YouTuberと広告主をマッチング する「iCON CAST」、ex-Googler集団がリリース

YouTubeに動画をアップし、その広告収入で生計を立てている「YouTuber」。動画投稿だけで食べていけるクリエイターは一握りという指摘もある一方で、米国10代に影響力のある人物に関する調査では、トップ5をYouTuberが独占。若年層ではハリウッドスターの人気を凌ぐほどだと言われている。

こうした影響力を企業が見逃すはずはなく、多くのファンを抱えるYouTuberに自社商品を宣伝してもらう「YouTuber広告」が日本でも増えつつある。ただ、そのYouTuber広告で稼ぐクリエイターもごくわずか。案件が集中して単価が上がり、人気YouTuberの出演料は「1本あたり100〜400万円に上ることもある」(関係者)のだとか。

広告主からすると、自社のターゲット層と一致するファンを抱えるYouTuberを探すのは困難。前例の少ない広告がゆえにKPIの設定も難しい。だったら、とりあえず多くのファンを持つ人気YouTuberにお任せしてみよう、といった会議の様子も想像できる。

YouTuber広告の選択肢を広げる

「本来はYouTuberのポテンシャルも、クライアントのニーズも存在するにも関わらず、『出会い』の場が少ないがために、YouTuber施策の選択肢が制限されている」。こう語るのは、YouTuberと広告主をつなぐプラットフォーム「iCON CAST」を1月26日にオープンした、ルビー・マーケティング創業者の平良真人氏だ。

従来のYouTuber広告は、広告主が人気YouTuberを指名するケースが大半だったが、iCON CASTはYouTuber側で案件を探せるのが特徴。これまで声がかからなかったYouTuberのメリットはもちろんだが、広告主としても、自社商品と親和性の高いファンを持つYouTuberを起用しやすくなる。そうすれば、老若男女に愛されるYouTuberを起用するよりも、グッと限られた予算内でマーケティングが行えるというわけだ。

「僕らが狙うのは、上位だけでなく中堅層のYouTuber。現在はゲーム実況がうまくなくても、人気YouTuberにゲーム広告のオファーが来ていたりする。一方、米国は各ジャンルで得意分野を持つYouTuberが多く、数百人が100万人単位のチャンネル登録数を抱えている。日本でもジャンルに特化したYouTuberにニーズは来る。」(平良氏)

利用の流れはこうだ。YouTuberはiCON CASTに登録して、専用の管理画面で自分の得意分野(ゲームや化粧といったジャンル)のYouTuber広告案件に応募。案件を受託する場合、広告主と個別契約を締結すれば契約が成立する。

その後は、受託した案件の制作内容に沿って動画を作成。iCON CASTと広告主が動画を確認し、問題がなければ公開日に合わせてYouTubeに動画を公開する。広告主が動画の内容に納得しない場合は、1回に限り、修正作業が入ることになっている。

広告主は、専用の管理画面でYouTuber広告の詳細を決定し、案件を募集する。iCON CASTは広告主の要望と予算に応じて、YouTuberごとの特性、チャンネル登録数、動画の再生回数などを精査。広告主の案件とマッチするYouTuberをピックアップして提案する。

iCON CASTの収益源は、マッチング成立時に広告主が支払う業務委託手数料だ。広告料の20%を徴収する。なお、YouTuberがGoogleと個別に結んでいる「YouTubeパートナープログラム」経由の広告収益は、これまで通り100%得ることができる。

ルビー・マーケティングは現在、YouTuberを獲得するために、YouTuber専門のマネジメントプロダクション「MCN(マルチチャンネルネットワーク)」と交渉中。広告主についても順次、声をかけている。年内に1000人程度のYouTuber、数百社の広告主を獲得することを目指している。

社員15人のうち8割がGoogle出身

ルビー・マーケティングはもともと、GoogleやYahoo!、Facebookなどを使ったオンラインマーケティングを支援する会社として2014年1月に設立。実は平良氏をはじめ、同社社員15人のうち8割がGoogle Japan出身だ。「元Googleだから『どう』というのはありませんが、YouTubeの状況に明るいのは強みかも」(平良氏)。

平良氏はGoogleで中小企業向けの広告営業部門を立ち上げた人物。起業意識は「ゼロ」だったが、「魂がこもった中小企業の経営者」を何人も見ていくうちに、「自分のノウハウを使い、もっとスケールを持って中小企業を支援したい」と感じたのが起業のきっかけだったと振り返る。

iCON CASTのアイデアが浮かんだのは、ゲーム業界のクライアントから、海外のYouTuberを起用したゲーム実況広告の要望が出た時。その後も、別のクライアントにYouTuberの広告を提案すると、ゲーム以外の案件も決まり始めたことから事業化を決意したそうだ。


投稿者:

TechCrunch Japan

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