書く瞑想アプリ「muute」がAppStoreのヘルスケア/フィットネス領域で1位獲得、新機能も発表

muuteがアップル「AppStore」ヘルスケア/フィットネス領域ランキングで1位獲得、新機能も発表

ミッドナイトブレックファストは1月29日、ユーザーの思考と感情の記録をAIが分析しフィードバックを行う国内初のAIジャーナリングアプリ 「muute」(ミュート。iOS版)が3つの新機能を2⽉中にリリース予定と発表した。また、リリース後約1ヵ月(1⽉7⽇時点)でAppStore ランキングのヘルスケア/フィットネス領域で1位を獲得したと明らかにした。

muuteがアップル「AppStore」ヘルスケア/フィットネス領域ランキングで1位獲得、新機能も発表

muuteは、感じたことや思ったことを日記のように自由に書き出し、自分の感情と思考を振り返ることで新しい自分を発見するための「ジャーナリングアプリ」。

この「ジャーナリング」とは、欧米で人気のメンタル・セルフケア/マインドフルネスの手法のひとつ。頭に思い浮かんだことをありのままに書くことから「書く瞑想」ともいわれる。

またmuuteの場合、AIによる分析のもと日々のちょっとした気づきや発見を得られる「インスピレーション」、友人からの手紙のような分析レポート「インサイト」などの形で、ユーザーに対してフィードバックを行う。

これにより、ジャーナリング本来の効果「気分や感情の改善」「心身の健康状態の向上」などに加え、過去を視覚的かつ楽しく振り返ることができ、ユーザーは今まで気づかなかった自己の感情の揺れ動きや思考パターン、価値観や願望などを発見でき、新しい自分を見つけることにつなげられるとしている。

10代〜30代の女性を中心に、幅広く広がりをみせる

ミッドナイトブレックファストによると、muuteのローンチ後、同社の予想を上回る形でSNSやnoteなどで反響があったという。10代〜30代の女性を中心に、性別問わず幅広い年齢層に利用されているそうだ。

ユーザーの声としては、「⾃分の頭と⼼の中を可視化して、客観的に整理できるのが便利」「デザインが素敵で可愛いから続けられる」「インサイトが優しくて癒される」などがあったとしている。

同社は、「muuteの正式リリースからまだ約2ヵ月で至らないところも多くあるかもしれませんが、これからもユーザーの皆さんの声に耳を傾けながらより良いアプリにしていきたいと思っています。今後は引き続き、既存機能の改善とmuuteをより楽しくお使いいただける新機能の開発を計画しています。Android版のリリースも予定しています」とコメントした。

現在開発中のAndroid版については、muute公式サイトのWaitlist(ウェイトリスト)にメールアドレスを登録した方には、いち早くリリースをお知らせするとしている。

3つの新機能は、「AI による感情予測機能」「カラーテーマ選択機能」「プライバシーロック機能」

3つの新機能について同社は、継続的にユーザーの方々と対話しながら、既存機能の改善と新機能の開発を行っており、特にニーズが強く、muuteの目指している方向性にも合致した機能を採用したという。

AIによる感情予測機能

AIによる感情予測は、ジャーナル投稿の内容をAIが分析し、感情アイコンを⾃動予測・選択することで、よりスムーズなジャーナリング体験を実現するという機能。

同社によると、感情とその理由を選択してからテキストを記入する既存のフリー・ジャーナリングの方法に加えて、その時に考えていることや感じていることをすぐに書き出したいというニーズが一定数あることが分かったことから、採用したという。

また、テキストを先行入力できるだけでなく、その入力内容をmuuteのAIが瞬時に分析し、感情アイコンを予測・選択する機能で、muuteのAIをより身近に感じられるようにするそうだ。

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カラーテーマ選択機能

カラーテーマ選択機能では、新色として「Green」「Orange」の2⾊を追加。ダークモードの切り替え機能も採用し、カスタマイズ性や就寝前の1⽇の振り返りのしやすさを向上させる。

同社は、「『自分らしさ』を受け入れられる社会をつくる」をmuuteのミッションとして掲げており、アプリデザインの側面からもその実現に貢献したいと考えているそうだ。

その第1歩としてカラーテーマの選択肢を増やし、自分好みの色や今の気分に合わせて、muuteを利用できるようにする。

また、夜就寝前に1日の振り返りとしてmuuteでジャーナリングされるユーザーが多いことも分かり、暗い中でも目に負担をかけずに使用できるようにダークモードも合わせて採用する。

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プライバシーロック機能

プライバシーロックでは、アプリをパスコードや⽣体認証でロックする機能を追加し、プライバシー保護関連を強化。4桁のパスコードでロック設定、Touch IDやFace IDなどの⽣体認証をサポートする。

「自分だけの静かで優しいデジタル空間」として、パーソナルなことでもより安心して書き留められるよう、プライバシーを強化するロック機能を用意する。

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タグ:ジャーナリングミッドナイトブレックファストmuute瞑想メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

AIが思考と感情を分析しメンタルケア手法「ジャーナリング」を支援する「muute」アプリが公開

AIが思考と感情を分析しメンタルケア手法「ジャーナリング」を支援する「muute」アプリが公開

ミッドナイトブレックファストは12月9日、ユーザーの思考と感情の記録をAIが分析しフィードバックを行う国内初のAIジャーナリングアプリ 「muute」(ミュート。iOS版)の提供開始を発表した。Androidも対応予定。

今後同社は、外部のメンタルヘルスの専門家と協業しガイド・ジャーナリングやフィードバック機能の充実化を行う予定。さらに、muuteのAI技術の核となる感情分析アルゴリズムの継続的な改善を行い、ユーザーごとにより最適化されたフィードバックを提供するプロダクト開発を進めていく。

また、音楽ストリーミングサービスなどの外部サービスと連携機能の実装も予定。今後muuteは、ジャーナリングとAI技術を組み合わせることで統合的な感情のプラットフォームとなることを目指す。

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「ジャーナリング」とは、欧米で人気のメンタル・セルフケア/マインドフルネスの手法のひとつ。頭に思い浮かんだことをありのままに書くことから「書く瞑想」ともいわれているという。

自分の思考や日々の行いを振り返ることは、心身の健康と自己肯定感の向上に効果があるとされ、昨今の新型コロナ禍での新しい生活様式においても、ストレスを和らげる手法として注目が高まっているそうだ。

ミッドナイトブレックファストのmuuteは、感じたことや思ったことを日記のように自由に書き出し、自分の感情と思考を振り返ることで新しい自分を発見するための「ジャーナリングアプリ」。

ユーザーの入力情報などをmuuteのAIが分析し、日々のちょっとした気づきや発見を得られる「インスピレーション」、友人からの手紙のような分析レポート「インサイト」などの形でフィードバックを行う。

AIが思考と感情を分析しメンタルケア手法「ジャーナリング」を支援する「muute」アプリが公開

これらAIからのフィードバックにより、ジャーナリング本来の効果「気分や感情の改善」「心身の健康状態の向上」などに加え、過去を視覚的かつ楽しく振り返ることができ、ユーザーは今まで気づかなかった自己の感情の揺れ動きや思考パターン、価値観や願望などを発見でき、新しい自分を見つけることにつながるという。

このフィードバックについては、感情アイコン・理由アイコン、ユーザーによる文章・投稿内容および投稿時の位置・時間、天気などの情報をAIが自動分析し、ひとりひとりにパーソナライズして提供。その中でも、要約文章を自動生成してユーザーごとにフィードバックする技術は国内で初めてのものとしている。

なおユーザーによる文章・投稿データは、ヒトではなくAI/機械が分析していて、ユーザーに対してより良いフィードバックを返すためだけに使用している(データ販売や広告などはまったく考えていない)。

また実際に、muuteを使用したユーザーの81%が「新しい自分を発見した」「自分の知らなかった自分に出会えた」と回答。コロナ禍における新しいメンタル・セルフケア手法として、また若者をはじめとしたSNS疲れの解決策として期待されているとした。

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カテゴリー:ヘルステック
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新型コロナウイルス(用語)ミッドナイトブレックファストmuute瞑想日本(国・地域)

コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始

コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始

睡眠・瞑想・リラクゼーションなど行えるヘルス・ウェルネス領域アプリ「Calm」(カーム。Android版iOS版)は12月9日、日本人ユーザー向け日本語オリジナルコンテンツの提供開始と、日本市場への本格参入を発表した。

Calmは、「To make the world happier and healthier」(世界をより健康に、より幸せにすること)をミッションとして掲げ、睡眠・瞑想・リラクゼーションをお手伝いするというアプリ。今回のプロダクトローンチを受けて、Calmのコンテンツは190ヵ国、7ヵ国語で視聴可能となった。人々のストレス、不安感、不眠症などメンタルヘルスの世界的問題の解決に力を入れるとともに、日本におけるメンタルフィットネス文化確立を目指すとしている。

Calmでは、すべてのコンテンツを楽しめる「Premium Calm」(年間6500円)を用意。無料で利用可能なコンテンツも公開している。

毎回内容・テーマを変えて、毎日追加するCalmオリジナルの10分間瞑想「Daily Calm」、良質な睡眠を手に入れるための大人向けの読み聞かせ「スリープストーリー」を楽しめる。スリープストーリーでは、ローンチとともに10話の日本語版オリジナルコンテンツを視聴でき、毎週新しいストーリーが加わるという。

なお、英語版Calmに切り替えると、ハリー・スタイルズ(歌手)、ケイト・ウィンスレット(女優)、マシュー・マコノヒー(俳優)のスリープストーリーも視聴できる。

コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始

また、9つのテーマ(睡眠、不安感、ストレス、感謝、幸福感、セルフエスティーム、集中力、その他)に沿って行われる瞑想コンテンツ「ガイド付き瞑想」も公開。ガイド付きで進むため初心者の方でも簡単に実践できる。「Calm Music」(カーム ミュージック)ライブラリーでは、リラクゼーション、睡眠、集中力を促進する音楽として、ディズニー、Sam Smith、Diplo、Kygoなどが手がけた楽曲を楽しめる。

コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始

メンタルフィットネスをサポートする「ツールキット」では、「進行状況トラッカー」「ムードチェック」「BGMと風景」「呼吸エクササイズ」を利用可能。

コロナ禍で急成長の瞑想アプリ「Calm」が日本上陸、日本語オリジナルコンテンツも提供開始

  • 進行状況トラッカー:プロフィールページで参加したセッションやマインドフルネスの練習に使った合計時間を確認できる。デイリーセッションに参加した長さも表示でき、習慣形成の手助けになる
  • ムードチェック:その時々の感情を表現するボタンを選ぶことで感情のリズムを日常的に把握し、自分のマインドやメンタル面をケアできる機能。タグ付けやメモの追加も可能。チェックしたムードはすべて保存され、カレンダーで確認でき、自分の経験や体験を全体的に振り返ることが可能
  • BGMと風景:リラックスしたいとき、または仕事中や勉強中に楽しめる癒しのサウンドBGMと美しい自然の風景を集約。アプリを閉じてもBGMを流し続けるよう設定可能
  • 呼吸エクササイズ:呼吸の方法や長さをサポートする機能。深呼吸のエクササイズはとてもシンプルな上、短時間で効果を感じられるひとつの方法でストレス軽減、抵抗力を養い、自分のベストな状態を保つのに役立つとしている。エクササイズの長さや呼吸法はその日の気分によって、自由に調整できる

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タグ:Calm(製品・サービス)COVID-19(用語)新型コロナウイルス(用語)瞑想メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

瞑想とマインドフルネスのアプリは新型コロナ禍で急成長中

新型コロナウイルスのパンデミックによって、メンタルヘルス、特に不安や不眠に対処する瞑想に重点を置いたアプリのダウンロード数が急増している。アプリストアの調査会社であるSensor Tower(センサー・タワー)の最新の報告によると、英語をベースとする世界で最も人気の高いメンタルウェルネスアプリの上位10作は、2020年4月の合計ダウンロード数が同年1月も200万件増加し、その月の合計ダウンロード数は1000万件近くに達したという。

チャートは市場のリーダーで埋め尽くされている。人気第1位のCalm(カーム)の4月のダウンロード数は390万件。続いてHeadspace(ヘッドスペース)が150万件。それをMeditopia(メディトピア)が140万件で追っている。新規ダウンロード数はCalmが最も多かったが、全体で91万1000件を超える4月のダウンロード数は、1月から31%の伸びを示している。他にも、Relax: Master Your Destiny(リラックス:マスタ−・ユア・デスティニー)は年初から218%伸び、4月には39万1000件のダウンロードがあった。

さらにトップ10のアプリのうち8つが、1月と比較して4月にインストール数を増やしている。また「ほとんどのアプリで、3月から4月の前月比で新規ダウンロード数が増えている」とSensor Towerは伝えている。

2020年4月、ダウンロード数順の英語ベースのメンタルウェルネスアプリ。左から、世界全体、米国内、英国内

新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行によって、モバイル瞑想アプリへの関心の高まりを詳細に報告したものは、これが初めてではない。市場分析企業のApp Annie(アップ・アニー)は、2020年3月29日の週のマインドフルネス・アプリのダウンロード数が75万件に達し(ワシントンポスト記事)、1月と2月の週平均を25%上回ったことを早々に伝えていた。

どのアプリも、このパンデミックの最中にそれぞれ異なるアプローチで事業を拡大してきた。その中のひとつであるHeadspaceは、最前線で働く医療従事者と警察や消防などの初動要員が無料で利用できるようにした最初のアプリだ。その後、無料入会の対象は失業者にも拡大され、さらにニューヨーク州のアンドリュー・クオモ州知事の協力により、ニューヨークに住む人には、大量の無料コンテンツが提供された。

Breethe(ブリーズ)やSimple Habit(シンプル・ハビット)などのその他のアプリも、Headspaceに続いて医療従事者は利用料を無料とした。

この戦略は、新型コロナウイルスと最前線で戦う人たちを支援しつつ、アプリが好意的に報道がされるという短期的な成果を上げることができた。しかし同時に、アプリを提供する企業はパンデミックを、とりわけ医療従事者の苦労を利用してダウンロード数を伸ばしているといった、便乗商法的な印象も与える。もしそれらの企業が、ユーザーのストレスや不安を招いた新型コロナウイルスの影響を本気で心配するなら「すべての人たちに、すべてのサービス、特に新型コロナウイルスに由来するストレスや不安に対処するコンテンツを完全無料で提供する」というよりよい戦略もあったのではないか。

それに対して、Calmは別のアプローチを取った。無料リソースのページを新設したのだ。しかし、より多くのユーザーに無料アクセスを広げるためのパートナーシップ注力したことで、同時に売り上げを伸ばすこともできた。たとえば今月初め、健康保険関連の非営利団体Kaiser Permanente(カイザー・パーマネンテ)は、メンバーにCalmのプレミアムサブスクリプションを無料で提供すると発表した。保健システムとしては初だ。

できるだけ多く無料でサービスを提供する戦略を採らなかったCalmの判断は当初、メディアの注目を簡単に集めるチャンスを逃したかも知れない。しかしそれは、目の前の新型コロナウイルス危機が終息した後も継続可能な販売パートナーシップを数多く築くという、長期戦略をCalmにもたらしている。

Sensor Towerの報告書では、米国と英国の人気アプリの違いやその他のデータも詳細に示されている。

“新型コロナウイルス

画像クレジット:Sensor Tower

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(翻訳:金井哲夫)

催眠術で健康に、Mindset Healthの主張に投資家が1.2億円を賭ける

Chris(クリス)とAlex(アレックス)のNaoumidis(ナオウミディス)兄弟は、洋服販売の世界から催眠療法にやってきた。

2019年に、ニューヨーク・タイムズが伝えたところによると、2人はもともと女性向けのP2P(ピアツーピア)方式のドレスシェアリングアプリでスタートアップ起業家の道を歩み始めた。オーストラリア生まれの兄弟は、スタートアップの世界で成功する能力に自信が持てずに気落ちしていたのだが、アプリがうまくいかなくなったとき、父親から催眠療法を試すよう勧められた。

その治療を受けたのをきかっけに、兄弟はMindset Health(マインドセット・ヘルス)を創設し、Fifty Years、YC、Gelt VC、Giant Leap VCさらに米国とオーストラリアのエンジェル投資家たちから110万ドル(約1億1800万円)の資金を調達した。

2019年12月にクローズしたこのラウンドは、小規模ながら数多くの投資家が参加しているわけだが、それは近年の精神的健康への投資家たちの関心の高まりを表している。

現代社会での生活に付きものともいえる精神障害の治療アプリは、この市場に大量に出回っている。セラピストとのマッチングをしてくれる企業もあれば、認知行動療養などの形で心の健康を支えるツールを提供する企業もある。マインドフルネスや瞑想を指導してくれる10億ドル規模の企業もあれば、催眠療法を提供する企業もある。

アレックスたちは、兄弟で受けた催眠療法からヒントを得た。「瞑想のようにできないだろうか。それを人々の役に立つ形で市場に送り込めないだろうか」とアレックス・ナオウミディス氏は私に話してくれた。

瞑想は数百万ドル(数億円)規模のビジネスだ。Calm(カーム)やHeadspace(ヘッドスペース)といったアプリは、何百万ドルものベンチャー投資をかき集め、数十億ドルの評価額を得ている。

アレックス・ナオウミディス氏は、彼らのアプリは治療用ではないと強調する。現在の規制では治療用として宣伝することができないのだ。「むしろ、自己管理ツールのようなものです」と彼はいう。「不安や『過敏性腸症候群』を持つ人たちが、家庭でそれらの症状を管理できるよう手助けして、治療努力を補完するのです」。

目標は、さまざまな症状に対処できる数多くのアプリをMindsetの傘下に揃えることだと、アレックス・ナオウミディス氏はいう。最初は、ごく標準的なメンタルウェルネスアプリとしてスタートしたが、今ではその汎用的なメンタルウェルネスMindsetツールキットに、過敏性腸症候群(IBS)に特化した製品であるNerva(ナーバ)も加わった。

Nervaのサブスクリプションは安くはない。99ドル(約1060円)の前払い金に加えて、3カ月のサブスクリプション料金として88ドル(約9400円)かかる。Mindsetのサブスクリプション料金は、ニューヨーク・タイムズの記者Nellie Bowles(ネリー・ボウルズ)氏が初めてこの製品を試したときは64ドル(約6850円)だったが、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行期間中の価格として、今は11ドル(約1180円)に値下げされている。

バウルズ氏は、こう伝えている。

最初のステップとして、アプリは友だちにメールかTwitterで「自分自身に打ち勝った者は最強の戦士である」という格言を伝えるよう私に進言する。次の19分間は、優しい男性の声で、私の心はスローダウンできると聞かされる。それにより不安は決意に変換される。この行程は日常の習慣にもなる。そうなれば、私は行動的な人間になれる。行動的な人間だ。

私は他にも生産性の向上のモジュールも試した。こちらは、はつらつとした若者の声だ。イケイケな感じで私の耳の中で、「私は自分に、自分が何になりたいか、何をしたいかを知ることと、そしてそれを効率的にやることの許可を与えた」という彼の言葉を繰り返すよう言ってくる。

こうした精神的健康のためのアプリは(どんなアプリもサプリも事業も同じだが)、その健康上の効能を裏付けるためには臨床研究が必要になる。Mindsetの製品開発にも医師が参加している。最初のMindsetアプリは、Michael Japko(マイケル・ジャプコ)博士との共同開発であり、IBSアプリはSimone Peters(シモーヌ・ピータース)博士とともに制作された。

どちらの博士も、治療コース開発の代償として同社から分配収益を受け取ることになっている。

共同創設者の1人は、彼らはこのサービスが成功をもたらすと非科学的に信じているのだと話す。プログラムの始めと終わりに、利用者は自分の症状を自己申告するのだが、プログラム修了者のうち90パーセントの人の症状が軽減されたという(登録者の中のどれだけの人が修了したかは不明)。

「私たちの考えは、このようなすばらしいプログラムを開発した研究者を助けて、デジタルで提供するということです」とアレックス・ナオウミディス氏はいう。「より使いやすくするために、私たちは世界でも有数の研究者たちと協力してきました」。

画像クレジット:Scar1984 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

瞑想アプリでは不十分だった不安症に苦しむ人のためのCalmer You

瞑想とマインドフルネスのアプリがブームを呼んでいる。2019年にはトップ10までの瞑想アプリが1億9500万ドル(約204億円)を稼ぎ出した。これは前年比52パーセントの増加だ。そして今、売り上げトップの瞑想アプリHeadspaceの元研究主任Nick Begley(ニック・ベグリー)氏が、マインドフルネスを超えて、不安症で苦しむ人たちに焦点を当てた新しいアプリを立ち上げた。Calmer You(カーマー・ユー)という名のアプリは、瞑想の指導だけでなく、日記、認知行動療法のコースワーク、その他の身体と心の健康のためのコンテンツを組み合わせたアクティビティを提供する。

身体と心の健康のためのコンテンツには、フィットネス動画、眠れる話、有名人や心を揺さぶる人たちへの不安体験に関するインタビューなど、いろいろなものがある。

ベグリー氏はHeadspaceに2年間在籍していたが、そこで瞑想アプリが自己啓発を導きだす力の大きさを学んだと話している。

「それをマインドフルネスだけに限定する手はないと気づきました」とベグリー氏は、Calmer Youを始めた経緯に関連して語った。「世の中には優れた助言がたくさんありますが、自分を改革したいと望む人のほとんどが、動画を見たり本を読んだりと、単に受け身で消化しているだけです。それでは、そこで謳われている変化は起きません」とベグリー氏。

問題は、助言が悪いのではない。大抵の助言は優れている。そうではなく、その助言を行動に移すのが難しいのだとベグリー氏は言う。そこを手助けしてくれるのがCalmer Youだ。

アプリは、いくつかのパートで構成されており、段階的なガイドによって不安に対する理解を深め、不安の対処法を学べる28のセッションからなるコースもある。それには認知行動療法、マインドフルネス、自己への思いやりを強める療法(CFT)、分析手法など数多くのコンテンツが含まれている。また、今の気分や、自分が置かれるであろう状況をもとに推奨されるすぐに実践できる対処法を50種類以上収めたツールキットもある。さらに、日々の気分を記録するための日記もある。

1カ月の利用料は7.99ドル(約840円)、年間利用料は47.99ドル(約5020円)。

「Headspaceの穴を埋めるというのは、私たちが特別に意図していたことではありません。ユーザーがそう言い出したのです」とベグリー氏。「定期的に瞑想を行うのが難しいと感じている人が大勢いるため、私たちは不安を抱える人たちのためのツールと実践的対処法を、マインドフルネスに加えて提供したいと考えました。不安と不安から現れるさまざまな問題への対処を専門に助ける総合的なアプローチを提供する、最高品質のアプリ使用体験を届けたいのです」と彼は話した。

Calmer Youは、不安症の専門家であり作家のChloe Brotheridge(クロエ・ブラザリッジ)氏との協力で開発された。アプリの名前は、ブラザリッジ氏の著書「The Anxiety Solution: A Quieter Mind, a Calmer You(不安解消:より静かな心、より穏やかなあなた)」に由来する。開発チームはブラザリッジ氏の本をよく読んでいて、その実用的なアドバイスをもとにアプリを共同開発する気はないかと彼女に持ちかけた。

Calmer Youの親会社PSYTが掲げる目標には、こんなものがある。「自己啓発本をアプリにする

PSYT傘下のCalmer Youチームには、心理学者も加わっている。だが、アプリ自体はまだ、例えば無作為対照下試験などによる有効性の検証がされていない。ゆくゆくは行いたいという考えを彼らは示している。

Calmer Youは、ブラザリッジ氏の著書が特に若い女性を対象にしていることもあり、女性利用者にシフトしている。

「振り返ればずっと、私は不安に苦しみ、自分に最も効果のある運動を続けていました」とブラザリッジ氏。「そのためセラピストである私は、マインドフルネスだけでなく、その人にいちばん合った方法を自分で探せるように、いろいろな技術を教えています。アプリにいくつものアプローチを組み込むのは大変な作業でしたが、これがその人とその状況に最も有効な対策を見つけられるよう人々を後押しする上で、大変に重要なのだと私は考えています」と彼女は言う。

このアプリは2019年11月にベータテストを開始したが、それ以来、利用者の要望に応じてツールを追加してきた。「リバランス」ツールが2つ(1つは社会的不安を和らげるもの、もう1つは自信を持ってコミュニケーションできるようにするもの)と、夜に使用する不安日記を新しく加わえ、瞑想の指導コースと眠れる話の数も増やした。

重い不安症を抱える人の場合、このアプリは医師の治療代わりにはならないが、すでにHeadspaceなどの瞑想アプリを使っていて、常に不安を感じている人なら、普段から使うツールに加えておいてもいいだろう。

Calmer YouはiOS版が無料でダウンロードできるが、有料コースもある。

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(翻訳:金井哲夫)

眠りを誘う瞑想を促すヘッドバンド「Muse S」が登場

2019年のCESに出展されたMuse Softband(ミューズ・ソフトバンド)を憶えているだろうか。正直なところ、誰も憶えてないかもしれない。しかし私は憶えている。なぜなら、CESで見たし、その通常版をおおいに気に入ったからだ。私は、瞑想でマインドフルネスが一気にかなうという考え方には今でもかなり懐疑的だが、Muse 2は思考を沈静化させるためのハードウェアとしては魅力的なものだった。

1年間の沈黙の後、リブランドされたMuse Sの発売準備が整った。まず名前が好きだ。日本の投資会社を連想させる「ソフトバンド」よりずっといい。「S」は「Soft」と「Sleep」のSだ。この2つの要素が仲良く共存している。また「Savvy move on Muse’s part」(機転が利いたMuseの動き)の「S」でもある。2020年のCESでは睡眠技術が大いに盛り上がっているからだ。そしてもちろん、瞑想と睡眠も協調関係にある。

布製になったヘッドバンドでも、以前と同じく「バイオフィードバックによって強化される瞑想」が提供される。脳波を測定して、どの程度集中しているかを判断する。今回、そこに睡眠の要素が加わった。就寝前の5分間ほどこれを装着できるようにデザインされているのだ。Museアプリと組み合わせて使用可能で、アプリには眠りを誘う瞑想を促す「Go-to-Sleep Journey」(眠りへの旅)という機能が備わっている。類似の睡眠用マスクとは異なり、ヘッドフォンは装備していない。

だが、自分のヘッドホンを使えば、スマートフォンを手に持っている必要はない。当然のことながら、使用するヘッドホンの種類によって快適さは違ってくる。脳の活動、体の動き、心拍数を含むバイオフィードバックに基づく信号により、リアルタイムでサウンドトラックの音が調整される。これは本当にいい。私は信頼できる人に、家に帰るまでにこれが届いているように注文しておいたのだが、悲しいかな間に合わなかった。地獄のようなCESの1週間に、これがぜひとも欲しかったのに。

ともかく、届いたらすぐにレビューしたいと思う。待てない人は、Muse SならMuseのサイトなどから手に入る(現在は在庫切れ)。価格は349.99ドル(約3万8000円)。Muse瞑想アプリの利用料は月額13ドルだ。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Elevate Labsの瞑想アプリBalanceは人間のコーチより効果的?

すでに瞑想関連のスタートアップに多額の小切手を書いている投資家は多い。しかし、メンタルフィットネスのスタートアップElevate Labs(エレベートラボ)の創立者兼CEOのJesse Pickard(ジェシー・ピカード)氏によれば、既存の瞑想アプリは、人間のコーチの指導による体験に取って代わることのできるようなものはないという。

「あなたが誰かと出会うという体験は、世に出回っているどんなデジタル製品よりはるかに優れているのです」とピカード氏は言う。「問題は、地球上の99%の人にとって、それが手軽な出費ではないことです」。

そこでElevate Labsは米国時間の9月4日、Balanceという新しいモバイルアプリをリリースした。人間の瞑想コーチとの作業体験を再現するように設計されたものだ。

「瞑想は、だんだんと一般的なものになってきてはいますが、それを習慣として続けるのには、なかなか難しいものがあります」と、ピカード氏は説明する。「私たちのアプリは、その優柔不断な状態を取り除き、ユーザーごとに違ったやり方を示します。人々の生活は、それぞれあらゆる面で異なっています。ストレスを気にかけている人、睡眠が気になる人、集中力を身に付けたいと思っている人など、さまざまです。しかし、そういった違う目的を持った人も、他のメジャーなアプリでは、まったく同じように扱われてしまうのです」。

Balanceの場合、あらかじめ用意されたコンテンツから、単にどれかを選ぶわけではない。その代わり、アプリがユーザーに、目標とするところ、これまでの瞑想体験などについて尋ねることから始める。その後、よく見る感じの初歩的な瞑想がいくつか示される。しかし、ピカード氏によれば、それぞれの瞑想は、実際には「数十種ものクリップを組み合わせたもので、各ユーザー向けにパーソナライズしています」という。

たとえば、私はすでに瞑想の経験があり、最も優先順位の高い目標は、集中力を養うことだと、アプリに告げてみた。すると、私に示された最初の瞑想は、初歩的な説明がほとんど省略され、主なエクササイズは、自分自身の呼吸の音に集中できるようにするというものだった。

またピカード氏によると、このアプリは後になっても、ユーザーの体験について質問し続けるため、さらにパーソナライズが進んだものとなるという。瞑想のナレーションは、コンテンツの作成にも参加しているコーチのLeah Santa Cruz(リア・サンタ・クルツ)氏が吹き込んだもの。Balanceのチームには、他にも瞑想の専門家が加わっている。

アプリは、最初の10日間のコースは無料で使える。その後、続きの瞑想にアクセスするには、月額11.99ドル(約1280円)、年払いなら49.99ドル(約5330円)、生涯有効なサブスクリプションなら199.99ドル(約2万1320円)を支払う必要がある。Balanceには、瞑想に加えて、睡眠を補助するように設計されたガイド付きアクティビティも含まれている。

新しいアプリのリリースだけでなく、Elevate Labsは、Keesing Media Groupが率いるシリーズBの資金、710万ドル(約7億5700万円)を調達したことも発表した。この出資には、Oakhouse Partnersも参加している。

Elevate Labsは、以前はMindSnacksという名前で活動し、言語学習ゲームを開発していた。これは、いわゆる脳トレアプリで、おそらく2500万回ほどダウンロードされ、2014年には、Apple(アップル)のApp of the Year Awardを受賞している。実はピカード氏と私は、Craigslistの不思議な引合せによって、私がTechCrunchの仕事を始めてから、ほぼ1年間ルームメイトだった。同氏によれば、ユーザーの心の状態を改善するとして販売されている他のほとんどのアプリとは異なり、Elevateは読むこと、書くこと、数学といった訓練可能なスキルにも注力しているという。それは、たとえば、単に記憶力を増進するというようなものではない。

「私たちは、訓練することができないようなスキルに深入りしないよう、細心の注意を払っています。たとえば、集中力の持続時間のようなものは、教えることができると証明されてはいないのです」と、彼は言う。

同社が、外部から資金を調達してから、何年かが経過している。MindSnacksが、SequoiaからのシリーズAの資金調達を発表してから7年が経った。ピカード氏によると、同社は2015年に別のブリッジラウンドを調達したので、「数年間は仕事に打ち込んで、実際に持続可能なビジネスを、どうしても構築する必要があった」のだという。

どうやら、その努力は報われたようだ。彼は、Elevate Labsの昨年のキャッシュフローは黒字だったと明かした。これまでに受けた資金提供は、合計で1710万ドル(約18億2300万円)に達する。現状の計画は、Elevate Labsの成長を確かなものとし、Balanceを立ち上げるだけでなく、関連する他のさまざまなアプリの開発にも注力すること。

「メンタルフィットネスに関しては、構築すべき非常に大きなブランドがあると考えています」と、ピカード氏は締めくくった。

画像クレジット:Elevate Labs

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

CES 2019の主役はメンタルヘルスだった

先週ラスベガスのコンベンションセンターでは今年最大の新製品の数々が展示された。しかしここ数年、サンズ・ホテルが本当の魔法の起こる場所になった。ショウの中でユーレカ・パークと呼ばれる場所には、スタートアップやアクセラレーターが集結し、まだ数年先と思われる製品を披露するも多い。

ざっと見渡した限りでも、業界最大のトレンドが大きく取り上げられていた。昨年からの持ち越しも多かったが——スマートホームとウェアラブルが今回も支配的だった——今後数年間にテクノロジーが向かう先を予感させるものもあった。

この一年間に急上昇した大きなトレンドのひとつが、メンタルヘルスだ。睡眠、くつろぎ、集中、瞑想などの製品が立ち並び、5フィート歩く間に売り込みに合わないことは難しい。なかには、Museの瞑想・睡眠ヘッドセットのように見慣れた顔(少なくともわれわれには)もあったが、山ほどの新顔がそろった。

こうした製品の多くは、数年前大流行したフィットネス・トラッカーの拡張ともいえる。スタートアップたちは、まずわれわれに体を鍛えさせ、次に睡眠を監視し、ついには人の精神状態を追跡しようとしている。基本的脳活動などを追跡するセンサーの利用が容易になったことが、精神健康のコンセプトを推進する後押しになっている。

もちろんこれは価値ある大義である。この数年間、さまざまなテクノロジーの増殖によって、われわれの体と脳はかなり手荒い扱いを受けてきた。テクノロジーがそれを改善できたらすばらしいと思わないだろうか?

多くのケースで効果は明白。長年にわたる研究の結果、静かに座って瞑想しているだけで、ストレスレベルやメンタルヘルスが改善させることがわかった。そういう製品を使って習慣づけができるのはよいことだ。しかし、そこにはフィットネスよりもいっそう多くの詐欺商法が蔓延している。

ここは当然FDAが役割を果たし、検証されていない医学的効果を謳ってはならないことを徹底すべきだが、結局ほとんどの負荷は結局ジャーナリストと消費者にかかってくる。この分野では、プラセボ効果が重要な要素になってくる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

人気瞑想アプリHeadspaceがAlpine.AIの買収でAIを装備へ

3100万人のユーザーを擁し、評価額3億2000万ドル(約356億円)の瞑想アプリHeadspaceは、他の健康関連商品と差をつけようと、音声認識とAIの技術を倍掛けしようと考えている。同社は本日(米国時間9月4日)、デジタル・アシスタント市場の黎明期から活躍していた企業Alpine.AI(元VoiceLabs)を買収したと発表した。それには、Headspaceの主要アプリの音声による操作を高度化する狙いがある。

「現在、瞑想アプリはいくつかありますが、自分が今どの段階にあるかを的確な音声ガイドで教えてくれるものができれば、他社製品を大きく引き離すことができます」と、Headspaceの新CTO、Paddy Hannonは話している。彼は、Alpineから来た4人を率いて、Headspaceのサンフランシスコのオフィスに加わることになっている。

買収の条件は公表されていないが、Headspaceによると、その人材と技術の両方を引き継ぐとのこと。その中には、Alpine.AIの共同創設者でCTOのAlexandre Linaresと3人の技術者が含まれている。Alpine.AIのCEO、Adam Marchickは、今後は顧問として残る予定だ。

VoiceLabsは、長年にわたり、音声をベースにしたさまざまな製品を試してきた。その中には、Amazonに潰された音声を使った広告製品、音声アプリ開発者のための分析サービス、そして最近では、小売業者のカタログを読み込み、AIで顧客の製品に関する質問に答えるという、音声による買い物アプリを構築するためのソリューションもあった。

後にAlpine.AIと社名を変更したこの会社に、Headspaceは強い興味を示した。

Alpine.AIは、小売業者のためのソリューションを開発してきた。それは、顧客がボイス・アシスタントと自然に会話ができるようにするものだ。たとえば、マスカラについて尋ねると、ボイス・アシスタントは「何色にしますか?」とか「防水にしますか?」と聞いてくれる。

Headspaceは化粧品を売るつもりではないが、Alpine.AIの機械学習技術を自分たちの分野に応用する可能性に期待を寄せている。

現在、Headspaceの主要なインターフェイスには音声が使われている。瞑想セッションでは、心地よい、穏やかで、特徴ある声がユーザーをガイドする。この声は、共同創設者で、元チベット仏教僧のAndy Puddicombeのものだ。

これを基礎にして、Alpine.AIの技術を導入することで、ユーザーは音声によるインタラクティブな操作が可能になり、Headspaceの別の瞑想セッションを開拓したり、より丁寧な個別の指導を受けられるようにするという計画だ。

たとえば、ユーザーが「ストレスで参っている」と言えば、アプリは、その人のアプリ内の履歴を参考に、適切な瞑想法を推薦してくれる。

Alpine.AIの技術を追加することで、Headspaceは、参入企業が多くひしめき成長過程のこのセルフケア・アプリの世界で、大きな競争力を持つことになるだろう。Headspaceは、いちばんのライバルであるCalm.comに、評価額の面でわずかに優位に立っている。PitchBookのデータによれば、Calm.comの評価額は、およそ2億2700万ドル(約253億円)だ。

Headspaceの音声アプリを改良するという、第一の利点のほかにも、Apline.AIの技術には別の使い道がある。iOSとAndroidのアプリでは、ユーザーのアクションによって(音声コマンドではなく)、個別の助言を提示するという機能も考えられる。

Hannonによると、Alpine.AIには、その成り立ちによる魅力もあると言う。

「彼らはすべてをAmazonの上で作りました。Dockerを使用しています。大変に魅力的な買収だった理由には、それもあります」とHannonは説明している。「彼らは、私たちが内部で作っていたのと同じパターンでソフトウエアを作っていたのです。私たちが使っているのとほとんど同じデータベース技術も利用していました。彼らも私たちと同じ、RESTサービスを使ってます。なので、インフラの観点からすると、とてもわかりやすいのです」

「いつ面白くなるかと言えば、私たちの音声コンテンツを、彼らのテキストベースのシステムに加えたときです。しかし、AmazonがLexのようなサービスで提供しているのを見てわかるとおり、テキストから音声へ、または音声からテキストへ変換するシステムは数多くあります。そうしたものを使えば、実装は可能だと私は考えています」と彼は言っている。

今回の買収には、ボイス・コンピューティングの未来に賭けるという意味もある。音声で操作するデジタル・アシスタント機器の数は、この2年半の間に、世界中で10億台を超えるまでになっている。アメリカの家庭の20パーセントが専用のスマートスピーカーを所有していて、その数は増加すると見られている。

収益性の高いセルフケア・アプリ市場での人気アプリのひとつとして、Headspaceのユーザー数は、現在のところ3100万人に達している。そのうち、190各国にわたる100万人が有料加入者だ。また、同社は大企業とその従業員に瞑想エクササイズを提供するB2Bビジネスにも力を入れていて、250社以上の企業が契約をしている。

買収の時点で、Alpine.AIは、The Chernin Group、Javelin Venture Partners、Betaworksといった投資会社から「数百万ドル」を調達したシードステージの企業だった。しかし、音声で使えるスマートスピーカーの人気が確かなものになってはいるが、音声ベースのインターフェイスを開発する数あるスタートアップの中で、規模を拡大し、Nuanceや、Apple、Google、Amazonといったその他のプラットフォーム大手と肩を並べるようになったものは、まだない。それもまた、Alpine.AIの買収が魅力的だった理由だ(しかもイグジットに対してもオープンだった)。

Alpine.AIは、その製品を利用していたPetcoなどの少数の小売店との関係を縮小し、個別の移行プランを提示している。

「私たちのこれまでの努力が、ユーザーの健康的な習慣を指導したりガイドすることに特化できることを、とても嬉しく思っています」とAlpine.AIのCEO、Adam Marchickは、買収について話している。「Alpineの機械学習能力は、Headspaceの取り組みを加速し、新しい会話エクスペリエンスを市場にもたらすでしょう」

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(翻訳:金井哲夫)

悟りもアプリで開ける時代?ーー拡大するマインドフルネスのスタートアップ企業

【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerはCrunchbaseの記者。

 

インターネットに接続している生活が良いとは限らない。スマホを片手に時間を浪費し、人と接する機会を失い、即座に得られる満足感を求める悪しき習慣ができつつある。そう感じることがあまりにも多い。

この問題を解決できるアプリがあればいいのに。できれば1日中使えて、人間とのやりとりを必要としないのなら尚良い。数分でダウンロードできるのなら言うことなしだ。

ようこそ、マインドフルネスとウエルネスの世界に。ここ1年ほどで投資家が、マインドフルネスや幸福、理想的な精神状態の促進を目的としたアプリやツールの開発を行うスタートアップ企業を支援した数は20以上になる。Crunchbaseのデータによると、これらの企業は今日までで1億5000万ドル以上を調達。最も高額なラウンドのいくつかはここ数カ月で行われ、その資金のほとんどはカリフォルニア州に本拠を置くスタートアップ企業に投じられる。

瞑想マネー

深呼吸をしたら、その金がどこに注ぎ込まれているのかを説明しよう。

今のところ、資金調達において最高額なのはHeadspace。瞑想の技術を学ぶ人気アプリを開発した企業だ。サンタモニカに本拠を置く同社は、今年6月に3700万ドルの資金を調達し、現在までの調達額は7500万ドルとなった。ビジネスモデルは至って単純で、ユーザーは無料レッスンから使用開始して、継続したい場合はサブスクリプション費用を支払う。

Headspaceは自社のアプリを、1800万ダウンロード超えの世界で最も人気のある瞑想アプリと称している。だが、その会社のミッションはアプリのユーザー数より遥かに大きい。

「瞑想は序章に過ぎない」。Headspaceの最高執行責任者であるRoss Hoffmanはそう述べる。創業7年目のHeadspaceはこれから「生まれてから死ぬまでの健康と幸福に関する包括的なガイド」を作成したいと考えている。

Headspaceは事業拡大にも励み、幸せの輪を広げるためにも尽力している。人材募集のページには、ニット生地の布張りソファがある開放的なオフィスと、サラダとご飯を口にする幸せそうなスタッフが掲載されている。Headspaceの求職者には、世界の健康と幸福を向上するという企業理念に対し、応募する役職を通してどのように貢献できるかが問われる。

潤沢な資金を調達した健康促進に取り組むスタートアップ企業はまだ他にもある。「すべての感情的なニーズに対処するべく、ユーザーの意欲を引き出すようデザインされた」デジタルツールとプログラムを開発するHappify Healthは2500万ドルを調達。オンラインでヨガ、瞑想、フィットネスのレッスンを提供するGrokker2200万ドルを獲得している。

シードファンドや初期段階のファンドを調達している興味深い企業は他にも多くある。それにはHeadspaceの競合Calmや、モチベーションが高まるテキストメッセージを届けるShine、多忙な人の燃え尽き症候群を防ぐThrive Globalなどがある。

こうした動きは何を意味するのだろう?

冒頭の不機嫌さはさておき、よりバランスの取れた生活を送るために設計されたアプリは、インターネットで過剰に繋がった世界の隙間市場を埋めているようだ。また、過度なデジタルの刺激を電子機器で治すのは皮肉といえど、そこには論理性もある。

「テクノロジーは、この惑星にあるすべてのものに対する意識を広げてくれるかけ橋となった…しかし、テクノロジーは同時に我々をマルチタスカーにし、数千人の友達がいるのにもかかわらず、孤独にした」。社会的意識の高いマイクロVC、Mindful Investorsの共同設立者Stuart Rudickはそう語る。MIndfulのポートフォリオには、変化する気象音を使用して、ユーザーの瞑想をガイドする脳波計ヘッドバンドの開発企業Museも名を連ねる。

Rudickは、マインドフルネスと瞑想のツールに対する投資家の興味をより広域な健康的生活への関心と見ている。特に瞑想は十数年まえのヨガと似た成長をたどっており、より多くの人口に普及しつつある。

投資家の視点から見ると、ヨガやフィットネス、健康的な生活などへの投資は良いリターンと高評価の企業を生み出した。元々ベンチャー支援を受けて10年前に上場したヨガのアパレルメーカーLululemonは、現在80億ドル相当の評価額を誇る。ユニコーン企業を挙げると、屋内サイクリングブームの火付け役であるPelotonは、前回のラウンドで12億5000万ドルの評価額をつけた。(こちらにその他数社をまとめた)。

同様に失望もあった。最近の事例で言えば、未公開株式ファンドの支援を受けたヨガスタジオチェーンのYogaWorks。同社の株価は上場時すでに予想額を下回り、8月のIPOから3分の1まで落ち込んだ。

スターの力

 

だが、マインドフルネス界の投資家は単に金銭的リターンを求めている訳ではない。Rudickのようなダブルボトムライン・インベスターと呼ばれる投資家は、潜在的利益に加えて社会的利益をもたらす企業を探している。

瞑想やマインドフルネスはセレブからの人気も集めており、著名な支援者からスタートアップ企業が資金を確保するのに役立っているようだ。Headspaceの投資家にはRyan Seacrestジェシカ・アルバ、そしてJared Letoなどがいる。Museは支援者にアシュトン・カッチャーを持つ。一方Thriveは、有名なメディア起業家Arianna Huffingtonによって設立された。

とは言え、セレブからのサポートが活気のない企業をユニコーン企業に変えることはないだろう。しかし、セレブが勢ぞろいコンテンツを端末で眺め、我々がどれだけの時間を浪費しているかを考慮すれば、数分でも時間とって、気持ちをスッキリしようと提案するセレブに耳を傾ける方がおそらく利口だろう。

 

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(翻訳:Keitaro Imoto / Twitter / Facebook