ソフトバンクが「Vision Fundは1.8兆円の損失」と予測、本体もWeWorkとOneWeb投資が痛手

日本の巨大テクノロジー企業グループ、ソフトバンクは2019年度の損益見通しを発表した。これによれば、Vision Fundの損失は1.8兆円という巨額に上るという。

またソフトバンク本体の投資でも、シェアリングエコノミーのブームを代表したオフィススペース賃貸のWeWork、衛星通信のOneWebに対する投資の失敗が痛手となった。 投資先のテクノロジースタートアップのビジネスの失敗により、グループ全体での損失も7500億円となる予想だ。

この2年間、ソフトバンクとファウンダーの孫正義氏は、Vision Fundの数十億ドルの資金(大半は外部投資家のカネだったが)をスタートアップに投じてきた。機械学習、ロボティクス、次世代テレコムへの投資はやがて数千億ドルの利益を生むという見通しに賭けたものだった。

ともかく孫氏が投資家に売り込んだビジョンはそうだった。しかし実態は、WeWork、OpenDoor、Compassなどへの数十億ドルは要するに不動産投資だった。消費者向けビジネスではBrandlessは事業閉鎖 犬を散歩させるWagでは持ち分売却を余儀なくされた。食品配達のDoorDashへの投資も成功とはいえないだろう。これに加えて大口の投資を行ったホテルチェーンのOyoが苦境に陥っていることでVision Fundの「先見の明」に大きな疑問符がついている。

2019年はこうした投資先がいくつも暗礁に乗り上げた。見事なまでの崩壊をみせたのは、我々も繰り返し報じてきたがWeWorkだ。会社評価額は一時の400億ドル(約4兆3000億円)以上から約80億ドル(約8600億円)に急落した。

Brandlessは2020年初めに廃業した。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックの発生により、ホテルのOyoに加えて不動産投資ではCompassも打撃を受けている。

もっともソフトバンクのVision Fundの投資先に失敗企業が続出しているのは事実だが、失敗の多くは経済全体に逆風が吹いている結果だ。またすべての投資が行き詰まっているわけではない。例えばVision Fundは上場前のSlackに巨額の投資をしている。しかも新型コロナウイルスによる否応ないリモートワーク化はSlackの強い追い風となっている。

ソフトバンクの投資の中で最も遠大なビジョンがあったのは(皮肉にもこれはVision Fundからの投資ではなかったが)衛星ネットワークのOneWebだったに違いない。しかし世界のいたるところに高速のインターネット接続サービスを提供するというビジョンは優れていたが、あまりに多額の資本を必要としたためその重みで自壊した。ピザのロボット配達サービス、Zumeも失敗している。

しかしこうしたギャンブルが軒並み失敗に終わってもソフトバンク自体が倒れない理由は、なんといっても大量のアリババ株という金庫を抱えているからだ。またコアビジネスのテレコム事業や傘下の半導体事業も堅調だ。

ソフトバンクは発表で次のように述べている。

「上記に加え、(2019年度比較して2020年度の)税引前利益の減少は、主として営業外損失の計上が予測されることによる。 2019年度における(Vision Fund外の)投資関連の損失総額は8000億円となる。これはAlibaba株式のPVF(プリペイド・バリアブル・フォワード)契約(による売却)から生じる利益によって部分的に相殺される。2019会計年度第1四半期に計上され、Alibaba株保有分の希薄化によって生じた利益は2019年度第3四半期に計上されている。またAlibaba株式関連の投資については対前年比での利益の増大があると予測される」。

結局のところ、孫氏は大胆かつ優れたビジョンを持つ投資家だという神話に自縄自縛となったのではないだろうか。この神話は外部の株主、投資家に損害を与えるものとなったようだ。

4月13日に、Bloombergはop-edコラムで次のように書いている

「(多額の投資をすることで)スタートアップをファウンダーが考えているより早く成長させ、予想以上の収益を上げさせることができる」という孫氏の主張は今や重荷となっている。これはVision Fundやソフトバンク本体への投資家にとって利益より損失を生むリスクをもたらしている。

多額のキャッシュをばらまいたために多数のスタートアップが財政規律を維持することを忘れ、金を使うことに夢中になってしまった。何年もの間、これは賢明な戦略のように見えた。ソフトバンクの投資を受けたスタートアップはライバルよりも多額のキャッシュをユーザー獲得のインセンティブや広告に支出し、、能力の高い人材を惹きつけることができた。これは市場市場シェアを得るために役立った。

現在、ソフトバンクはUber、WeWork、Grab.、Oyoなどの市場リーダーの大株主だ。 しかしナンバーワンになることと、利益を上げることはまったく別の話だ。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクなどからの追加資金を確保できずOneWebが破産を申請

TechCrunchが得た情報によると、衛星コンステレーションによるブロードバンド事業者のOneWebは、米国時間3月27日にも、米国で破産保護の申請を行うことになる。既存の投資家であるソフトバンクからも含めて、新たな資金の確保に失敗した結果だ。Financial Timesも、独自の複数の情報源に基づき、同社が資金確保に失敗したことを、同日レポートしている。TechCrunchの情報源によれば、OneWebは、ほとんどの社員をレイオフすることにしており、1つのチームだけを残して、すでに打ち上げて宇宙空間にある衛星の運用を続けるという。

OneWebは、今回の報道についてプレスリリースで認めた。それによると「COVID-19の拡散による市場の混乱」が、資金確保失敗の原因だったという。「私たちは、あらゆる場所であらゆる人たちをつなぐという私たちの使命の、社会的および経済的な価値を確信し続けています」と同社CEOのAdrian Steckel(エイドリアン・ステッケル)氏は述べている。

OneWebは、2012年にWorldVu Satellitesという名前で創立。ブロードバンドインターネットを実現する低軌道衛星コンステレーションの構築を目指していた。それにより、現状の地上のネットワークではカバーしきれないような遠隔地や、アクセスが難しい地域も含めて、地上のユーザーに安価なインターネット接続を提供しようというものだった。

2020年3月初め、BloombergはOneWebが他の選択肢も検討しつつ、破産保護の申請を検討していることをレポートしていた。他の選択肢の1つというのは、新たな資金調達ラウンドのことだ。およそ20億ドル(約2158億円)の確保を目標としていた。同社はこれまでに、複数のラウンドを通して合計30億ドル(約3237億円)を調達している。2019年と2016年に、それぞれ13億ドル(約1403億円)と12億ドル(約1295億円)のラウンドを実現していた。どちらも主要な投資家はソフトバンクグループだった。

OneWebは、3月の初めに打ち上げを成功させ、軌道上にある衛星の総数を74としていた。その後同社は、先週のTechCrunchの記事でレポートしているように、レイオフによって人員の数を10%ほど削減していた。

この最新の動きは、OneWebが現金を確保し続けるために、他のすべてのオプションを使い尽くしてしまったことを基本的に示すものだ。実際、計画していたような頻繁な打ち上げペースを維持するには、相当な準備金を必要としていた。その計画では最終的に650以上の衛星を打ち上げて、地球全域をカバーできるサービスを提供することになっていた。ソフトバンクが投資家として身を引くと、埋め合わせが難しい大きな穴を残してしまうことになる。WeWorkなど巨額の投資額に対して得られるリターンが少なく同社に苦境をもたらしている案件もあるため、ソフトバンクは実際に、いくつかの注目度の高い投資から身を引こうとしている。

OneWebの資金繰りの厳しさに、進行中の新型コロナウイルスのパンデミックに揺れる世界情勢が追い打ちをかけた形だ。複数のレポートによると、少なくとも一部の投資家は、より保守的なアプローチをとっているという。伝統的な手段によって、より多くの投資を確保することは、これまでよりもずっと実現困難になっているという指摘もある。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

ソフトバンクが出資するOneWebが新型コロナで苦境に立ちレイオフ実施を確認

今週に入って、TechCrunchは、衛星通信を提供するOneWebが社員を最大で10%削減したという情報を得た。

同社はTechCrunchの取材に対し、現在の運営状況を説明し、レイオフによって人員削減を実施していることを確認した。 ただしレイオフの総人数は明らかにされなかった。声明はこのコスト削減の理由として、新型コロナウイルスのパンデミックによる混乱が世界経済におよぼす影響を挙げている。

以下はOneWebの広報担当者がTechcrunchに提供した声明の全文だ。

「OneWebの衛星打ち上げは3月21日土曜日に予定されており、その後2020年中にさらに打ち上げが続く。しかしながら、他社同様、我々も世界的な健康および経済に関する危機の影響を受けており、社員数もこれに応じて弾力的に調整する必要が生じた。世界的な輸送制限の強化とサプライチェーンの混乱により、衛星の打ち上げならびに衛星製造のスケジュールに遅れが出ることは残念ながら避けられない見通しとなった。このため主要事業に注力するために、いくつかの付帯的事業の運営を断念するという困難な決定を余儀なくされた。この措置を取らざるを得なかったことを遺憾に思っており、影響を受けた人々をサポートするためにできる限りのことを行っているところだ」

3月19日に、BloombergはOneWebが財政的苦境に対する1つの方法として破産申請を検討しているという記事を発表し、ソフトバンクが過去2回のラウンドで30億ドル(約3329億円)近くをOneWebに投じていると付け加えた。2019年に、TechCrunchもOneWeに対するSoftBankの大型投資を報じている。

ソフトバンクが出資する大型スタートアップのいくつかは最近、大きな困難に直面している。この苦境をもたらした大きな原因のひとつはコワーキングスペースのWeWorkが派手な転倒を演じたことだろう。OneWebは報じられた破産の検討についてはコメントしなかった。

Bloombergの記事はOneWebは運営を継続するために破産申請以外の選択肢も検討しているとしている。 しかし同社が運用コストをまかなう資金の調達で大きな課題に直面しているのは事実だ。引用したの声明にもあるとおり、OneWebは3月21日にカザフスタンからソユーズロケットで衛星34基の打ち上げを予定している。これにより、2020年初めに打ち上げられた34基と、2019年3月に打ち上げた6基を合計して74基の衛星群を運用することになる。

OneWebは、低軌道を周回する衛星を使用して広帯域幅通信サービスを提供することを目的としており、農村部その他、地上ネットワークではアクセスが困難な地域をカバーすることに重点を置いていまる。SpaceXなどが主要なライバルだ。SpaceXはすでにStarlinkでミニ衛星302基を打ち上げている。まだ実機を打ち上げていないものの、AmazonにもProject Kuiperという同様の計画がある。

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滑川海彦@Facebook

S&PがSoftBankの長期債見通しを「弱含み」に、債権格付はBB+を維持

日本の巨大通信事業グループSoftBankにはこの数週間に多数の悪材料に見舞われている。Wall Street Journalの調査報道によれば、Vision Fundのトップは、企業スパイ会社を使って同業他社を妨害していたという。世界最大級の「もの言う株主」のヘッジファンドであるElliott Managementは、SoftBankに投資して貸借対照表と取締役会の透明性を高めて株価を上昇させることを求めている。

さらに弱り目に追い打ちをかけるニュースがあった。

S&P Global Ratingsはグループの債務見通しを「安定」から「ネガティブ」(弱含み)に格下げした。同時に長期債権発行体格付けは従来どおりBB+であることを確認した。BB+は一般に投機的ないし投資に適さないグレードと見なされている。

S&Pはこの発表で、特にSoftBankの自社株買について懸念を抱いていると述べた。公開市場で投資家から株式を買い取るためには多額のキャッシュが必要なため、現金流動性が低下するだろうという。先週発表されこのプログラムは48億ドル(約5141億円)の自社株買いで、「財務の健全性と信用格付けを優先する財務方針を守る意図に疑問(を生じさせた)」としている。

同僚のArman Tabatabai(アルマン・タバタバイ)と私は、TechCrunch Extra(有料)で2018年末にSoftBankの強迫観念的借り入れ行動の背景を探ったが、この分析は市場が右肩上がりで新型コロナウイルスもまだ流行していない時期のものだった。

しかし現状では、SoftBankの巨額債務は最近の経済に関する記憶の中で最大級の惨事に向かいかねない。

SoftBankの債務よる業容拡張は、SprintとT-Mobileという通信事業者の合併プロジェクトでことに目立った。これは最近米司法省の反トラスト局によって承認されたが、Vision Fundの投資を含めて数百億ドル(数兆円)の借り入れを必要とした。Financial Timesが2017年に報じたところではVision Fundは約款の規定により、投資家への利益還元は最低限のものだ

投資家はVision Fundから投資の見返りとして「優先ユニット」を提供される。これにより、12年のファンドのライフサイクルを通じ、毎年7%のリターンが保証されるクーポンを受け取ることができる。

ここ数日の株価の壊滅的な下落を考えると、大型の新規上場が起きる可能性はほとんどない。するとVision Fundの流動性はどうなるのか? また経済全般の悪化を考えると、合併したSprintとT-Mobileは巨大な債務負担をどうやって返済するのか?

SoftBankの強みは、誰にとっても必須なサービスを提供していることだ。 これが、長期債権発行体としての格付けがダウンしなかった大きな理由だろう。誰もがモバイルネットワークを必要としている。しかしながら債務がますます積み上がり、新型コロナウイルスによって経済に混乱がもたらされる中、Vision Fundの将来はさらに見えにくくなっている。

画像:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto (opens in a new window)/ Getty Images

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滑川海彦@Facebook

ソフトバンク出資のインド格安ホテルチェーン「Oyo」が世界で5000人レイオフ

米国時間3月4日、インドで説立された格安ホテル仲介のスタートアップであるOyoは、世界で5000人のレイオフを実施すると発表した。支出を削減し収益性を向上させるためだという。

今回の人員削減により、Oyoの社員数は世界80カ国合計で2万5000人程度となる。Oyoの広報担当者はこの人員削減はOyoが1月に発表したリストラの一部だとして次のように述べた。

「OYOは2020年1月に発表したリストラをグローバルで実施中だ。中国における最近の施策もこれに沿ったものだ。中国はOYOの住宅供給事業の重要な市場だ。我々は界の数百万人の中所得層の人々に質の高い生活を提供するというコアなミッションを果たすために、何千ものOYOパートナーとの協力を続ける。新型コロナウィルスがもたらす困難な状況の中でも、善意にあふれ強靭な回復力がある中国社会をあらゆる方法で支援し続ける。パートナー、社員、顧客のすべてに対し、力強い協力に感謝したい」。

Bloombergの報道によれば、、レイオフは主としてOyoの中国におけるビジネスに関連するものだ。同社は中国で6000人の常勤社員の半数をレイオフする。インドや米国でも4000人の裁量労働契約の社員を「一時的に」解雇する。つまりビジネスが回復すれば一部は再雇用される計画という。

Ritesh Agarwal(リテシュ・アガルワル)氏 が創立し、ソフトバンクが巨額の投資をしているOyoはインド国外にも積極的に進出を続け、最近では世界最大のホテル宿泊仲介サービスとなることを目指していた。

急拡大の過程で同社は15億ドル以上を調達した。 昨年10月に26歳のアガルワル氏はさらに15億ドルの資金を求めており、うち7億ドルは個人として調達したことを発表した

しかし昨年、ソフトバンクが巨額を投じたもう1つのスタートアップ、WeWorkの経営悪化が劇的に明らかになった後、Oyoに対する視線も厳しくなっていた。

今年初めのNew York Timesの記事によれば、Oyoのパートナーとなったホテルの多くがOyoが契約条項を守らず、だまされたと感じており、深刻な財政状態に陥っているという。インドのビジネスメディア、The KenはOyoは非現実的な目標を示し、社員にかける圧力を増大させたことを詳しく報じた

Oyoは2019年3月31日を終期とする会計年度で、世界で9億5100万ドル(約102億3000万円)の収入があったものの3億3500万ドル(約360億3600万円)の損失があったことを明らかにしている。前年の損失は5000万ドル(約53億8000万円)だった。アガルワル氏は1月にブログに次のように書いている

「これらの意思決定の一部、ことに人員配置モデルの変更に関連する決定は困難なものだったが、Oyoのビジネスおよび2万5000人以上のOYO提携者の利益となる正しいものだったと信じる。我々は困難な時期を終わろうとしており、まもなくリストラは完了する。2020年以降は力強く安定した成長を続けることになるだろう」。

画像: Akio Kon/Bloomberg/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

資金調達が進まぬソフトバンクの第二ビジョンファンドの未来が見えない

複数のテクノロジー企業の複合体であるSoftBank(ソフトバンク)は、1000億ドル(約11兆円)のVision Fund(ビジョンファンド)でベンチャーキャピタル産業を変えた。しかしThe Wall Street Journalは、同社がそのパフォーマンスとテクノロジーに対する革命的な投資のアプローチを継続できないかもしれない、と危惧した記事を掲載している。

その記事によると、SoftBankは次のVision Fundで設定した目標である1080億ドル(約11兆8500億円)の半分しか調達できないのではないか、しかもその多くは日本企業それ自体から出るという。

大きな支援者であるサウジアラビアの政府系投資ファンドやアブダビのMubadala Investment Co.などは、Vision Fund IIを立ち上げようというソフトバンクの試みに尻込みしている。彼らは、それまでの投資から得られた利益を第2ファンドの原資とすべきだ、と主張している。なおサウジの政府系投資ファンドは、ジャーナリストを暗殺したとされる政権の財政安定を支えている。

その利益は、およそ100億ドル(約1兆1000億円)と言われている。

Vision Fundは鳴り物入りで派手に立ち上がり、少なからぬ投資家たちからの羨望と批判のつぶやきも受けたが、アナリストやメディアは、ソフトバンクの創業者で謎の人物である孫正義氏が調達できた資本の大きさに驚いた。しかし、Vision Fundは創業時の華々しい盛り上がりにふさわしい成果を得られていない。

コワーキング企業WeWorkへの悲惨な投資も、問題の1つだ。ソフトバンクは同社への44億ドル(約4800億円)の投資のうちほぼ35億ドル(約3800億円)を償却した。

しかし、WeWorkの災難はソフトバンクにとって氷山の一角かもしれない。同社は他のポートフォリ企業に対しても、その資本コミットメントを大幅に削減している。それらの企業は最近スタッフを減らし、そのほかの支出も減らして、テクノロジー業界全体に業界の低迷を憂える不安が広がった。

スタッフの削減は、ビジョンファンドの運営母体にも及んでいる。今週初めに同社は、最高位の管理職の1人Michael Ronen(マイケル・ローネン)氏を失った。彼はそれまでGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)にいてParkJockey、Nuro、GM Cruiseなどの企業へのソフトバンクによる投資の中心人物だった。

いなくなった大物は、ローネン氏だけではない。過去5カ月内に、同社の人事のトップMichelle Horn(ミシェル・ホーン)氏と、同じくアメリカのマネージングディレクターだったDavid Thevenon(デビッド・セブノン)氏が、やはり同社を去った。

関連記事: As a top manager leaves amid fundraising woes, SoftBank’s vision looks dimmer — and schadenfreude abounds…人材が去り続けるソフトバンクのビジョンファンドの未来が暗雲で人の不幸は蜜の味が広がる(未訳)

画像クレジット: Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ソフトバンクの改革を求めてエリオット・マネジメントが同社株約2800億円取得

アクティビスト投資会社であるエリオット・マネジメントは着々とその株式を買い集め、取得金額は25億ドル(約2800億円)に達した。ニュースの見出しを踊らせてきた日本のテクノロジーコングロマリットであるソフトバンクは、一連の失策によって株価が低迷していた。

The Wall Street Journalの第一報によるとSlack(スラック)やUber(ウーバー)、また今や悪名高いコワーキングスペースのWeWork(ウィーワーク)に数十億ドル(数千億円)を賭けたことで名を馳せたソフトバンクは、エリオットの金融投資部門をひきつける目標を提示したという。

2019年11月、ソフトバンクグループは、かつて非公開市場で470億ドル(約5兆2000億円)と評価されたWeWorkの救済による影響もあり、65億ドル(約7100億円)の損失を計上した。

損失計上で株価は急落したが、数々のトラブルにもかかわらず、ソフトバンクは依然として非常に安定したポートフォリオを保有している。そのソフトバンクの資産には、エリオット・マネジメントの340億ドル(約3兆7300億円)もの運用資産の一部を切り出してソフトバンクに少数株主として投資するに値する魅力があると同社は考えた。

「エリオットによるソフトバンクグループへの多額の投資は、市場がソフトバンクの資産ポートフォリオを大幅に過小評価しているという我々の強い信念を反映している」とエリオットの広報担当者はメールで述べた。「エリオットはソフトバンクの幹部と直接対話しており、ソフトバンクの本質的価値に対するディスカウントを大幅かつ持続的に減らすべく建設的に取り組んでいる」

ソフトバンクは、1000億ドル(約11兆円)という巨額のビジョンファンドでテクノロジー投資の世界に波風を起こしてきた。このファンドは多額のキャッシュを必要とするテクノロジースタートアップに出資する目的で設立されたが、さまざまな業界を変革する可能性がある。

同社の大胆な投資戦略の資金は、Saudi Arabian Public Investment Fund(サウジアラビア・パブリック・インベストメント・ファンド、投資担当者はジャーナリストの暗殺を命じた上層部とつながりがある)のような政府系ファンドやApple(アップル)、Microsoft(マイクロソフト)などの企業と協力して調達された。

リミテッドパートナーと自身の現金により、ソフトバンクはさまざまな業界の企業の株式を大量に取得してきた。ただ、その規模を維持し、正当化するのが難しくなってきている。

2019年、ソフトバンクのポートフォリオ企業のいくつかがトラブルに直面した。エリオットがソフトバンクの上層部に変革をもたらすとしても、ポートフォリオのパフォーマンスに影響を与えるかどうかは何とも言えない。

実際、ソフトバンクの創業者である孫正義氏が22%の株式を保有していることを考えると、エリオットが開始または主張する活動には限界があるかもしれない。

ソフトバンクのポートフォリオには優れた企業があり、公開市場の投資家はエリオット・マネジメントによる投資の開示を受けてソフトバンクの株式を買いに走っている。

ただし、2018年にベンチャー市場に流入した資金の洪水は絶頂に達したようであり、ソフトバンクや同社の新規投資家はずぶぬれになってしまう可能性がある。

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(翻訳:Mizoguchi

WeWorkの新CEO米国最大のモール運営不動産会社の元トップ

予定していた株式上場を撤回するなど波乱を経験中のWeWorkは、シェアリングエコノミーのスタートアップという企業イメージを捨て、むしろオフィス賃貸の世界的巨大企業という方向に転じたいなら不動産業出身のトップを選ぶべきだろう。

実はそれがまさに実現するという。 Wall Street Journal(ウォールストリート・ジャーナル)のスクープ記事によれば、WeWorkはSandeep Mathrani(サンディープ・マトラニ)氏を新しいCEOに指名した。

マトラニ氏はこの1年半、大手不動産会社のBrookfield Properties(ブルックフィールド・プロパティ)のCEOと同グループの副会長を務めてきた。それ以前にはシカゴの大手不動産会社であるGeneral Growth Properties(ジェネラル・グロース・プロパティ)でCEOを8年間務めている。同社はBrookfieldが2018年に92億5000万ドル(約1兆円)で買収するまで米国最大のショッピングモール運営会社だった。それ以前の8年間、上場不動産会社のVornado Realty Trust(ボルネード・リアリティ・トラスト)でエグゼクティブバイスプレジデントだった。同社の時価総額は125億ドル(約1兆3544億円)で、Brookfieldは80億ドル前後(約8668億円)だった。

同氏はマイアミ在住だが、WeWorkのCEO就任に伴ってニューヨークに移るという。公開されている登記書類によれば、同氏は昨年ニューヨークに高層アパートメントを、少なくとも1区画購入している。

マトラニ氏はソフトバンクグループの副社長であるMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏の指揮下に入る。クラウレ氏は昨年10月にWeWorkのエグゼクティブチェアマンに就任し、同氏自身「185億ドルのギャンブル」と呼ぶソフトバンクの投資の収拾に当たっている。

同氏氏は就任直後、不安が広がる社員の全員集会で「185億ドルという投資額は1100万人が住む私の母国(ボリビア)のGDPより大きい」と述べてWeWorkに対するソフトバンクのコミットメントを強調した。

クラウレ氏は以前、ソフトバンク傘下のSprintのCEOを務めており、このときT-MobileのCEOであるJohn Legere(ジョン・レジャー)氏をWeWorkのトップにスカウトしようとしたと伝えられる。 レジャー氏はその後メディアに「T-Mobileを離れる予定は一切ない」と述べたものの、数日もたたないうちに 2012年以来CEOを務めていたT-MobileのCEOを辞任した。ただしその後も同社の会長には留まっている(Vergeによるとこの契約は4月30日に満了となるという)。

SprintとT-Mobileは司法省から合併の承認を得ているが、ニューヨーク州、カリフォルニア州の司法長官を始めとする13州の司法長官が合併を阻止しようと裁判闘争を続けている。

いずれにせよ、マトラニ氏はWeWorkの共同創業者でCEOだったAdam Neumann(アダム・ニューマン)氏とは正反対の人物だ。 ニューマン氏のハイテクシェアリングオフィスのビジョンと会社運営は投資家から著しい不信の目を向けられて退陣を余儀なくされている。

ただしソフトバンク自身も、過去の投資ラウンドのたびにWeWorkに途方もない会社評価額を与えてきた。最後には470億ドル(約5兆930億円)に達し、これは一般投資家の眉をひそめさせるのに十分な額だった。にもかかわらず、WeWorkが株式上場の計画を発表するとただちにWeWorkの経営、会社統治の内容、そして何より会社の価値について確実な情報を求める声が市場から出た。

株式上場のためのS-1申請書を検討すると、それまで知られていなかった赤字の累積、ニューマン氏の会社運営の実態が明らかになった。これを機にリーダーシップの欠如を報じるウォールストリート・ジャーナルの記事をはじめ、内情を暴露する批判的報道が相次き、同社は上場計画の撤回に追い込まれた。

WeWorkのリストラ計画には2400人の人員削減も含まれていた。レイオフは米国の感謝祭の直前に実行され、またニューマン氏が買収したもののコア事業に無関係と判断されたいくつかの企業が売却された。マトラニ新CEOの最大の任務はこの上場計画を復活させることなのは間違いない。ウォールストリート・ジャーナルの記事によれば、ソフトバンクはWeWorkの5年計画の再建プランを策定しており、来年にはキャッシュフローを黒字化する予定だという。

WeWorkは、多少ペースは落ちるにしても、新しいオフィススペースの買収を取りやめるつもりはないと報じられている。

画像:Associated Press / GGP Inc.

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクは大赤字のポートフォリオ企業間の衝突に介入していた

ソフトバンクは、ポートフォリオ企業同志が競争して莫大な赤字を積み上げる現状にとうとう業を煮やし、合併の可能性を探ることも含めて密かに介入をしていた。

ともあれ、米国時間1月30日のFinancial Timesの記事によれば、同社は昨年、UberとDoorDashの合併を取りまとめるようと努力していたという。このときは合併交渉はまとまらなかった。両社ともソフトバンク(ソフトバンク・ビジョン・ファンド1号)から多額の投資を受けており、料理の宅配事業で激しく競い合っている。

Uber Eats2019年第3四半期期の純収入3億9200万ドル(約427億円)に対して、同期の調整済み赤字は3億1600万ドル(約344億円)にも上っている。この赤字の大海に比べるとDoorDashが予測している2019年の通年の赤字である4億5000万ドルでさえ穏当な額に見える。両社が合併すれば赤字幅が圧縮できることは間違いない。株式上場維持路線であろうと非公開化して現在の会社評価額を維持する路線であろうと、現在よりはるかに強い立場で臨めるだろう。

Uberが株式公開後、株価維持に苦しんできたことはよく知られている。現在の株価は公開直後の高値に比べて半額だ。DoorDashも人気を集めたものの最近大型資金調達に成功していない。がっぷり四つに組んだまま競争を続けているこの2社が合併することにはメリットがある。両社が同一の大株主を持っていることを考えればなおさらだ。

カオス状態は他にも

UberとDoorDashはSoftBankのVision Fundからのキャッシュを元手に互いにレンガを投げつけてあっている唯一の例ではない。本日のWall Street Journalの報道によれば、ラテンアメリカではいずれもソフトバンクが大株主である企業間の競争が激化しているという。

ラテンアメリカでUberはライバルのRappiや中国の滴滴出行(Didi Chuxing)などの挑戦を受け激しい値下げ競争に巻き込まれている。しかしここに奇妙な現象がある。この競争者グループの最大株主はいずれも同一の会社、日本のソフトバンクグループなのだ。ソフトバンクはトータルで200億ドル(約2兆1800億円)をこれら3社に投じている。

ユニコーン(評価額10億ドルのスタートアップ)が次々に生まれる前の時代には「1つのベンチャーキャピタルは競争関係になり得る複数のスタートアップに投資してはならない」という金言があった。1つの会社に投資して、同じく自分が投資している別の会社を叩くのを助けるのは道理に合わない。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資はこのルールを無視した結果、南北アメリカ大陸でベンチャー投資の大失敗の見本のような状態に陥った。ちなみに、米国で有名なベンチャーキャピタルであるSequoia CapitalもUberと滴滴出行の双方に投資しているのだが。

これがソフトバンクがDoorDashがUberに統合される可能性を探った背景だ。実現すればすくなくとも頭痛のタネが1つ減るわけだ。しかし次に同社はUberと滴滴出行がライドシェアリングという本業でバッティングする現状をどうにかさばかねばならない。またラテンアメリカでUber EatsとRappiが繰り広げている破壊的競争を止めさせる方策を考える必要がある。

ライドシェアリングと料理宅配の各社をすべて合併させ単一の巨大企業とするのがソフトバンクの立場からの理想だろう。もちろんこんな合併はどこの国だろうと反トラスト法による規制にひっかかかる。それでも赤字と収入を一箇所にまとめれば財務書類を大幅にわかりやすくする効果はあるだろう。

画像:Tomohiro Ohsumi (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクが支援する料理配膳ロボ開発のBear Roboticsとは?

今年8月、TechchCrunchは米国カリフォルニア州レッドウッドの興味あるロボットスタートアップをレポートしたBear Roboticsは創立2年半、社員40人でレストランで料理を客に届けるロボットを開発している。

SEC(証券取引委員会)への届け出によれば、同社のシリーズAの株式売出総額は3580万ドル(約40億円)あまりだった。米国時間1月21日に資金調達ラウンドが完了したことが発表されたのを機に、創業者のCEOのJohn Ha(ジョン・ハー)氏 にインタビューした。なお調達された資金3200万ドル(約35億円)だった。

このラウンドはソフトバンクグループがリードした。同グループはロボティクスのスタートアップへの投資にも力を入れている(ピザ配送車両のZumeにも投資しているが、同社の不振が報じられている)。マサチューセッツ州レキシントンを本拠にする創立7年目のBerkshire Greyは、フルフィルメントセンターにおけるパッケージの取り扱い全般をこなすロボットを開発しており、ソフトバンクがリードしたシリーズBのラウンドで2億6300万ドルという巨額の資金を得ている

もっとも、読者の多くはBear Roboticsが受けた出資の内容より開発中のプロダクトの方が興味があるだろう。創業者でCEOのハー氏にプロダクトの詳細と会社のビジョンを尋ねてみた。ハー氏はIntel(インテル)の研究者からGoogle(グーグル)の技術幹部に転じたが、その後起業家としてレストランを開き、閉鎖した経験がある。

TC:グーグルの幹部エンジニアだったのに、自分でレストランを始めた理由は?

JH:レストラン経営が夢だったというわけではない。有利なビジネスだと思ったのが主な理由だ。それに面白そうだった。しかし実際にやってみると面白いどころではなかった。特にショックを受けたのは(スタッフが)ひどい重労働なのに給与水準が非常に低いことだった。これを一生の仕事にはできないと(思って店を閉めた)。そして私の持つノウハウを活かしてレストラン業界を改革しようと思ったわけだ。繰り返しの多い単調な重労働を取り除き(フロアスタッフが)ホスピタリティの提供のような人間でなければできないことに集中できるようにしたいと考えた。料理を提供することがレストラン業の主目的のはずだが、離職率がおそろしく高いので経営者はほとんどの時間をスタッフの採用に費やしている。われわれが開発しているロボットはフードサービスが置かれているこうした状況を打破するはずだ。

TC:Pennyというロボットを開発しているわけだが、このアイディアはどこでどのように思いついたのか?

JH:Fiレストランのスタッフと始終「この仕事をロボット化できるならどんな感じになるだろう?」と言いあっていた。どんな外観でどんな機能が必要か、とかだ。まず混雜した店内を動きまわる必要があるのだからサイズはあまり大きくできない。それに風変わりなロボット・レストランにはしたくなかった。あくまで普通のレストランの中に溶け込み、誰も(存在を)気にかけないようなものでなくてはならない。スター・ウォーズのR2D2と同じで主役はあくまでルーク・スカイウォーカーだ。ロボットの役割はあくまで控えめな補助だ。仕事はきちんとこなすが個性は目立たず誰も注目しないというのが理想だ。

TC:ロボットそのものにについて少し詳しく知りたい。

JH:背景となるテクノロジーは自動運転車だ。それを屋内版にしたものと考えてよい。A点からB点までスムーズかつ安全に移動するテクノロジーだ。Pennyの場合は路上を走行して乗客を運ぶのではなく、レストランの通路を移動して目的のテーブルに料理を運ぶ。デフェレンシャル・ギアを装備した2輪駆動でキャスターがついている。非常に安全だ。外観が似たようなロボットがたくさんあるが、ほとんどはどこかしら見えない部分がある。Pennyは全周を確認しており、床を這っている赤ん坊がいても手をひいてしまうなどということはない。誰かがテーブルから財布のような薄いものを落としても気づく。

Pennyでは客が料理を取り出す。混み合ったスペースではロボットハンドは安全性を100%確保するのが非常に難しいのでわれわれは装備しなかった。素材は基本的にプラスティックだ。軽く、安全で、清潔を保ちやすい。レストランで常用される洗剤、殺菌剤などにも耐久性が高い。.また安全規則上の問題を起こさないよう車輪に料理の残滓が残るなどがないよう注意を払っている。

TC:まだ実用化はされていない?

JH:今のところ量産段階にまでは進んでいない。

TC:どこで製造されるのか?またビジネスモデルは?

JH:製造はアジアのどこかになるだろう。中国かその周辺だと思う。まだ市販価格は決めていないが、売り切りではなくリースという形にするつもりだ。月極めのサブスクリプションになると思う。これはメンテナンス一切をわれわれが受け持ち、レストラン側で心配する必要はまったくない。

TC:Pennyロボットは異なる目的、環境のためにカスタマイズ可能だろうか?レストラン以外の用途を考えているのか?

JH:Pennyは異なるモードにカスタマイズ可能だ。デフォールトでは3段の料理トレイを備えており、料理を運び、洗い場に下げるために動き回る。

TC:客とのコミュニケーションはできるのか?

JH:Pennyには発声、会話機能がある。音楽を鳴らしながら通路を進んだり、テーブルについたら「料理を取り出してくさい」と言ったりできるが、ソフトウェアはまだ複雑な会話ができるところまで行っていない。それぞれのレストランで特色を生かしたカスタマイズができるようにしたいと考えている。

TC:利用者と考えているのはレストランだけか?

JH:料理を提供する場所ならどこでもターゲットになる。現在はレストランでテストを行っているが、カジノでも社食でもいいし個人の家でもいい。高齢者施設も当然考えている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクのトラブル続きの2019年の投資を振り返る

勢いある巨大複合企業、そして最も名高い投資ビークルから、空回りしトラブルを抱える象徴に変わってしまった。今、ソフトバンクソフトバンク・ビジョン・ファンドは難しい立場にある。ときおりいい話もあったが、両者にとっては厳しい1年だった。

その日本企業と、世界中から資金を集め重力さえ曲げる規模になったファンドに関して次々に流れる悪いニュースに接していると、問題のあまりの多さに規模感を見失ってしまう。ただ、グループ全体としてみれば、どの投資が急速に悪化したのか容易にわかる。みてみよう。

以下は、昨年の第2四半期に始まったソフトバンクとビジョン・ファンドの最近の問題点に関する半包括的なリストだ。さらに遡ることもできるが、筆者の独断でビジョン・ファンドの多数の賭けが同時に怪しくなり始めた時期から紹介する。

2019年4月:Wagがレイオフ

ビジョン・ファンドの最も奇妙な賭けの1つ、犬の散歩代行サービスのスタートアップであるWag(ワグ)への3億ドル(約330億円)の投資は、Wagが昨年4月にレイオフの第2ラウンドを実行し、厄介なことになった。

2019年5月:UberのIPOが低調

Uber(ウーバー)は仮条件を1株当たり44〜50ドル(約4800〜5500円)に設定後、レンジの押し上げに失敗し、IPO価格は45ドル(約4900円)となった。時価総額は754億6000万ドル(約8兆2000億円)で、同社の期待よりもはるかに低かった。バンカーはそんなものだろうと見積もっていた。上場後に株価は下落、1月7日の終値はわずか31.95ドル(約3500円)、時価総額にして約545億ドル(約5兆9000億円)だ。ソフトバンクが投資した時のUberのバリュエーションは480億ドル(約5兆2000億円)と700億ドル(約7兆6000億円)だった。

2019年6月:Brandlessに新しいCEO

ソフトバンクのもう1つの大きな賭け、Brandlessは3月に「ソフトバンクとの緊張」により前のCEOを失った後、新しいCEOを迎えた。それだけの期間にわたるCEOの不在とそれが示す経営幹部を巡る混乱はBrandlessにとって良いニュースではなかった。ソフトバンクはBrandlessの持ち分40%を2億4000万ドル(約260億円)で取得した。なお、2億4000万ドルは複数回の投資の累計で、TechCrunchは、ビジョン・ファンドも1億ドル(約109億円)を投資したとの情報を得ている。

2019年8月〜10月:WeWorkが上場申請後、空中分解

WeWork(ウィーワーク)が2019年第3四半期と第4四半期に空中分解した。同社の上場申請は大混乱を引き起こし、経営陣は対立、WeWorkという車が崖を越えて水上に飛び出るまで投資家は妙に受け身で、不動産ビジネスは過大評価されていた。 多額の資金も失った。ソフトバンクは、WeWorkのIPOを撤回して巨額の損失を被った後、かつて花形投資先だった同社を救済し、再生に取り組んでいる。

2019年9月:Compassが複数の役員を失う

ソフトバンクの投資先で、これまで10億ドル(約1090億円)以上を調達したスタートアップのCompass(コンパス)が多数の役員を失った。Crunchbase Newsは「ソフトバンクが支援する不動産スタートアップ、Compassの役員が脱出」と要約した。見出しとは対照的に、Compassは採用のペースを上げていると主張した。

2019年10月:Fairがレイオフ

Fair(フェア)がスタッフの40%を解雇したとTechCrunchは10月に報じた。CFOも失った。同社はソフトバンクなどから5億ドル(約550億円)を調達後、12億ドル(約1300億円)のバリュエーションがついていた。

2019年12月:Katerraがレイオフ

ソフトバンクが投資するモジュール式建設のスタートアップであるKaterra(カテラ)は2019年に何度かレイオフを実施したようだが、最も記憶に残っているのは、12月に実施した200人の削減と工場閉鎖の決定だ。工場閉鎖が明らかになったのは、同社がカリフォルニアの工場新設を発表した後だった。

2019年12月:OneConnectのIPOが低調

OneConnect(ワンコネクト)は、中国に拠点を置き、銀行にテクノロジーを提供する会社で、ソフトバンクが投資している。12月のIPOの仮条件は1株あたり12ドルから14ドルだったが、IPO価格は10ドルになった。公開後の時価総額は、37〜38億ドル(約4000〜4100億円)となった。ビジョン・ファンドが巨額投資した際のポストマネーのバリュエーション74億5000万ドル(約8100億円)から大幅に下がった。その後、同社の株価は12ドルをわずかに超えた。

2019年12月:ソフトバンクがWagの持ち分売却

ソフトバンクは持ちぶんをWag自身に売却して損失を計上した。

2020年1月およびそれ以前:OYOの問題

OYO(オヨ)の問題の始まりと終わりを描くのは難しい。指摘するとすれば近の資金調達ラウンドの背後で行われた不自然で怪しげな借り入れだ。または10月のこの件かもしれない。最近はさらに不安な状況になっているようだ。今年初めのNew York Timesの記事は、「インドでのOyoの台頭の少なくとも一部は、ビジネスの健全性について疑問を投げかける慣行に基づいている」と述べている。ソフトはOyoを強力に支援している。

2019年12月:Brandlessの売上が半減

Wall Street Journalによれば、Brandlessの「8月時点の販売量は、前年同期に比べ約半分減少した」。

2020年1月:UberのCEOを変えようとする動き

The Informationの記事によれば、Uberの元関係者の一部が同社のCEOであるDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏に満足していない。同社の株価は引き続き低迷しており、同社の赤字体質は一部で予想されているよりも長く続きそうだ。

2020年1月:Zume Pizza(ズームピザ)がレイオフ

驚きではなかったが、悲しいことに変わりはない(レイオフは、支払いを抱える労働者に影響する。資本階級には関係ない)。Zumeは、ビジョン・ファンドから3億7500万ドル(約410億円)を調達したにもかかわらず、スタッフの80%を削減する予定だ。おそらく、ロボットのピザ宅配車にしろ、最新のアイデアが何であれ、実現には少し時間がかかるだろう。

2020年1月:ビジョン・ファンドのタームシート違反に注意

最後に、Axiosは最近、ビジョン・ファンドが複数の創業者とのタームシートを破っていると報告した。ベンチャーの世界ではご法度だ。他のベンチャープレイヤーが公開批判する事態を引き起こした。ビジョン・ファンドが熱く、恐れられていた頃には考えられなかったことだ。

それが今朝思い出したことだ。ソフトバンクやビジョン・ファンドの投資にまつわる問題は、最近の例が他にもあると思う。

当初予定していた通りビジョン・ファンド2は実現するのか。しなければ、誰がビジョン・ファンドのユニコーンたちの価値を維持するのか。ビジョン・ファンド2がなくても、価値を支えるのに十分な資金が市場にあるだろうか。

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(翻訳:Mizoguchi

TモバイルのCEOが退任、WeWorkのトップに移籍か

John Legere(ジョン・レジャー)氏がWeWorkを引き受けるかどうか不明だが、T-Mobile(Tモバイル)のCEOを退任することは間違いないことが判明した。TモバイルはソフトバンクグループのキャリアであるSprint(スプリント)との合併を進めているところだ。

米国時間11月17日、Tモバイルレジャー氏は後任CEOが同社の現COO(最高業務責任者)、Mike Sievert(マイク・シーバート)氏となることを確認した。CEOの交代は2020年5月1日の予定で、レジャー氏は取締役には留まる。

Tモバイルもレジャー氏自身も今後の計画についてはコメントしていない。しかしTモバイルを離れることでWeWorkのトップになる道が開かれたことは確かだ。 レジャー氏はある意味、企業再建の専門家であり、大きな問題を抱えたオフィス賃貸ビジネスを引き受けるのではないかという観測が出ていた。われわれも報じてきたとおり、WeWorkは株式上場を申請したものの、財務状況の悪化と経営上の問題が明らかとなり、一転して申請を取り下げた。ファウンダーのアダム・ニューマン氏がCEOを辞任し、同社の評価額は暴落した。これにより同社に対する大口投資家であるソフトバンクが事態の収拾を図らざるを得なくなっている。

レジャー氏がWeWorkのトップになるという噂は即刻否定されたが、その情報源は「レジャー氏はTモバイルを離れるつもりはないからだ」と断言していた。その前提が覆った以上、WeWork移籍を含めてソフトバンクとレジャー氏の関係は新たな見地から見る必要がある。TechCrunchはレジャー氏に直接取材を試みている。結果が得られ次第お知らせする。

レジャー氏は2012年からTモバイルのトップを務めているが、長い業界経験と大胆不敵な性格を生かし、AT&TとVerizon(TechCrunchの親会社)という巨大キャリアの圧迫の下で苦闘していたTモバイルの活性化を図ってきた。特に「脱キャリア化」というマーケティング戦略は功を奏し、レジャー氏の在任中に株価はアップし、今や時価総額は650億ドルに達している(退任の報が流れた後1.5%下がった)。

シーバート氏はレジャー氏が敷いた戦略を続行するものと見られる。Tモバイルは「我々は消費者の利益を守るため米国のワイヤレス業界のディスラプト要素であり続ける」と述べた。

【略】

別の声明でシーバート氏は、「我々は今後も脱キャリア文化を追求していく。Tモバイルは(レジャー氏という)個人のものではない。経営陣には極めて優れた人材が揃っているし、カスタマーのために全力を挙げる才能ある社員を何千人も擁している。今後の私の使命はTモバイルを市場をリードする存在に成長させ、カスタマー・エクスペリエンスでも傑出した成果を挙げるよう導くことだ」と述べた。

レジャー氏の退任がWeWorkを始めとするソフトバンク傘下企業のトップ人事と関連があるのかどうは今のところ不明だが、TモバイルのCEO交代自体は理にかなっている。Sprintとの合併は「新会社は誰が指揮するのか?」という大きなクエスチョンマークを残していた。合併に伴って新たな人事構想があることは今年に入って発表されていたが、まだ実現していない。合併手続きは来年早々にも完了するものと見られている。

画像:T-Mobile

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクはWeWorkを「壊れたので買わざるを得なかった」

ソフトバンクグループやWeWork、WeWorkの共同創業者である元CEOのアダム・ニューマンについてはすでに大量の記事が書かれている。それでもまだいろいろわからない点が多い。

WeWorkが上場を申請し、そして撤回してからの大騒動はあまりに込み入っているので、多くの読者は見出しをちらりと見ただけで記事の中身を読む気が失せたかもしれない。

それでもこれほどマスコミの評判になっているのはニューマンの奇矯さがほとんどマンガの悪漢レベルに達していたからだ。突飛な振る舞いでは(Twitterの)ジャック・ドーシー以上、学生寮の大学生ぽさが抜けない点では(Snapchatの)エヴァン・スピーゲル以上、「世界を変える」という幻想を振りまいた点では(Theranosの)エリザベス・ホームズ以上だった。上場のS-1申請書を提出する前からWeWorkは批判者にこと欠かなかった。

それでも有名ベンチャーキャピタルのトップは創業者を応援するという立場を取っていた。ニューマン氏には、世界最大のベンチャーファンドのパートナーたちを自分の意に従わせ、追従させるカリスマ性があったのだろう。

だが今やWeWorkはベンチャーキャピタルが後期段階のスタートアップに対して行う投資方法そのものに対する疑問の例となっており、追従どころではなくなっている。WeWorkの問題が本格的に露わになり始めたタイミングで185億ドル(約2兆円)にものぼる2回目の投資を行ったソフトバンクは最も大きなトラブルを抱えこんだ。

資金供給し続けていたソフトバンクは、WeWorkという大穴が空けばその投資は期待を大幅に下回る運用成績となる。シリコンバレーの投資家の多くは直感で巨額の資金を動かしたりしない冷静で伝統的な投資家を望んでいる。しかしソフトバンクのファンドから供給される資金が命綱となっているユニコーン(10億ドル級スタートアップ)は多い。こうした企業はソフトバンクからの資金が途絶えれば干上がってしまう危険に直面している。

ソフトバンクはすでに投入してしまった資金がサンクコスト(回収ができなくなった投資費用)となり、ポーカーゲームでいえば手持ち資金を全額賭ける「オールイン」をするしかない状態だ。現在ソフトバンクに残された道は、ニューマンなしでWeWorkを再建する以外ない。ニューマンを作り出したのはソフトバンクだったが、今度はニューマンを追い払った後で大惨事を大成功に一変させるための方法を探っているところだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクグループCOOでWeWork新会長のクラウレ氏が全力支援を確約

米国時間10月24日、WeWorkの社員集会で不安気な聴衆の前にソフトバンクグループのCOO(最高業務責任者)であるMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)新会長が登壇し「もう心配はいらない」と断言したという。Recodeのスクープによれば同ブログはリークされた録音を入手できた。

ソフトバンクグループの投資額を合計するのを忘れていたら、あるいは同社の株式を持っていたら発言の内容にショックを受けたかもしれない。録音によれば、クラウレ氏はこう語った。

「ソフトバンクはこれまでもWeWorkの将来を保証してきた。しかし一番重要なことは、今や我々は将来を直接この手に取り戻すしたという点だ。金策に駆け回る日々は終わった。投資家に対し、 WeWorkは素晴らしい将来性があるビジネスだと懸命に納得させようとしなくてもいい。ソフトバンクのWeWorkに対するコミットメントは総額185億ドル(約2兆円)だ。わかりやすくいえば、私の母国であるボリビアのGDPより大きい。ちなみにボリビアの人口は 1100万人だ」。

危機に陥っていたコワーキングスペースの最大手WeWorkをソフトバンクグループが救済する一環として、ボリビア出身のクラウレ氏が会長に任命された。クラウレ氏は過去5年間ソフトバンクグループのトップの一員だった。現在はソフトバンクグループのCOOに加えてソフトバンク・インターナショナル、ソフトバンク・ラテンアメリカのCEO(最高業務責任者)を務めている。

クラウレ氏によれば、ソフトバンク創業者の孫正義氏と初めて会ったのは 2013年に自身のスタートアップであるBrightstar(ブライトスター)の57%をソフトバンクに売却したときだったという。同社は米国で携帯電話を再販しており、会社評価額は22億ドルだった。その後ソフトバンクは低価格帯のスマートフォンの再販業に見切りをつけ同社を10億ドルで売りに出した。

クラウレ氏は2014年にはソフトバンクが買収した米国キャリアであるSprint(スプリント)のCEOに任命された。その間株価が大きく下がったことで批判されたものの、Sprintの株価はクラウレ氏が指揮を取り始める前から下がり始めており、昨年T-MobileとSprintの合併が合意されてやっと止まった。

TechchCrunchが報じたように、この合併は司法省に加えて連邦通信委員会の承認を受けた。しかしいくつかの州の司法省長官は「消費者の利益を損なう」として取引の実現をブロックしようと試みている。

WeWorkの社員集会でクラウレ氏は自分の経歴についても. 「マサ(孫正義氏)は私にキミは素晴らしい起業家だと言ってくれた。ゼロから会社を作り上げて成功させ、Sprint問題も解決した」と強気の発言をしたという。

不安を鎮めようと、クラウレ氏はこれまでソフトバンクが困難なチャレンジに打ち勝ってきたと繰り返し述べた。クラウレ氏によれば、「マサと私はWeWorkについて次に何をなすべきか数えきれないほど眠れぬ夜を過ごしてきた。正直に言えば、外からの助言の99%までは損切りして逃げろというものだった。しかしマサはWeWorkのビジョンと使命に絶対の確信を抱いていた」という。

「『なぜそうまで確信を持てたのか』という疑問が湧くだろう。実際、逃げるほうがはるかに簡単だ。我々はこうした巨額の投資を強制されたわけではない。そういった義務は一切なかった。しかし我々はソフトバンクの将来、ソフトバンクの評判を賭けた。WeWorkが成功するという結末に我々はすべてを賭けているのだ。我々に今必要なのはこの決断が失敗ではないと考える人々だ。この決断は天才的なものだ。マサと私は何夜にもわたって議論をし尽くした。WeWorkのビジネスについて深く考えれば考えるほど好きになった。会社のマネージャーたちにも会った。そして知るほどにこの事業がさらに好きになった」。

クラウレ氏によれば、WeWorkを救うために何をすべきなのか、それはまだ明確ではないという。

「次の30日の私の任務はアーティー(・ミンソン氏)、セバスチャン(・ガニンガム氏)をはじめとする素晴らしい経営陣に加わり、具体的なプランを策定することだ。このプランは非常に具体的なものとなる。我々は全員が何をなすべきかをはっきり認識するだろう。空約束のたぐいではない。達成すべき数値目標を決めるつもりだ。そして実行にあたっての責任も明確化させる」。

クラウレ氏が触れなかった問題点の1つは対米外国投資委員会(Committee on Foreign Investment in the U.S.)の動向だ。Bloomberg(ブルームバーグ)が10月23日夜報じたところではソフトバンクはCFIUSからWeWork取得についての承認を得ようとしているという。同委員会は過去に安全保障上の理由から米国におけるソフトバンクの事業をブロックしたことがある。

過去にCFIUSはソフトバンクのSprint支配に条件を課した。また2017年にはソフトバンクが子会社化したFortress Investment Groupの投資業務を運営することを制限した。Bloombergによれば数十億ドルをUberに投じたにもかかわらず、ソフトバンクは同社に2人の取締役を送り込むことをCFIUSに禁じられた。NYSEへの上場後、Uberはソフトバンクに対する義務のいくつかを解除することに成功しているという。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

WeWorkのクラッシュはベンチャーキャリズムが機能している証拠だ

WeWorkをめぐる波乱から我々は何を学ぶべきだろうか?

WeWorkはつい最近までシリコンバレーを代表する急成長スタートアップであり、ここ数年ベンチャー投資家の熱い視線を集めてきた。WeWorkの創業者/CEOは有力メディアのカバーストーリーにたびたび取り上げられ、TechCrunch Disruptを含めてテクノロジーカンファレンスではキーノートに登壇していた。ピーク時に同社の評価額は数百億ドルになった。衛星軌道に入ってGoogleやFacebookと肩を並べる世界的巨大企業になる日も近いかという勢いだった。

ところが文字どおり数日でWeWorkはクラッシュした。

創業者/CEOは事実上解任され、会社評価額75%以上暴落した。大量レイオフも間近だという。当然ながら外部投資家、社員含めて株主の損害は莫大だ。

キャピタリズム、ベンチャーキャリズムにとっては手痛い敗北であり、特に孫正義氏のソフトバンクは大きなダメージを受けただろう。WeWorkにはこれというファンダメンタルズ(基盤)が存在しなかったにも関わらずソフトバンクは同社を偏愛し、投資しすぎ、関与しすぎた。

では最初の疑問に戻ろう。WeWorkのクラッシュからわれわれは何が学べただろうか?ひと言でいえばゼロだ。別に何も学ぶものはない。

ベンチャーキャリズムというのは本質的にハイリスクなギャンブルだ。的中すれば途方もないリターンを手にすることができる。個別企業にせよベンチャーキャピタルのポートフォリオ全体にせよ、評価額の算定にはこのリスクがあらかじめ組み込まれている。ベンチャーキャピタリストは投資、つまりスタートアップの株式を買うにあたって、その会社のリスク要因を推計するだけでなく、ポートフォリオの収益が最大化されるよう全体の組み立てを考えねばならない。

WeWorkの場合、外部資金の大きな部分はソフトバンク・ビジョン・ファンドから出ていた。ソフトバンクはファンドへの大口出資者と争ってまで、WeWorkに繰り返し出資してきたが、その結果はごらんのとおりとなった。

しかしそれが賭けというものだ。

ベンチャーキャピタルの投資のほとんどは失敗に終わる。投資額の一部を失うこともあれば全額をすってしまうこともある。

しかしときおり大当たりを引き当てる。孫氏は中国の無名の通販会社に2000万ドルを投じた。今やソフトバンクが持つAlibaba(アリババ)の株式には1000億ドルの価がある。今年、ソフトバンクが数年前に110億ドルでアリババ株の一部を売却したことが明ららかになったが、それを別にしての話だ。

これがベンチャーキャピタルの数式だ。つまり 1110億÷2000万は5550倍だ。世界中のどんな金融資産を探しても1ドルが数千ドルに化けるような仕組みは存在しない。

WeWorkの失敗はこの数式の基本を変えるものではない。ビジョン・ファンドはオンデマンドで犬の散歩やケアを提供するスタートアップであるWagに3億ドルを投じたものの会社は苦境にある

そもそもどんな投資ポートフォリオであろうと損失は発生する。ベンチャー企業では利益に先立ってまず損失が発生するというJカーブ理論は健在であり、これに当てはまる実例は多い。

それにWeWorkは破たんしたわけではない。手持ち資金は残っているし再建は可能だろう。将来、史上最大の利益をもたらすスタートアップになる可能性もないとはいえない。もちろん清算まっしぐらということだってありえる。ビジョン・ファンドにとっての収支はどうなるだろうか?考慮すべき要因が無数にあり、それはら週、月、年単位で変化していく。

確実なことを予測するには早すぎる。私の見るところ、ビジョン・ファンドが野心を達成できるかどうか判斷するにはあと5年はかかると思う。

念のために断っておくが、私はベンチャーキャリズムを特に擁護しているのではなく、キャピタリズム全般を擁護しようとしている。

左派経済学者のMatt Stoller(マット・ストーラー)氏はWeWorkなどの巨大テクノロジー企業を偽の資本主義の典型と呼んでいる。つまりバズワード、トレンド、創業伝説、でっち上げのグラフなどによって中身のない成長を演出し、ベンチャーキャリズムが独占企業を作り出して競争を封殺するものだというのだ。

しかしこの説は資本主義と資本主義的投資の本質について完全に誤っていると思う。ベンチャーキャピタルが支援していようといまいと、創立の日から利益を上げられる企業など例外中の例外だ。ハイテク企業に限ったことではない。レストランを開業するにはまず店の賃貸契約を結び、設備を購入しなければならない。実際に客が店にやってくるようになるのははるか後だ。ソフトウェア企業も同じことだ。ユーザーが料金を払うようになる前にまずソフトウェアを書かねばならない。

投資はアイデアとその実現の間に架け渡される橋だ。

問題はスタートアップはどのくらいの期間、赤字を出し続けられるかだ。10年、20年前は企業が上場したければ黒字でなければならなかった。これは不合理だ。いったいなぜ上場という特定の時点を選んで成長を減速させるようなキャッシュフローの調整をする必要があるのか?黒字化のタイミングとしては上場前がいいこともあるだろうし、上場後が適していることもあるだろう。

この数年、少なからぬ投資家がキャッシュフローよりも成長速度に重点を置くようになっている。スタートアップが利益を出し始めるまでに数年待つことも珍しくない。言い換えれば、投資家は以前よりはるかに長期的な視点で物事を考えるようになっている。重要なのは最終的に目指すゴールだ。

WeWorkを黒字化する方法はある。最近新たに得た拠点を閉鎖し、大都市圏の物件だけに集中すれば短期間でキャッシュフロー・ポジティブを達成することは可能だろう。もちろんVビジョン・ファンドもこれは十分承知していると思う。しかし世界のオフィス供給を制覇する可能性があるというのに、なぜ目先の利益のために小さく固まらねばならないのか?

我々は大胆な賭けを応援すべきであり、足をひっぱるべきではない。もちろんWeWorkも結局は大失敗に終わる可能性はある。しかしたとえそうなっても「資本主義は機能しない」ということを意味しはしない。実際、その逆だ。キャピタリズム、特にベンチャーキャピタリズムは以前ににも増して未来に、つまり将来の成長に賭ける仕組みとなっているのだ。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクが出資する自動車サブスクのFairが国際派人材を獲得して業務拡大へ

ソフトバンクが出資し、Uberと密接な関係を持つ自動車サブスクリプションのスタートアップであるFairは、ビジネスの重要部門をリードする人材をスカウトしたことを発表した。

今回テクノロジー、ベンチャーキャピタル、自動車業界出身の新しいトップが就任したのはサブスクリプションアプリ、財務、Uberとのリース契約を担当する部門だ。Fairはこれにより、Uberとの提携を進化させ、北米以外にもネットワークを広げようとしている。

Jay Trinidad(ジャイ・トリニダッド)氏は、Google、Discoveryなどで幹部を務めた経験があり、最高プロダクト責任者となった。同氏はアプリ開発をはじめとしてテクノロジーと業務開発全般を指揮する。
TrueCarの前・最高財務責任者であるJohn Pierantoni(ジョン・ピエラントーニ)氏は財務および財務リスク担当の上級副社長に就任した。

Uber関連事業を担当することとなったPat Wilkison(パット・ウィルキンソン)氏はベンチャーキャピタルであるExponential Partnersのジェネラルパートナーで、ExponentialはFairの最初期からの投資家だ。

3人のエグゼクティブのスカウトに成功したこと創立後3年となるスタートアップにとって大きな意味がある。これにより同社はCaaS(カーアズアサービス)というコンセプトを消費者に納得させるための大きな一歩を踏み出した。自動車といえば消費者はローカルの自動車ディーラーから購入するかリースすることが普通だった。これに対してFairは、15億ドルという巨額の資金に加えて、サービスのプラットフォームだという点がセールスポイントだ。

ファウンダーでCEOのScott Painter(スコット・ペインター)氏はTrueCarのファウンダーで前CEO、自動車リースの専門家だ。他の共同ファウンダーも通販、金融などの専門家だ。同社は現在大きく普及したギグ・エコノミーの考え方をベースに自家用車の柔軟な利用方法を提案しようとしている。

Fairは伝統的なリース形式を革新してユーザーにさらに広い選択肢を提供することを目標としている。法的にはリースの一種だが、ユーザーは自由に自動車をチェンジできるなど自由度の高いサブスクリプション契約を結ぶ。

この事業をスケールさせるには巨額の資金を短時間で投資することが必要であり、「スカウトした3人はこれを実行するのにうってつけの人材だ」とペインター氏は考えている。

ユーザーがFairを利用する上でCaaSインフラそのものに加えて、決済方法、資金プランニングの構築が必須となる。各部門のトップに迎えた人材はアメリカ国内はもちろん世界を舞台にアグレッシブに活動し消費者の自動車所有のコンセプトを変えていくという。

今回の採用は我々も報じた3億8500万ドル(約410億円)という超大型の資金調達に引き続くものだ。このシリーズBはソフトバンクがリードし、Exponential Ventures、Munich Re VentureのERGO Fund、 G Squared、CreditEaseなどの投資家が参加している。

ペインター氏は声明で次のように述べている。

3億8500万ドルのシリーズBを完了したことで、我々は自動車などの資産を購入すると同時に優秀な人材をスカウトし、市場に対する洞察を深め、リーダーシップを強化することができるようになった。ジャイは豊富な経験により実施面でのリスクを最小化し、事業運営の戦略を立てる。パットは投資家だが、今回我々の十字軍に参加してくれた。ジョンは世界でもトップクラスの財務会計の専門家であり、我々のサブスクリプションと自動車損害保険のシステムを堅実な基盤の上に構築してくれるものと信じている。

Fairは2018年1月に、Xchange Leasingの契約中のリース資産とサービスを買収した。このスタートアップはUberが2015年に設立したもので、自分車を所有していないドライバーがUberに参加しようとするとき新車ないし新車に準ずる中古車をリースすることが目的だった。

このXchangeのリース部門はFairの事業の基礎をなすといってもいい大きな意味がある買収だった。現在Fairが保有する自動車の45%はUberのドライバーが使用しているという。

Fairは事業の国際展開にも強く期待しており、新しい最高プロダクト責任者のトリニダッド氏はTechCrunchのインタビューに対し、「来年は海外への事業拡大に力を入れていく」と語った。Fairはまだ具体的にどの国か明らかにしていないが、トリニダッド氏はGoogleやディスカバリーチャンネルなどで海外に長く駐在し国際経験が豊富だ。こうした経歴を考えるとFairの国際展開のターゲットはまずアジアとヨーロッパになるだろう。

トリニダッド氏は「全力でビジネスを拡大する。近くもっと大きなオフィスに移る予定だ」と述べ、またビジョンを次のように語った。

ロサンゼルスとサンフランシスコでは1年以内に「自動車がいるなFairからサブスクリプションすればいいじゃないか」と人々が言うようになるはずだ。われわれはサブスクリプションが購入、リースに次ぐ第3のオプションになるものと期待している。

画像: Justin Sullivan / Getty Images

【Japan編集部追加】 LinkedInによれば、Jay Trinidad(ジャイ・トリニダッド)氏はGoogle Asia Pacific、日本マクドナルド、Square、翻訳スタートアップのGengo、Discoveryなどの幹部として長く東京に駐在している。このことから考えるとFairはまず日本に進出する可能性がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

T-MobileとSprintの合併を司法省が承認、衛星放送のDishが携帯事業に参入へ

米国時間7月26日、米司法省はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の超大型合併を承認した。この合併により加入者数で米国で第3位と第4位のモバイルキャリアが単一の会社となる。T-Mobileは260億ドル(約2兆8255億円)をSprintに支払う。

反トラスト法をクリアするため、SprintがBoost Mobileなどのプリペイド携帯事業をDish Networkに売却することが合併の条件となる。この条件に基づき、900万人のプリペイド携帯のユーザーはDishに移るが、向こう7年間はT-Mobile、Sprintの携帯網にアクセスできる。

TechCrunchはこの4月にT-MobileとSprintが合併で最終合意したが、米政府の承認が課題と報じている。T-MobileはドイツのDeutsche Telekom(ドイツテレコム)、Sprintは日本のソフトバンクのそれぞれ子会社だ。

この合併は両社間で合意をみていたが、規制当局による審査に時間がかかっていた。これはAT&T、Verizon(ベライゾン)と合併後の3社が米国の携帯電話加入者の95%を占めることになるからだ。先月、ニューヨーク州、カリフォルニア州の司法長官を代表としていくつかの州の司法省が合併を承認しないうよう求めて訴訟を起こしていた。訴状によれば、この合併は競争を制限することにより料金の上昇を招き、長期的にみて消費者の利益を脅かすからだという。ニューヨーク州司法長官のLetitia James(レティーシャ・ジェームス)氏はTechCrunchに対して次のよう述べた。

合併の条件としてT-Mobileが約束する(プリペイド携帯などの事業をDishに移管するという)措置は、そもそも市場に健全な競争がなければ無意味となる。競争を促進するという口実のもとに政府が恣意的に第4位のキャリアを創設しようとすることに我々は深刻な懸念を抱いている。これは消費者にもテクノロジーのイノベーションにとっても有害な結果をもたらす。

カリフォルニア州司法長官の広報担当者はTechCrunchに対して「我々は引き続き合併条件を検討している」と述べた。州司法省による訴訟は以前として合併を妨げるハードルになり得る。Consumer Reportsの上級政策担当弁護士であるGeorge Slover(ジョージ・スローバー)氏は次のように批判した。

報じられている合併は実績ある競争者であるSprintを消滅させ、携帯事業者としてまったく実績のない新参のDishを4位の事業者にしようとするものだ。Dishは衛星放送事業者であり、独自に携帯を構築、運用した経験はまったくないため、ゼロからのスタートなる。携帯電話事業が寡占とならないことを保証するためにDishの参入が必要とされたわけだが、同社が携帯電話事業で現在Sprintが占めている地位に到達するまでには(到達できるとしても)何年もかかるだろう。

一方、合併推進派は現在の米国の携帯電話事業はVerizon and AT&Tが圧倒的に優勢であり、合併はT-Mobile、Sprinがこれら上位2社との競争を助けるものだとしている。合併が実施されればT-Mobile(合併後はT-Mobileが存続会社)は米国において8000万人のユーザーを持つことなり、それぞれ1億人以上の契約者をもつVerizon、AT&Tに迫るサイズとなる。T-MobileとSprintはそれぞれAT&T、Verizonに対する競争力の強化と巨大な建設費を要する5Gネットワークの実現には両社の合併が必要であると主張していた。司法省はこの主張を認めたかたちだ。

司法省反トラスト法部門のトップであるMakan Delrahim(マカン・デラヒム)氏はWall Street Journalに対し次のように述べた

この合併とこれに付随する取り決めにより、現在利用されていないか、利用が著しく不十分である電波帯域を米国の消費者が必要とする高品位な5Gネットワーク建設のために活用することできるようになる。

T-Mobileは合併の意思を固めた後、実現に向けて何年も非常にアグレッシブなロビー活動を行ってきた。特にCEOのJohn Legere(ジョン・レジャー)氏を始めとする経営陣は4月以降、ワシントンDCのトランプ・インターナショナル・ホテルで滞在費など19万5000ドルを使っている。

【Japan編集部注】TechCrunchは、Verizonに属するウェブメディアだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンクがマイクロソフトにビジョンファンド2号に参加を呼びかけ

ソフトバンクグループは、投資総額400億ドルというマンモス級のベンチャー投資となるビジョンファンド2号の組成を発表する準備を進めているとウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。これに先立って、1号ファンドの運用成績が投資家を熱狂させるほどではなかったため、ソフトバンクグループは2号ファンドの資金集めに苦労しているという噂が数週間前から出ていた。

同社はコメントを控えている。

ビジョンファンド2号に出資することを確約した投資家の第一陣にはゴールドマン・サックスとStandard Carteredが含まれているが、ここにきてソフトバンクグループはMicrosoft(マイクロソフト)と話し合いを行っている情報が流れた。ソフトバンクグループがポートフォリオ企業に対し、クラウドインフラをAWSからMicrosoft Azure,に乗り換えるよう勧めることがMicrosoftがビジョンファンドに参加する条件だという。ビジョンファンドには台湾の年金基金や保険会社も興味を示しているという。Microsoftにも取材を申し込んでいるが、今のところ回答はない。

T-Mobileとソフトバンクグループが過半数の株式を握るSprintとの合併について、米司法省は早ければ来週にも承認を与える見込みだ。この合併が承認されれば、ソフトバンクグループは資金繰りに余裕が生まれ、ビジョンファンド2号に対する出資に追い風となる。

2016年に同社のビジョンファンド1号がデビューしてその規模で世界を驚かせて以来、同社のファウンダーでCEOの孫正義氏はメディアの注目集めてきた。2017年5月には第1回の投資締め切りで930億ドルを確保、さらに追加投資を得て、ファンドの総額は980億ドルとなった。ポートフォリオのターゲットは世界のテクノロジー・スタートアップで、特にIoT、AI、ロボティクス、mバイル、コンピューティング、クラウド・テクノロジー、コンシューマ向けテクノロジー、フィンテックに注力している。これまでのところ、大型投資先には、Brandless、WeWork、Ola、Grab、滴滴出行、Uber、Lemonadeなどが,含まれる。

1号ファンドに対する最大の出資者はサウジアラビアとアブダビの国営投資ファンドだった。サウジがこれまで数々の人権侵害を行ってきたことから、ビジョンファンドがサウジマネーを大規模に受け入れたことはシリコンバレーで倫理的問題に関する議論をよんだ。Apple(アップル)、Qualcomm(クアルコム)、Foxconn(フォックスコン)もビジョンファンドにLP(リミテッド・パートナー)として参加している。

画像:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto / Getty Images[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook

ベンチャーキャピタルはなぜ大型化に向かうのか?

(編集部)この記事の筆者はNGP Capitalのマネージング・パートナーPaul Asel氏。同氏はテクノロジー分野の投資家として25年以上の経験がある。

SoftBankとAndreesen Horowitz(a16z)の両社は最近ベンチャーキャピタルの投資規模を拡大するような発表を行っている。Reutersの記事によれば、SoftBank関係者はVision Fundの上場を検討していると述べたという。実現すればベンチャーキャピタルとして初の株式公開となる。 一方、Andreesen Horowitzはアーリー・ステージ向けの7.5億ドルとグロース・ステージ向け20億ドルの2つのファンドの組成を発表した

A16zは過去1年半でバイオと暗号通貨に特化したファンドなどなど一連のファンドを組成しており、総額は35億ドルだ。ファンドにはAndreesen Horowitzに加えてGGVLightspeedSequoia などの著名ベンチャーキャピタルが加わっている。これらのVCは投資先のステージ、地域、専門分野などに応じたファンドを組成してきた。ここ1年半でSequoiaは9つのファンドを組成し、総額は90億ドルに近い。Lightspeedは4つのファンドで合計30億ドル、GGVも4つのファンドで18億ドルをコミットしている。

こうした大型ファンドが多数生まれていることはベンチャーキャピタルの大きく地図を塗り替えるものだ。ベンチャーキャピタルはもはや毎週月曜の朝に何人かのパートナーが小さなテーブルを囲んで次はどの会社に投資すべきか議論するようなコテージ・インダストリーではなくなった。

以前のベンチャーキャピタリストはいってみれば歯科クリニックのような個人営業に近かった。ベンチャーキャピタルはいまや人事、広報、金融、法務、営業などの部門を擁する大企業となり、社内にはバイオ、ロボット、暗号など各投資分野の専門家の大群を抱えている。SoftBank、Sequoia、GGVなどはほんの数名のパートナーでスタートしたが、現在はまたたくまに数百人のチームに成長した。

スタートアップへの投資は本質的にローカルビジネスだ

投資銀行の発達の歴史はベンチャーキャピタルの今後を占う上で役立つだろう。有力な投資銀行や非上場企業に投資するプライベート・エクイティ・ファームは何十年もの間結束は固いが小さな産業分野だった。それが投資規模の拡大によって一般的な企業の構造を備えるようになった。メリル・リンチは1914年に株式ブローカーとしてスタートした。当初は閉鎖的な投資銀行業界への新参者という扱いを受けた。当時はゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、リーマン、クーン・ローブなどの古参投資銀行が市場を支配して高い利益率を誇っていたが、株式市場から潤沢な資金が流入するにつれてメリル・リンチなどの新しい投資銀行が追い上げていった。

やがて投資銀行業界にM&Aの波が押し寄せ、それまでのパートナーシップに代わって近代的大企業の枠組みが主流となる。1854年創立のリーマンは1977年にクーン・ローブを買収し、次に1984年に自身がアメリカン・エキスプレスに買収された。リーマンの投資銀行業務はシアソン・ハットン・リーマンに移管され、1994年にリーマン・ブラザーズ・ホールディングスとしてニューヨーク証券取引所に上場される。投資銀行の大型上場ではモルガン・スタンレーが1993年に、ゴールドマン・サックスが1999年にそれぞれ実現している。

プライベート・エクイティ・ファームもすぐにこのトレンドに続いた。投資銀行同様、当初は小規模なパートナーシップで出発したが、活発なM&Aを支えるために貪欲に資金を求めていた。この資金需要を満たすには上場して株式市場から調達するのが近道だった。現在プライベート・エクイティ・ファームのトップ5社はすべて上場企業だ。ポートフォリオ2500億ドルのApollo Global Managementは2004年に、4700億ドルのBlackstoneは2007年に上場しており、Carlyle、KKR、Aresもすぐに続いた。

長らくベンチャーキャピタルは投資銀行とプライベート・エクイティ・ファームに訪れた巨大化とM&Aの波から隔離されていた。 スタートアップへの投資は本質的に相手をよく知っていなければならないローカルビジネスだ。テクノロジーの革新は歴史的にみて「早いもの勝ち」だ。MicrosoftOracleの例をみても、こうしたリーダー企業の資金効率は非常に高かった。多くの場合、上場以前の資金調達は総額で2000万ドル以下に過ぎなかった。ベンチャー企業は本質的にリスクが高く、不安定なビジネスだ。利益は企業ごとに大きく異なり、失敗の率も高く波も大きい。

イノベーションにはますます金がかかり、起業家はVCにますます多くを求めるようになった

しかし投資銀行やプライベート・エクイティ・ファーム同様、ベンチャーキャピタルも資金量が勝負となってきた。イノベーションを起こすには金がかかる。起業家も投資家もビジネスの着実な成長より一発勝負の革命を求めるようになる。既存のライバルの脅威を退けるためにはいわば衛星軌道に入れる地球脱出速度が求められる。スタートアップは次第に成長するにつれて有力な既存大企業と競争を強いられる。起業家としては資本効率の高い「リーン・スタートアップ」がトレンドだが、ベンチャーキャピタル側からみるとスタートアップをサポートするためのサービスづくりは決してリーンではない。特に財務、法務、マーケティングなど成長を加速するために必須の部門に人材を確保するには多額の資本を必要とする。現在大手ベンチャーキャピタルでは直接投資に携わるスタッフよりもサポート部門の人員のほうが多くなっている。

ベンチャーキャピタルは多様化、分断化が著しい業界だ。シリコンバレーだけでも200社以上のベンチャーキャピタルがひしめきあっている。これまでテクノロジーのイノベーションとは無縁と思われていたような地域、国々に数百のベンチャーキャピタルが生まれている。しかしベンチャーキャピタルへの需要が高まるにつれ、大量の資金を動かせる大型ベンチャーキャピタルが有利になる。今後10年程度で群小ベンチャーキャピタルの統合が進むのは間違いない。

大型化するベンチャーキャピタルの攻勢に耐えて一部の業種に特化したブティック型の投資銀行やプライベート・エクイティも生き残っている。同様に小規模なエンジェル投資、シード投資もSoftBank式の組織的な投資方式に対抗している。特定のテクノロジーや特定の地域、またそこで活動する起業家を熟知したベンチャーキャピタルは継続的に高いリターンを得ている。しかしながら、資本の集中度合が強まっているのが現実のトレンドだ。周辺には能力の高いエンジェル投資家、シード投資家が残るとしてもベンチャーキャピタル業界は投資銀行と同様、最終的には少数の巨大なグローバル企業が寡占するる世界になるだろう。

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滑川海彦@Facebook

ソフトバンクとトヨタ合弁のオンデマンドバス事業に5社の自動車メーカーが参加

ソフトバンクとトヨタの合弁事業MONET Technologiesは、最終目標としては自動運転のモジュール構造バスによるオンデマンドの交通サービスを提供する。同社にこのほど、5社の新たなパートナーが加わった。

5社はいずれも日本の自動車メーカーで、いすゞ、スズキ、スバル、ダイハツ、そしてマツダがそれぞれこのベンチャー企業に2%の投資を行う。ソフトバンクとトヨタはそれぞれ、35%を保有している。ホンダと、トヨタ傘下のトラック製造企業日野自動車はそれぞれ、10%を保有している。

このベンチャー企業は昨年9月に創業され、バスと自動車によるオンデマンドの交通サービスを来年日本で開始する。CES 2018でデビューしたコンセプトカーであるe-paletteをベースとするトヨタの自動運転車が、このサービスの主役を担う。

e-Paletteの電動車はインテリアがモジュール構造で、人の搬送や貨物輸送、移動式屋台など、さまざまな利用目的を実装できる。

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このベンチャーは投資を共有するだけでなく、各社がデータを共有できるメリットも大きい。自動運転車によるMaaS(Mobility as a Service、サービスとしての移動交通サービス)の構築にはデータセットが欠かせない、とMONETの社長兼CEO宮川潤一氏は述べている。

これより前にトヨタは、利用者が乗車をアプリで要求できるオンデマンドのバスサービスのパイロット事業を開始した。そのパイロット事業は豊田市の大原地区で行われている。一方このベンチャー企業は、福山市の服部校区で多目的シャトルを含むデモンストレーションプロジェクトを行った。

画像クレジット:トヨタ自動車

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa