植物由来食品の普及に向けフードテックのNotCoが約259億円調達、アジア進出も視野

植物由来の、牛乳や肉の代替品を製造するフードテック企業のNotCo(ノットコ)は2021年、新たな資金調達ラウンドを完了した。2億3500万ドル(約259億円)のシリーズDラウンドで、バリュエーションは15億ドル(約1650億円)に達した。

今回のラウンドはTiger Globalがリードし、ソーシャルインパクト財団であるDFJ Growth Fund、ZOMA Lab、スポーツ選手のLewis Hamilton(ルイス・ハミルトン)氏とRoger Federer(ロジャー・フェデラー)氏、ミュージシャンでDJのQuestlove(クエストラブ)などの新しい投資家が加った。従来からの投資家には、Bezos Expeditions、Enlightened Hospitality Investments、Future Positive、L Catterton、Kaszek Ventures、SOSV、Endeavour Catalystが名を連ねた。

今回の資金調達は、6月にShake Shackの創業者であるDanny Meyer(ダニー・メイヤー)氏が自身の会社であるEHIを通じて行った非公開の投資に続くものだ。チリとニューヨークの両方に拠点を持つNotCoは、累計で3億5000万ドル(約385億円)以上の資金を調達したと創業者でCEOのMatias Muchnick(マティアス・ムクニック)氏はTechCrunchに語った。

現在、同社は4つの製品ライン、すなわちNotMilk、NotBurgerおよびNotMeat、NotCream、NotMayoを、米国、ブラジル、アルゼンチン、チリ、コロンビアの5カ国で展開している。

同社は、より健康的な食品を摂取したいというトレンドを背景に事業を展開している。また、食品がどう作られているのかを疑問視する消費者も増えており、結果として代替タンパク質の需要が高まっている。Boston Consulting GroupBlue Horizon Corpの調査によると、肉、卵、乳製品、魚介類の代替品市場は、2035年までに2900億ドル(約31兆9000億円)に達する見込みだ。

NotCoが独自に開発した人工知能技術「Giuseppe(ジュゼッペ)」は、何千もの植物性の食材の中から、動物性タンパク質に代わる理想的な何かを探し出す。NotCoは暗号を解読しようとしているのだ。ある2つの食材の組み合わせると分子の成分と食品の特性がどうなるのかを理解しようとしている。その組み合わせが、牛乳に似ていつつも、より持続可能で資源に配慮する方法で、しかも導入の最大の障壁である美味しさを実現できるかもしれない、とムクニック氏は説明する。

「私たちの理論によれば、人々の間にはクレイジーなダイナミズムというものがあります。すでに植物由来の食品を食べている人の60%は味に満足しておらず、牛乳を飲んでいる人の30%は似たような味があればそれに変えたいと思っています」と付け加えた。「私たちの技術はAIをベースにしているため、これまでとは異なる食のシステムを作り出したり、製品を同業他社よりも早く上手に製造することができます。植物は30万種ありますが、そのうち99%の植物については、それを利用すると何が生み出せるかがわかっていません」。

2021年実施した一連の資金調達に加え、同社は7カ月前に米国でNotMilkブランドを立ち上げた。2021年末までにWhole Foods Market、Sprouts、Wegmansなどの小売店8000店舗で展開することを目指す。

ムクニック氏は、新たに得た資金の一部をメキシコとカナダでの市場確立と、米国とチリでのシェア拡大に充てる。今後3年間で、ビジネスの50%を米国で展開する。また、来年には、アジアや欧州への進出も視野に入れている。

NotCoはまた、鶏肉などのホワイトミートや魚介類などの製品を増やし、技術や研究開発にも投資する方針だ。そのために今後2年間で現在100人の従業員を倍増させる。また、すでに5件の特許を取得している食品科学の分野で、より多くの特許を取得したいと考えている。また、ビジネスの面で可能性を探るための情報を得たいとも考えている。

NotCoはユニコーンの地位を獲得したが、ムクニック氏は、本当の価値は、ブランドの認知度とそれにともなう売上の向上、そしてクイックサービスレストランとの取引への道を開くことだと語る。NotBurgerは、11カ月前にチリのBurger Kingレストランに入り込み、現在では市場の5%を占めているという。

Tiger Globalにとって魅力的だったのは、過去4年間で売上全体が毎年3倍に成長していることだとムクニック氏はいう。同氏は、Tigerと一緒に仕事ができることにも満足している。特に、同社が今後2〜3年で株式公開に向け準備することを考えればなおさらだ。同氏によると、Tigerが有する専門知識により、NotCoの準備をもっと進めることができるという。

「NotCoは、世界レベルの植物性食品を生み出しており、急速に市場シェアを拡大しています」とTiger GlobalのパートナーであるScott Shleifer(スコット・シュライファー)氏は書面による声明で述べた。「私達は、マティアス氏ならびに同氏のチームと提携できることをうれしく思っています。製品の継続的な革新と、新しい地域や食品カテゴリーへの拡大が、今後数年間の高い持続的な成長の原動力になると考えています」。

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カテゴリー:フードテック
タグ:NotCo植物由来肉資金調達

画像クレジット:NotCo

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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