米国時間2月26日、Facebook(フェイスブック)の社内R&DグループであるNPEチームが、新たな実験的アプリ「BARS」を発表した。このアプリは、プロが作成したビートを使って、ラップを創作・公開できるもので、NPEチームが音楽分野で起ち上げたアプリとしては、最近一般に正式公開されたミュージックビデオアプリ「Collab」(コラブ)に続いて2つ目となる。
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Collabがオンラインで他の人と一緒に音楽を作ることに焦点を当てているのに対し、BARSは自分の動画を作成して公開したいと思っているラッパーを対象としている。このアプリでは、ユーザーは何百ものプロが作成したビートの中から好きなものを選択し、自分のリリックを書いて、動画を録画する。BARSはまた、ユーザーがリリックを考えている時に自動的に韻を提案する機能もある。さらに、映像に適用できるさまざまな視覚効果フィルターや、オートチューン機能などのオーディオ用フィルターも使用できる。
「チャレンジモード」も用意されており、これは自動提案された言葉でフリースタイルのラップを行うというもので、ゲーム的な要素を備えている。Smule(スミュール)の「AutoRap(オートラップ)」のように、単にラップを楽しみたい人にも受け入れられるようにデザインされており、おそらくユーザーが自分で作成したビートも使用できるようになるだろう。
BARSは最長60秒までの動画を作成可能で、カメラロールに保存したり、他のソーシャルメディアプラットフォームでシェアしたりすることができる。
Collabと同様に、新型コロナウイルスの流行がBARSの制作にひと役買ったようだ。ウイルスの影響で、ラッパーが自分の作品をライブで試すことができる場所や機会が得られなくなってしまったと、NPEチームのメンバーであるDJ Iyler(DJアイラー)氏は説明する。同氏は自身も「D-Lucks」という名前でヒップホップソングを制作している。
「ラッパーを目指す人々にとって、高価なレコーディングスタジオや制作機材を利用できる機会は限られていることを、私はよく知っています。それに加えて、世界的な新型コロナウイルス感染流行の影響で、私たちが作品を制作し、公開することが多いライブパフォーマンスをできる場所が閉鎖されてしまいました」と、彼はいう。
意欲的なラッパーたちのチームによって作られたBARSは、米国で2月26日よりクローズドベータ版の配布が開始された。
この新しいアプリは音楽、特にラップに焦点を当てているものの、FacebookがTikTok(ティックトック)の競合(少なくともこのカテゴリにおける)を開発しようとする試みの1つと見ることもできる。
TikTokは、すでにラッパーを含む新進気鋭のミュージシャンにとって、自分の作品を公開するための発射台となっている。ラッパーは自分のリリックを試すことができ、多くのビートメーカーに支持されているだけでなく、どのような音楽が作られるかということにも影響を与えている。ディストラックもまた、TikTokで非常に人気のあるフォーマットになっており、主にインフルエンサーが事件を煽ったり、意見を追求したりする手段として使われている。つまりTikTokにおけるラップの界隈にはすでに大規模なソーシャルコミュニティができ上がっており、Facebookはその一部の注目を奪いたいと考えているということだ。
BARSは、ユーザーインターフェイスの点でもTikTokと似ている。それは2つのタブで構成された縦長の動画インターフェースで、TikTokの「フォロー中」と「おすすめ」の代わりに「Featured」と「New」のフィードが表示される。そしてこのアプリは、やはりTikTokのように、画面の右下にエンゲージメントボタンを配置し、左下にクリエイター名を配置している。
しかし、BARSで動画を「お気に入り」にするには、ハートをタップするのではなく、動画をタップすると「火」がつく(動画が再生されている間は、火の絵文字が表示される)ようになっている。「火」は何度でもタップできる。しかし、BARSには(厄介なことに)タップして一時停止する機能がないので、動画の再生を停止する方法を探している時に、誤って「火をつけて」しまうことがある。進めるには垂直方向にスワイプするのだが、インターフェイスにはお気に入りのクリエイターを「フォロー」するための明確なボタンが見当たらない。それは右上の3ドットメニューの下に隠されている。
アプリには、意欲的なラッパーや元音楽プロデューサー、パブリッシャーを含むNPEチームのメンバーからのコンテンツが組み込まれている。
現在、BARSのベータ版は米国のiOS App Storeで配信されており、招待希望者のウェイティングリストが開放されている。Facebookによると、BARSの招待は米国で開始され、数回に分けて行われるという。招待に関するアップデートやニュースはInstagram(インスタグラム)で発表される。
Facebookの実験的アプリ部門から最近発表されたアプリには、Collabの他、コラージュメーカーの「E.gg」(エッグ)などがあるが、すべてのアプリが定着するわけではない。市場を牽引することができなければ、Facebookはそれらのアプリを廃止する。実際に同社が2020年、Pinterest(ピンタレスト)風の動画アプリ「Hobbi」でそうしたように。
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タグ:Facebook、音楽
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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)