米国カリフォルニア州サンフランシスコ市の監理委員会は決議に基づき、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが続く間、ギグワーカーにより厚い保護と給付を提供するよう多くの立法機関に要請した。同委員会はまた、ギグワーカーが現在も外でフードデリバリーやライドシェアに従事していることを受け、サンフランシスコ市の労働基準執行局に対し、州議会法案第5号(AB5)に準拠した執行手続きを確立するよう求めた。AB5は、法律上は独立請負業者となる労働者の分類について定めている。
Gig Workers RisingとWe Drive Progressが同委員会にこの決議を採択するよう働きかけた。Gig Workers Risingは以前、カリフォルニア州議会の議員らにAB5の施行を要請しており、それに続く動きとなる。今月初め、Gig Workers Risingはカリフォルニア州知事のGavin Newsom(ギャビン・ニューサム)氏と他州の当局へ書簡を送り、パンデミックの状況下で働く労働者保護のため介入を求めた。
「企業は新型コロナ感染拡大のかなり前からドライバーと乗客を危険にさらしてきた」とライドシェアのドライバーでGig Workers RisingのメンバーでもあるEdan Alva(エダン・アルバ)氏は3月24日、記者会見で語った。「大企業は最も弱い人々を食い物にしている」。
同氏は「ドライバーはいつも次の給料まで綱渡りで働いている。貯金する余裕はない」と述べた。「健康保険と傷病休暇がなければ、病気になったときに無理な選択肢しか残らない。病気のまま働けば自分だけでなく乗客も危険にさらす。自宅にとどまれば家と車を失い、生活が立ち行かない」。
同委員会はまた、サンフランシスコ市の弁護士であるDennis Herrera(デニス・ヘレラ)氏とカリフォルニア州法務長官のXavier Becerra(ザビエル・べセラ)氏に対し、有給の傷病休暇と失業保険を求める労働者に誤った分類が付される場合は、差し止め命令によって救済するよう求めた。
さらに同委員会は、公衆衛生局がライドシェアのドライバーとデリバリーワーカーのために最低限の健康安全ガイドラインを策定するよう要請した。また、カリフォルニア州労働長官のJulie Su(ジュリー・スー)氏には、この状況下でギグワーカーへのさまざまな給付に関するガイダンスを提供するよう求めた。
同委員会はギグワーカーが「多くの不確実性に直面している。住宅や食べ物の不安、ヘルスケアへのアクセス、衛生設備・保護具・安全に関する研修がないまま新型コロナウイルスに対処せざるを得ないことなどだ」と説明している。決議は、ギグワーカーを使う企業が「州や市の法律を無視し続けている結果、誤って分類された従業員を失業保険、有給の病気休暇、医療給付、労働者補償などの重要な福利制度へのアクセスがない状態に置いている」と述べている。
監督官のGordon Mar(ゴードン・マー)氏は3月24日の記者会見で、公衆衛生の危機が起きているのに労働者の権利を否定することは「不道徳」であると述べた。監督官のMatt Haney(マット・ヘイニー)氏は、公衆衛生を守るためにあらゆる手段を講じることが重要だと付け加えた。
「多くの我々のような労働者が人々の食べ物を運び、家庭に届けるよう指示されている」とヘイニー氏は記者会見で述べた。「企業にとってそうした労働者を確保することが、現在業務を遂行する上で不可欠だ。だが一方で、労働者は公平に扱われていない。経済的に疎外され、弱い立場に置かれている」。
ヘイニー氏は「この危機の間もギグワーカーは緊急対応が求められる仕事を続けている。買い物に行けない人に食べ物を届けたり、A地点からB地点まで人を運んだりしている」と語った。
Uber(ウーバー)、DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)などの企業が何もしていないわけではない。例えば、2週間までの傷病休暇を提供している企業もある。ただ、それが十分ではないということだ。
「TNC(UberやLyftのような一般ドライバーと乗客を仲介する会社)はこの国家緊急事態の中、ニューサム知事により生活に不可欠なサービスを提供する輸送システムの重要な一部として指定を受けた」とLyft(リフト)の広報担当者は声明で述べた。「Lyftは、人々を重要なサービスや商品と結びつけることにより、パンデミックの中で不可欠なサービスを提供する重要な役割を果たしている。この危機の最中に、TNCに雇用モデルの採用を強制すれば、数十万人分の仕事が広く失われ、社会的弱者のための基本的なサービスが直ちにストップしてしまう。ドライバーとリスクに直面しているコミュニティーが当社のサービスを最も必要としている今、それは害にしかならない」。
だがドライバーのMekela Edwards(メケラ・エドワーズ)氏は記者会見で、Lyftのヘルスケアの方針について懸念を表明した。同氏は、ドライバーが病院に行く患者を乗せるために必要とされるスキルやトレーニングを適切に受けていないと指摘した。
「乗客の乗降介助に備えたマスクや手袋などの保護手段は絶対ないと言える」とエドワーズ氏は語った。「会社がそれらを提供していると宣伝するようなら、その前にドライバーはそれが本当なのかしっかり確認する必要がある」
一方、有給の傷病休暇の要求が拒否されたというUberドライバーからの報告もある。TechCrunchは詳細を取材するためUberに問い合わせた。返信があり次第更新する。
画像クレジット:Photo by FREDERIC J. BROWN/AFP via Getty Images / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)