2016年は”VR元年”だなんて言われているが、その波はオンラインメディアにも押し寄せている。2015年11月設立のSkyballは5月11日、サッカー特化の動画メディア「サカチャン」を正式公開した。
サカチャンはサッカーに特化した動画メディアだ。Jリーグの各チーム(オープン時点では横浜F・マリノス、大宮アルティージャ、セレッソ大阪の3チーム)の練習風景を中心に取材。短い動画として編集して配信する。動画の一部は360度動画になっており、スマートフォンなどを使って、臨場感のあるコンテンツとして楽しむことができる。
基本的に配信するのは独自コンテンツだ。チームごとに週1回の取材を行い、毎回20本程度の動画を作成するという。ベータ版運用時に公開した横浜F・マリノスの中村俊輔選手の360度動画は、Facebookでのシェアのみで公開から48時間で20万人以上に視聴されたという。「練習風景の動画コンテンツは世に出回ってない。ヨーロッパのクラブチームならYouTubeの専門部隊などがある場合もあるが、日本ではほとんどなかった」(skyball代表取締役の熊谷祐二氏)熊谷氏は2007年に起業。求人情報検索サイトやソーシャルゲームなどの領域を手がけた。その後2014年には4人目のメンバーとしてiemoに参画。おもに国内での経営、開発のマネジメントを行った。iemoは同年9月にディー・エヌ・エーに買収されるが、買収後に同社を退社。2014年末から世界一周の旅行に出かけたのちにSkyballを起業した。
「iemoでの経験はとてもエキサイティングだった。代表(の村田マリ氏)がシンガポールを拠点にしていたこともあり、国内を中心に様々な経験をさせてもらった。その一方で、自身が30歳を迎えるにあたってゼロイチでサービスをやりたいという思いが強くなっていた」
「そんなときに興味を持ったのが『SportTech』。自身が高校まで野球をしていたし、旅先ではプレミアリーグなどサッカーの試合がどこでも、みんなで盛り上がることができると知った。ITとスポーツ、どちらも人と人を繋げるもの。今では選手が自らメディアで発信もするし、ビッグデータだって活用されている」
「(FCバルセロナ所属でブラジル代表選手の)ネイマールのインタビュー記事で『子どもの時にネット上にあったブラジル代表の練習動画を観て、技術をマネしていた』という話があった。調べてみると今どきのサッカー少年は、親や自身のスマートフォンでゲームをするか、YouTubeでサッカー動画(好きな選手のハイライトやテクニック集)を観ていることが分かった。米国ではThe Player’s Tribune、uninterruptedなど新しいスポーツメディアも登場しており、この領域に挑戦しようと思った」
今後は取材範囲を拡大するほか。撮影スタッフやエンジニアなどの人材の採用強化を進める。現在は外部資本を入れていないが、資金調達も検討している。
熊谷氏は単純に動画メディアを成功する、というだけでなく「スポーツクラブの良きIT商社」になりたいと語る。「スポーツ業界にあらゆるITソリューションを提供していきたいし、クラブだけでは対応しきれないコンテンツを提供し、選手とファンの新たなコミュニケーションの場を作りたい」(熊谷氏)。また今後はVRやARを使うことでスポーツの新たな視聴体験を提供していくという。