3年間、MacBook Airは不在にしていた。といっても、もちろんこの超ポータブルなPCがAppleのサイトから消えていたわけではない。しかし「Appleはなぜ他のMacBookラインを見直しているのに、最も人気のプロダクトの一つであるMacBook Airを無視し続けるのだろう」とプレゼンがあるたびに思っていた。
だが先月ブルックリンで開かれたイベントで、Appleはとうとう10年半前にMacBook Airが発売されて以来最大のアップデートを発表した。熱狂的な聴衆で埋まったイベントで、Airはいとも簡単に最大の拍手喝さいを浴びたー喝さいはiPad Proより大きく、おそらくMac Miniよりも大きかった。
ファングループは明らかに新Airを待ち望んでいた。
Airを正しいものにするというのは手際を要する仕事だ。AirはMacBookシリーズで最も薄い製品であるばかりでなく、最も安い。その組み合わせにより、Airは旅行を頻繁にする人や、MacOSエコシステムに入る最も安いルートを探している人にとって人気となっている。ラインに追加されるハードウェアというのは値段が上がる傾向にある。たとえばMiniの場合、499ドルから799ドルへと大幅に上がり、これによりエントリーレベルという特徴をMiniは失ってしまった。
Airの価格も上がったが、Appleは総合価格と相対価格という点で抑制することができた。1199ドルというラップトップのローエンドバージョンは、Macエコシステムに入るのに最も安いものだ(古いAirを除けばの話で、こちらはまだ999ドルで購入できる)。
最新アップデートでAirはMacBookラインナップの中でようやく居場所を見つけたようだ。現在のイテレーションは2015年の大きなオーバーホールからのことだ。MacBookクラブの仲間入りするというのは、USB-Cへの移行、内部の強化、そしてもちろん長く望まれていたRetinaディスプレイの搭載など、美しいアップグレードを意味する。
AppleはMacOSデバイスと、iPad Proの追加を通じてiOSでも再びクリエイティブなプロフェッショナルを取り込むことになり、そうした移行の最中でAirは登場する。iPad Proでは、コンピューテーション力の肩を並べることでAppleのオペレーティングシステムの線引きを曖昧なものにする。
今のところ、AirはiPad ProとローエンドのMacBookの中間に位置しているーしかしAirとiPad Proの価格差は100ドルで、AppleがAir再生に有利になるようにベースラインプロダクトを密かに終わりにしてしまうのに気づいてかなりショックを受ける人がいるかどうかはわからない。特に根強いAirの人気を考えたとき、Airを最近の位置付けのままにしておく十分な理由はない。
Airの価格を抑えるためにいくつか犠牲になっている点はあるー最も目に付くのがTouch Barだ。AirにTouch Barを搭載しないという今回の決定は、Appleがタッチスクリーン近くにあるこのテックから離れようとしているサインだという推測もある。しかし理由はもっとシンプルなものだろう:Touch Barを搭載するとエントリーレベルの価格を押し上げてしまうことになるーそしてMacBookを覆い隠してしまう。
その代わり、Appleはそれよりもいいアプローチをとった。Touch BarからTouch IDだけを取り出したのだ。私の仕事用とプライベート用のどちらのPCにもTouch Barがあるようになって数年経つが、指紋スキャナーだけが唯一(音量調整などのスタンダードなファンクションキーを除いて)私が毎日う使うものだ。長期的には、意識的にTouch BarとTouch IDの連結を解くことでTouch Barを少しお荷物な存在にしてしまうかもしれない。しかしAirにとっては値段の上昇を招かずに最も便利な機能を搭載するという、理想的な決定となっている。
キーボードは最新のMacBook Proと同じものだ。これは長らくAirを愛用しているユーザーを二分するものになりそうだ。しかしながら、もしあなたが2015年の悪名高いバタフライスイッチのオーバーホール以来MacBookキーボードを触っていないのなら、近くのAppleストアに行って試してみることを勧める。前モデルに比べるとまだ浅い感じがするのは事実だが、2つの大きなアップデートによって過去3年間で改善している。
最新世代のものは静かで、感触も良い。そして、新しくゴムがひかれたブラダーによるメリットもある。これは何かをこぼしたときや、あるいは粒子状物質からも守ってくれるはずだ。以前のモデルは皆にとって破滅のもとだった。真面目な話だが、私は以前、Amazonイベントの前に圧縮空気の缶を探そうとシアトルの街を必死になってさまよったことがある。
初期のAirモデルからのアップグレードに手を出さなかった人は調整期間が必要かもしれないが、初期の2015年MacBookでもそうだったように移行はすごく簡単だ。トラックパッドも今やMacBookの仲間入りを果たした。前のAirより20%大きくなり、表面全体にわたって均一のレスポンスを持たせるためにForce Touchを採用していて、どちらも歓迎すべき変更だ。
当然、新Airの内部は2015年モデルより全体的にアップグレードしている。しかしMacBookとの差があいまいになった感はある。実際、この2つのプロダクトが同時に存在していることは買い手を困惑させうるー当然のことながらそうだろう。もしこれまでどのMacBookを買うか選ぶのに難しさを感じたことがあるのなら、Appleは今回さらにこれを複雑なものにした。
RAMは8GB、16GBどちらのシステムでも同じだ。これについては驚きはないーMacBookライン全体に一貫している。一方、基準のストレージは低い数字から始まっているが、最も大きなものはMacBookを超えている。最も少ないストレージは128GB(MacBookは256GB)で、そこから最大1.5TBにまで増える。もちろん、ストレージを大きくするのはいつも値が張り、最大ストレージ量を選ぶと追加で1000ドルかかる。
この新たなモデルではプロセッサはAirよりも値段の高いベースラインのMacBookよりアップグレードしていて、1.2GHzデュアルコアのIntelコアi3から、1.6GHzデュアルコアIntelコアi5プロセッサになっている。つまり、この点では現在のところコンフィギュレーションは1つで、よりパワーが欲しければProへのアップグレードを真剣に考えたほうがいい。コアi5に8GB(ストレージ以外の全てでスタンダードだ)を組み合わせたとき、Geekbenchを使ったテストのスコアはシングルコアが4297、マルチコアで7723だった。
新たなチップは、2017年MacBookのシングルコア3527、マルチコア6654を上回るが、上のグラフをみると、AirとProの差は一目瞭然だ。新たなモデルはユーザーの日々のタスクのほとんどではきびきびと働くが、よりヘビーな作業をしたいのならーゲーミングだったり、ビデオ編集のようなインテンシブな作業などーProに乗り換える価値はある。
一方、バッテリーはというと、MacBookを超えた。Air最大の13.3インチのフレームで(それに対しMacBookは12インチ)、フル充電で“最大12時間”駆動する。MacBookは10時間だ。これは私のニーズにぴったりだ。最大12時間ビデオをストリームできるーこれでほとんどのフライトをやり過ごせることになる。
もちろん、大きなスクリーンやバッテリーは重いラップトップを意味する。Airの2.75ポンドというのはMacBookより4分の3ポンドほど重い。象徴的な斜めのデザインにもかかわらず、12インチモデルより少し厚くなっている。しかし2.96ポンドある古いAirより軽量化を図っている。
宣伝されたように、ディスプレイは前モデルより大幅にアップグレードしている。もしあなたがRetinaディスプレイを使ったことがあるなら、その素晴らしさを知っているだろう。大きく、明るく、そしてそしてカラーバランスもいい。数字を挙げると、1440×900ピクセルから2560×1600ピクセルになっている。227 PPIになり、古いモデルは128PPIだった。これは明らかなアップグレードだー多くのAirユーザーが追加に手を出さずにいたのには理由があるのだ。新Airでのマルチメディア体験はアップグレードしたスピーカーにより完全なものになっている。スピーカーはキーボードの横のエリアを少し占めているだけにもかかわらず、大音量が出せる。
デザインランゲージはアップグレードには間に合わず、一見すると13インチのProと同じようだ。そしてもちろん、iPhone XRのような低価格デバイスではカラーオプションがあるように、ゴールドが用意されている。
フレームで最も特徴的なのは、Thunderbolt 3 (USB-C)の搭載であることは明らかだ。当然、驚くことではない。全てのアクセサリをアップグレードするまでは“ドングルライフ”となるのは覚悟しなければならない。2つのUSB-Cポートは同じ面にある。つまり、新ポートは古いモデルより多目的に使えるが、充電するときはやや巧妙な操作を要する。MacBookと同じセットアップだ。Proではこのポートの数は倍になる。
新Airは大きなアップデートとなったのは間違いない。値段も上がったが、Mac Miniよりコントロールされている。アップグレードと低めの価格でもって、Airはどの面においても事実上12インチMacBookを明らかにしのいでいる。
実際のところ、将来大きなアップデートがなければ、12インチの存在は時間の問題だ。しかしそれでも全く構わない。新Airが12インチMacBookよりいい買い物なのは明白だ。
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(翻訳:Mizoguchi)