ミクシィがヘルスケア事業を立ち上げ、ノウハウ生かして健康寿命の延伸へ

ミクシィは12月14日、ヘルスケア事業に参入することを明かした。2017年5月設立の子会社スマートヘルスを通じて、これまで自社サービスで培ってきたコミュニケーション設計のノウハウを生かした新しいヘルスケア業態の展開を目指す。

同社が主に取り組むのは健康寿命の延伸に関する事業だ。現在日本では社会保障給付費が増大し、国の財政を圧迫していることが課題となっている。厚生労働省が平成24年に公表した「社会保障に係る費用の将来推計について」では2015年度に約120兆円だった社会保障給付費が、2025年には約150兆円に増えるとされている。

スマートヘルスでは平均寿命と健康寿命のギャップに着目。「エビデンスに基づく最適な運動プログラム」と培ってきた「コミュニケーション設計ノウハウ」により、健康寿命を伸ばし社会保障給付費の削減を目指すという。

予防理学療法と栄養学に基づき身体の状態を評価した上で、利用者の体の状態に合う最適な運動プログラムを提供。そこに複数の利用者でチャレンジする目標の設定、利用者間コミュニティの形成などを通じて運動を継続しやすい環境を構築する。

とはいえ、現時点で具体的なサービスについては何も公表されていない。今後は研究機関との連携も視野に入れながら、サービスを提供する実店舗のオープンやヘルスケアアプリの提供、サービス利用者の健康情報を蓄積したデータベースの構築などに取り組む。

 

“膨大な医療画像”に向き合う医師をITで支援、東大発エルピクセルがAI活用の診断支援システム発表

医療や製薬、農業といった「ライフサイエンス」領域の画像解析ソリューションを開発する東大発ベンチャー、エルピクセル。同社は11月24日、研究開発を進めている医療画像の診断支援技術「EIRL(エイル)」を発表した。

EIRLを通じてエルピクセルが取り組むのは、医療画像診断を効率化することによる「放射線診断医の業務サポート」だ。近年CTやMRIなど医療技術が進歩することにともなって、現場で働く診断医は日々膨大な量の医療画像と向き合うようになっている。

横断的な知識や経験を持ち、医療画像から病巣を見抜ける専門医の数は全国で5500人ほど。これは割合にすると医師全体の2%にも満たない人数だという。この限られた人数で増加し続けるデータ量に対応する必要があり、業務負担の増加が問題視されている状況だ。

これまでエルピクセルは国立がん研究センターなど複数の医療機関と連携し、AIを活用した医療画像診断を支援するシステムの研究開発を進めてきた。現在EIRLを活用して脳MRIや胸部X線、乳腺MRI、体調内視鏡、病理といった画像診断支援技術に取り組んでいて、本日10のテーマを公開している。

EIRLの主な特徴は以下の通り。

  • 医師のダブルチェック、トリプルチェックによって品質が担保された学習データを使用
  • 学習データが少なくても効率的、高精度に学習する独自技術を活用
  • 主要な画像診断装置および撮影プロトコルで撮影した医療画像に対応
  • PACSシステムと連携可能

これらの特徴を活かしながらエルピクセルでは医師の診断を支援していくという。

同社は2014年3月の設立。2016年10月にはジャフコ、Mistletoe、東レエンジニアリングらから総額7億円を調達している。

Apple Watchなど心拍計のあるウェアラブルは高血圧症や睡眠時無呼吸を正確に検出する

ヘルステックスタートアップのCardiogramとカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)による最新の調査によると、Apple WatchやFitbitなどのウェアラブルには、高血圧症(過緊張)や睡眠時無呼吸など、一般的によくある危険な状態を正確に検知できる能力があることが分かった。

両者のこの前の研究では、Apple Watchには不整脈を97%の精度で検出できる能力があることが、実証された。今回の調査では、Watchが90%の精度で睡眠時無呼吸を検出し、高血圧症を82%の精度で検出することが分かった。

American Sleep Apnea Association(アメリカ睡眠時無呼吸協会)の推定によると、アメリカでは2200万人の大人に睡眠時無呼吸症があり、中程度から重度の患者の80%が診療を受けていない。しかしこれは、睡眠時に呼吸が止まって死に至ることもある症状だから、たいへん深刻な状況である。

またCenters for Disease Control(CDC)(疾病管理センター)によると、アメリカ人の大人のうち7500万人が高血圧であり、合衆国で死亡原因のトップである心臓病や脳卒中のリスクを抱えている。

自宅でくつろいだ状態で、しかもシンプルなデバイスを使って、睡眠時無呼吸症や高血圧症を検知できるようになれば、医療は大きく変わるだろう。これまでは多くの患者が、ときどき思い出したかのように医者へ行き、長い時間待たされて検査を受けている。これでは、急な血圧上昇などをお医者さんに知ってもらうことができないし、本人が寝ているときの呼吸停止ともなると、家族はおろか、本人にも分からない。

今回の調査では、6000名あまりの標本がCardiogramアプリを搭載したApple Watchを一定期間装着した。そしてDeepHeartと呼ばれるディープラーニングのアルゴリズムが分析した結果では、1000名あまりに睡眠時無呼吸が、2000名あまりに高血圧症が検出された。

DeepHeartは標本の70%から得られたデータで訓練され、その結果を残る30%に対してテストした、とCardiogramの協同ファウンダーBrandon Ballingerが述べている。

今回使用したデバイスはApple Watchのみだが、Cardiogramの協同ファウンダーで今回の調査を担当したJohnson Hsiehによると、心拍計のあるウェアラブルならどれでも同じ結果が得られたはず、と言う。“それらは、基本的に同じ技術だから”、と。

Hsiehはこう語る: “ウェアラブルのメリットは、高血圧症などの診断が、自覚症状のない人や多忙な人に対しても継続的にできる点にある。そして症状を検出できた人を確実に医療にアクセスさせ、より本格的な検査や治療を講じることができる”。

心臓の健康に関する今回の調査研究は、医療にディープラーニングが本格的に利用された三度目のケースだ。その前には、2016年12月のGoogle Brainによる網膜検査による糖尿病の検出と、今年の1月のスタンフォード大学による皮膚がんの検出があった。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Alphabetのスマートシティ子会社Sidewalk Labsはトロントのパイロット事業にやる気満々

Alphabetのスマートシティ部門子会社Sidewalk Labsは、トロント市と協力して新しいコミュニティの企画を手伝っているが、現時点ではまだ何も決まっていない。まず12か月の準備期間中にプロジェクトを練り、関係部門全員の合意のもとにスタートする。ただしそれは、Sidewalkの具体的な起用/利用法が決まるまで指をくわえて1年待つ、という意味ではない。

今日(米国時間11/2)トロントで行われたGoogle主催のGo Northカンファレンスで、Sidewalk LabsのCEO Dan Doctoroffが説明したところによると、トロント市のウォーターフロントQuayside(‘波止場’)地区にスマートシティのモデルを作る計画は準備段階だが、Sidewalkが今ただちに同地区に実装を開始できることもいくつかある。

Sidewalkはそれらの実装をもっと早めたいとして市と協議中で、それらには渋滞緩和策や、ニューヨーク市にオープンしたばかりのパイロット的診療所をモデルとするヘルスケア施設/サービスの実験などがある。Doctoroffによると、渋滞対策の方は同じくウォーターフロントの一部であるQueens Quay地区が対象になる。

またDoctoroffによると、同社が開発した“交通流量のモデル作りのための新しいコンセプト”は、行政の公共交通担当部門にとって今すぐにでも有益であり、トロントでも比較的早く実装可能、という。

しかしこういったアイデアはすべて、トロントのPort Lands区画内のQuaysideと呼ばれる12エーカーの土地片の、長期的な開発計画だけに固有のものではない。むしろDoctoroff自身は、これらの比較的小規模なパイロット事業のタイミングに言及して、“これらは今すぐにでも着手できる”、あるいは少なくとも、“比較的早期に開始できる”、と言っている。

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「医療用」Apple Watchの登場にはまだ時間がかかる

米国食品医薬品局(FDA)はApple Watchを医療機器に分類するだろうか?これは過去数年にわたって、多くの人たちが重ねて来た質問だが、新たに搭載された心房細動や不規則な鼓動を検出する機能により、その可能性は高まった。

既にAppleは、採血を通してではなく、皮膚への接触を通して、血糖値を測定しモニターするセンサーを、Apple Watchに搭載すべく開発を行っていると噂されている。Appleの9月12日のiPhoneのイベントでは何の発表もなかったが、ティム・クックは、Watchと連動できる血糖値モニターのプロトタイプを装着しているところを、目撃されている。

Appleはまた、2016年には、例えば「ユーザーの血管系の特徴を識別する」といった、Watchに適用可能な複数の医学アプリケーションに関する特許を出願している。おそらくこれは、Apple Watch 3で新たに明らかになった心房細動(AFIB)検出のためのものだ。しかしそれとはまた別の特許も浮上してきた。これもまたApple Watchのようなウェアラブルに適用可能なものに見える。「健康データを計算する電子デバイス」と題されたその特許には、カメラ、周囲光センサ、および健康データを測定および計算する近接センサを備えるデバイスが記載されている。Appleはこの特許を2015年初頭に出願していたが、米国特許商標庁(USPTO)がそれを認めたの先月のことである。

これらを総合して考えるならば、AppleがWatchに対して、目に映るものよりも、大きなプランを抱いていることが想像できる。それでも、いくつかの理由から、ユーザーたちにはそうした機能が、すぐに提供されることはないだろう。

その理由の1つはFDAが医療機器を認定する方法だ、これにはAppleがくぐり抜けたくない規制上の苦労が含まれている。規制当局の弁護士であるBradley Merrill Thompsonが説明しているように、Appleの機械的な時計そのものではなく「ソフトウェアが『FDA規制対象の医療機器』になる」のだ。

「FDAは特定の医療ハードウェアとソフトウェアだけを規制しています」と、彼は続ける。「もしAppleが、血糖値をモニターする特定のハードウェアを追加すれば、それは規制されることになるでしょう。そして特定の医療機能をもつソフトウェアを追加したときにも、それは規制の対象となるでしょう。しかし、汎用のプラットフォームはそうはなりません」。

言い換えれば、Appleはプラットフォームそのものに対して特定の医療目的を謳うことを避け、その代わりに特定の医療目的のために提供される特定のソフトウェアとハードウェアに対してだけ医療目的を謳う必要がある、とThompsonは語る。

おそらく、FDAとAppleの両者にとって、iPhone、Apple Watch、そしてApple製の他のユビキタスデジタルデバイスを含む、全てのプラットフォーム自体へ、規制適用を行おうとすることは悪夢に他ならないだろう。実際、ティム・クックは過去に、その理由から、Watchにはフィットネスと心拍センサー以外のものを追加する予定はないということを明言していた

私たちはFDAにコメントを求めた:広報担当者の回答は、当局はApple Watch単体に対するコメントをすることはできないが、FDAはAppleが最近発表した心臓研究の進展に関連したガイダンスを提供している、というものだった。

AppleがWatchのバージョンを分けて、日常利用のバージョンと、医療追跡のためのバージョンを別々に作成することはもちろん可能だ。Appleは既に最新版では2つのバージョンを作っている:LTEありとLTEなしのバージョンだ。

Appleが、皆に身に付けて欲しいと思うデバイスの、普及速度を落とす余計な規制レイヤーを追加することを決意するとは考えにくいが、同社は、私たちにバイタルをチェックさせ、健康情報をプラットフォームを通して追跡させたいと思っているように見える——もちろん一方では、Appleに有用なデータを提供しながら。Watchは、私たちの健康状態、睡眠状態、心臓のリズム、フィットネスデータを追跡する簡単な手段を提供し、それらの情報をすべてAppleのヘルスアプリに取り込む。

また、Research Kit(Appleが公開しているAPI。これを使うことで医療機関や研究機関が患者のデータを集めやすくなる)を通じて医療研究に参加することができ、重要な医療情報を追跡するために便利な、Medical IDセクションを提供している。

Watchを医療機器にするといういうアイデアは、Appleの過去数年の動きを考えれば、それほどとっぴなものではない。しかしAppleが、医療用バージョンのWatchをすぐにでも提供すると期待しているだろうか?おそらくそれには時間がかかるだろう。

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(翻訳:Sako)

悟りもアプリで開ける時代?ーー拡大するマインドフルネスのスタートアップ企業

【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerはCrunchbaseの記者。

 

インターネットに接続している生活が良いとは限らない。スマホを片手に時間を浪費し、人と接する機会を失い、即座に得られる満足感を求める悪しき習慣ができつつある。そう感じることがあまりにも多い。

この問題を解決できるアプリがあればいいのに。できれば1日中使えて、人間とのやりとりを必要としないのなら尚良い。数分でダウンロードできるのなら言うことなしだ。

ようこそ、マインドフルネスとウエルネスの世界に。ここ1年ほどで投資家が、マインドフルネスや幸福、理想的な精神状態の促進を目的としたアプリやツールの開発を行うスタートアップ企業を支援した数は20以上になる。Crunchbaseのデータによると、これらの企業は今日までで1億5000万ドル以上を調達。最も高額なラウンドのいくつかはここ数カ月で行われ、その資金のほとんどはカリフォルニア州に本拠を置くスタートアップ企業に投じられる。

瞑想マネー

深呼吸をしたら、その金がどこに注ぎ込まれているのかを説明しよう。

今のところ、資金調達において最高額なのはHeadspace。瞑想の技術を学ぶ人気アプリを開発した企業だ。サンタモニカに本拠を置く同社は、今年6月に3700万ドルの資金を調達し、現在までの調達額は7500万ドルとなった。ビジネスモデルは至って単純で、ユーザーは無料レッスンから使用開始して、継続したい場合はサブスクリプション費用を支払う。

Headspaceは自社のアプリを、1800万ダウンロード超えの世界で最も人気のある瞑想アプリと称している。だが、その会社のミッションはアプリのユーザー数より遥かに大きい。

「瞑想は序章に過ぎない」。Headspaceの最高執行責任者であるRoss Hoffmanはそう述べる。創業7年目のHeadspaceはこれから「生まれてから死ぬまでの健康と幸福に関する包括的なガイド」を作成したいと考えている。

Headspaceは事業拡大にも励み、幸せの輪を広げるためにも尽力している。人材募集のページには、ニット生地の布張りソファがある開放的なオフィスと、サラダとご飯を口にする幸せそうなスタッフが掲載されている。Headspaceの求職者には、世界の健康と幸福を向上するという企業理念に対し、応募する役職を通してどのように貢献できるかが問われる。

潤沢な資金を調達した健康促進に取り組むスタートアップ企業はまだ他にもある。「すべての感情的なニーズに対処するべく、ユーザーの意欲を引き出すようデザインされた」デジタルツールとプログラムを開発するHappify Healthは2500万ドルを調達。オンラインでヨガ、瞑想、フィットネスのレッスンを提供するGrokker2200万ドルを獲得している。

シードファンドや初期段階のファンドを調達している興味深い企業は他にも多くある。それにはHeadspaceの競合Calmや、モチベーションが高まるテキストメッセージを届けるShine、多忙な人の燃え尽き症候群を防ぐThrive Globalなどがある。

こうした動きは何を意味するのだろう?

冒頭の不機嫌さはさておき、よりバランスの取れた生活を送るために設計されたアプリは、インターネットで過剰に繋がった世界の隙間市場を埋めているようだ。また、過度なデジタルの刺激を電子機器で治すのは皮肉といえど、そこには論理性もある。

「テクノロジーは、この惑星にあるすべてのものに対する意識を広げてくれるかけ橋となった…しかし、テクノロジーは同時に我々をマルチタスカーにし、数千人の友達がいるのにもかかわらず、孤独にした」。社会的意識の高いマイクロVC、Mindful Investorsの共同設立者Stuart Rudickはそう語る。MIndfulのポートフォリオには、変化する気象音を使用して、ユーザーの瞑想をガイドする脳波計ヘッドバンドの開発企業Museも名を連ねる。

Rudickは、マインドフルネスと瞑想のツールに対する投資家の興味をより広域な健康的生活への関心と見ている。特に瞑想は十数年まえのヨガと似た成長をたどっており、より多くの人口に普及しつつある。

投資家の視点から見ると、ヨガやフィットネス、健康的な生活などへの投資は良いリターンと高評価の企業を生み出した。元々ベンチャー支援を受けて10年前に上場したヨガのアパレルメーカーLululemonは、現在80億ドル相当の評価額を誇る。ユニコーン企業を挙げると、屋内サイクリングブームの火付け役であるPelotonは、前回のラウンドで12億5000万ドルの評価額をつけた。(こちらにその他数社をまとめた)。

同様に失望もあった。最近の事例で言えば、未公開株式ファンドの支援を受けたヨガスタジオチェーンのYogaWorks。同社の株価は上場時すでに予想額を下回り、8月のIPOから3分の1まで落ち込んだ。

スターの力

 

だが、マインドフルネス界の投資家は単に金銭的リターンを求めている訳ではない。Rudickのようなダブルボトムライン・インベスターと呼ばれる投資家は、潜在的利益に加えて社会的利益をもたらす企業を探している。

瞑想やマインドフルネスはセレブからの人気も集めており、著名な支援者からスタートアップ企業が資金を確保するのに役立っているようだ。Headspaceの投資家にはRyan Seacrestジェシカ・アルバ、そしてJared Letoなどがいる。Museは支援者にアシュトン・カッチャーを持つ。一方Thriveは、有名なメディア起業家Arianna Huffingtonによって設立された。

とは言え、セレブからのサポートが活気のない企業をユニコーン企業に変えることはないだろう。しかし、セレブが勢ぞろいコンテンツを端末で眺め、我々がどれだけの時間を浪費しているかを考慮すれば、数分でも時間とって、気持ちをスッキリしようと提案するセレブに耳を傾ける方がおそらく利口だろう。

 

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(翻訳:Keitaro Imoto / Twitter / Facebook

ビジネスサービスこそがVRのキラーアプリだ

【編集部注】著者のChris Youngは、B2BソフトウェアのアーリーステージベンチャーファンドであるRevel Partnersの、マネージングジェネラルパートナーである。

仮想現実(VR)と拡張現実(AR)は、2016年に現実的な試練に晒された。膨大な投資と業界でのもてはやされ方にもかかわらず、予測されたVR/ARの大量採用は決して現実のものとはならなかった。しかし、その水面下では、地味で目立たない領域からではあるが、この技術の確実な動きが始まっていることがわかる。

B2Bとエンタープライズアプリケーションに於けるVR/ARの活動は、表面的には目立たずとも非常に活発な年だった。そしてその勢いは2017年も続いている。実際に、今やエンタープライズVRからのアプリケーション収益は、2020年までにはコンシューマーエンターテイメント収益を上回ると予測されている。しかも誇大宣伝は抜きで。

ゲームやエンターテイメントのためのVR/ARの早期の試みは、今だに初歩的な状況にあるままだ。Mark Zuckerbergでさえ、この技術が主流になるまでには、丸々10年はかかると見積もっている。不恰好で高価なハードウェアや、ヒット商品の欠如、そして消費者自身の関心の欠如などにその原因を求めることはできるが、業界による2025年までに7000億ドルの売上という予想は、少々野心的に思える。消費者向けのVR/ARが、いつか「やってくる」のはほぼ確実だが、一方業界の規模がどれ位のものになるのか、いつどのように成長が始まるのかは重要な疑問として残されたままだ。

調査会社のTracticaによれば、VR/ARの企業支出は、ハードウェア関連の収益を除いても、2020年までに消費者たちがVR/ARエンターテイメントに対して行う支出よりも約35%大きくなると予想されている。Tech Pro Researchによれば、彼らの調査に回答した企業のうち67%が現在ARの利用を検討しており、47%がVRをの利用を検討している。デジタルトランスフォーメーションは、VRハードウェアのコストの低下と共に、注目度が上がっている。関連するソフトウェア、システム、ツールの進歩との組み合わせと、企業による採用が、業界のための最も現実的な発射装置として成長しつつある。

2017年には、VR/ARのユースケースが、イノベーター、起業家、スタートアップたちが取り組むさまざまなビジネス分野で拡大し続けている。ヘルスケア、教育、CPG/FMCG(Consumer packaged goods / Fast-moving consumer goods:トイレットペーパーや洗剤のように安価かつ短いライフサイクルで大量に消費者に売られる商品のこと)、テレコム、広告、不動産などはすべて、VRもしくは強化現実(enhanced reality)から恩恵を受け始めている。何百もの3Dビジュアライゼーションと拡張のための、クリエイティブなアプリケーションたちが登場している。

スマートな起業家たちと開発者たちは、早期成功の鍵となる要素を特定し、その教訓を、B2Bに焦点を当てた消費者関連産業に応用するだろう。

マーケティングおよび広告セグメントには、VRスタジオ、アプリケーション開発者、流通ネットワークがひしめいている。多くの場合、彼らは広告代理店やブランドを支援して、販売やマーケティングのための没入型ブランド体験を提供している。たとえば、Outlyer Technologiesは、360度のモバイル広告フォーマットを使用して、ユーザーの関心を引きつけようとしている。最近のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)では、メトロアトランタ商工会議所が、Foundry 45の技術を利用してアトランタの仮想体験を提供し、求職者の候補を募った。特に、アトランタではVR/AR企業が急増しており、数年前には1ダース程だった企業数が現在では50程になっている。

これらのタイプのユースケースが急成長しているのは、マーケティングと広告分野だけに限らない。製造業では、WorldVizが、その企業向けのVizardとVizmove VRアプリケーションスイートを使い、ビジュアライゼーションとテスティングのリーダーとなっていて、P&G、Philips、3M、Perkins & Willなどの多くの企業で採用されている。オープンソースで拡張可能なライブラリにより、大企業や中小企業は、現実世界のシナリオで、新製品を迅速に設計、操作、そしてテストすることができる。

教育での利用は — それが従業員訓練でも、初等教育でも、そして先進的研究だとしても — 大量のデータを視覚化したり、遠隔地で学生の教育を行なうことのできるVRの能力から恩恵を受けている。GoogleのProject Expeditionは、仮想的な探検と、没入型世界旅行を教室にもたらす。アイスランドのSólfarStudiosは最近、エベレストVRプロジェクトを英国王立地理学会に寄付したAlchemy VRUnimersiv、そしてCuriscopeなどは、没入型で経験型のカリキュラム、ツール、トレーニングで急速に教育の世界を変えつつある。

ヘルスケアのVRは、患者のケア、遠隔医療、リハビリ、そしてトレーニングにまで及んでいる。実際、2016年はVRカメラを使用した手術が行われた最初の年として記憶された。医学生たち(および一般の人びと)は、Mativisionの手術視覚化アプリケーションでVRを使用する医師と共に、手術の現場に立ち会うことができた。VisitUは、ヘッドセットと家庭内の360度カメラを通して、病院の子供たちを自分の部屋につなぐことができる。The Virtual Reality Medical Centerは、恐怖症や他の慢性的なメンタルヘルスの問題を持つ患者を支援するために、サイバー心理学の中で急速に成長している医療実践の1つだ。

業界全体では、7000億ドルもの規模に達するだろうと予測する専門家もいる。こうしたエンタープライズ分野におけるイノベーションを促進する新規用途の例は、この技術の意義ある収益への明確な道筋を示している。確かに、この分野は消費者向けの分野で、発達し発展を続けるだろうが、今や企業とB2Bのケースが急速に成長している。スマートな起業家たちと開発者たちは、早期成功の鍵となる要素を特定し、その教訓を、B2Bに焦点を当てた消費者関連産業に応用するだろう。そここそが、このテクノロジーがその基盤を見出し、大量採用への扉を開く場所なのだ。

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(翻訳:Sako)

モバイル化が進むアフリカの医療業界―、遠隔医療相談サービスのKangpe

アフリカの医療業界と聞くと、国境なき医師団から派遣された医師が、人里離れた村で治療にあたっている様子を思い浮かべる人もいるかもしれないが、実際には、モバイルテクノロジーがアフリカ大陸全体の医療業界を急激に変化させている。Y Combinatorのプログラムに参加しているKangpe Healthは、モバイルデバイスを通じて医師と遠隔で連絡がとれるプラットフォームを開発し、変革が続くアフリカ市場に挑もうとしている。

ユーザーは、ベーシックな携帯電話やスマートフォン上のアプリを通じてKangpeのプラットフォームにアクセスし、健康に関する質問を送付することができる。簡単なものであれば、Kangpeの医療スタッフが10分以内に少額で質問に答え、もっと専門的なアドバイスが必要と判断された場合は、彼らがユーザーを専門医に紹介するようになっている。

もともとナイジェリアで医師として働いていたFemi Kutiは、Kangpeのアイディアを思いつき、友人のOpe OlumekenとMatthew Mayakiを誘って昨年同社を設立した。自分が担当した患者や友人から、常に何かしらの症状に関する質問のメッセージを受け取っていたKutiは、彼が無料で提供していたアドバイスを事業に転換できるのではと考えたのだ。

現在Kangpeはガーナとケニアでも営業しており、カバー地域の合計人口は2億4500万人に及ぶ。さらにKutiによれば、これまでのところ同社のプラットフォームには、6万人のユーザーが登録している。

もちろんKangpe以外にも、遠隔医療相談の事業を運営している企業は存在する。アメリカでは、Kangpeのように医師と遠隔でコンタクトできるプラットフォームのDoctor on Demandや、メッセージベースで医療関連の質問に答えるFrist Opinionといったサービスがある。さらにケニアのMedAfricaやウガンダのMatibabu、さらには現在アフリカの10カ国で営業しているHello Doctorなども、Kangpeと同じパイを狙っている。

一方で、新しいテクノロジーが急速に普及し、経済的に大きく成長している国々が存在するアフリカでは、まだまだ潜在的な顧客を獲得するチャンスは残されている。

さらにKutiは、アメリカの類似サービスをそのままアフリカに転用することはできないと指摘し、「Googleはアフリカ固有の病気について知りませんからね」と話す。

Kangpeは既に社会的にも注目されており、同社のプラットフォームはFacebookとのパートナシップを通じて、ナイジェリア向けFree Basicsプログラムではトップのサービスとして紹介されている。以下のFacebookが作ったビデオでは、Free Basics内でKangpeのサービスが宣伝されている様子を見ることができる。

しかし将来的には、”アフリカのOscar Health”を目指し、初期診断や医療保険、さらにはもっと専門的な医療サービスを提供できるようなプラットフォームへとKangpeを成長させていきたいとKutiは語る。

「私たちは、アフリカの人たちが納得できる価格で医療サービスを提供するため、日々努力を重ねています」と彼は付け加える。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

元Google従業員が描く未来の診察室、Forwardを見学

今年の初め、サンフランシスコの金融地区の中心部に、未来的な診察室Forwardが最初のオフィスを構えた。しかし健康産業に従事する者の中には、ここで提供される独自のボディスキャナーや聴診器、その他の診療所内検査施設についての疑念を呈するものもいる。そこで私たちは、元Google従業員で創業者のAdrian Aounに、診療所内を案内して貰えるように依頼した。

もちろん、見学することと、検証することは異なる。この時点では、私たち自身でこれらの独自ツールを検証することはできず、またAounのスタートアップがこれまでどのくらいの資金調達をしたのかも不明だ。ただこうした素敵なツールたちが、患者たちに正確な数値を与えてくれる程度には十分であることを願っている。

私たちが知っていることは、Forwardが既に、Khosla Ventures、Founders Fund、First Round Capital、SV Angelといったベンチャーファームや、John Doerr、Eric Schmidt、Marc Benioff、Garrett Camp、Aaron Levie、そしてJoe Lonsdaleといったエンジェルたちを含む、かなりの数の投資家からの資金を集めているということだ。彼らがこの新しい試みに対して、しっかりした査定を行っていることを期待したい。

内部見学の様子を示した上のビデオを見て、何か意見があればコメントを寄せて欲しい。

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(翻訳:Sako)

インドのPractoが5500万ドルを調達、アジアの新興国でヘルスケアプラットフォームを展開

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インドに拠点を置き、医師検索・医療情報サービスを展開中のPractoが、この度シリーズDで5500万ドルを調達し、世界中の新興国へのさらなる進出を狙っている。

今回のラウンドでリードインベスターになった中国の大手ネット企業Tencentは、2015年にPractoが9000万ドルを調達したシリーズCでもリードインベスターを務めていた。またロシアのRu-Net、日本のリクルートが運営するRSI Fund、そしてニューヨークのThrive Capitalが新規の投資家として、さらに既存の投資家であるSequoia、Matrix、Capital G(旧Google Capital)、Altimeter Capital、Sofinaもラウンドに参加していた。なお今回の調達資金を合わせると、これまでにPractoが調達した資金の合計額は1億8000万ドルに達する。

Practoのビジネスにはいつも感銘を受けてきた。というのも、同社はヘルスケアという全ての人に影響を与える課題に取り組んでおり、その中でも特に問題が深刻な新興国をターゲットとしたサービスを提供しているのだ。プラットフォームの基本機能としてPractoのユーザーは、インドやその他の新興国では簡単にはいかない医師の検索や、医師から提供された医療情報の入手、さらにはQ&A機能を使って簡単な質問への回答やアドバイスを受けることができる。

新興国では医師不足が深刻な状況にあり、Practoのサービスは大きなインパクトを持っている。世界銀行のデータによれば、インドでは国民1000人に対して内科医が0.7人しかおらず、この割合は郊外だとさらに下がる。ちなみにアメリカとイギリスを例にとると、それぞれの国民1000人に対する内科医の数は2.8人と2.5人だった。

消費者側の問題解決以外にも、PractoはSaaSモデルを採用し、診療データ管理用のソフトウェアを医療施設に向けて販売している。これにより医療関係者は、Practoの消費者側のサービスを使って、自分たちのサービスを広範囲にスケールする前に、ビジネスやプロセスをデジタル化することができるのだ。

Practoによれば、同社のサービスを通じて年間4500万件のアポイントが成立しており、現在プラットフォームには20万人の”医療関係者”と1万軒の病院、そして5000軒の診療センターが登録されている。またPractoのプラットフォームは、インド以外にもフィリピン、インドネシア、シンガポール、ブラジルで利用されており、医療従事者向けのソフトウェアは世界中の15カ国で利用されている。

Practoは今回調達した資金をさらなる海外展開に利用する予定で、既存新興市場でのビジネス拡大、新規新興市場(東南アジア、南米、中東、アフリカ)への進出を狙っている。

「既存の市場でもさらに投資を加速させていきます」とPracto CEOのShashank N.Dはインタビュー中に語った。

「昨年私たちはエンタープライズ向けのビジネスを強化するために(インドで)複数の企業を買収し、インドの消費者向けサービスの拡充も進めてきました。今後は既存市場をさらに深掘りすると同時に、中東など新市場の調査も行っていきます。私たちのビジョンは、世界中の人がより健康に長く生きるためのサポートをするということです」と彼は付け加える。

Practoは海外での業績についてあまり情報を明かさなかったが、ほとんどの海外市場へ参入したのが昨年だったことを考えるとそれも理解できる。

「SaaSとマーケットプレイスを利用し、Practoはこれまでに確かな収益構造を築いてきました。現在海外からの売上は全体の20〜25%を占めており順調に成長していますが、インドでの売上の方が大きな伸びを見せています」とShashankは話す。

さらにPractoはTencentと密に協力しながら、今後医療保険の分野へ参入しようとしている。Tencentは数ある事業のひとつとしてWeChatを運営しており、これは中国で一番人気のメッセージアプリかつ驚異的なスティッキネスを誇るモバイルプラットフォームだ。WeChatのデイリーユーザー数は7億6800万人を記録しており、そのうち半分が1日あたり少なくとも90分間このアプリを使用している。

WeChatのようなプラットフォームをつくるノウハウこそ、PractoがTencentから学ぼうとしている点であり、ほかにも医療業界にいるTencentのパートナー企業を通して、中国でテクノロジーがどのようにヘルスケアに影響を与えているかについて情報を集めているとShashankは付け加える。

「昨年は一年を通して、Practoのプラットフォーム化に注力していました。ここで言うプラットフォームとは、消費者の医療に関するニーズをワンストップで満たせるような総合プラットフォームを指しています」と彼は話す。

TencentはPractoのこの動きを、実際のアクションをもって支援している。Practoへの投資は同社にとって初めての大規模投資案件であり、次回のラウンドでもTencentはリードインベスターを務めようとしているのだ。

「Practoはこれまでに素晴らしい成長を遂げ、同社がカバーする消費者と医療従事者のニーズの幅もだんだんと広がってきました。ヘルスケアの分野でフルスタックのモデルを確立することは大変難しいことですが、Practoは実際にプラットフォームを構築して急速にスケールしています。これは世界的にみても珍しい例です」とTencentの投資・M&A担当執行取締役であるHongwei Chenは声明の中で熱く語った。

2011年のシードラウンドからしばらくが経ってビジネスが成長し、海外での業況も上向いているが、ShashankはまだPractoのエグジットは考えていないと言う。

「今回のラウンドで資金に余裕が出たこともあり、特にIPOに向けた具体的な計画も立てていません。新興国のヘルスケア市場ははじまったばかりで、テクノロジーをヘルスケア分野で活用するというコンセプトも浸透していないので、まだまだ成長の余地はあると考えています」と彼は話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

かつては27億ドルだった費用が今や100ドル ― ゲノム解析のIlluminaが新製品を発表

Installing a flow cell on an Illumina cluster station.

2013年に初めてヒトゲノムのDNAシークエンシングが行なわれたとき、その費用は27億ドルだった。しかし、DNAシークエンシングの巨大企業Illuminaは現地時間10日、1回につき100ドルの費用でゲノム解析ができ、「1日程度あれば」自分のゲノム解析結果を知ることができる新製品を発表した。

今日、Illumina CEOのFrank deSouzaはサンフランシスコで開催中のJP Morgan Healthcare Conferenceで新製品の遺伝子解析機械「NovaSeq」をお披露目した。彼によれば、NovaSeqは1時間もかからずにヒトゲノム全体を解析するという。

その凄さを明確にしておこう。この15年間のあいだに、かつて何十億ドルもの費用と10年もの時間を要したゲノム解析が、僅かなコストと1時間という短い時間をかければ可能となったのだ。

しかし、シークエンシングにかかるコストは当初から急激に低下していた。2006年にはIlluminaが30万ドルの費用でヒトゲノムのシークエンシングができる機械を発表している。同社がその費用を1000ドルまでに抑えたプロダクトを発表したのはつい昨年のことだ。

コストの急激な低下により、臨床研究の現場は多大なる恩恵を受けてきた。しかし、これまで以上に速くかつ低コストのゲノム解析が可能になることで、消費者向けビジネスにフォーカスするヘルスケア・スタートアップはNovaSeqに興味をそそられることだろう。がん研究などに従事するリサーチャーは、これまでにも豊富な遺伝子データにアクセスすることができた。一方で、23andMeやAncestryDNAなどのスタートアップによる遺伝子テストのおかげで、遺伝子研究に対する消費者の関心も高まってきた。また、アンジェリーナ・ジョリーなどの著名人は、Color Genomicsをはじめとする企業が提供するBRCA-1やBRCA-2などのゲノムスクリーニングによる乳がん予防への関心を高めることに寄与している。

サンディエゴを拠点とするIlluminaは、そういった消費者向けのテストを提供するスタートアップを背後から支えている。もし読者が23andMeのDNAシークエンシングを体験したことがあれば、それにIllumina製のプロダクトが使われていた可能性が非常に高い。

先ほど挙げたような遺伝子テストサービスの費用は、すでに数百ドル程まで下がっている。NovaSeqによって時間的なコストと費用が下がることで、より大きなマージンがとれるだけでなく、テストにかかる時間が短くなればより多くの顧客を獲得できる可能性がある。

NovaSeqには2つのモデルが用意されている ― 85万ドルのNovaSeq 5000と、98万5000ドルのNovaSeq 6000だ。

これまでに6つの企業や機関がNovaSeqを購入している。Chan Zuckerberg Biohub(Mark Zuckerbergと彼の妻であるPriscilla Chanが設立)、Broad Institute of MIT、Harvard、そしてバイオテック企業のRegeneronとHuman Longevity Incなどがその例だ。

しかし、現段階ではIlluminaはテスト1回につき100ドルという価格を実現できていない。さらに、データの解読にもまだ時間がかかる。もちろん、AI技術の急速な発達でデータの解読にかかる時間はさらに短くなるだろう。遺伝子テストのコストが大幅に下がったことも非常にうれしいニュースだ。

この発表のあと、Illuminaの株価は16%上昇した。

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(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Proofは血中アルコール濃度をリストバンドで追跡する

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酒気検査器を使って友人たちと血中アルコール濃度を測ってみるのは、パーティーの座興としては楽しいかもしれないが、もし本当に後1杯飲むかどうかを判断したいと思っているならば、そうした機械を引っ張り出すのはいささか面倒だ。

それこそが、肌から出る汗に基づいて体内のさまざまな化学物質を検出するウェアラブルセンサーを利用する会社、Milo SensorsをEvan Strenkが始めた理由だ。同社は、あなたの血中アルコール含有量を測定して情報をアプリに送り、今夜はどこまで来ているかをそれとなく確認し、次のビールをオーダすべきかどうかを判断できるようにしてくれる小さなリストバンドProofの提供を始めた。Milo Sensorsはこのプロダクトを、今年はEureka Parkで開催中のCESで発表した。

「酒気検査器が置いてある場所もありますが、扱いが面倒なので誰も使おうとはしません」とStreak。「使い方としては、午後6時に私たちのセンサーをオンにして、アラームを自分で設定すれば、あとはアプリが面倒をみてくれます。(私が電話機を見ていても)誰かにメッセージを送っているのか、それとも血中アルコール濃度(BAC)を測っているのかは、他の人にはわかりません。そして測定は連続的に行われているので、濃度が0.08パーセントになったらアラームを出すように設定することもできるのです。家に運転して帰らなければならないとか、連れや、友人や、家族に望ましくないレベルで接触しそうなときには、警告を発して欲しいと思います」。

アプリの目標は、アラームを電話に送る瞬間を待つことではなく、ユーザーの血中アルコールレベルを連続的に追跡することだ。これを行うことで、ユーザーはどれくらい濃度が上昇するのかを知り、ペースを落とすべきかどうかを判断することになる。バンドは情報をアプリに送信し、アプリは現在BACがどの程度かを素早く表示する。

ユーザーは現在のBACを知ることができる一方、同じ技術は更に他の物質、例えばカフェインの検出も可能だ、とStrenkは述べた。「この技術は様々なユースケースに適用可能で、結局皮膚は分子のスーパーハイウェイになるのです」と彼は言う。今のところBACの測定が行われているが、共同創業者達はこのことを何杯かのビールをピッチャーを飲みながら決定した。それはバンドではなくイヤリングの形になったかもしれないし、乳酸の検出から始めることになったかもしれなかったが、結局彼らはバンドを使ったBACの測定に落ち着いた。

所有者は、家を出ようかなと考え始める6時頃にカートリッジをバンドに挿入する。カートリッジは使い捨てでコストは数ドルほどだとStrenkは述べている。「アナロジーを挙げるなら、カウンターの上に置いた生肉が数時間で茶色に変色していくようなものです。同じようにカートリッジを開けば、それは酸化して行きます。通常の歩数や心拍といったものの計測を超えて、皮膚を通して生物学的分析結果を読み取っていくのです」。

Fitbitのような別の大規模ウェアラブル企業が、こうしたものを自社の製品に統合する方法を見出すリスクは常に存在している。Strenk氏は、使い捨てのカートリッジを使用することが邪魔になるかもしれないが、Milo Sensorsの持つ有利な点は既に2年以上も研究で先行していることだ、と述べた。

Milo Sensorsは、昨年NIHに最初のプロトタイプを提出し、その結果が酒気検査器や血液サンプルと比較された結果、現金を伴う賞を受賞することができた、とStrenkは述べた。同社は今年CESでローンチするまで多かれ少なかれ目立たないように活動していた。Strenkは時期を明言しなかったが、バンドは今年中の何処かで出荷が始まり、100ドルから150ドルの価格帯になるだろう。

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(翻訳:Sako)

糖尿病患者の健康状態を常時チェックして警報をスマホに送るSiren Careの“スマートソックス”

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糖尿病の健康チェックサービスSiren Careが、糖尿病患者が温度センサーで炎症や傷害を、リアルタイムで検出する、スマートソックス(靴下)を作った。

協同ファウンダーのRan Maは、ノースウェスタン大学にいるときに傷めた背中の皮膚を回復するため、バイオマスを育てていたとき、糖尿病患者の足の処置について勉強を始め、怪我を調べたり防ぐためにウェアラブルを作ることを思いついた。

糖尿病患者はタイプ1の人も2の人も足に問題を抱えることが多く、とくに、足がむくみがちである。それは放置すると、感染症や足の切断手術など深刻な事態になることもある。重大な合併症を防ぐためには早期発見がきわめて重要であり、そこでMaと彼女に協力する協同ファウンダーVeronica Tranは、衣服などへのセンサーの内蔵が鍵だ、と考えた。

しかし糖尿病患者の足の傷害を見つけるウェアラブルは、Sirenのソックスが初めてではない。SurroSense Rxは糖尿病患者のための靴の中敷きで、Tillges TechnologiesのPressureGuardianは、問題を検出するよう設計されたブーツだ。

でもブーツは扱いが面倒だが、Sirenのソックスは靴の中敷きよりも皮膚によく密着する。センサーはソックスの生地に織り込まれていて、炎症があるとそれを検出する。その情報はユーザーのスマートフォンにアップロードされ、問題を警報する。

ソックスが異常な高熱を検出すると、そのデータはソックスとアプリとクラウドに保存される。それは足に傷害があるというサインなので、足を調べろという警報がユーザーに送られる。

“靴紐と同じぐらい、単純でふだんは気にならない存在だけど、傷害があればそれを知らせてくれる”、とMaは語る。

ウェアラブルだけど、ソックスを充電する必要はない。最初から電池内蔵で、それは6か月もつ。またその電気が消費されるのは、実際にそれを履いているときだけだ。寝るときなどに脱げば、ソックスも寝てしまう。洗濯機で洗えるし、丈夫だから少なくとも6か月は使える。

Maは曰く、“わが社のSmart Textile(電脳織物)技術は、さまざまなセンサーや電子回路を織り込める。湿度センサー、圧力センサー、光センサー、LED、RFID、MCU、BLEなどなど、何でもシームレスに布地と一体化する”。糖尿病患者のための炎症検出ソックスは、同社のこんな大きな技術の、ひとつの利用例だ。夢はもっと大きい。

炎症や傷害の検出だけでも、ほかにさまざまな体の部位があるから、製品開発の幅は広い。

Sirenは500 startupsのバッチ18から巣立ち、ソックスは来春発売する。予約は、ここで受け付けている。週の各曜日用、という考え方で、7足がワンセットだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

遠隔医療のPlushCareがシリーズAで800万ドルを調達

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本日、遠隔医療のPlushCareがシリーズAで800万ドルを調達したことを発表した。リード投資家を務めたのはGGV Capitalで、他にもLightspeed Venture PartnersExponentの2社が本ラウンドに参加している。

遠隔医療という分野はなにも新しいものではない。2002年に創業し、今では上場企業となったTeladocもビデオ通話による遠隔治療サービスを提供している。しかし、PlushCareはこれまで同業他社ができなかったことを成し遂げようとしている。快適に遠隔治療というサービスを利用してもらおうという試みだ。

AirbnbやUberなどのアプリと同じように、PlushCareのアプリでは自分で好みの医師を選ぶことができ、その医師からオンデマンドで遠隔治療を受けることができる。扱われるのは緊急性の低い病状だ。PlushCare CEOのRyan McQuaidは、医師の緊急治療室への呼び出しの7割が不必要なものだと説明する。

増加し続ける医療費に健康保険業界が苦しめられているという現状を考えれば、PlushCareのサービスが与える価値が大きいことは明らかだろう。だが残念なことに、OG Teledocを含めた既存の遠隔医療サービスは、そのサービスの経済性を証明することができず、そのために重要なパートナーシップを維持することができていない。CVS Minute Clinicなどのサービスと遠隔医療サービスが提携を結ぶと、両者の収益を共食いしてしまうとMcQuaidは主張する。

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PlushCareの共同創業者の2人。左からRyan McQuaidと、James Wantuck博士。

「遠隔医療というマーケットが大きくなるにつれて、他のカテゴリーとの関係性も深まり、診断医療や調剤業界などに与える影響も大きくなります」と語るのは、CGV Capitalでマネージングパートナーを務めるJeff Richardsだ。

しかし、PlushCareの場合、他社とパートナーシップを結ぶことにフォーカスするよりも、顧客の獲得に直接フォーカスすることが今後しばらくの彼らの方針のようだ。また、彼らは自分たちがコントロール出来ないものの優先順位を考える代わりに、医師のネットワークを構築することに専念してきた。他社との差別化を図るために、彼らはTOP50のメディカルスクールを卒業した医師としか契約を結んでいない。

風邪や腰痛など、緊急性の低い病状しか扱わないサービスとしては、これはいささかやり過ぎの感があるが、それだけ同社は顧客から信頼を獲得することに注力しているということだろう。大学受験予備校など、他の業界もコスト以外の面で差別化をするために、これと似たモデルを採用せざるを得ない状態だ。PlushCareはコスト面での差別化も図るため、ネットワークへのアクセス料金を取っていない。遠隔治療を受ける回数が少ないユーザーにとっては朗報だ。

「今後、この分野に対する規制が緩和され、低コストで満足度の高いヘルスケアを提供するという消費者中心型のヘルスケアがもつチャンスがさらに広がると確信しています。PlushCareは、コストと消費者満足度という両方の側面で優れたサービスなのです」とRichardsは語る。

PlushCareは積極的なマーケット進出戦略をとっている。これまで数十年間、数々の規制によって遠隔治療サービスが全国的にビジネスを拡大するのは困難だった。しかし、すでにPlushCareは15の州でビジネスを展開中だ。これまでは米国東部と西部の州への拡大を中心的に行ってきたが、今後は米国全土の他の地域へも拡大していく予定だと同社は話している。

今のところ、医者のカルテはそれぞれの医療機関にバラバラに保存されていて、それがシームレスな医療を実現する妨げになっている。つい先日、臨床研究サービスのQuest DiagnosticsとPlushCareがパートナーシップを結ぶとの発表があった。これにより、何百人もの患者の臨床検査の結果がPlushCareに提供されることになる。だが、PlushCareのプラットフォームに加入している医師と、外部の医療機関の一部はそのデータにアクセスすることが可能にはなったが、主要な医療機関と遠隔医療サービスとの間のデータの共有はまだ十分ではない。

これは同社にとって解決すべき重要な課題だ。なぜなら、McQuaidは同社を単なる遠隔医療サービスではなく、ハイクオリティな医療データのポータルにすることを目指しているからだ。それを実現するためには、エコシステム全体に眠るデータの所有権をこれから獲得していく必要がある。

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(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

遺伝子検査の23andMe、人種の多様性を反映させた遺伝情報の収集を計画

NEW YORK, NY - NOVEMBER 10:  23andMe CEO Anne Wojcicki speaks on stage during 'The Fast Company Innovation Festival' - Data + Drugs: The New Evolution Of Drug Making With 23andMe And Sprout on November 10, 2015 in New York City.  (Photo by Brad Barket/Getty Images for Fast Company)

消費者向け遺伝子検査の先駆けである23andMeは、世界中の多様な遺伝データを積極的に収集し、その領域でトップを目指すと発表した。

同社は本日、系統解析サービスを単独のサービスとして99ドルでリリース、自分の遺伝的出自に興味を持つ人たちは、試験管に唾を吐くだけで自らの祖先や親戚をたどることが出来るようになる。

DNAで家系をたどるサービスは創業者のAnne Wojcickiによると同社のプラットホームにおいて大変人気のあるサービスで、一般的な遺伝学そのものに対しても良い導入点なる。さらに、世界中の誰もが自分たちがどこから来たのかを潜在的に知りたがっているという点で、このサービスに対する需要は万国共通のものがある、とWojcickiは付け加えた。

しかしながら、同社の祖先解析コースのレポートは、人種の多様性を反映した遺伝情報を著しく欠いている点が、厳しく批判されている。例えば、Euny HongがQuartzでレビューを書いているように、彼女の遺伝情報はレポートによるとたった76人の朝鮮人に由来しているということだ。

23andMeによると既に幾つかのプログラムが始動して、そのプラットフォームにおける有色人種の遺伝的データを充実させようとしている。同社は今春、Roots into the Futureというプロジェクトを導入し、アフリカ系アメリカ人の遺伝情報の収集を行っている。さらに、23andMeはHuman Genome Diversity Projectの資金援助も行い、現在アフリカにおいて2つのプロジェクトが進行中で、祖先を構成する遺伝データの多様性の増加を図っている。

しかし、23andMeにとって注力すべき箇所は一点ではない。実際、全米バイオテクノロジー情報センターによれば、遺伝的同定において使用されるサンプルの96パーセントがヨーロッパの人々からのものだった。

23andMe

そして、その反動がくる先は少数の遺伝的サンプルから成るグループだ。その点に関して言えば、単にもっと多様性を確保すべく世界中の人々に自社の製品を売り込もうという観点のみならず、ヘルス・リサーチ一般に対する意味合いが大きい。つまり、大きいサンプルサイズを確保することで病気の遺伝的マーカーを発見する確率がずっと増し、また研究が正しく行われる確率も上昇するのだ。

 23andMeはこの問題について、同社のブログ内の「現実問題としての遺伝研究における多様性」という記事で言及している。ある心臓疾患の研究において、偏った研究に基づいたせいで、アフリカ系アメリカ人は白人に比べ、ある遺伝的変異を持っている確率が高く、そのせいで肥大型心筋症という心臓病を発症する可能性が高いという、誤った結論が導かれた。実際、その変異を持つ確率に人種間での差はなかった。遺伝研究が正しく行われればこのような偏りは取り除かれるが、そのためには数と多様性の両面においてより広い範囲のデータが必要である。

23andMeによると、同社が現在供給しているデータに対しては自社独自の研究で対応するものの、次のステップに進むためには一般大衆の参加が必要ということだ。

23andMeが今後増やしていきたいと考えている研究の良い例が、最近発表された、ネバダ州で行われる集団遺伝調査だ。ネバダ州行政府はRenown Health FoundationとNevada’s Knowledge Fundの援助を受け、同州の何千人もの市民に対し無料テストの機会を提供し、健康状態、人口構成、遺伝的・環境的データを調べることを引き受けた。

もちろんネバダはほとんど白人とヒスパニックだ。しかしWojcickiは他の参加者が同様のテストに参加してくれることにより、人種の偏りのギャップを埋めてくれていると期待している。

「この領域には素晴らしい可能性があります。大きなグループの利点を生かせば、そのグループ内で協力し個人それぞれの医療記録を照らし合わせることで、個人にあった医療、オーダーメイド医療といった点で、真に革新をもたらすようなコミュニティーの形成が可能になり、研究が飛躍的に進むでしょう」と、WojcickiはTechCrunchに語った。

僅かばかりのDNAと引き換えに自らの祖先の情報を知りたい人はここに行ってキットをオーダーしよう。

系統解析コースは元来、顧客に提供されるサービスの一部分であり、そのサービスの中に健康に関するデータも含まれていた。現在、顧客は系統解析コースを単独で選ぶことも出来るし、健康・系統解析の両方の選択も可能だ。
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(翻訳:Tsubouchi)

呼気チェックヘルスケアのBreathometer、Phillipsとの提携を発表

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アメリカ国内で、800万の人々が口の臭いに問題を抱えているのだそうだ。無自覚な人もいるにはいるが、周りの人はほとんどが迷惑に感じている。

昨年のCESではBreathometerが、口臭のレベルを測定し、オーラルケアに役立てるためのMintというスマートフォンにつないで使うデバイスを予告していた。この話に進展があり、PhillipsがBreathometerと提携し、SonicareとバンドルしてMintの提供を行う旨が、今年のIFAにて発表された。

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Sonicare Breath care bundle

この提携によりBreathometerは、オーラルケアに対する意識がたかいであろうSonicareのユーザー層に対して、自社プロダクトを提供できるようになるわけだ。

MintはまずIndiegogoキャンペーンに登場して資金を集めた。ファウンダーのCharles Michael YimはそしてABCのShark Tankという番組にも出演して知名度を高めることとなった。当時はアルコールの検知に利用するものとされ、自分の車ではなくUberで帰ることにしようなどという判断にも役立つという紹介がされていた。

それからBreathometerは、ヘルスケア面にこそより大きな可能性があることを意識するようになった。アルコール検知というニッチな市場から、より広いオーラルケアの市場に向けてピボットすることになったわけだ。

血液や尿検査などによった方が、より統括的な検査が行えるのだろうが、それらはいずれも手間暇がかかるものだ。呼気をチェックするだけでも肺の健康状態やぜんそくの症状、代謝率、あるいは糖尿病の可能性などを調べることができるのだ。スマートフォンにつないで使うデバイスとして開発したおかげで、一般消費者が使いやすいプロダクトになったと言えるだろう。

「ヘルスケアプロダクトには、あやしげな効能をうたうものもあります。しかし呼気を分析してヘルスケアに役立てるという手法は、完全に科学的なものなのです。市場はほぼ手付かずの状態で広がっているといって良いでしょう」とYimは言う。「関連プロダクトがないわけではありませんでしたが、一般消費者向けのものはほとんど皆無なのです。Breathometerの提供するプロダクトこそ、パイオニアとなり広がっていくことでしょう」。

Phillipsと提携することで、Breathometerのビジネス機会が広がっていくことも考えられる。Yimも他プロダクトの開発を行うことにも前向きな考えを示している。

ちなみにMint単体で購入したいという方には、こちらでプレオーダーすることができる。価格は100ドルほどだ。出荷開始は9月30日が予定されている。

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(翻訳:Maeda, H

糖尿病患者の血糖測定器とスマホをつなぐHealth2Syn、シリーズAで300万ドル獲得

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糖尿病をモニターする際、その作業を行うのは若干の苦痛を伴う。医療系テックのスタートアップであるHealth2Sync2014年のコンシューマー・エレクロニクス・ ショーのハードウェアバトルフィールドコンペティションで立ち上がった会社だ。同社の目標はほとんどの標準の血糖測定器につながる安価なアクセサリーを開発して、血糖値を直接自分のスマホに流し込み、血糖値のモニターを簡便化することだ。

同社は本日シリーズAで300万ドルの資金を確保したと発表した。WI Harper Groupのリードで、Cherubic VenturesiSeed VenturesSparkLabs Global Venturesが参加した。

同社のプレスリリースによれば、Health2Syncはその資金を使って製品開発を継続すると共に、日本、中国、東南アジアなど海外のマーケットの開発に力を入れるとしている。
Health2Syncのテクノロジーの中核を成すのは、スマホと血糖測定器をつなぐケーブルにあり、そのケーブルはヘッドホン差し込み口経由で二つの装置が会話できるようにする。これら二つの装置が一旦つながれば、血糖測定器に保存されたデータがHealth2Syncアプリによりスマホと同期する。
アプリはアンドロイドとiOSの両方で利用可能で、ケーブルには二種類ある。1つ目は古い仕様に対応したもので、もう一方はより新しいモデル用で、このタイプはデータを赤外線で送信できる。
データを数字とグラフィックの両方で表示することに加え、Health2Syncアプリのユーザーは家族メンバーを付け加えることが出来るので、家族みんなで糖尿病のコントロールに向けて協力して取り組むことができる。さらにアプリを使えばデータを自分の医者や糖尿病の指導員に送ることができ、糖尿病専門家からの意見は病気のコントロールに役立つだろう。
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さらに同社によれば、この製品は実際に効果を発揮している。プレスリリースによると、試験に参加し、Health2Syncを120日間使った患者たちのHbA1cの平均値が、当初の8.6パーセントから6.89パーセントにまで低下し、その結果健康に問題の生じるリスクが著しく低下したということだ。

メイヨ・クリニックによれば、糖尿病患者では典型的に言って、HbA1cの値が7〜8パーセント以下であれば病状が上手くコントロールされているとみなされる。

300万ドルを口座に追加することでHealth2Syncはテクノロジーをさらに進化させ糖尿病患者がその病気をコントロールするのをますます容易にしてくれるはずだ。特に日本、中国、東南アジア方面で朗報が期待される。

今後の動きに注目しよう。次の2016年サンフランシスコ・ディスラプト・バトルフィールドにも乞うご期待。ほんの二週間足らずの9月12日から14日まで、サンフランシスコのピア48で開催だ。
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(翻訳:Tsubouchi)

アプリをストリーミングしてモバイルコンテンツを利用する未来

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【編集部注】執筆者のWally Nguyenは、mNectarのCEO。

消費者は、映画やテレビ番組、音楽、ビデオゲームなどのコンテンツをストリーミング形式で楽しむのに何の問題も持っていない。実際、Ciscoの予測によれば、2020年までに世界のモバイルデータのトラフィックのうち75%がビデオに関連したものになる。

しかし、モバイル端末上でアプリをストリーミングするという考え方は、好むと好まざるにかかわらず、ほとんど進展していない。2008年にAppleのApp Storeが登場して以降、私たちはあるコンテンツを利用するために、対応したアプリをダウンロードしなければならないという状況に慣れてしまっていた。というより単にそれ以外の方法がないのだ。

しかし、消費者は段々とアプリをダウンロードするのにうんざりし始めている。彼らはコンテンツやサービスを即座に利用したいと考えており、ひとつの機能やサービスしか提供できないアプリをダウンロードするのに3、4分も待ちたくないのだ。例えば、チャットボットの盛り上がりは、App Storeの壁を超えてアプリの機能を使いたいと考える人たちに起因していると見ることができる。また、消費者のフラストレーションを理解したGoogleは、Android Instant Appsを発表し、アプリ全体をダウンロードせず、ある機能を担う一部分だけにアクセスできるようにしようとしている。

Android Instant Appが公言しているように、あるアプリの一部を利用できるだけでなく、もう二度とアプリをダウンロード、アップデート、そして削除する必要がなくなり、リンクをクリックすればすぐにアプリを使ったときと同じ機能にアクセスできるような状況を想像してみてほしい。

アプリのストリーミングというコンセプトは比較的新しいが、ダウンロードという行為が新たな発見やアクセスを阻害しなくなることで、モバイルコンテンツやサービスと私たちの関わり方をすっかり変えてしまう可能性を秘めている。そして、以下がアプリストリーミングの恩恵を受けると思われる5つの業界だ。

ヘルスケア

モバイルヘルスケアアプリで、医療従事者と患者のコミュニケーションを簡素化できるということに疑いの余地はないが、これまでモバイルヘルスケア業界は、患者の個人情報や、セキュリティ、秘密保持などをどう扱うかという難しい問題に悩まされてきた。そして、言うまでもなく患者側の最大の不安は、自分たちの体に関する情報が盗まれてしまうということだ。

アプリの利用について、医者や看護師は、自分たちのスマートフォンが、持ち運びができてしまう患者情報へのアクセスポイントとなることを恐れている。もしも、医療従事者が患者とのコミュニケーションのためにアプリをダウンロードする代わりに、安全でユニークなセッションを通じてアプリをストリーミングし、必要な情報が共有できた段階でセッションが終了できるとしたらどうだろうか? 医者は、自分たちのスマートフォンに患者の情報をダウンロードしたり保存したりしなくてよくなり、患者も、セキュリティやプライバシーを犠牲にすることなく必要なケアを受けられると安心できる。

カスタマーサービス

様々な企業が、自分たちのウェブサイトやアプリ上での顧客経験を解読するのにかなり苦労している。そして、消費者が利用している種々のデバイスがさらにその状況を悪化させているのだ。多くの人員を抱える、専門のカスタマーサービスチームが、たくさんの時間とリソースを割いて、エラーやインターフェイス上の問題の解決にあたっている。その中でも1番大変なのが、問題を再現して、iPhone、Samsung Galaxy、Windows Surfaceなど、ユーザーが利用しているそれぞれの端末上で、問題がどのように表示されるのかを確認することだ。

消費者はアプリをダウンロードするのにうんざりし始めている。

大企業のカスタマーサービスチームは、問題を再現するにあたって、顧客と電話をしながら複数のデバイスを行ったり来たりしなければならない。しかし、アプリストリーミングによって、このカスタマーサービスの悪夢が簡単に解決されるかもしれない。物理デバイス上で問題を再現する代わりに、アプリストリーミングを使うことで、カスタマーサービスの担当者がデバイスの種類を選べば、即座に問題を再現でき、素早く問題の内容把握や解決ができるようになるかもしれないのだ。

旅行

スマートフォンを使って、旅行関連の価格比較サイトを見ながら、航空会社のウェブサイトに進んで、いくつかの旅程を試してみたり、車やホテルなどの予約サイトを見みたりしたことがある人は、モバイル旅行業界にもディスラプションが必要だと感じていることだろう。休暇を計画するのに、既に労働集約的な検索作業を、それぞれのサービス毎に違うアプリを使って行いたいと思う人はいないだろう。そして、私と同じような考えの人であれば、特定のブランドやサービスに愛着をもっていないため、旅行関連アプリをダウンロードしても、大体の場合すぐに削除してしまうだろう

アプリストリーミングを利用すれば、旅行業界につきものの無駄や反復の大部分を削減することができる。例えば、3つの航空券検索アプリをストリーミングして、どのアプリが1番お買い得な情報を掲載しているかチェックするとしよう。どの航空券にするか決めたら、そのリンクから直接航空会社のアプリへ飛べるようになっており、さらには予約しようとした航空券が既にカートに入った状態で、予め保存された個人情報も再度入力する必要がない。アプリストリーミングによって、旅行者はどのアプリが1番良いかではなく、どの商品が1番お得かということに集中することができる。

モバイル決済

昨年起きたVenmoのハッキング被害などの大きなニュースが発表される前から、セキュリティに関する不安が最大の障害となり、消費者はモバイル決済アプリの導入には慎重だった。ちょうど前述のヘルスケア業界の例のように、信頼はモバイル決済アプリと消費者の間に欠かせない要素となっている。しかし、決済の認証情報を頼りにするアプリが無防備な状態でスマートフォン上にあっては、消費者との信頼関係を構築するのは難しい。

誤解しないでほしいのは、モバイル決済における改善点のほとんどは、本人確認や認証技術に関連したものだ。しかし、その域を超えて、もしも私たちの日々の決済情報がアプリ上に記録されず、モバイルショッピングサイトでの支払のように、セキュアなセッションを通じて行われるとすれば、モバイル決済アプリはさらなる進化を遂げることになるだろう。さらに、アプリストリーミングで相互運用性の問題も軽減することが期待されている。私はVenmoを使っているが、友人はWells Frago SurePayを使っていて、公共の駐車場を使うには街が運営するアプリを利用しなければならないとする。そこでアプリストリーミングを利用すれば、新たなアプリをダウンロードすることなく、全ての支払や振込を行うことができるのだ。

小売

私は買い物が好きだし、気に入っているブランドも間違いなくたくさんあるが、複数の小売企業のアプリをダウンロードして管理したいとは思わない。RetailMeNotが昨年行った調査でも同様の結果がでており、スマートフォンでオンラインショッピングを行う消費者の60%が、2つ以下しか特定の小売企業のアプリをインストールしておらず、21%の消費者がそのようなアプリを全く利用していない。

消費者は、買い物やウィンドウショッピングといった一時的な行為に対して、アプリのように常在するものを使いたくないのではないかと私は考えている。つまり、アプリのダウンロードはコミットメントの度合いが高過ぎるのだ。買い物をする人は、スマートフォンの容量をとってしまうアプリをダウンロードしなくていいとなれば、小売企業が提供するモバイル体験に対してもっとオープンになるかもしれない。

また、アプリストリーミングを使えば、クーポンや店内限定の賞品などの特典はそのままで、今日の小売アプリにつきもののめんどくささを省くことができる。そうすることで、異なるお店間をスムーズに移動しながら、全ての小売アプリの特典を獲得することができ、15%の割引のために4、5分待つということもなくなる。

アプリストリーミングの影響は、上記の業界だけに限ったものではないものの、これら5つの業界におけるモバイルアプリ分野での課題を考慮すると、彼らが早い段階からアプリストリーミングの後押しをする存在になると私は考えている。

もっと広い意味で言えば、アプリストリーミングは、7年前にAppleがつくったモバイル体験の仕組み全体に変革をもたらす可能性を持っている。開発者が1人のユーザーを「獲得する」(もしくはアプリをダウンロードさせる)のに、5〜7ドルのコストがかかることもある。しかし、アプリをダウンロード後に一度利用して削除するか、その後二度と使わないといったことが普通に起きている中、ユーザー1人当たりにかかっている5〜7ドルのコストは完全に無駄になってしまっている。

そのため、この状況は長期的には持続することができない。アプリストリーミングが、アプリインストールモデルをこじ開けることで、アプリ内のコンテンツやサービスへモバイルウェブサイトのようにアクセスできるようになるかもしれない。そして、最終的にこの動きが、デジタル経済の中にいる全ての業界の人々のためになることだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Withings社の「洗練された」スマート体温計が発売

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この度、フランス企業のWithingsは、CESにおいてWithings Thermoの発表を行った。Withingsはすでにノキアにより1億9000万ドルで買収されている。Withings Thermoは体温の変化を追える、100ドルのスマート体温計だ。本日(訳注、7月19日)より、アップルストア、アップルとWithingsのウェブサイトで発売される。

Withings Thermoは側頭部動脈の温度を測定する装置で、今日手に入る最高の体温計だろう。側頭部の動脈の温度を使い体温を測る。操作は、装置をこめかみに置き、ボタンを押し2秒ほど待つ、たったそれだけだ。

実際の装置内部では、この体温計は16の赤外センサーを備えており、2秒間に4000回もの測定を行っている。これこそが、この装置が昔懐かし体温計よりずっと正確な理由だ。また、この体温計は小さなディスプレーに体温を表示するが、実際のところその機能は単なる体温計の域を超える。
この体温計はBluetooth経由でWi-Fiネットワークや電話に接続可能なので、熱が長引いている場合は、体温の時間的推移をモニターすることが容易だ。

また、子供がいる場合は、複数のプロファイルを作成し、例えばイブプロフェンをいつ服用したかなどを記録しておくことができる。また、赤ちゃん成人を問わず、使用可能だ。FDAの認可を受けているおかげで、ボストン小児病院の開発した、発熱診断ツールであるThermiaを使って子供の発熱の処方にも取り組んでいる。

たとえこの体温計をスマホに接続しない場合でも、それ自体がなかなか良い装置だ。小さなディスプレーが備わっているので、スマホがなくてもちゃんと使える。

AAA規格の電池2個で、2年ほど作動するため、使うたびに電池交換する必要はない。

Withings Thermoは現在アメリカのみで販売されているが、すぐに世界中で手に入るようになるはずだ。同様に、Withings Thermoは他の店舗からも入手できるようになるだろう。同社とアップルは製品発売に際した一過的な独占販売の契約を交わしているからだ。

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(翻訳:Tsubouchi)

「コオロギ粉末」でプロテインバー——電通ベンチャーズ、米国の食品スタートアップ・Exoに出資

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電通が手がけるCVCファンドの「電通ベンチャーズ1 号グローバルファンド(電通ベンチャーズ)」が4月25日、クリケットフラワー(コオロギ抽出タンパク)を使った健康食品を開発する米Exoへの出資を実行したことを明らかにした。出資額は非公開だが、Exoは今回のシリーズで合計400万ドルを調達している。

Exoは2014年の設立以降、独自技術でコオロギから高純度のタンパク質を抽出・精製・粉末化したクリケットフラワーを開発。そのクリケットフラワーを使用したプロテインバー「exo」をはじめとした健康食品・食品原材料を開発をしている。現在米国で、ココアナッツ、バナナブレッド、アップルシナモン、ブルーベリーバニラ、ピーナツバター&ゼリー、バーベキュー、マンゴーカレー、オリーブの全8種類のプロテインバーを販売している。

「コオロギから抽出したタンパク質」と聞くと——その栄養価などへの評価は別として(その詳細については過去にExoを紹介したこちらの記事を読んで欲しい)——正直なところ食べることに心理的な抵抗があるという人は少なくないだろう。Exoももちろんそういった課題は認識しており、プロテインバーのデザイン・クリエイティブにも注力、さらにミシュラン三つ星を獲得しているシェフの監修の下でクリケットフラワーを原材料とした食品を開発するなどしてブランドを意識したマーケティングを進めている。

このあたりのマーケティング、特に日本への進出については電通ベンチャーズでも積極的な支援を進めるという。「電通では過去にユーグレナに投資をしてビジネス開発を支援していた。そういったノウハウは使えるのでないか」(電通ベンチャーズの平山悠氏)