遠隔医療や医薬品デリバリーを手掛けるTruepillが在宅医療検査サービスに参入、年末までに200億円超の売上目指す

遠隔医療および薬局での調剤から配送までのフルフィルメント・サービスを他企業に提供するTruepillは、遠隔医療サービスを提供するHims and Hers、避妊薬や緊急避妊薬などのデリバリーサービスを提供するNurx、医療薬割り引きクーポンを提供するGoodRx、および以前の顧客で遠隔医療サービスを提供するRoなどの企業の各サービスを強化する第3のサービスとして在宅医療検査を開始する。

このサービスの拡大に向けた資金調達は、Oak HC/FTが主導する投資家からの7500万ドル(約80億円)の新規資金調達ラウンドで、Optum Ventures、TI Platform Management、Sound Ventures、Y Combinatorが参加する。

新たなリード投資家であるOak HC/FTの共同創業者でありマネージング・ディレクターのAnnie Lamot(アニー・ラモット)氏は「遠隔医療の診療報酬が変更されたことで、D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)企業に対する風向きが変わりました」と語る。

Truepillはラボでのテストを拡大することで、従来は医師のオフィスにリモートで限定されていたサービス一式を提供可能になる。より多くの患者が遠隔医療に適応することで、この種の選択肢はより魅力的になるだろう。

遠隔医療への移行は、新規参入者にとっても同様だ。特に優先順位が診療報酬側のサービスに対する料金ではなく、価値に基づいたケアにシフトし、消費者がより低コストのオプションを要求し始めると、既存事業者も同じケアを消費者に提供する必要があることがわかってきている。

ヘルスケア分野で長年投資を行ってきたラモット氏は「ターゲットを絞ったヘルスケアプランによって、より良いケアを提供できるようになると思います」と述べている。そしてTruepill の経営陣も確かにそう願っている。共同創業者のUmar Afridi(ウマル・アフリディ)氏とSid Viswanathan(シド・ビスワナサン)氏は、LinkedInで知り合った。ビスワナサン氏が面識のないアフリディ氏にメールを送り付けたのが始まりだ。当時、アフリディ氏はシアトル近郊のスーパーマーケットのFred Meyer(フレッドメイヤー)で処方箋を詰める薬剤師として働いていた(Forbes記事)。

当初、Truepillの成長は、Hims、Nurx、および脱毛治療、勃起不全治療薬、避妊薬を希望する人々の選択的な健康ニーズに焦点を当てたほかのD”Cヘルスケア企業のような薬剤師としての役割から来ていた。

当初Truepillの成長は、Hims、Nurx、その他の消費者向け医療企業の薬剤師としての役割から始まり、脱毛治療、勃起不全治療、避妊を望む人々の選択的な健康ニーズに応えることに焦点を当てていた。

会社が成長するにつれて、野望も大きくなった。ビスワナサン氏によると、Truepillは年末までに最大2億ドル(212億円)の売上を計上する見込みで、その売上はD2C者企業、保険会社、医療機関などの顧客から均等にもたらされるという。

「当社の薬局からラボの検査部門に至るまで、すべての業務はホワイトラベル化されています。オンライン診療のteladocで、そのサービスを利用できます。ヘルスケアの80%はデジタルチャネルで行われようとしています。我々、この分野のプラットフォーム企業を構築するのに最適な立場にいます」とビスワナサン氏は説明する。

家庭での検査は、そのプラットフォームの重要な構成要素だ。Truepillは年末までにこのサービスをローンチする予定で、ラボのテスティングプロバイダーと協力して数百の在宅テストを提供している。同社は、糖尿病、心臓病、慢性腎臓病などの慢性疾患を管理するための検査に重点を置くとのこと。ちなみに、これらは投資家から大きな関心を集めている分野だ。消費者やデジタル治療ソリューションを提供する企業を支援し、これらの疾患の治療に役立てている。

ビスワナサン氏は声明で「包括的で効果的なデジタルヘルスケア体験を実現するには、保険適用範囲の広い薬局、自宅での検査、そして遠隔医療の3つの柱が不可欠です。当社の一連のソリューションに診断薬を追加することで、Truepillという1つのプラットフォームを通じて、患者さんに直接医療を提供することができるようになります。当社は、医療の80%がデジタル化された未来を想定しています。APIに接続されたインフラス基盤の上に、診断、遠隔医療、および薬局が構築されたTruepillは、デジタル化を力強く後押しします」と述べた。

画像クレジット:Fanatic Studio

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(翻訳:TechCrunch Japan)

TwilioのビデオプレーヤーがZocdocの遠隔医療サービスに採用

電話やメッセージの発着信サービスを展開するTwilioのビデオプレーヤーが、Zocdocが米国時間5月13日から顧客向けにローンチする新しいビデオコンサルサービスのバックボーンとして採用されることが明らかになった。両社は声明で発表した。

新型コロナウイルス(COVID-19)の流行が米国のヘルスケア業界に影響を与える中、より多くのサービス提供者が医療相談を遠隔地から行うようになり、全世代の消費者がバーチャルケアに移行することを奨励している。

Zoomなどのほかの動画サービスと同様に、Twilioの動画サービスの利用は急増している。同社によると、ピーク時の同時参加者数は850%以上、1日の動画視聴時間は500%以上の増加という。また、ヘルスケア分野の顧客は同プラットフォームの帯域幅を90%増加させたという。

「Zocdocの新しい遠隔医療ソリューションは、医療従事者と患者がバーチャルケアを最も必要としている時代にビデオ訪問を利用しやすくします」とTwilioでヘルスケアサービス部門のグローバルヘッドを務めるSusan Collins(スーザン・コリンズ)氏は声明で述べている。「Twilio Programmable Videoのソフトウェアの俊敏性とクラウドのスケール性により、Zocdocは数週間でリモート訪問を利用できるようになった。我々は、顧客と医療従事者がヘルスケアプロバイダーにサービスを提供し、医療を必要とする人々に治療を提供し続けられることを誇りに思う」。

Twilioは、パンデミック期間中における新規顧客への売り込みの一環として、ヘルスケアや教育、非営利団体を対象に、6月30日までに登録した場合に限り3カ月間の無料サービスを提供する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

遠隔医療で鎮痛剤の断薬と中毒の予防をサポートするLusic Laneのサービス

4年前の2016年に、新しい中毒予防サービスLucid Lane(ルーシド・レーン)の創設者Adnan Asar(アドナン・アサー)氏は、Livongo Health(リボンゴ・ヘルス)を創設し最高技術責任者として順調に出世街道を歩んでいた。それはShutterfly(シャッターフライ)に長く勤めた後に数々の企業で続けて上席技術役員を務めてきた中でも、いちばん新しい仕事だ。そこで彼は、慢性病管理用の一連のソフトウェアとハードウェアの開発を通じて会社を率いてきた。

だがアサー氏の妻が非ホジキンリンパ腫と診断されると、彼はテクノロジーの世界から足を洗い、妻の治療を続ける間、家族とともに過ごすことを決めた。

その当時、この決断がLucid Lane創設に結びつくとは彼自身も気づいていなかった。この会社の使命は、痛みと不安に対処する薬を処方されている患者に、薬を絶って中毒を予防する方法を提供することにある。闘病中に服用していた処方薬を断つ際に苦労する妻を見てきたことから、この目標が生まれた。

それはアサー氏の妻に限ったことではない。米疾病予防管理センターのデータによれば、2018年に米国ではオピオイドの処方箋が1億6820万通も書かれている。Lucid Laneでは、手術後または癌治療に合わせて、毎年5000万人にオピオイドが、それ以外の1300万人にベンゾジアゼピンが処方されていると推測した。だが、これらの極めて中毒性が高い薬剤の管理や減薬のプランは示されない。

アサー氏の妻の場合、癌治療の一環として処方されたベンゾジアゼピンが問題となった。「妻はひどい離脱症状に見舞われたのですが、何が起きているのか私たちにはわかりませんでした」とアサー氏は話す。担当医に相談すると、医師は即座に断薬するか、薬を続けるかの2つの選択肢を示した。

「妻は断薬を決意しました」とアサー氏。「それは家族全員にとって大変な消耗戦でした」。

9カ月の治療と精神科医の定期的な診察により、投薬量と減薬の調整が行われたとアサー氏はいう。その体験がLusid Laneの創設につながった。

「私たちの目標は、薬物療法と依存症の予防と管理です」とアサー氏。

同社の遠隔医療ソリューションは、個別の治療プランの積極的なモニタリングを伴う、毎日の継続的なサポートと介入を提供する独自の治療プロトコルの上に成り立っている。すべてが継続的に行われるとアサー氏はいう。

しかも新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、遠隔医療サービスの需要は加速する一方だ。「新型コロナウイルスは、遠隔医療を自由に選べるサービスから絶対に必要なサービスに変えました」とアサー氏。「不安、抑うつ、物質使用障害、投薬乱用が急増しています。私たちに助けを求める患者も急増しています」。

アサー氏は、Lucid LaneのライバルはLyra Health(ライラ・ヘルス)やGinger(ジンジャー)などの企業、つまり不安や抑うつを察知するデジタル診断を構築するポイントソリューションだと考えている。しかし、依存症や常習行為の治療のために創設された一部の企業と異なり、アサー氏は自身のスタートアップを依存と中毒を予防するものと認識している。

「多くの人が、診察室で医師が行う1つの行為を通じて中毒に陥っています」とアサー氏。「私たちのソリューションでは、そうした薬物の処方箋は出しません」。

同社は、パロアルト退役軍人病院での臨床研究の準備を進めており、Battery Ventures(バッテリー・ベンチャーズ)やJerry Yang(ジェリー・ヤング)氏が創設した投資会社AME Cloud Ventures(AMEクラウドベンチャーズ)などを含む投資家たちによるシードラウンド400万ドル(約4億2700万円)を調達した。

「私たちは、現代社会が抱える最大の問題のひとつにスケーラブルなソリューションを開発したLucid Laneに、非常に大きな可能性を見いだしました」と、Battery VenturesのジェネラルパートナーDharmesh Thakker(ダーメッシュ・タッカー)氏は声明の中で述べている。「遠隔医療ソリューションは、複雑な問題に対処する高い能力を備えたものとして台頭してきましたが、Lucid Laneは最初から遠隔医療に取り組んできました。それは、いつでもどこでも患者が必要とする瞬間に医療が提供できるようデザインされています。これが、回復と再発とのバトルに大きな変化をもたらします。無数の人々をよりよい人生に導くことができると、私たちは確信しています」。

アサー氏のもとに集まった医療のプロからなる経験豊富なチームも、会社の発展と治療プロトコルの開発を支えている。サンタクララ・バレー医療センターの正式麻酔専門医であり(提携先の)スタンフォード大学薬学部麻酔学助教授でもあるAhmed Zaafran(アーメッド・ザーフラン)博士、米国防総省と退役軍人省の協力でオピオイド被害に対処する米保健福祉省対策本部の顧問を務めるVanila Singh(バニラ・シング)氏、テキサス大学MDアンダーソン癌センターで麻酔学、周術期薬学、疼痛医学の教授を務めるCarin Hagberg(キャリン・ハグバーグ)博士、テキサス医療委員会の会長、米保健福祉省の疼痛管理サービス小委員会対策本部や同省の疼痛クリニカルパス委員会など、疼痛管理のための数々の国内委員会で議長を務めるSherif Zaafran(シェリフ・サーフラン)氏などが名を連ねる。

「Lucid Laneは、手術後に化学療法を止めようと勇敢な決断をした患者に最良の臨床結果をもたらす、患者第一のソリューションを提供します」とシング博士は声明の中で述べている。「短期間のオピオイドやベンドジアゼピンの投薬を必要とする大勢の患者に対して、Lucid Laneの治療法はそれらの薬物への依存が長引くことを防ぎつつ、効果的な疼痛管理によって生活と体機能の質の向上をもたらします」。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

断片化された医療データの統合で患者の命を救え

医療制度が機能するかどうかは、患者に必要な一連の治療について適切な判断が下せるよう、医療従事者が適切なデータにアクセス可能かどうかにかかっている。

新型コロナウイルス感染症がまん延し、消費者の遠隔医療への適応が加速して多くの低コストプロバイダーによる治療が増えた結果、医療データは各所に断片化され、保存されている。そんななか、患者のカルテにアクセスして正確に健康状態を把握することがさらに重要になっている。

また開発者がデータにアクセス可能になると、新しいデータ統合サービスが生まれ、消費者は自分の健康をよりよく把握できるようになり、企業は健康を向上する新しいツールの開発機会を得る。

クリントン政権で可決された法律のおかげで、病院や緊急診療所(アージェントケア)などの医療制度では患者のカルテを何年も電子的に保管しているが、患者自身はそうした記録に容易にアクセスできない。これまでに制定されたいくつもの制度により、個人が自分の病歴にアクセスすることはほぼ不可能なのだ。

これこそが患者が最適な医療を受るまで大きな壁であり、今日までいくつもの企業が何度もそれを打ち砕こうとしては失敗し、がれきとなっていった。

だが、最近になってできた新しい規制により、電子カルテアプリの開発者は他のアプリケーションとの相互運用性を担保することが義務付けられ、他のアプリケーションからのデータアクセスを遮断することもできなくなった。こうした規制の変化により、新しいデジタルサービスの波が押し寄せる可能性がある。

少なくともニューヨークを拠点とするスタートアップのParticle Health(パーティクルヘルス)はそう望んでいる。このスタートアップは、元救命士でコンサルタントのTroy Bannister(トロイ・バニスター)氏と、PalantirやGoogleなどの企業で長年ソフトウェアエンジニアを務めていたDan Horbatt(ダン・ホーバット)氏によって設立された。

Particle Healthは、PlaidとStripeが金融サービス業界で行った改革を大いに参考にしたAPIベースのソリューションで問題に取り組んでいる。同社は、Menlo Ventures、Startup Health、Collaborative Fund、Story Ventures、Company Venturesといった企業からの出資や、Flatiron Health、Clover Health、Plaid、Petal、Hometeamなどからのエンジェル投資を受ける予定だ。

Isometric healthcare, diagnostics and online medical consultation app on smartphone. Digital health concept with a doctor standing on phone surrounded by assorted medical icons. Innovative technology

Image via Getty Images / OstapenkoOlena

「私がトロイに会って、彼らのビジネスについて説明を受けたときの最初のリアクションは、それは無理だろう、でした」とMenlo Venturesのパートナーで同社のライフサイエンス投資を先導するGreg Yap(グレッグ・ヤップ)氏は話す。「医療制度におけるデータ携帯性の簡易化にどれだけの困難があり、どれだけの税金が使われるのかは理解できましたが、この課題にはとんでもなく多くの障害があり、解決は極めて困難であるように思えたのです」。

ヤップ氏の会社、Menlo Venturesと同社への出資者を説得したものは、データの使用方法とアクセス方法を中心に、患者が選択できる形でデータの携帯性とプライバシーの両方を実現する可能性だったと話してくれた。

「サービスを実用的にするには携帯性を高くする必要がありますが、きちんと使用されるためにはプライバシーも確保しなければなりません」とヤップ氏。

医療データ統合サービスとして資金調達を達成したのは、同社だけではない。ウィスコンシン州マディソンに所在する、病院向けAPIサービスデベロッパーのRedox(レドックス)は、資金調達の終盤に3300万ドル(約35億円)を調達した。また別のAPIデベロッパーInnovaccer(イノベッカー)は、独自に投資者から1億ドル(約107億円)を調達している。

バニスター氏によると、これらの企業はそれぞれ医療産業におけるサイロ化したデータに関するさまざまな問題を解決している。「彼らの統合は病院での1対1の統合に重点を置いています」とバニスター氏。アプリケーション開発者はRedoxのサービスを使用して、特定の病院ネットワークからカルテにアクセスできるようになる仕組みだ。一方でParticle Healthのテクノロジーを使用すれば、開発者はネットワーク全体にアクセスできるようになる。

「彼らは病院と契約や同意を結んでいます。我々は食物連鎖のさらに上にいき、電子カルテについての契約を取るのです」とバニスター氏は話した。

Particle Healthが既存の医療制度の枠組みのなかでこれまでよりも自由にデータの取得と統合ができるようになった理由の1つは、2016年に成立した「21世紀の治療法(21st Century Cures Act)」だ。この法律により、CernerやEPICなどの電子カルテプロバイダーは患者データをサイロ化している障害物を取り除かなければならなくなった。もう1つは、2020年3月に成立したTEFCA(Trusted Exchange Framework and Common Agreement、個人の電子健康記録等を相互交換させる提言書)だ。

「成功を収めるために法改正を必要としている企業には通常賭けたくない」とヤップ氏はParticle Healthを取り巻く環境について語った。しかし、それでもデジタル医療の中核にある問題を解決する可能性のある企業に出資できるチャンスはこの上なく魅力的であった。

「とどのつまりは、消費者は自分のカルテにアクセスできるべきだということだ」と彼はいう。

電子カルテ

消費者がカルテにアクセスできるようになると、ウェアラブルデバイスが今以上に役立つ可能性がある。ウェアラブルデバイスと自分で収集した健康データ、そして医師が使用する臨床データをリンクさせ、診察や治療の判断を実際に行えるようになるだろう。今日市場に出回るほとんどのデバイスは、臨床的に認証されておらず、医療制度に本格的に統合されているわけではない。より良いデータにアクセスできるようになれば、両サイドに変化をもたらすことができるだろう。

「現在使用されているカルテの情報をデジタルヘルスアプリケーションに取り入れることができれば、これまでよりもはるかに効果的になるでしょう」とヤップ氏。「デジタルヘルスアプリケーションを使用して、医療制度で収集されたすべての情報にアクセスできるようになれば、患者にとっては非常に大きなメリットになり得ます」。

Particle Healthを企業価値4800万ドル(約51億円)相当と評価するこの投資により、同社はデジタル医療サービスの他の分野にもより積極的に取り組もうとしている。

「現在は遠隔医療に力を入れています」とバニスター氏。「我々は保険者の領域に移行しています。現状では、記録を必要としているサードパーティーにサービスを提供している状態です。患者は自分のデータの管理は望んでいるが、責務は望んでいないというのが我々の核となる考えです」。

同社の影響範囲は驚異的だ。Particle Healthは米国で作成された患者カルテのうちおよそ2億5000万件から3億件を取得できるとバニスター氏は見積もっている。「断片化の問題はほぼ解決しています。我々はほとんどの場所から情報を取得できるAPIを持ち合わせています」。

Particle Healthは現在までに、同社のAPIを使用する8社の遠隔医療およびバーチャルヘルスケア企業と契約を結んでおり、これまでに140万人の患者の記録を取得している。

「現在の仕組みでは、データへのアクセスを許可すると、そのデータは特定の使用目的のためにのみ使用されます。限定された1つの目的に対してのみ使用が可能です。たとえば、遠隔医療を受けたとします。医者が治療目的としてカルテを確認できるよう許可します。その後、それ以降の医者のアクセスを無効にできるような方法を弊社は構築したのです」。

またAPI開発業界におけるParticle Healthの同業者らも、データへのよりオープンでより優れたアクセスの力を認識している。「電子カルテには多額の資金と、多くの努力がつぎ込まれています」とInnovaccerのCDF(最高デジタル責任者)であるMike Sutten(マイク・サットン)氏は語った。

以前にKaiser PermanenteのCTO(最高技術責任者)を務めていたサットン氏は、医療テクノロジーをよく理解している。「これからの10年は、既存のデータすべてを活用しようという考え方の時代になるでしょう。医師たちへの恩返しとしてすべてのデータにアクセスできるようにし、かつ消費者や患者のことを配慮するべきなのです」

Innovaccerは医師や消費者のため、データを一元化する独自のツールを提供することを目指している。「データの抽出において摩擦が少なければ少ないほど、消費者や医師により多くのメリットを届けることができます」とサットン氏。

Particle Healthではすでに、APIによってアプリケーション開発者がツールを開発し、新型コロナウイルス感染症患者を管理できる方法や、同感染症流行による封鎖の現状を緩和する方法を見つける可能性について考えている。

「抗体検査やPCR検査を受けた場合は、そのデータにアクセスできるようにするべきで、またそのデータは多様に提供されるようにするべきです」とバニスター氏は語った。

「少なくとも患者の優先順位付けや認可を支援できるリスク指標要素はおそらく他にもあるはずです。この患者は隔離されたことがあるのかとか、この患者は過去数か月の間に通院した履歴はあるのかといったことが、一般的な検査における決定的な解決策と、検査能力に欠けている現実の隙間を埋めることができるのです」。

「我々はこうした公衆衛生への取り組みに力を注いでいます」とバニスター氏は言う。ソフトウェアが消費者健康産業に浸透しはじめれば間もなく、同社の技術や他の類似サービスが、国内最大級の企業による民間医療イニシアチブの裏で利用されることだろう。

関連記事:全医療データの統合を目指すサンフランシスコ拠点のスタートアップInnovaccer

Category:ヘルステック

Tags:Particle Health 医療データ 遠隔医療

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(翻訳:Dragonfly)

Boston Dynamicsの四足ロボが病院内を闊歩、新型コロナの遠隔医療で活躍

この2週間、Boston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)のロボットであるSpot(スポット)は、地元のBrigham and Women’s Hospital(ブリガム・アンド・ウィメンズ病院)の廊下を歩きまわっている。遠隔医療は会社の初期の主要製品リストには載っていなかったが、Boston Dynamicsは新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが生活のすべてを奪う存在になったことで方向転換した多くのテック企業に仲間入りした。

同社によると、3月初め以来同社のテクノロジーを遠隔医療に利用できないかという問い合わせが複数の病院から寄せられたという。

「Boston Dynamicsの下に届いた働きかけや、命を守る個人防護具(PPE)の世界的欠乏を踏まえ、当社はこの数週間に病院からの要望の理解を深め、当社のSpotロボットを使ったモバイルロボティック医療の開発に注力してきた」と同社は書いている。「その結果生まれたのが、緊急医療テントや駐車場などの特殊環境下で、パンデミックに対応する現場スタッフを支援する歩行型ロボットだった」。

iPadと双方向無線を搭載したSpotはモバイル遠隔会議システムとして利用されており、感染力の強いウイルスを拡散するリスクを負うことなく医師が患者を診察することができる。これは比較的簡単な仕事であり、多くのロボティック会社が積極的に取組んでいる分野だ。

多くの医療施設にとっては価格の壁があるものの、Spotの四足歩行は車輪システムがアクセスできない場所にロボットが訪れる可能性を開く。モジュール化されていることで、将来別の作業を遂行できる可能性を常に秘めている。Boston Dynamicsは、体温、呼吸数、脈拍、酸素飽和度などの生体信号を検知するシステムを搭載する検討を進めていると言っている。

将来は、ロボットに紫外線照射器を背負わせてモバイル消毒ステーションにすることもできるかもしれない。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

遠隔医療で動画・メッセに厚労省がゴーサイン、医療メッセンジャー「メディライン」が新機能

HealthTech(医療×テクノロジー)の中でも一際多くの関心を集める遠隔医療。この遠隔医療がいよいよ本格化していきそうだ。

医療用チャットサービス「メディライン」を提供するシェアメディカルは7月19日、同サービスで新たな遠隔医療機能を実装したと明かした。この機能は厚生労働省が7月14日付けで出した通達「情報通信機器を用いた診療について」(医政発0714第4号)に対応したものだ。

この通達は遠隔医療だけでも法に触れないケースを明確化することが目的。テレビ電話やSNSを活用した遠隔医療について触れている点は大変興味深く、遠隔医療を手がける企業には大きな影響を及ぼすはずだ。

遠隔医療については平成9年に厚労省から出された「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」において、基本的な考え方や医師法との関係から留意すべき事項が示されている。今回の通達は、情報通信機器の開発や普及の状況を踏まえ改めて遠隔医療の取り扱いについて記したものだ。

遠隔医療に取り組むスタートアップや、遠隔医療に関心があるTechCrunchの読者にとって特にインパクトが大きいのは「テレビ電話や、電子メール、ソーシャルネットワーキングサービス等の情報通信機器を組み合わせた遠隔診療についても、直接の対面診療に代替し得る程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合には、直ちに医師法第20条等に抵触するものではない」と明確化されたことだろう。

シェアメディカルではメディラインに備わっている「動画、音声、静止画の送受信、チャット機能」を組み合わせることで、同通達の遠隔診療要件を満たせると考えているという。またオンライン上でも医師と一対一の関係が築けるように、他の患者とは交流できない「患者さんアカウントモード」を新たに追加したことを明かした。

初回受診のハードルを大きく下げる効果も

遠隔医療が普及していくことで、どのようなインパクトがあるのか。離島やへき地に住んでいて直接通院することが困難な場合はもちろん、初回受診のハードルを下げるという面でも大きな可能性を秘めている。

シェアメディカルによると、たとえば肛門科や泌尿器科、婦人科などの診療科では治療内容が想像できず羞恥心や恐怖心が初診を受ける際の大きな障壁になっているという。「一度医者の話を聞いてみたい」と思っても、これまでは自費診療のカウンセリングでしか認められていないという状況だった。遠隔医療が普及することで、この障壁を取り除くことができるかもしれないということだ。

もちろん直接医者と会って話したいという患者もいるだろうし、基本的には対面受診を進めるのが最優先になるというが、1つの選択肢として遠隔から気軽に相談できる場が設けられることは大きなメリットだと言えるだろう。

またメディラインでは今後9月を目処に患者さんモードにカード決済機能や後払い機能を追加し、遠隔診療から気軽な有料医療相談などサロンのような使い方も可能にしていく予定だという。合わせて来年2018年の診療報酬の改定を前に、診療報酬以外の収益手段を提供し医院経営の多角化を提案していくことにもチャレンジしていく。

意外に思うかもしれないが、Google Glassが死んだことはない

Googleが(米国時間の)火曜日にGlassの新しいエンタープライズ版をリリースしたとき、幾つものヘッドラインたちがGlassが戻ってきたと報じた。だがそれが立ち去ったことは実際には1度もない。確かに2015年1月には消費者向けのExplorerプログラムは終了したが、Googleはその後も引き続きGlassを企業に販売して来た。

その意味で、昨日リリースされたものは「復活」ではなくて、同社が全力で進めてきたGlassのエンタープライズ戦略の「継続」だ。昨日の発表はそれをただ公式にしただけのものに過ぎない。

GoogleがExplorerプログラムを終了した直後の2015年には、複数の企業がGlassを使った作業を継続して行くと語り、Google Glassは企業の中で健在で、使われ続けていることが示されていた。当時APX Labs(現在はUpskillという名前で知られている)のCTOだったJay KimはTechCrunchに対して、「グーグルは引き続き、Glassをパートナーに大量に売っていますよ」と語った。

昨年、企業における「顔の上のコンピュータ」に関する特集記事で、私は現場でGlassを使用しているGEとボーイングの人びとに話を聞いた。ボーイング社はこれを使用して、従業員が複雑なワイヤーハーネスを組み立てる作業を支援していた。Glassを使用すれば、在庫からワイヤを引き出しながら部品番号をスキャンすることが可能で、次の手順を確認することができる。さらに、音声コマンドを使用して検索を行うこともできる。この方法は、技術者が手を自由にして作業を行うことができ、情報が目の前に現れるために、ラップトップやタブレットを使用するよりもはるかに効率的なものだ。

2016年1月にGEヘルスケアのウェブサイトでは、GEはGlassの利用も含む以下のような先進技術に触れている

緊急治療室(ER)に向かう救急医療技術者たちは、Google Glassを使用して病院の医師とリアルタイムのビデオや音声でコミュニケーションを行い、患者の最新状態を提供し続け、患者の到着を待ち構える救急チームが、正しい準備を整えることができるようにする。

今年5月、 IEEE Spectrumは、ER内でGlassを利用した同様のシナリオに関する記事を掲載した

遂にマサチューセッツ大学医学部の医師チームは、同デバイス向けのキラーアプリを発見したようだ。緊急医療コンサルテーション用途である。Glassは、離れた地にいる専門家たちが確実かつ正確に、患者の観察および診断をリアルタイムに行なうことを可能にする。災害シナリオでは、第一対応者によるトリアージ(被災者をその重症度に応じて分類し治療の優先度を決めること)を助けることも可能だろう。

今回のエンタープライズアップデートでは、これまで初期のGlassデザインを利用していた企業に大きくアピールすると思われる、興味深いいくつかの変更が加えられていることは注目に値する。主な変更の1つに、Glassモジュール(Glassの本体)をフレームから切り離したことが挙げられる。これによりサードパーティパートナーがモジュールを、安全メガネなどの任意のフレームに装着できるようになった。

また新しいバージョンでは、簡単な入力のために、ユーザーがGlassをバーコードスキャナやキーボードなどの他のデバイスに接続することも可能だ。その他の変更としては、バッテリー寿命の延長、8メガピクセルのカメラ、より高速なプロセッサー、そして軽快に動作するWi-Fiなどがある。

現時点では、GoogleはGlassの主要対象業種として製造、物流、フィールドサービス、ヘルスケアを狙っているが、サードパーティのパートナーたちが他の分野での応用を目指す可能性がある。

昨日の発表で、Explorerのプログラムが終了したときにGlassはお蔵入りしたと思っていた人たちは驚いたかもしれないが、実際には大企業とサードパーティのパートナーたちは引き続き作業を続けていた。Enterprise Editionはそれをよりはっきりと世界に訴えたものであり、初期のハードウェアに対する必要なアップデートを提供するものだ。

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(翻訳:Sako)

モバイル化が進むアフリカの医療業界―、遠隔医療相談サービスのKangpe

アフリカの医療業界と聞くと、国境なき医師団から派遣された医師が、人里離れた村で治療にあたっている様子を思い浮かべる人もいるかもしれないが、実際には、モバイルテクノロジーがアフリカ大陸全体の医療業界を急激に変化させている。Y Combinatorのプログラムに参加しているKangpe Healthは、モバイルデバイスを通じて医師と遠隔で連絡がとれるプラットフォームを開発し、変革が続くアフリカ市場に挑もうとしている。

ユーザーは、ベーシックな携帯電話やスマートフォン上のアプリを通じてKangpeのプラットフォームにアクセスし、健康に関する質問を送付することができる。簡単なものであれば、Kangpeの医療スタッフが10分以内に少額で質問に答え、もっと専門的なアドバイスが必要と判断された場合は、彼らがユーザーを専門医に紹介するようになっている。

もともとナイジェリアで医師として働いていたFemi Kutiは、Kangpeのアイディアを思いつき、友人のOpe OlumekenとMatthew Mayakiを誘って昨年同社を設立した。自分が担当した患者や友人から、常に何かしらの症状に関する質問のメッセージを受け取っていたKutiは、彼が無料で提供していたアドバイスを事業に転換できるのではと考えたのだ。

現在Kangpeはガーナとケニアでも営業しており、カバー地域の合計人口は2億4500万人に及ぶ。さらにKutiによれば、これまでのところ同社のプラットフォームには、6万人のユーザーが登録している。

もちろんKangpe以外にも、遠隔医療相談の事業を運営している企業は存在する。アメリカでは、Kangpeのように医師と遠隔でコンタクトできるプラットフォームのDoctor on Demandや、メッセージベースで医療関連の質問に答えるFrist Opinionといったサービスがある。さらにケニアのMedAfricaやウガンダのMatibabu、さらには現在アフリカの10カ国で営業しているHello Doctorなども、Kangpeと同じパイを狙っている。

一方で、新しいテクノロジーが急速に普及し、経済的に大きく成長している国々が存在するアフリカでは、まだまだ潜在的な顧客を獲得するチャンスは残されている。

さらにKutiは、アメリカの類似サービスをそのままアフリカに転用することはできないと指摘し、「Googleはアフリカ固有の病気について知りませんからね」と話す。

Kangpeは既に社会的にも注目されており、同社のプラットフォームはFacebookとのパートナシップを通じて、ナイジェリア向けFree Basicsプログラムではトップのサービスとして紹介されている。以下のFacebookが作ったビデオでは、Free Basics内でKangpeのサービスが宣伝されている様子を見ることができる。

しかし将来的には、”アフリカのOscar Health”を目指し、初期診断や医療保険、さらにはもっと専門的な医療サービスを提供できるようなプラットフォームへとKangpeを成長させていきたいとKutiは語る。

「私たちは、アフリカの人たちが納得できる価格で医療サービスを提供するため、日々努力を重ねています」と彼は付け加える。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

HealthTapの人工知能ドクターがAlexaをサポート―手が不自由なユーザーに朗報

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Amazon Alaxaからは音声でピザが注文できる。玄関のドアのカギをかけたり外したりできる。これに加えて今日(米国時間2/20)からAlexaのユーザーは(そう望むなら)ヘルスケアのスタートアップ、 HealthTapのオンライン・ドクターから助言を受けることができるようになった。

HealthTapは同社の人工知能を利用した健康アシスタントがAlexaをサポートを発表したと発表した。ユーザーは“Alexa, talk to Dr. AI.”という音声コマンドでHealthTapのAIドクターを呼び出せる。その後Amazonのスマート・スピーカーは医師の診察をシミュレーションした(あくまで補助であって代替するものではないという)フォーマットに従ってユーザーの健康上の問題を聞き取り、助言を与える。

HealthTapによればこのこのAIドクターは「態度が知的であり安心感を与える。ユーザーの質問をダイナミックに処理して自然言語による回答を生成するインターフェイスを備えている」という。さらに緊急性、必要性が高い場合、現実の医師の診察を予約することもできる。

このシステムのターゲットは移動が困難な高齢者、障害者を想定している。Dr. AIはこれまでiPhoneとAndroidアプリから利用可能だったが、Alexaのサポートが追加されたことで、さらにユーザーフレンドリーになった。HealthTapでは特に手の動きが不自由なユーザーにとって利便性が増したとしている。

〔日本版〕HealthTapなどオンライン・ヘルスケアに関してはTechCrunch JapanでもRemedyはKhosla Venturesが支援するAI利用の低料金遠隔医療サービスなどで紹介している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

バーチャルナースが退院後の患者の病状を確認―、Sense.lyが800万ドルを調達

Doctor holding heart in hands, medical concept

サンフランシスコ発のスタートアップSense.lyが、この度シリーズBで800万ドルを調達した。同社は、さまざまな病状に悩む患者や病院のためのプロダクトとして、バーチャルナースを開発している。このプロダクトを利用することで、内科医は退院した患者とも連絡を取り続けることができ、再入院の可能性を低減させることができる。CEO兼ファウンダーのAdam Odesskyは、同社のプラットフォームを「人の健康状態に関する重要なサインを読み取ることができる、WhatsappとSiriの掛け合わせ」のようなものだと説明する。

まず患者サイドから見てみると、ユーザーはSense.lyのナースアバターが行う5分間の「チェックイン」を通して、毎日もしくは2、3日に1回、自分の健康状態をスマートフォンに記録するようになっている。ナースの質問には声で答えるだけでよく、文字を打つ必要はない。また、ユーザーが入力した情報は、医療機関の担当者のみが見られるカルテに記録される。レポートにはそれ以外にも、ユーザーが日常的に利用しているさまざまな医療機器やウェアラブルデバイス、その他のインターネットに接続された機器からSense.lyが引っ張ってきた情報も含まれている。

さらにSense.lyには、MindMeldBeyond VerbalAffectivaなどと似たAIが搭載されており、患者の症状や行動だけでなく、彼らの気持ちも感知できるようになっている。つまり、アプリはユーザーの話を親身になって聞けるようにできているのだ。この点についてOdesskyは、肥満や心臓病などについて真剣に心配している人に対して、冷たいロボットっぽい声やビジネスっぽい反応を返したいと思う人はいないと話す。感情を分析することで、Sense.lyは患者が精神的なケアを必要としていると思われるときや、処方薬や生活の変化から、気分が落ち込んだり不安を感じたりしているときに、医療機関にその状況を知らせることができる。

"Molly" is a virtual nurse app made by Sense.ly.

Sense.lyが開発したバーチャルナースアプリ「Molly」

Sense.lyでは、さまざまな疾患や年齢層に対応できるように、慢性病の診断や治療に広く利用されている医療手続きを参考に、コアコードやルールベースのエンジン、アルゴリズムが組まれている。さらに同社は、主にパートナーシップを結んでいる病院やクリニックから入手した、新しい手続きなどの情報を常にプラットフォームに追加し、アプリが対応できる疾患や人の範囲を広げようとしている。

これまでにSense.lyは、60歳以上のユーザーをターゲットとして、肺気腫や心不全、肥満といった年齢と関係の深い疾患に悩む患者に向けてサービスを提供してきた。一方でSense.lyは拡大を続け、今ではイギリスのNational Health Serviceや、アメリカにある大手病院やクリニックにもプロダクトを提供している。同社の他にも、HealthLoop、Your.md、Babylon Healthなどの競合企業が、AIメディカルアシスタントを開発している。

Chengwei Capitalがリードインベスターとなった今回のラウンドには、Mayo ClinicやBioved Ventures、Fenox Venture CapitalStanford StartXのファンドが参加していた。Chengwei Capitalでマネージング・ディレクターを務めるRichard GuはTechCrunchに対し、Chengwei Capitalは「中国戦略」がとれるようなスタートアップにだけ投資していると語った。つまり、投資先企業のプロダクトが巨大な中国市場でも通用するかや、中国でも再現できるかといった点をもとに彼らは投資判断をしているのだ。

「Sense.lyの中国でのビジネス拡大に向けて、キーパーソンと彼らを引き合わせることができるでしょう。ただ、今回の調達資金はコアとなる研究開発に充ててほしいと考えています」とGuは話す。さらに彼は、Sense.lyのテクノロジーによって、人はより健康に長く生きることができるばかりか、今よりも病院ではなく家にいる期間を伸ばすことができる可能性があると話す。またOdesskyは、アメリカ以外にも医療従事者数の減少で困っている国があることを考えると、Sense.lyによって高品質の医療をもっと安く、たくさんの人に届けられるかもしれないと言う。

一方でバーチャルナースは、人間の仕事を「奪って」しまうのだろうか?Odesskyは、その可能性を否定し「現在Mollyの仕事をしている人はいません。これだけの数の患者に電話をかけて、データを分析するというのは人間にはできないことです。Sense.lyはむしろ、医療従事者が効率的に業務を行うサポートをしており、彼らの生活を脅かすようなものではりません」と語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

RemedyはKhosla Venturesが支援するAI利用の低料金遠隔医療サービス

2017-01-11-remedy-team

現在アメリカではDoctor on Demand、HealthTap、MDLive、American Wellなど多数のオンライン診療サービスが利用可能だ。しかしスタートアップのRemedyはユニークな遠隔診断サービスで、 AIを利用して疾病の原因を低コストで突き止めるが可能だという。

多くの遠隔医療(telemedicine)はやや漠然とした用語だが「AI採用を採用」したとしている。HealthTapは最近Dr. AIという医療に特化したスマート検索アルゴリズムを発表した。 Remedyもこの範疇に入るだろう。ただしこうした「AI採用サービス」のうちどれくらいが本当の意味で人工知能を利用しているかを判断するのは難しい。しかしユーザーが訴える症状に基づいて大量の医療情報を検索し原因を突き止める役に立つスマート・アルゴリズムをAIと呼ぶなら、RemedyはAIを採用しているといっていい。

RemedyにはKhosla Ventures、Greylock Discovery、Alsop Louie Partnersに加えてGoogleのBrain AIチームの責任者Jeff Deanが投資しており、健康保険への加入の有無を問わず1回30ドルでAIを利用した専門医による診断を受け、処方箋を発行してもらうことができる。

Remedyはある意味でIBMのDr. Watsonに似ている。IBMの医療AIは長年医師を悩ませていたきわめて珍しいタイプの白血病を正しく診断することができた。

ただしRemedyは比較的新しいサービスで、ベータテストを終了したばかりだ。今のところ、医師が診断を下せなかった症例の診断には成功していないが、このサービスの大きな目的は、健康保険に加入していなくても低料金で診断を受けられるようにするところにある。

また他の遠隔医療サービスとは異なり、Remedyはその時点で対応可能なランダムな医師ではなく、特定の医師を「かかりつけ」として患者とペアにすることができる。

Remedyのユーザーは医師を選び、症状を入力した後、自分のビデオを撮影して医師に送る。Remedyはこれによって患者の実在を確認できる。医師はこうしたデータにもとづいて訴えがあった症状の原因を診断する。

ファウンダーのWilliam Jackは自身がてんかんの治療で当初誤った診断を受けたことがきっかけでこのサービスをの開発を思い立ったという。

TechCrunchの取材に対してJackは自分の体験を詳しく説明した。「最初にこの発作が起きたとき、病院に行って自分が体験したことを説明した。しかし、偏頭痛という全く誤った診断をされてしまった。私はそこで2つの重要な教訓を学んだ。医師は患者に何が起きたのか正確な情報を得られるよう十分な時間をかけない。第2に、医師がスマート・システムにアクセスできるなら、つまり患者の訴えをそのつど正確に記録し、関連する症状を検索できるなら、確実な証拠に基づいた診断が可能になるはずだということだ。そうしたシステムが利用できるなら、医師はもっと精度の高い診断を下せるようになる」。

医師がこうした検索システムを利用できたなら、自分は長年にわたって原因不明の発作に苦しめられずにすんだかもしれないと考えている。

Remedyのユーザーは10分間のオンデマンド・ビデオによる遠隔診療だけでなく、「かかりつけ」の医師に随時、電話で症状を報告することができる。

遠隔診療ではOne Medicalも同様のオプションを備えている。患者は専用アプリまたはブラウザを通じてオンラインの医療ポータルにログインし、担当の医師にメッセージで症状を報告することができる。さらに患者はメッセージ・システムを用いて医師の援助を受けることができ、必要があれば現実の病院で受診することができる。JackはRemedyも将来はこうした現実の病院での医療にサービスを拡張したいと考えている。

この部分、つまり現実の病院での診療は現在の遠隔医療の大部分が欠いている機能だ。American Medical Association〔米国医師〕によれば、現在の受診の70%はテキスト・メッセージないし通話によって処理可能だという。しかし患者が現実に病院を訪れる必要がある場合も30%ある。

Jackは将来Remedyのサービスが現実の病院における医療にまで拡張された場合、One Medicalその他と直接競合することになる可能性を認めた。

しかしRemedyはスタートしたばかりだ。開発チームも参加医師も小人数だが、Jackによると、医師の一人はNFLのプロフットボール選手を診察しているということだ。いずれにせよJackはAIを利用したスマート検索シテムにより小数の医師で多数の患者を診療できるようになり、運営コストを大幅に下げることができると期待している。Remedytが実際にどれほどの効果をもたらすのか今後の成果が注目される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

十分な治療を受けられていない精神病患者に対してテクノロジーができること

Close-up of people communicating while sitting in circle and gesturing

【編集部注】執筆者のAdam Seabrookは、B Capital Groupの投資家。

あなたの周りの誰かも、たった今精神疾患で苦しんでいる。気づいていないかもしれないが、これは事実だ。

実際に成人の5人に1人が精神を患っている。

社会的な慣習によって、私たちは精神疾患は恥ずかしいものと認識していることから、精神を病んでいる人のほとんどはその事実を隠し、治療を受けることなく過ごしてしまっている。さらに、精神病患者は危険で何もできず、回復の見込みもほとんどないと思われてしまっていることが多い。

私は社会全体が段々と精神疾患を受け入れていると主張したいが、その逆を示す例がポップカルチャーには散見する。最新曲「Two Birds, One Stone」の中でDrakeは、仲間のラッパーであるKid Cudiが憂鬱感や自殺願望から苦しんでいることを認めた上で治療を受けようとする姿を批判している。Tony Soprano(HBOのTVシリーズの主人公)でさえ、人々の尊敬を集める迫力あるキャラクターとは裏腹に、家族や友人から精神科のアポイントメントを隠さなければならなかった。その他にもたくさんの例があるが、恐らくもう現状はおわかりだろう。

社会が作り上げた悪いイメージに加え、これまでに築かれてきた医療制度の下では、コストや人員の制約を理由に治療を受けられていない精神病患者がいる上、ガンや心臓病といった代表的な疾患の治療が優先されてしまっている。今こそ、鬱や不安神経症、双極性障害、統合失調症といった精神疾患は、身体疾患と同じくらい深刻で、患者を衰弱させる病気なのだと認識し、患者のもとへ治療が行き渡っていない状況を変えていかなければならない。

精神病患者の50%が選択肢もなく置き去りにされている

精神疾患の現状を俯瞰するため、まずアメリカに住む成人の18.5%が何らかの精神疾患を持っていると認識してほしい。これは心臓病(11.5%)とガン(8.5%)という、アメリカ人の死因のトップ2を占める病気の患者数を足し合わせたものと同じくらいの数だ。もしも心臓病やガンの患者に何の治療法も準備されていないとしたら、どのくらい社会が混乱するだろうか。そんな状況に精神病患者は直面しているのだ。彼らの半分以上が治療どころか診断さえ受けておらず、その経済的な損失は約2000億ドルに達すると考えれれているほか、もっと重要なこととして、毎年3万7000人が自らの命を断っている。また、実際に精神疾患の治療法をみつけることができた残り半分の患者に対しても、年間2000億ドルが投じられている。問題の規模は極めて大きく、これまでの取り組みは全てにおいて失敗してきた。

  • 治療を求める人が非難されてしまう
  • 全ての疾患を効率的に診断できるようなツールがない
  • 医療従事者は全精神病患者の需要の半分以下しか満たせていない
  • 多くの人が治療を断念するほど高額な費用がかかる

治療受けられない人がいるという事実に関して最も悩ましいのは、精神疾患に対する治療には効果があるということだ。治療を受けた人の最大90%が、症状の軽減を感じている。治療に効果があるとすれば、それを患者のもとへうまく届けることが重要になってくる。医療系テック企業がソリューションをみつけるために、業界を引っ張っていくときが来たと私たちB Capitalは信じている。

今こそイノベーションと状況の改善が求められている

これまでの精神疾患に関する失敗が報われるかのように、この分野では今ディスラプションが起きようとしている。アメリカの市場規模も大きいが、他国でも状況は似通っており、全世界の精神疾患に苦しみ治療を受けられていない人の割合はアメリカの数字と近いものがある。つまり何億人もの人が治療や昔ながらの処置(対面でのセラピー)を受けられないでいるのだ。また、旧来の手段では実現性・効率性の観点から、患者全員の需要を満たせるほどスケールすることは不可能なため、その代わりとなる手段が必要とされている。

精神疾患は身体疾患と同じくらい深刻で、患者を衰弱させる病気なのだと認識しなければならない。

そして、テクノロジーがそのソリューションの重要な要素になり、実現に必要なテクノロジーの多くは既に存在すると私たちは考えている。遠隔医療は治療を受けづらい地域に住む人へ従来の治療法を提供する上で有効なツールだ。デジタルセラピーは、従来の方法よりも安く良い結果を得られるという評判に反し、長らく成果をあげることができていなかったが、最近は自主学習用のテキストや宿題、オンラインセラピストによる質疑応答やガイダンスから構成され、インターネットを介して提供される認知行動療法(iCBT)のような処置が、社会不安障害や鬱、PTSDなど幅広い疾患の治療に役立つとわかっている。

新たな分析ツールを使って山のようなデータを解析することで、これまで医師も気づかなかった兆候や症状を見つけることにも成功している。デジタル医療は、患者の診断や治療の方法を大きく変える力を持っており、コストも大幅に軽減できる。私たち以外にも、デジタル医療の可能性に気付いた投資家は存在し、過去18ヶ月には同分野への投資が相次いでいる。

会社名 最新ラウンド クローズ日 調達額
Talkspace シリーズB 2016年6月 1500万ドル
Quartet シリーズB 2016年4月 4000万ドル
Lantern シリーズA 2016年2月 1700万ドル
Ieso Digital Health シリーズA 2015年12月 400万ドル
Joyable シリーズA 2015年11月 800万ドル
Lyra Health シリーズA 2015年10月 3500万ドル
AbleTo シリーズC 2015年6月 1200万ドル

11月8日の大統領選以前は、規制面でもデジタル医療に対して明らかな追い風が吹いていた。例えば医療保険制度改革(ACA)には、精神疾患の治療が健康保険の必須項目として含まれていた。次期大統領のトランプは、大統領としての最初の仕事はオバマケアの撤回だと当初は強固な姿勢を示していたが、その後彼のスタンスは軟化し、ACAの一部は変更無く続けるとまで話していた(詳細はGavin Teoの最近の記事を参照してほしい)。規制環境に関わらず、私たちは低コストの治療によって既存の医療ネットワークが広がることで、大きな結果が生まれると考えている。

高品質な治療へのアクセスが鍵

精神疾患市場の仕組みは複雑でソリューションを求める人の数も多い。医療従事者は、従来の治療環境にいるかいないかに関わらず、より良い診断ツールを必要としている。保険会社には、対面でのセラピーと同じ効果を持っていると臨床によって実証されたプロダクトが欠かせない。大衆には、精神治療を求める人に対する悪いイメージを払拭もしくは回避できるような方法が必要だ。そして治療費は大幅に削減されなければいけない。一方で市場は需要で溢れかえっており、イノベーションが必要な環境は整っている。それではこの市場で成功をおさめるには何が必要なのだろうか?一言で言えば、高品質な治療を受けやすい環境をつくることだ。

いいニュースとして、既に精神医療の状況が改善しているという明らかな兆候が見られている。Northwestern Universityの研究者たちは、鬱の兆候を読み取るために、ユーザーの動きや携帯電話の使用状況をトラックするPurple Robotというアプリの開発に成功した。SilverCloud Healthは、従来の対面でのセラピーと同じくらいの治療効果とエンゲージメントレートを達成している。Ieso Digital Healthは、患者がリアルタイムでセラピストと半匿名でメッセージをやりとりできる仕組みをつくり、悪いイメージの払拭に取り組んでいる。JoyableやLantern、SilverCloudはオンラインのツールやコンテンツを使った一対多数の治療モデルを確立し、既存の精神医療従事者のキャパシティを拡大すると共に医療費の削減に貢献している。

このような動きが増えれば、精神医療の品質が向上し、新しいサービスを利用する患者、医療機関、消費者の数が増えていくうちに、治療を受けていない精神病患者の数も大幅に減っていくことが期待できる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter