けての費用捻出のために行われるが、その先さらに何年にわたって赤字が続く。

Crunchbase Newsを含むベンチャーキャピタルニュースが、バイオテック企業のIPOに対して大きな扱いをしない理由の1つが、そうしたパターンによるものなのだろう。まあ、有名なインターネット企業が取引初日に躍進するところを見たり、思わぬ不調に沈むところを面白がる方が楽しいのだから仕方がない。

しかし、ハイテク企業へ固執する余り、私たちは大局を見逃している。実際には、ハイテク企業よりも、バイオテックとヘルスケアのスタートアップIPOの方がずっと多いのだ。例えば今年の第2四半期には、米国でベンチャー支援を受けたバイオテックとヘルスケア企業の少なくとも16社が株式を公開した。これに比べるとハイテクスタートアップの公開は11社に過ぎない。Crunchbaseのデータによれば、過去4年間のうち3年間で、バイオテック企業の公募件数はハイテク企業のIPO件数を上回っていた。

以下に述べる分析では、バイオテック公募のペースのスピードに追いついて、状況を評価し、いくつかの注目株に光を当ててみたいと思う。

バイオテックはハイテクを上回っている

上で述べたように米国のバイオIPOは、ほとんどの年でハイテク公募の件数を上回っている。しかしながら、総額としてみたときにはバイオ企業たちの調達額は少ない。この理由の一部は、最大規模のハイテクIPOは、最大規模のバイオIPOよりもはるかに大きいことが多いからだ。下のグラフでは、過去4年間の2つのセクターを比較している。

世界的レベルでは、これらの数字はさらに大きい。Crunchbaseのデータを使用して、過去4年間にわたって世界中でVCが支援したバイオテックおよびヘルスケアIPOのグラフも下にまとめてみた。私たちは2018年を半年過ぎたばかりだが、バイオテックとヘルスIPOは既に過去3年のどの年よりも多額の資金を調達している。

基本が動かして、サイクルが増幅させている

スタートアップに関連するすべてのサイクルが上昇傾向にあることは明らかである。VCの景気は良く、後期ステージの規模は大きくなり、そしてIPOとM&Aの動きも盛り上がっている。

それがバイオIPOにとってどのような意味を持つのだろうか?公募のペースと規模の上昇は、主に強気な市場状況の結果なのだろうか?あるいは、現在のIPO候補者たちが、過去の候補者たちよりもより魅力的なのだろうか?

私たちは、最高のパフォーマンスを誇るバイオテック投資家の1人でありARCH Venture Partnersの共同創業者でもあるBob Nelsenに話を聞いた。彼によれば、現在の状況は「基本が動かして、サイクルが増幅させている」ちょっとしたIPOブームなのだ。

スタートアップの技術革新のペースが過去よりも速いため、より多くの企業が市場に歓迎されるIPOを行っている。Nelsonはこれを「ついに本質的なデータ駆動型のイノベーションへとたどり着いた、バイオテックにおける過去30年間の投資と技術革新の成果だ」と述べている。それは、より多くの治療技術、疾患修飾治療(disease-modifying therapies)、そして予防技術につながるものだ。

しかし私たちはまた、バイオテックのマーケットサイクルの強気の局面にも助けられている。それは、違う状況下ではおそらく未公開のままにとどまっていたであろう企業たちを、公開へと促している。そしてまた、既にIPOへ向けて準備を進めていたスタートアップたちに対しても、より大きな結果を提供している。

大きな成果を挙げたIPOの最新の例は、遺伝的に改造された赤血球を用いて薬品を開発するRubius Therapeuticsだ。今週、この創業5年の会社は、20億ドル以上の初期評価額の下に、2018年最大のバイオ公募となる2億4100万ドルを調達した。このマサチューセッツ州ケンブリッジの企業は、これまでに約2億5000万ドルの資金を調達しているが、まだ治験の前段階だ。

今年は既に、相当規模の複数の公募が行われている。例えば製薬会社のEidos TherapeuticsHomology Medicinesは、最近それぞれ8億ドルの評価額を付け、一方Tricidaは12億ドルの評価額を付けている。(2018年の、世界的なバイオならびにヘルス企業公募の一覧についてはこちらを参照)。

派生市場のパフォーマンスに関しては、上昇も下落も見られたが、いくつかの大きな上昇もみられた。昨年バイオテックは、米国証券取引所で最もパフォーマンスの良いIPOたちを先導した。Renaissance Capitalによれば、6つのトップスポットのうち4つをバイオ系が占めた。それらを牽引したのは製薬会社のAnaptysBioArgenxUroGen、そして農業バイオテックスタートアップのCalyxtである。

そしてこれから

概して楽観的なバイオVCたちは、既に始まっているバイオIPOの増加に対して、複数の理由を挙げている。

Nelsonは、大手の製薬会社やバイオテック企業内の、社内イノベーションのペースの遅さを原因として指摘する。競争力を維持し、新製品のパイプラインを構築するために、大手企業たちは徐々に、スタートアップや公開後間もない企業の買収をする必要に迫られている。

また、ヘルスケアスタートアップのために用意された大量の新規資金もある。2017年の米国では、ヘルスケアにフォーカスするベンチャーキャピタリストたちが91億ドルの資金調達を行った。Silicon Valley Bankによれば、この数字は2016年に比べて26%増加している。

単一のファンドを通して、ハイテクとライフサイエンスの両者へ投資を行うベンチャーファームからも、より多くの資金が流れ込んでいる。こうしたVCのリストには、投資にすぐに使える手元資金を持つPolaris PartnersFounders FundKleiner Perkins、そしてSequoia Capitalなどが含まれている。

それでもNelsonは、IPOの強気市場の奥底では、公募の質の平均が下落傾向にあることを認めている。とはいえ、彼は以前のサイクルでも同様の屈折点は経験しており、「サイクルの同じ地点を比べると、その質は著しく良い」と述べている。

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(翻訳:sako)

Image Credits: Li-Anne Dias

AI診断で迅速な血液検査を可能にするマシーン、Sight Diagnosticsが発売

コンピュータービジョンと機械学習テクノロジーを活用して迅速な血液検査を行う医療機器を手がけるイスラエルのスタートアップSight Diagnosticsは、医療現場で血液検査ができるシステムを売り出した。

このシステムは、OLOと呼ばれるデスクトップ式のコンパクトマシーンで、患者の血液を使い捨てのカートリッジにセットして分析するというものだ。ごくわずかな血液でラボレベルの全血球検査(CBC)ができるとしている。

患者から採血し、それを分析のためにラボに送るー往々にして数日かかかるーというのではなく、一般的な血液検査をこのマシーンを使って直接クリニックなどの現場で行えるようになるのだ。

また、このマシーンを使ったシステムでは、血液塗抹標本を顕微鏡でみるのではなく、高度なテクニックを使った別の検査方法も提供する。血液検査をする際に使えるテクニックだが、ただしこちらは専従の人を要する。

開発チームはこれまで、資金調達した額を明らかにしていなかった。しかしこのほど、Eric Schmidt(編集部注:Eric SchmidtはGoogleの会長)のInnovation Endeavorsー彼らはこの血液検査システムを米国での臨床試験につなげることを想定しているーを含むVCファームから、株式金融で(シリーズA、B)2500万ドルを調達したことを明らかにした。

Sight Diagnostics は、 OLO は医療機関が長く待ち望んでいた、従来の方式にとって代わる高度な手法だとアピールする。患者の血液数滴を正しくセットすれば、AIを使ってその場で正しく分析するからだ。

CBCテストは健康状態をチェックするのに使う一般的な血液検査で、さまざまな検査で“よく行われる”ルーティーンのようなものだ。この血液検査をスピードアップすることでより早い病気の診断につながる、とSight Diagnostics は指摘する。病気の診断だけでなく、病気ではないと早く安心させることにもなる。

OLO システムは、特許を取得済みの“デジタル化”した血液を顕微鏡イメージ用に特別に色付けするというプロセスを用いている。色付けされた顕微鏡イメージはマシーンビジョンアルゴリズムにかけられ、異なる血球のタイプなどを特定し、算出する。この手法は血液検査にかかる操作をかなり簡単なものにしていて、Sight Diagnosticsは医療従事者でない人でも行えるとしている。

Sight Diagnosticsによると、血液サンプルを使ったこの新たな手法では、わずかな血液をOLO の顕微鏡にセットするだけでいいので、その手法は間違えようがないー使う人にとっては“最小の負荷”となる、と表現している。また診断の精度も高く、これにより血液検査にかかる費用を安く抑えられるとしている。

「血液をデジタル化するという斬新な手法は、人工知能が分析を行うのと同じくらい重要だ」とSight Diagnosticsは指摘する。

もちろん、かなりメリットがある画期的な血液検査テクノロジーといっても、それが実際に従来ラボで行われてきた検査と同じくらい正確であることを証明しなければならない。

人の命がかかっているのだから、当然だ。

スタートアップのディスラプトという面においては、Theranosの壊滅的な一件が尾を引いている(編集部注:Theranosは一時、バイオテックスタートアップとしてかなり注目を集めたが、大規模な詐欺を働いたとして米証券取引委員会に告発された)。

しかし、はっきりさせておくと、Theranos の場合はわずか数的の血液でラボで行うような広汎な検査ができるとうたっていたーOLOが少なくとも最初の狙いとしているCBC 数ではない。さらに言うと、少量の血液サンプルでCBC 検査を行うのは実際のところさほど特異なことではない。

Sight Diagnosticsは「CBC検査は、かなり少量の血液サンプルで行える」とする。「たとえば、いくつかの中央研究室の機器は毛細サンプル(血液200-300uLの中の10uLを実際に数えられる)を扱える。CBCを行う旧マニュアル手法ー顕微鏡のスライドの上に血液塗抹標本をのせるーではトータルで10uLよりも少ない血液を使用する。これは、少量の血液で検査するという我々の手法が、確固とした科学基盤に支えられていることを意味する」と説明している。

Sight DiagnosticsはOLOシステムの開発にこれまで8年以上の歳月を費やしている。

2人の共同創業者、Yossi PollakとDaniel Levner は、マシンビジョンとAIの専門家のコンビだ。Pollakはマシンビジョンを使った高度運転支援システムを手がけるMobileyeで働いていた。一方、Levnerはハーバード・メディカル・スクールのポスドク・フェローシップだった(後にバイオテック企業EmulateでCTOを務めた)。

彼らが前面に出しているのは、OLO では“ラボ品質”のCBC検査ができるということだ。

詳しく言うと、OLO とSysmex XN(“ラボレベルの分析を行うトップレベルマシーン”)を比較する臨床試験を行ったところ、この2つのマシーンは同レベルだった。

同社の科学諮問委員会の議長を務めるLevnerが我々に語った内容は以下の通りだ。

比較する研究には、5つの異なるCBCと、病気診断に使われるたくさんの“重要項目”で構成される19のCBCパラメーターが含まれている。結果は統計学的に分析された。これには2つの機器のパラメーターの相関関係、バイアス(2つの機器でシステマティックなシフトがあったかどうか)、そしてスロープ(2つの機器の結果にシステマティックな計数逓減率がったかどうか)も含まれる。

どのような結果であればOLO がSysmex XNと同レベルであると言えるのかを確かめるために、FDAと3度にわたる事前ミーティングで協議した。EU(欧州連合)の基準適合マークではFDAのような厳しい要件を必要としていないものの、事前協議で得られた品質ターゲットを最近行なった臨床試験に適用したところ、OLOSysmex XNをしのいでいた。当然のことながら今回の臨床試験結果では、OLOが中央研究室テストと同等であると考えてもいい、と我々は解釈している。精度や分析の深さについて疑念なしに医療現場で血液検査できること、これこそが我々の最終ゴールだ。

Levnerが触れているように、イスラエルのShaare Zedekメディカルセンターで287人を対象に臨床試験を行った。この試験で、OLOのEU基準適合マーク登録がなされた。この基準適合マークというのは、特定の欧州の国で商業販売するのに必須の健康・安全証明となる。

「EU基準適合マークの申告のために、OLOが体外診断用医療機器指令 (Directive 98/79/EC IVD)に適合することを確かめた。当然のことながら、OLO はISO 13485(品質管理システム)や ISO 14971(医療機器リスクマネジメント)、CEN 13612(医療機器パフォーマンス評価)、そのほかさまざまな安全性、安定性、その他の必須項目を含む、同指令が求める全ての基準をクリアしている」とLevnerはさらに述べている。

特記しておきたいのは、Sight Diagnosticsはまだ、OLOの臨床試験についてのピアレビュー結果を公表していないことだ。

しかしLevner は、直近の臨床試験(CBC分析機としてOLOをテストするもの)の結果は、ピアレビュー済みのジャーナルとして公表するために“現在準備中”としている。

「我々はこのような方法でデータを共有することは必要なことだと確信している。しかし残念ながら学術ジャーナルとして公開する手続きには数カ月もかかる傾向にある。このプロセスでは、“内容がスクープされないよう”、秘密保持契約のもとに結果をシェアしている」と語っている。

この研究チームにとって、血液診断の開発はOLOが初めてではない。OLOの前に彼らは、デジタル蛍光性顕微鏡検査やコンピュータービジョンアルゴリズムを使ったマラリアの診断テスト(Parasightと呼ばれている)を開発した。このマラリアテストの臨床試験に関して彼らは3つの学術記事を公開している。

Parasightは2014年に初めて展開され、60万以上のマラリアテストがこれまでに販売されたー25カ国で“正確かつ矛盾点なしに”マラリアを診断している、としている。

Levnerは、“共通サンプル調整手法や顕微鏡デザイン、AIに基づくアルゴリズム”など、新たに展開しようとしているOLOに使われているものと同じテクノロジーがマラリアテストにも使用されている、と話す。

マラリアテストは彼らがフォーカスした最初のものだが、彼らは今OLOでより汎用性の高い医療現場での血液検査ビジネスを築こうとしている。手始めにCBCテストだが、血液検査のポートフォリオを管理する能力のあるプラットフォームのようなシステムを展開するという青写真も描いているようだ。

この点について、Levnerは、“独立した臨床確認”の後は追加のテストが個別に加えられると付け足すのを忘れなかった。

Levnerはまた「OLOは医療機関にとって大事な数々のテストを集約し、クリニックの診断中枢部になるだろう」とTechCrunchに対し述べた。さらに「現在独立した臨床確認が行われているが、我々はこれらの追加テストを一つずつ公開していく」とも付け加えた。

Sight Diagnosticsは、OLOをまず欧州で売り出す。個人のドクターと国家ヘルスサービス向けだ。このマシーンは今後“3カ月以内に”欧州のドクターのオフィスに登場することになる、とのことだーLevnerは、最初の数台の契約が現在最終段階にある、としている。

「究極的には、我々はOLOを全欧州、そして欧州以外でも展開したい。しかしながら、まずは新しいものを取り入れる気質があることで知られる欧州ー単一支払者制度を採用していない国あるいはプライベートマーケットが発達している国ーを優先する」とLevnerは加えた。

彼はまた、 OLO がオランダ拠点のCE認証機関により欧州で登録されたことも認めた。

「我々は、スイスやイスラエルのようにEU基準適合マークを受け入れるか、追加のテストを必要としないいくつかの国での登録も試みている」。

Sight Diagnosticsのチームはまた、FDAテストの一環として米国3カ所で続けている試験による研究調査も行なっている。500人以上を対象に試験を行うことを目的としていて、この試験には8つの異なるOLOマシーンを使用する。

まず取り組むのは、より広域の米国のクリニック(CLIA 認証施設)でOLOが使えるようになるのに必要なFDAの510(k)認可を得ることだ。Levnerはこの認可を“来年半ば”に取得したい、としている。

その後のステップとしては、FDAからCLIA棄権証書を入手することだろう。この棄権証書では機器を小さなクリニックや医師のオフィスに置くことが許可される。これは“医療現場での血液検査を実現する”ゴールのためには必要不可欠だ。この棄権証書を2020年に取得するのが理想だが、しかし言うまでもなく、臨床の規定のハードルを全てクリアするには道のりは長い。

Levnerによると、共同創業者のほかに研究チームには医療、診断、法規の専門家が含まれる。Shai Izraeli博士(血液学ー腫瘍学)、Janice Hogan(血液学的分析の規則戦略を以前扱った)のほか、名前などの情報は明かせないが何人かの診断専門家も含まれる。

Levnerはまた、CBC臨床試験をリードする“有名な血液学の専門家”をリクルートしたとも述べている。その1人が、ボストン子ども病院血液学ラボのディレクター、Carlo Brugnara博士だ。Sight Diagnosticsのプレスリリースで、Brugnara博士は血液検査の結果を待たなければならないことが医師にとってどんなに困難を感じることなのかについて声を大にして語っている。「これまでの現場での血液分析は、臨床的に妥協を伴うものであり、操作やメンテナンスが難しかった。 OLOでは指先を少し刺してとる血液だけで、その場で正確かつ包括的な血液検査を行えるようになる、という可能性をもっている」。

0.5ペタバイト近くの血液イメージデーターSight Diagnosticsが過去4年間の臨床研究で集めたものーがOLOの血液診断システムをサポートするAIを訓練するのに使われている。(Levnerは、このデータは“匿名化されていて、それぞれの臨床機関の倫理的レビューの承認を得て使用されていると明確に述べた”。)

CBCテスト以外にOLOで行えるようにする予定のテストのほとんどでは、CBCテストのように使い捨てモデルを使う見込みだ。その追加予定のテストとしては、デジタル化した情報を他の施設に送ることでメリットを得られるようなものを想定している。

「一つの例として、OLOで患者のCBC検査が行われ、何か重大な発見があったと想像してみてほしい。その後、医師はさらなるテストをオーダーし、すでに手元にあるデジタル化された血液のイメージを専門家にストリームするのではないか」。Levnerはさらに「その専門家は(複数かもしれない)血液イメージをリモートで分析することになるが、これにより患者が再度採血されたり血液検査を受けるために移動したり、といったことをなくすことができる」と話す。

投入してすぐのビジネスモデルは従来型のセールスモデルになる。Sight DiagnosticsはOLOシステムと必要なだけのテストキットを販売する。CBCテストは、デバイスをサーバーにつなげたりすることなく行える。そしてその先にあるのは、SaaSプラットフォームでのふるい分けるためのスコープだ。たとえば、医師がデジタル化された血液イメージを遠隔地の専門家にみてもらい、その上で追加の分析をオーダーしたりといったことだ。

ゆえに、もし彼らのテクノロジーが彼らが言うように本当に正確で信に値するものであれば、わずか数滴のデジタル化された血液で実に多くのことがわかるようになる。

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(翻訳:Mizoguchi)

食事の写真からカロリーや栄養素を自動算出、健康管理アプリ「カロミル」が約6000万円を調達

AIを活用した健康管理アプリ「カロミル」を運営するライフログテクノロジー。同社は5月14日、電通サイエンスジャム(DSJ)、CSAJファンドFFGベンチャービジネスパートナーズを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

ライフログテクノロジーでは2018年1月にもDG Daiwa Venturesが運営するDG Labファンドから資金調達を実施。これらを合わせた総額の調達額は約6000万円になるという。

調達した資金により組織体制を強化し、AIの精度向上や食事データの取得、アスリートや疾病向けなどの新規事業開発に取り組む方針。また出資先であるDSJとは双方が保有するデータや知見を活用した共同研究を進めるべく、業務提携も始める。

スマホで食事を撮影すれば、カロリーや栄養素が自動で測定

カロミルは日々の食事や運動のログを、ダイエットや健康管理に活用できるヘルスケアアプリ。カロリーはもちろん、たんぱく質や脂質、糖質など細かい栄養素を残せるのが特徴だ。

栄養素の算出方法は登録されているメニューから選ぶ、自分で計算する、栄養士に分析依頼する(月10 回まで無料で依頼可能)、食事の写真から判定するなどいくつかある。その中でもカロミルが強化しているのが、食事の写真から自動的にカロリーや栄養素を算出する機能だ。

この機能は以前TechCrunchでも紹介したとおり、2017年9月からアプリ内に搭載しているもの。自社開発の食事画像解析AIにより、スマホで撮影した写真を「そもそも食事の画像かどうか」「(食事の場合)具体的なメニューは何か」を2段階で解析。該当するメニューのカロリーや栄養素を算出する。現在は約1000品目の食事メニューを識別でき、識別率は82%ほど。コンビニで販売されている商品やファミレスなど飲食店のメニューも含まれる。

ライフログテクノロジー代表取締役の棚橋繁行氏によると、この機能を搭載したことでユーザーの年齢層や幅が広がったそう。「もともとは特に20〜30代の女性によく使ってもらえていたが、20〜50代の男女であまり差がなくなってきた。いぜんより年齢層が上の人にも使ってもらえるようになったほか、疾病患者の方の利用も広がってきている」(棚橋氏)

現在もこの機能のコアとなる画像解析AIの精度向上に注力しているとのこと。今回の資金調達も、体制を強化しさらに研究開発を進めていくことが目的だ。

食事関連データを軸に事業拡大へ

今回ライフログテクノロジーでは資金調達と合わせて、調達先であるDSJとの業務提携を発表している。今後カロミルを通じて蓄積した食事(栄養素)データと、DSJが解析知見を持つ感性や脳波といった生体信号データの関連性を研究することで、食事がメンタルヘルスや労働生産性に与える影響を探っていく予定。これによってヘルスケア領域で、新たな未病対策や疾病予兆への改善助言なども可能になると考えているそうだ。

また将来的には食事関連データとさまざまなパーソナルログを連携し、マーケティング活用やスポーツ領域での事業展開も見据えているという。

「(自社にとって)食事データが1番コアになる部分で、それを活用した新たな事業展開を進めていく。ただ食事データをメインとしつつも、画像解析技術を軸にその他のライフログデータももっと管理しやすい仕組みを目指している。たとえば血圧や血糖、運動の記録なども写真を撮っておきさえすればデータ化できるようになると、ユーザーの利便性もサービスの可能性も広がる。今後は今まで以上にライフログを貯めていく時代になると思うので、まずはデータを残す煩わしさや手間を(画像解析AIなどの)技術を通じてなくしていきたい」(棚橋氏)

 

Fitbit、スマートウォッチ・アプリに生理周期モニター機能を追加

Fitbitは新しいスマートウォッチ、Versaを発表した3月のイベントでFitbitアプリに女性の健康モニター機能を追加する計画を明らかにしていた。 iOS版とWindows版双方にこのアップデートがいよいよ実施される。女性ユーザーは運動や睡眠のパターンと同時に生理周期をモニターできるようになる。

この機能は同社のスマートウォッチ、VersaとIonicの双方で利用できる。これにより生理周期だけでなくく妊娠可能期間の推定も可能となる。Fitbitのヘルスモニター機能への追加として大変有用なものといえる。スマートウォッチを発表した当初、普通のユーザーの手首には大きすぎて女性ユーザーを遠ざけるという批判を浴びた。しかし新しく発表されたVersaは小型化されており、多機能でスマートなデザインとなった。

新機能はAndroidユーザーの場合、今月末に利用できるようになる(FitbitはGoogleのCloud Healthcare APIを利用すると発表しているが具体的なスケジュールは明らかにされていない)。

なおAndroid版Fitbitは今週中にQuick Replies機能が使えるようになる。この機能はスマートウォッチから「イエス、ノー、よさそうだね」というプリセットされた返信をワンタッチで送れる。Facebook Messenger、What’s Appを始め、多くのポピュラーなメッセージ・サービスがサポートされる。

今週はFitbitのパートナー各社から血糖値チェックを含めユーザーの健康モニターを助けるさまざまな新機能やカスタム文字盤の提供が発表された。パートナー企業にはDexcomを始め、Diplomat Pharmacy Inc.、Fitabase、Go365、Limeade、One Drop、Sickweather、Walgreensなどのヘルス関連企業が含まれる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

3Dプリンティングは医療産業をディスラプトする――補装具カスタマイズから再生医療まで

〔編集部〕この記事の筆者はXponentialWorksのファウンダー、CEOのAvi Reichentalで、Dプリンティング・テクノロジーとその影響についてのエキスパート。

1983年に3Dプリンティングの父、Chuck Hallはきわめてシンプルでありながらきわめて革命的なものを作り出した。彼は世界で最初に目の洗浄用コップを3Dプリンターでプリントアウトした。

それは見たところごく平凡な小さい黒いカップに過ぎなかったが、このカップこそ来るべき革命を予告していた。今や3Dプリンターは医療とヘルスケアを根本的にディスラプトしつつある。

アメリカのヘルスケアのコストは天井知らずで高騰を続けている。政治による解決は望み薄だ。テクノロジーの革新以外に意味ある結果をもたらす可能性はない。ここでは3Dプリンティングがすでに起こしつつある革命の一端を紹介したい。

カスタム化補装具

私はよくAmanda Boxtelの例を話す。Amandaは下半身に麻痺があり、Ekso Bionicsのロボット・スーツを利用していた。Amandaは私に相談に来て「装着感が悪く困っている」と訴えた。このスーツは優れたデザインでAmandaにある程度の運動の自由を与えたものの、誰もが当然望むような自然な動作は不可能だった。

ソース:Scott Summit, Charles Engelbert Photography

通常の補装具は各種の現行デバイスと同様、大量生産品だ。これに対して3Dプリンティングによる補装具は個別のユーザーに合わせたカスタムメイドだ。われわれはAmandaの身体をデジタルスキャンし、カスタム化したロボットスーツの製作を目指した。これはテーラーメイドで背広を仕立てるのに似ている。これによりAmandの身体にミリ単位でフィットした軽量で装着感がいいロボットスーツを作ることができた。今ではAmandaはすっかりのスーツに慣れ、ハイヒールを履いて歩く練習をしている。

これと同様のテクノロジーが空気が流通し着用が快適な脊柱側彎用コルセットや義足、義手その他の補装具の製作に用いられている。

バイオプリンティング、ティシューエンジニアリング

外科医の Jason Chuenはオーストラリアの医学誌、Medical Journal of Australiaに掲載された記事で、再生医療においてブレークスルーが起きており、人から人への臓器移植を不要とする時代が近づいていると述べている。これがどのようなテクノロジーなのか簡単に説明しよう。

本質的にみれば、 3Dプリンティングはコンピューターによって薄膜を積層していくテクノロジーだ。現在プリンティングに用いられる素材はプラステイックや金属粉が多い。薄膜を積み重ねて最終的に、おもちゃ、サングラス、医療用コルセット等、所望の形状を得るわけだ。この3Dプリンティング・テクノロジーは医療プロパーの分野に応用されつつある。つまりプラステイックや金属粉の代わりに生体材料を用いることで「オーガノイド」と呼ぶ小さい臓器をプリントアウトできるようになってきた。これには幹細胞を用いて増殖された生体材料が用いられる。こうしたオーガノイドを人体に移植し、時間をかけて成長させることにより、たとえば本来の肝臓や腎臓の機能が失われたときに、その代替とすることができるようなるだろう。

3Dプリンティングによる火傷治療

メアリー・シェリーのSFの古典、『フランケンシュタイン』めいて聞こえるかもしれないが、皮膚の再生医療は、効果はもとより、コスト節約の面を考えてもきわめて大きなインパクトを与えるだろう。過去何世紀にもわたって、火傷によって損傷した皮膚に対する処置はきわめて限られた選択肢しかなかった。皮膚片移植は苦痛がひどく、審美的にも満足のいく結果は得られない。水治療法の効果は限定的だ。しかしスペインの研究者チームは3Dプリンティングによる治療法を開発している。コンピューターにより精密にコントロールして薄膜を積層していくテクノロジーは事実上あらゆる分野に適用可能だ。まだプロトタイプだが、3Dパイオプリンターは人間の皮膚を作出できると示されている。研究チームはヒト血漿と皮膚から抽出された各種物質を生体インクとしてわずか30分程度で100平方センチメートルの人工皮膚を作ることに成功した。このテクノロジーが患者にもたらす利益は計り知れない。

製薬産業

最後に3Dプリンティングは製薬産業にもディスラプトをもたらす可能性があることに触れておきたい。多種類の薬を処方されれば多数の錠剤、カプセルを毎日飲まなければならない。われわれの多くは毎日、毎週、何十錠もの薬を飲んでいる。しかも薬を飲む時間、回数はそれぞれ異なる。赤い錠剤を朝食後に2錠、夕食前に白いカプセルを1つ、といった具合だ。しかも薬を指示どおりにきちんと服用しているかどうかもチェックしなければならない。これらは非常に手間がかかり、患者に負担をかけるだけなく医療機関側のコストも膨大だ。

しかし3Dプリンティングで製造されるカプセルなら、その患者に合わせた複数の薬剤を含有するだけでなく、溶解して身体に吸収される時間も自由にコントロールできる。この「ポリピル」というコンセプトはすでに糖尿病患者に対して治験段階を迎えており、大きな成果が期待されている。

結論

The 医療産業における治療法、用いられるデバイス、作出される臓器は全体として3Dプリンティングの応用による革命前夜にあるといっていい。正確性、柔軟性、信頼性のアップに加えてコストの大幅削減が機体できる。われわれの健康を守り、回復するテクノロジーはまったく新しい段階へと進歩しつつある。これは万人にとって歓迎すべきトレンドだろう。

画像:belekekin / Getty Images

〔日本版〕Amanda BoxtelのTED講演。9分あたりからロボットスーツを着用してデモ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon、JPモルガン、バークシャー・ハサウェイがヘルスケアへ――当面社員向けの福利厚生サービス

企業が非常にビッグになると従業員の医療でさえ既存の健康保険企業を頼る必要を感じなくなるらしい。すくなくともAmazon、Berkshire Hathaway、JPMorgan Chaseはそう考えたようだ。3社は共同して従業員のための新しいまったく独立の健康保険を立ち上げることにした。この会社は3社の従業員と家族向けにあらゆる医療とヘルスケアを提供していくという。

Wall Street Journalによれば、新企業設立の目的は社員の福利厚生の増進であり、「〔一般の保険会社と異なり〕利益追求の必要がないため長期的計画に基づいたサービスが提供できる」ことが特長だという。社員のヘルスケアにおいて損益計算書に利益を計上することを主たる目的とする外部の営利企業によるサービスを利用する必要を一切なくすくのが3社の最終的な目的だ。

新企業の設立を発表した声明で、Amazonのファウンダー、ジェフ・ベゾスは、「〔パートナーの3社は〕ヘルスケア市場に参入して自らサービスを提供することの困難さを十分認識している。最終的に、経済システムにおけるヘルスケアの負担を軽減し、従業員と家族に優れたサービスを提供することによってこの努力が報われるものとしたい」と述べた。

Berkshire HathawayのCEO、ウォーレン・バフェットはこれに加えて「ヘルスケアのコストの際限ない膨張はアメリカ経済に対して貪欲な寄生虫のような影響を与えている」と述べ、JPMorgan ChaseのCEO、ジェイミー・ダイモンも「アメリカにおけるわれわれの従業員と家族に優れたヘルスケア・サービスを提供し、ひいてはアメリカ全体に利益を与えたい」と付け加えた。

現在のところ新会社については、こうした理念と目的以外に詳しいことは分かっていない。しかしパートナーの3社は新会社設立にきわめて真剣だ。プレスリリースによれば、まだ「準備の初期段階」だというが、各社のトップを含む暫定経営陣が発表されている。近く長期的視野に立った組織が発足し、新本社も開設されるはずだ。

新会社の目的は、当然ながら、ヘルスケア・システムに最新のテクノロジーを導入することでサービスの質を向上させながら大幅にコストを下げるところにある。しかしダイモンのコメントにもあるように、もしこの新しいヘルスケア・システムが順調に機能すると見極めがついた場合には、3社連合は従業員と家族だけでなく、さらに広い範囲にサービスを拡大する意図があるかもしれない。

画像:JASON REDMOND/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Enzyme.comはスタートアップたちがFDA承認プロセスに費やす労力を削減する

米国食品医薬品局(FDA)の承認プロセスは、認可を得て、米国内での一般販売を開始したいと望んでいる健康スタートアップにとっては、地雷原を進むようなものである。YC(Y Combinator)出身の企業であるEnzyme.comは、そうした小規模ビジネスたちを、プロセスを自動化することで手助けしようとしている。

バイオメディカルエンジニアのJared Seehaferは、Genentechのようなヘルスケア会社を相手にしたコンサルティング経験を通して、このアイディアを思いついた。彼はコンプライアンスに従うためのすべての書類をきちんと用意することが、単に大変なだけではなく、小企業の動きを鈍くしている原因の多くを占めていることに気が付いたのだ。

Seehaferは、TechCrunchに対してこう語っている。「企業が、仕事の結果を文書化するのに、仕事そのものを行っていた時間とほぼ同程度の時間を費やしていることに気が付きました。これは数兆ドル規模の産業なのです、そこで私は『なぜこの処理を自動化するソフトウェアがないのだろう?』と考えたのです」。

Seehaferによると、コンプライアンスは創業者たちにとって、資金調達に続く第2の難問であると言う。そこで彼は意を決して、共同創業者として規制の専門家であるJake Grahamに声を掛け、Enzymeを設立した。同社のソフトウェアは昨年の夏にベータ版がリリースされたが、企業はその自動化ソフトをJira、Trello、GitHubなどのプラットフォームと統合を行うことが可能だ。

世の中にはコンプライアンスに役立つ代替手段も存在しているものの、それらはしばしば専門家の関与が必要であり、様々なソフトウェアシステムを複雑に組み合わせなければならない。

Seehaferによれば、Enzymeを使うことで、スタートアップたちは規制上の課題に関する背景を理解する必要がなくなり、事務処理から二度手間が排除される。彼らは単にそれを導入して、FDA対応の準備を整えることができる。

これまでのところEnzymeは、Refactor Capital、Data Collective、Soma Capital、そしてRock Health、ならびにScience ExchangeのElizabeth Iornsといった様々なエンジェルたちから、185万ドルの資金を調達している。

同スタートアップは現在約10社と協力しているが、Seehaferは2018年には積極的な成長目標を掲げている。特にこうしたサービスを必要としている、初期調達を行ったデジタルヘルス企業に狙いを絞っていく予定だ。彼はまた、アクセラレーターやVC企業とのパートナーシップを通じて、そうした企業との橋渡しも行う。

もちろん、各企業はこうした作業を自分自身で行い、FDAのウェブサイトに置かれたガイドラインに従うべく努力をすることもできる。しかし、Seehaferによれば、たとえガイドラインがはっきりしていたとしても、結局は多くの企業がコンサルタントやフルタイムのコンプライアンス担当者を雇ったり、次のフェーズに進めるために大量の費用を使うことが多い。

「(コンプライアンスにどのように合致させるかを)明確化することに対する阻害要因があり、異なるステージで異なるレベルの承認があるのです」と彼は言う。

Seehaferは、Enzymeが創業者たちのプロセスをより円滑に導くだけでなく、コミュニティを教育し、アイデアを持った人がイノベーションにさらに集中し、書類仕事に時間を割かなくても良いようにしたいと考えている。

どこかEnzymeのような企業が(医療スキャンダルを引き起こした)Theranosのプロセスをナビゲートする手伝いをしたのだろうか?Seehafer笑いながら、あの非難が集中している血液検査会社は「そもそも、FDAの基本的なコンプライアンスにさえ従っていなかったのですよ」と付け加えた。

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(翻訳:sako)

血液検査バイオのTheranos、1億ドルの資金を借り入れ――投資会社はSoftBank傘下

バイオのスタートアップ、Theranosが1億ドルの資金を借り入れることに成功した。画期的新方式の血液検査を提供するという触れ込みで登場したものの、検査結果に深刻な疑問が突きつけられて苦闘している会社に投資者が現れた。

最初に報じたのはBusiness Insiderで、Theranosへの投資家はニューヨークに本拠を置くFortress Investment Groupという未公開株式投資会社だという。同社は今年初めにSoftbankに買収されている

もちろん今回の資金調達は借り入れで増資ではないが、今年、人員の半数以上を解雇し、さらに赤字を拡大しているTheranosは運転資金を切実に必要としていた。

一滴の血液だけで200種もの疾病を検査できると主張して登場したTheranosは一時、シリコンバレーの寵児となり、会社評価額90億ドルを記録した。しかし肝心の検査結果が疑わしいことが報じられて一気に転落し、いくつもの訴訟を起こされ、連邦機関による調査の対象にもなった。共同ファウンダー、CEOのエリザベス・ホームズは自社のラボに関与することを禁じられた。ラボは閉鎖され、会社はいわばピボットを余儀なくされた。Theranosは主力業務を血液検査サービスの提供からジカ熱感染を探知する装置の製造に切り替えた。

同社はこのトラブルのせいで2015年以降資金調達ができないままだった。昨夜(米国時間12/23)、ホームズは投資家に対し、「2018を通して運営を可能にする資金を確保した」と説明したという。

Buisiness Insiderの記事によれば、この借入には、いくつかの条件が付帯しており、Theranosは所定の成果を上げることが求められると同時にFortressはTheranosの持ち分の4%のを得たということだ。

ホームズの投資家への書簡には、品質管理やコンプライアンスなどを含め、Theranosを再び軌道に乗せるためにこの1年実施してきた改革の概要が示されている。Theranosは訴訟のいくつかで和解し、ラボの実態を調査していた連邦機関、CMS(Centers for Medicare and Medicaid Services)とも和解したという。書簡でホームズは近くラボを再開できることを期待していると述べている。

ホームズはTheranosは1年半から2年以内にジカ熱テスト装置の販売ができるとしている。これは2016年に事業をピボットして以来一環して主張してきたスケジュールだ。

ホームズはまた個人向けにカスタマイズされたセンサー・システムを用いてラボによる検査業務も復活させることも期待している。Theranosはこの分野で多数の特許を保有している。

こうした一連の動きはもちろんTheranosにとってグッドニュースだ。しかし本当の問題はTheranosが公衆の目から見て一度地に落ちたイメージを回復できるかどうかだろう。われわれはTheranosが本当に復活しつつあると信じられるだろうか? ともあれ2018年の運営資金を投じたFortessはそう信じたようだ。

このニュースはクリスマスの週末という時期に飛び込んできた。同社がこれ以上の詳細を発表する意思があるとしても、それはかなり先になりそうだ。 ただしわれわれはTheranosにコメントを求めておいたので、何か判明すればアップデートする。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+