QWERTY、フリックに次ぐスマホの入力方式になるか?Androidキーボード「アルテ on Mozc」リリース

Umineko DesignはAndroid4.0以降対応のキーをなぞって日本語入力ができるキーボード「アルテ on Mozc」を2016年2月4日にリリースした。このキーボードでは日本語をローマ字入力で打つ形式で、フリック入力より学習負荷が低いものを目指しているという。今回、Umineko Designを立ち上げた中川圭司氏にこのキーボードアプリの開発経緯について話を聞いた。

アルテ

中川氏が制作する「アルテ on Mozc」はGoogleが提供するオープンソースの日本語入力システムMozcを用いて制作し、入力方法の考え方は2012年にGoogleが提供を開始したGodanキーボードをベースにしているという。ご存知の人も多いだろうが、Godanキーボードは日本語をローマ字入力する方式を採用している。ローマ字入力はパソコンのQWERTY配列を用いるのが一般的だが、スマホの画面だとキーが小さく、片手だと打ち間違えやすい。GoogleのGodanキーボードはスマホのフリック入力に近い形でローマ字入力ができるように開発されたものだ。その仕組みはキーボードを母音「aiueo(あいうえお)」の5段と他の子音(kstnhmyrw(かさたなはまやらわ)」とに分け、その組み合わせでローマ字入力をする。

アルテ_ストローク

アルテのストローク入力

「アルテ on Mozc」もGodanキーボードと考え方は同じだが、アルテではさらに便利に入力が行えるように改良を加えている。アルテの一番の特徴はなぞるだけで入力できる「ストローク入力」ができる点だ。例えば、「か」と入力する時には「k」と「a」を入力するが、アルテでは「k」を押したらそのまま「a」のキーへなぞるだけで良い。「かん(k-a-n)」といった子音の後に母音や「ん」が複数続く場合もそのままなぞって入力ができる。これによりほとんどの場合、漢字1文字を1ストロークで入力できるようになると中川氏は言う。これを実現するには、キーの配列が特に重要だと説明する。例えば、「ショウ」と入力する時「S-H-O-U」とストロークする。「そう」であれば、「S-O-U」とストロークするが、SからOへと移動する間にHのキーを通過してしまうと「ショウ」に変換されてしまう。そのような誤変換が起きることの少ない配列を見つけるために試行錯誤を繰り返したという。また、Godanキーボードのキーは5段と3列の並びだが、それだと各キーは少し小さくなるので、現在スマホに搭載されている「フリック入力」と同じ4段と3列の並びになるように変更したと話す。

また、アルテでは同時入力もできる。つまり、子音と母音を同時に押したとしても、きちんと入力したい文字が表示すると中川氏は言う。(「k」と「a」を同時入力した場合、「ak」とは表示されず正しく「か」になる。)これで、例えば大きめの端末を持っていて、両手で入力している時に便利と中川氏は話す。ローマ字入力のため、英語もQWERTY配列のキーボードに切り替えなくとも入力ができる。

2007年頃からスマホのインターフェイスを活用したフリックでのかな入力が普及し始めた。しかし、フィーチャーフォンを使い慣れた30代のフリック入力の利用率は最も低く、10代でもフリック入力を使っている人は63%に留まると中川氏は言う。これは、フリック入力の学習負荷が高く、適応力の高い10代でも3割以上の人がその入力方法を覚えられないことを示しているとも言えると中川氏は説明する。中川氏はアルテで学習負荷が少なく、誰でも簡単に入力できる方法を提案したいと話す。

中川氏は2000年頃からフィーチャーフォンのトグル方式(例えば、「お」を入力するのに「あ」のキーを5回押す方式)の日本語入力に使いづらさを感じていたという。プログラミングの経験はなかったが、当時からJavaを独学で学び、仕事の傍らプライベートで開発を行っていたそうだ。昨年6月にUmineko Designを立ち上げ、6月末には「アルテ on Mozc」の前身となるOpenWnnの日本語入力システムをベースにしたキーボードをリリースした。今回新しくリリースした「アルテ on Mozc」ではAndroid4.0以降に対応し、機能面も改良したと言う。

ユーザーから1単語を1スワイプで入力できるようになってほしいという要望もあるが、そもそも日本語には同音異義語や読みが同じ漢字が多いため、全てをスワイプ入力するのは難しいかもしれないと中川氏は話す。将来的には人工知能を使った入力予測を搭載することやローマ字入力、かな入力問わず、より使いやすいキーボードを追求していきたいと言う。

海外で人気の入力キーボードと言えばSwiftKeyが思い浮かぶ。キーをなぞっていくだけで単語が入力でき、人工知能で高い入力予測を実現したSwiftKeyは今月上旬、Microsoftが2億5000万ドルで買収した。日本語入力の方法には他にWindows Phoneが採用しているフリック入力で濁音、半濁音がつけやすくなったカーブフリックなどがある。SwiftKeyが英語キーボードをより使いやすくしたように日本語入力にもイノベーションが起きる余地があるのかもしれない。

アルテ on Mozcはここからダウンロードできる。

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TechCrunch Japan

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