編集部注:この記事はKeith Teareによる。Keith TeareはTechCrunch のコーファウンダーであり、現在はPalo Alto Incubator Archimedes Labsを運営し、Chat CenterのCEOだ。
すでに広く知られているように、Twitter は迷走劇を続けている。とても残念でならない。現経営陣は、Twitterを売却すべきか否かで割れている。Twitterを取り巻く状況は、Google、Disney、Appleのいずれもが同社の買収に名乗りを上げないという報道により、さらに悪化したようだ。筆者がこのポストを書いている時点(米国カリフォルニア時間:2016年10月7日)で、株価は20%下落し、19.79ドルになった。
Twitterは誰が経営しているのか?ボードメンバーによる集合体か、それとも現経営陣なのか?
Twitterのボード(取締役会)は、輝かしいメンバーで構成されているが、今こそ会社を売却すべきとして、同社CEOのジャック・ドーシーに反対している。
筆者には、今日に至るまでにTwitterが決定した、戦略変更、経営メンバーの入れ替え、そしてIPOの決定をも含む全てが経営陣による決定ではなく、「経営陣とは逆の立場を取る」ボードによるものに見えてしまう。
一度でも会社を経営したことのある人間なら分かることだが、ボードと経営陣による勢力争いが起きると、会社が良い方向性に進むことはまずない、と言っていい。
以前は、Fred Wilson(New York にあるVC、Union Square Ventures パートナー)という非常にしっかりした考え方を持つメンバーがボードにいた。戦略や戦術に関するボードの意見は、心もとない経営陣に対して、会社の方向性を示し、Exitを求めたり、日々の意思決定の助けをするなど貢献していたかもしれない。しかし困難な時に重要なことは、そうではないだろう。むしろ、現場を知らないセレブリティの意見は毒にこそなれ、患者を救う特効薬にはならない。実際のところは内部の人間にしか分からないが、筆者はそう思う。
ひとつだけ確かなことは、経営陣が本当の意味で会社を経営して行かなければ、Twitterの未来は悲しい結果にしかならない、ということだ。
今、問われなければならないのは、本質的な議論が為されているのか?ということである。Twitter は売却されるべきなのか?
言い方を換えれば、TwitterはYahoo!のような事業なのか?と訊くのでもいい。成長仕切った、過去のビジネスモデルの事業なのか?もういっそのこと月間アクティグユーザー3億という事業を高値で買い取ってくれる大金持ちに売却されるべきなのか?
これに対して筆者はYESのケースもNOのケースも想定してみた。
No と考えた場合
どうしてNOと考えるか?まず最初に、Twitterは、世界中の人々の「コミュニケーション・プラットフォーム」「手軽な乗り物」「乗り合いバス」だったのだ。
推測するに、毎月20〜30億人の人たちが、テレビ、ラジオ、映画、印刷媒体で、Twitterを通じて発信された情報、人々の意見やコメントなどの「引用」を見ているはずだ。Twitterは、イベントの告知をしたい人、何らかの意見を言いたい人、広く世の中に知られるべきと思うことを拡散したい人たちにとって、いつでも、どこでも、思い立った時に情報発信することができる「唯一のユビキタスなプラットフォーム」になっている。その機能において、Twitterと比肩される存在はない(筆者加筆:事実として、3.11の際、Twitterほど機能したツールはなかった。そのことは記憶に新しい)。
初期のマニフェストを読むと、Twitterは、そのポジションを理解していたことが分かる。API(ソフトウエア同士と繋ぐ仕様)を経由して、他のメディアがTwitterでつぶやかれたメッセージを広く社会に伝播していくことは望むべきことだった。
Twitterから発信される情報は、twitter.com を訪問する人たちに加えて、サードパーティが提供するソフトウエアを使って情報を拡散する人たちによるものも含まれていた。他社によるTweets のインデックスや、あるトピックや興味に関連するTweetをフィルターして見せることは許可されていた。Twitterは、オープンで広範に情報拡散できるプラットフォームであり、ある意味、インターネットそのものとも言えた。たしかに、検索エンジンは情報をインデックスし、人々が見たいウェブページに誘導してくれたかもしれないが、Twitterは各コンテンツを人々の興味関心に則って整理し、発信することができた。
Twitter のポテンシャルを最大限具現化するとしたら?
初期のTwitterは、上述のとおり、いつでも、どこでも、思い立った時に情報発信することができる「ユビキタスなプラットフォーム」を目指して、それを具現化するための機能開発を行っていたし、マニフェストにあるとおり、大きなビジョンのもとに進んでいた。「今、この瞬間重要なすべての情報を『拡散』するために、インデックスと検索機能を持ち、開発者にオープンであり、誰もがあらゆる状況で使える情報インフラ」を目指して。
このステージのビジネスモデルは明らかだった。どのような状況かに関わらず、発信され、消費されるTweetをもとにした「AdSense」であり「AdWords」である。それは、Googleがウェブページでのそれらの機能によって獲得しているレベルの収入を短期間で創造できる可能性があった。
Twitter として最も簡単に実現できる価値(モデル)は?
しかし、その当時、Twitterには「目的地(Destination Site)」にならなければならない、という信念というか思い込みがあった。
それは、サードパーティによる別のアプリやサイトでTwitterの情報が拡散されることを良しとしないことを暗に意味していた。Twitterで流される情報をインデックスしたり検索したりすることはブロックされるべきだし、Twitterを「みんなが使える情報拡散ツール(手軽な乗り物、乗り合いバス)」とすることへの抵抗でもあった。しかし、そのことによって、Twitterユーザーの定義を twitter.comへ「ログイン」する人、twitter.com上で情報を発信したり読んだりする人に限定することになった。
これは、Twitterがなり得る最も簡単なビジネスモデルだった。取締役会の大半はTwitterを「目的地(Destination Site)」にしたかったということだ。もし、なれるとしたらYahoo!のように。
そして、その領域に興味を持っている聴衆を惹き付けるコンテンツの「チャンネル」を創りたい。そして、他の手段ではリーチできないようにしたいと。
そのビジョンは、ここ3、4年でTwitterをブランド化された「ディスティネーション」にしたと共に、広告プラットフォームとしてのポジションを確立した。そして、その成功を計るKPIは、他のメディアを含めて、世の中で「どれだけのTweetsを計測できたか?」ではなく、Twitterに「ログイン」しているユーザー数になってしまった……。
20億ドルという広告収入は、たしかに素晴らしい。しかし、Twitterが本来持っている、世界中の誰もがいつでも使える「情報拡散ツール(手軽な乗り物、乗り合いバス)」というポテンシャルと比較すると、極めて小さい成果でしかない。
TwitterはコンテンツのディスティネーションとしてのYahoo!をリプレイスしたかもしれないが、Twiter本来のビジョンを追求していれば、コンテンツ探索におけるGoogle をリプレイスできたかもしれない。
IPOは時期尚早だったか?
TwitterのIPOは、初期のマニフェストから試行錯誤を経て、Twitterがコンテンツリッチな「目的地(Destination Site)」への転換への途上で行われた。IPOは、取締役会の意思であり、経営陣の意思ではなかったのではないか?
Dick Costoloは、嵐の中、本来の半分のナビゲーション機能しか持っていない船をとても見事に操縦していたが、株価は最終的に2つのことを反映した。
1つは、会社が収入を正確に予測できなかったこと。2つ目は、KPIを「ログインユーザー数」にしか設定できなかったこと。その結果、株式市場は、Twitterの取締役会および経営陣の方針、つまり、Twitterを広告収入によって成立させるポータルサイトにするという方針を受け取り、結果として、それに則った評価をした。
2013年から2016年にかけてのTwitter病は、このチープなプロダクトデザインとそれがきちんと機能する前の早過ぎるIPOによってもたらされたと言える。マネジメントの変更、株価の低調な推移、会社を売却したいという願望等など……。
Yesと考えた場合
Twitterは「(経営陣に)干渉し過ぎる取締役会による機能しない会社」であり、離婚すべき状態に陥っている家族のようだ。買い手は、内部のつまらない争いごとのない「白紙の状態」を創り、本来のTwitterが持っている最大限の可能性を実現できるかもしれない。
それは、Twitterにとって理想的なシナリオである。もし、この構想の実現を望むとした場合、誰が最も相応しい買い手だろうか?その相手はふたり(2社)しかいない。Googleか、PEファンドによるバイアウトだ。
Googleは疑いようのない理想的な買い手と言える。彼らであればTwitterを、世界中の誰もがいつでも使える「情報拡散ツール(手軽な乗り物、乗り合いバス)」に育てることができるし、最終的にはウェブ検索(広告)から得ている収入を上回るだろうと思われる。
ライブ映像配信の勃興―YouTubeが抜きん出ている領域、このインパクトはビデオ広告の市場機会によってより一層推し進められるだろう。そして、Googleの “organize the World’s Information, and make it Accessible(世界中の情報を整理し、人々がアクセスできるようにする)”というビジョンとTwitterの本来的なビジョンは整合する。もし、GoogleがTwitter買収から身を退くのであれば、LarryもしくはSergey、あるいは David Drummondに対して、「何故、GoogleはTwitter買収を再考すべきか?」を私に説明させて欲しい。私はいつでも https://chat.center/keith で連絡がつく。
Googleの次に望ましい買い手はプライベート・エクイティ・ファンド(PE)だ。SilverLake、KKRもしくはBalckrockなどがどのようにSkypeと仕事をしたかを思い出して欲しい。Twitterを短期的な思考から自由にし、Twitterが成し得る最大のビジョンを実現させるために非上場化させることを検討すべきである。そうすれば、この先10年間に渡って、デジタル広告とユーザーの支持を手中にすることができるだろう。
そのシナリオを実現するのであれば、Twitterをプライベート化(非上場化)すべきである。Qihoo360やDELLが行ったように。ファイナンスの心配はない。銀行はそのビジョンに興味を示すはずだ。
What’s Next for Twitter?
取締役会はTwitterをメディアやコンテンツに興味のある相手に売却するべきではない。もし、そのような相手に売却するのなら、彼らは「40億人のスマートフォンユーザーが望むニュース、娯楽情報、ライブ映像配信等のデータとメッセージの『情報拡散プラットフォーム』になる!」という壮大なチャレンジに挑むことなく、極めて平凡で陳腐な結果に甘んじることになるだろう。
経営陣は、Twitterの創業の理念に立ち戻り、「ユニバーサル(誰もがいつでもどこでも使える)であり、オープンであり、壮大でエキサイティングなビジョン」の実現を目指すべきである。
そして、我々はTwitterにそのような転換をするための時間を提供すべきである。
Twitterは Yahoo! ではない。まだまだ成長を模索している子供である。幼児の成長を殺してしまうことは間違っている。可能性のある少年を成長させるべきだ。
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翻訳:平石郁生(サンブリッジ グローバルベンチャーズ代表取締役社長)