Uberは最高裁判所の判決を受けて英国のドライバーを「労働者」待遇にすると発表

Uber(ウーバー)は現地時間3月16日、英国で同社の配車アプリを利用し営業しているドライバーを「労働者」として扱うと発表した。これによりドライバーたちは、有給休暇などの福利厚生を受けられることになる。ただ、Uberは最高裁判所の2021年2月の決定に従ったかに見えるものの、アプリ上のドライバーの記録に関わらず、乗客を乗せた時点から就業時間を計算するという同社の決定に対して、新たな闘争ののろしはすでに上がっている。

Uberは、3月17日から英国のすべてのドライバーに、収入の12.07%を基準に算出された有給休暇中の給与を、2週間ごとに支払うと話している。またドライバーには、乗車を受け付けた場合、経費を差し引いた上で、少なくとも最低賃金(いわゆる国民生活賃金)が支払われるとUberはいう。さらに英国での年金受給資格を持つドライバーは、Uberの費用補助を受けた年金制度に自動的に組み込まれる。この補助額は、ドライバーの収入のおよそ3%に相当する。

英国では、働き方がSelf-employed(自営業者)、Employed(被用者)、Worker(労働者)の3つに分類されている。「労働者」は雇用されないものの、最低賃金、有給休暇、受給資格を持つ者には年金が保証される。

Uberが3月16日に話したところによれば、現在の予測に基づき、同社は先に発表した第1四半期または2021年の調整EBITDAの予測値は変更しないとのことだ。

Uberは、2016年から英国での「労働者」の定義を巡る争いに巻き込まれてきた。2021年2月、英国の最高裁判所は、Uberの控訴を棄却し、アプリを利用するドライバーは「労働者」であり、独立した業務請負人ではないという先の判断を再確認した。逆転の見込みはなく、Uberはある意味、しぶしぶ承諾するかたちになった。Uberは、ドライバーの就業時間はドライバーが業務開始をアプリに記録した時点からではなく、乗車を受け付けた時点からとしており、福利厚生も乗車を受け付けて初めて発生するとしている。すでに労働活動家たちは、その点に憤慨している。

「最低賃金と有給休暇と年金をやっと認めたことは歓迎しますが、Uberがこの提案の話し合いに応じた時期が遅すぎました」と、App Drivers & Couriers Union(アプリ運転手および配送業者組合)の声明は述べている。これには、Uberに対して訴訟を起こしたドライバーのJames Farrar(ジェームズ・ファーラー)氏とYaseen Aslam(ヤッセン・アスラム)氏が署名している。「最高裁判所は、ドライバーは労働者として認められるべきであり、最低賃金と有給休暇は、Uberが主張する乗客を乗せてから降ろすまでの時間ではなく、ドライバーの就業開始と終了の記録に基づく就業時間に応じて発生するべきだとの判断を下しました。つまり、Uberのドライバーは、いまだに40〜50%ほど釣り銭を誤魔化されているのです。さらに、最低賃金に基づいてドライバーの経費をUberが一方的に決めることも承諾できません。これは労働協約で話し合われるべき問題です。

今回、Uberが1つ前進したことに間違いはありませんが、法律に定められた最低要件に完全に準拠しない部分は、一切受け入れられません。また私たちは、Uberが労働組合の認定、公正な解雇不服申し立て手続き、データアクセスに関する合意に向けても前進することを期待します」。

ファーラー氏はTechCrunchに対して、この問題はまだ解決していないと話した。次なるステップは、労働裁判所に立ち返り、ドライバーが法的に与えられた権利に基づいて確実に給与が支払われるようにすることだ。

英国での労働問題への対応が継続しているUberだが、ヨーロッパの他の国々の裁判所で争われている問題にも注意を向けなければならない。裁判所の決定によっては、Uberの収益に大きく響く。その一方で、EUの議員たちはギグワーカーの待遇改善のための調査も行っている。英国でのUberの譲歩が、ヨーロッパ全体の協議に影響を及ぼす可能性がある。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Uberギグワーカー労働イギリス

画像クレジット:Matthew Horwood/Getty Images / Getty Images

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(文:Kirsten Korosec、Natasha Lomas、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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