Spotify(スポティファイ)は2021年3月、ライブオーディオマーケットへの参入を加速させるために、スポーツ専門のオーディオアプリLocker Roomを運営する会社を買収すると発表した。そしてSpotifyは6月16日のSpotify Greenroomの立ち上げでその目的を遂行する。Spotify Greenroomは、世界中のSpotifyユーザーがライブオーディオルームに参加したりルームをホストしたり、ときにそうした会話をポッドキャストに変えることができる新しいモバイルアプリだ。同社はまた、新しいアプリに将来多くのコンテンツが加わるようにするためのCreator Fundも発表した。
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Spotify GreenroomアプリそのものはLocker Roomの既存のコードをベースにしている。実際、現在のLocker Roomユーザーは6月16日からブランドとデザインが改変されたGreenroomエクスペリエンスになるのを目にするとSpotifyはTechCrunchに語った。
Locker Roomは白と赤みがかったオレンジ色のスキームを使っていたが、新しいGreenroomアプリはかなりSpotify派生物のような外観で、Spotifyと同じカラーパレット、フォント、イコノグラフィーを使っている。
新アプリを利用するには、Spotifyユーザーは現在のSpotifyアカウント情報を使ってサインインする。そして関心のあるものを結びつけるためのオンボーディングがある。
当面、聴くオーディオプログラムを見つけるプロセスは主にアプリ内でのユーザーのグループ参加に頼る。これはLocker Roomが展開してきたものに似ている。Locker Roomではユーザーはお気に入りのチームを見つけてフォローしていた。しかしGreenroomのグループはもはやスポーツにだけ結びついているのではなく、より大衆的だ。
聴きたいと思われるコンテンツにユーザーをつなげるためにSpotifyのパーソナライゼーションテクノロジーを活用するというのがGreenroomの計画だ、とSpotifyは語った。例えばすでにSpotifyでフォローしているポッドキャスターがSpotify Greenroomでライブを行う場合、ユーザーにノーティフィケーションを送ることができる。あるいは、ターゲットを絞ったレコメンデーションをするために、あなたがどのような種類のポッドキャストや音楽を聴いているのかを活用することもできる。
Spotify Greenroomの機能セットは、ClubhouseやTwitterのSpaces、FacebookのLive Audio Roomsなど、他のライブオーディオサービスのものとほぼ同じだ。ルームのスピーカーは丸いプロフィールアイコンでスクリーン上部に表示され、リスナーはスピーカーのものより小さなアイコンで下部に表示される。ミュートオプションやモデレーションコントロールがあり、ライブオーディオセッション中にリスナーをステージに登場させることもできる。ルームは最大1000人をホストでき、Spotifyは今後この数をさらに増やす見込みだ。
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リスナーはアプリで「ジェム」をあげることでスピーカーにバーチャルの拍手を送ることができる。この機能はLocker Roomから来ている。スピーカーが稼いだジェムの数はセッション中、プロフィール写真の横に表示される。差し当たってはこうしたジェムに金銭価値はないが、Greenroomがまだ収益をあげる方法を提供しておらず、これは明らかに次のステップのようだ。
Spotify Greenroomと同種のライブオーディオアプリの間にはいくつかの主な差別化要因があることは記すに値する。まず第一に、Spotify Greenroomはホストが好きな時にオンにしたりオフにしたりできるライブテキストチャット機能を提供している。ホストはライブオーディセッションが終わった後にそのオーディオファイルをリクエストし、ポッドキャストのエピソード用に編集することもできる。
おそらく最も重要なことは、ライブオーディオセッションがSpotifyによって録音されることだ。これはモデレーション目的のためだと同社は話す。ユーザーがGreenroomオーディオルームに関して何か問題を報告すると、Spotifyはどのようなアクションが必要かを判断するために録音を調べることができる。これはClubhouseが対応に苦慮してきた部分だ。Clubhouseのユーザーはときに、アプリ内でリアルタイムに有害性や乱用に直面してきた。ここには人種差別や女性差別のような問題の多い分野も含まれる。直近では、反ユダヤ主義やヘイトスピーチのために数多くのルームを閉鎖しなければならなかったとClubhouseは述べた。
SpotifyはSpotify Greenroomのモデレーションは既存のコンテンツモデレーションチームによって管理されると話す。もちろん、Spotifyがいかに早く不適切なユーザーに対応したり、行動規範に違反したライブオーディオルームを閉鎖したりできるかは今後明らかになる。
6月16日のアプリの立ち上げはユーザーがつくるライブオーディオコンテンツにフォーカスしている一方で、SpotifyはGreenroomでさらに大きな計画を持っている。今夏、同社はプログラムが組まれたコンテンツに関する発表を行う計画だ。これは他の新機能の立ち上げとともに最優先事項だとしている。Locker Roomで知られていたスポーツコンテンツに加え、音楽、カルチャー、そしてエンターテインメントに関連するプログラミングが含まれる。
同社はまた、Spotify Greenroomに音楽にフォーカスしたコンテンツを根づかせることを期待して、Spotify for Artistsチャンネルを通じてアーティストにSpotify Greenroomを売り込むとも話す。そしてクリエイター向けの収益化オプションも今後視野に入ってくることも認めたが、それらがどのようなものになるか具体的な詳細は示していない。
加えて、Spotifyは米国のオーディオクリエイターが収入を得られるようにするのをサポートするSpotify Creator Fundを発表した。しかしこのファンドの規模や、クリエイターが受け取れる額、基金分配のタイムフレーム、選考基準、その他の要因など詳細は明らかにしなかった。将来この機会について話を聞きたい人向けのサインアップフォームを提供しているだけだ。これはクリエイターにとって、オプションがたくさんある中で比較検討を難しいものにしそうだ。
Spotify Greenroomは世界135マーケットのiOSとAndroidで6月16日から利用できるようになった。Spotifyそのものが展開されている178マーケットと同じ規模ではない。差し当たっては英語のみだが、今後成長とともに拡大する計画だ。
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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi)