大切な人の遺灰をダイヤモンドに、オースティンのEternevaが約11億円調達

愛する人を失うというのは、人生の中でも最も辛い体験の1つだろう。

誰かの死を追悼するというと、葬儀の計画や、棺や墓石の選定などが一般的な行動である。そしてこれらは通常、葬儀屋の助けを借りて行われることが多い。

オースティンを拠点とするEterneva(エターネヴァ)は、終末期分野では珍しいダイレクト・トゥ・コンシューマー・ブランドを構築している企業だ。創業4年目となる同社は、火葬された人やペットの灰や髪の毛からダイヤモンドを製造している。非常に珍しい事業ではあるが、死後も大切な人の一部を身近に置いておきたいという人々の共感を得ているようだ。

CEO兼共同創業者のAdelle Archer(アデル・アーチャー)氏によると、Eternevaは創業以来売上高が3桁の成長を遂げており、2020年には収益が2倍以上になったこともあるという。そして2021年7月下旬、Tiger Management(タイガー・マネジメント)が主導し、Goodwater Capital(グッドウォーター・キャピタル)、Capstar Ventures(キャスパー・ベンチャーズ)、NextCoast Ventures(ネクストコースト・ベンチャーズ)、およびダラスの億万長者であるMark Cuban(マーク・キューバン)氏が参加した「超過応募」となった1000万ドル(約11億円)のシリーズA資金調達ラウンドを発表した。ちなみにTiger Managementは、Julian Robertson(ジュリアン・ロバートソン)氏のヘッジファンドかつファミリーオフィスであり、Tiger Global Managementの大元である。

「非常に競争の激しいラウンドでした」とアーチャー氏はTechCrunchに語っている。「3つのタームシートを受け取り、オールスターの投資グループを編成することができました」。この投資グループには、Capstar(キャップスター)のマネージングディレクターであり、Eternevaの取締役にも就任したKathryn Cavanaugh(キャサリン・カバノフ)氏Softbank(ソフトバンク)で1000億ドル(約11兆円)規模のVision Fundを統括する女性トップパートナーのLydia Jett(リディア・ジェット)氏、Upfront Capital(アップフロント・キャピタル)のマネージングパートナーであり、VCファンドでマネージングパートナーになった初の女性の1人であり、女優のNatalie Portman(ナタリー・ポートマン)氏とともにAngel City(エンジェル・シティ)を共同設立したKara Nortman(カラ・ノートマン)氏が含まれている。

アーチャー氏と共同創業者のGarrett Ozar(ギャレット・オザー)氏は、BigCommerce(ビッグコマース)でともに働いた後、2017年の第1四半期にEternevaを立ち上げた。同社設立の背景にあるストーリーはアーチャー氏にとって非常に個人的なものだ。同氏の親しい友人であり、ビジネスメンターでもあったTracey Kaufman(トレーシー・カウフマン)氏が膵臓がんと診断され、47歳の若さでこの世を去った。近親者のいないカウフマン氏は、火葬された遺灰を叔母と親友、そしてアーチャー氏に残していったのだ。

「私たちはさまざまな選択肢を検討し始めましたが、見つけたウェブサイトはどれも精彩を欠き、パッとしないものばかりでした」とアーチャー氏は振り返る。「トレーシーはとてもすばらしい人でした。すばらしい人を失ったときには、その人を称えて追悼するためのもっと良い選択肢が必要だと感じました」。

当時、人工的なダイヤモンドを開発するスタートアップに取り組んでいたアーチャー氏。ダイヤモンドの研究を行う科学者と食事をしながら恩師の死について話していた時、その科学者が「知っていると思うけど、灰には炭素が含まれているからトレーシーの遺灰から炭素を取り出してダイヤモンドを作ればいいんだよ」と言ったのだ。

この言葉にアーチャー氏は度肝を抜かれた。

「これは必ずやらなければいけないと感じました。トレーシーは輝きに満ちた人だったので、ぴったりだと思いましたし、常に彼女の一部を身に着けることができるのです」。

Eternevaの共同設立者であるギャレット・オザー氏とアデル・アーチャー氏(画像クレジット:Eterneva)

これが同社が作った初のダイヤモンドだ。自身の製品の顧客となる機会を得たことが、その後の顧客体験を構築するために大いに役立ったとアーチャー氏は考えている。この事業こそ悲しむ人々に向けて「輝きと癒しをもたらし、愛する人を称える美しい方法」だと感じ、同氏はすぐにこのアイデアにコミットするようになった。

創業以来、Eternevaはこれまでに1000人以上の顧客のために約1500個のダイヤモンドを製作。無色はもちろん、ブラック、イエロー、ブルー、オレンジ、グリーンなど、ほぼすべての色に対応している。同社のダイヤモンドは2999ドルから(約33万円)で、サイズや色によって値段が上がっていくシステムだ。同社の事業の約40%をペットが占めている。

「私たちはこの分野において、他とはまったく逆の考え方を体現していると思います。多くの事業は終末期のプランニングやロジスティクスを解決しようと取り組んでいますが、私たちは人々が前進するのを支援し、人生を祝福するためのプラットフォームを構築することを目的としています」。

アーチャー氏によるとダイヤモンドの制作過程は複雑で、7〜9カ月の期間を要するという。ビデオや写真で各段階のプロセスをその都度共有することで、顧客に制作過程も体験してもらうというのが同社の考えだ。

「私たちは、顧客の悲しみが癒えるプロセスの段階とともにあるのだと感じています。初めは大きな孤独を抱えていますが、完成する頃には心のあり方が変化しています」。

新たな資本活用計画の1つは、制作過程においてより多くの人に直接参加してもらえるようにすることだ。例えば機械加工を始めたり、宝石デザイナーに大切な人の話をして、その人の人生を表すような細やかなディテールをあしらったカスタムデザインを考えたりできるようにするというものである。

またこの資金を利用して、企業との提携による葬儀社チャネルプログラムの全国展開や、オースティンにおける需要に対応するための運営とキャパシティの拡大を計画している。

同社は、より多くの人々が「従来の葬式を望まなくなっている」という事実に着目している。

「人々はカスタム性と意味合いを求めています。将来的にはさまざまなサービスや製品を提供するプラットフォームへと進化していきたいと考えています」。

同社はブランドの認知度も高めていきたいと考えており、最近では同社のダイヤモンドに関する十数本のTikTok動画が話題になったとアーチャー氏は話している。

シリーズA以前にEternevaは、エンジェル投資家や機関投資家から合計670万ドル(約7億4000万円)を調達している。そのシードラウンドは、2020年にオースティンを拠点とするSpringdale Ventures(スプリングデール・ベンチャーズ)が主導した300万ドル(約3億3000万円)だ。マーク・キューバン氏が最初に同社の投資家になったのは、アーチャー氏とオザー氏がリアリティ番組の「Shark Tank(シャーク・タンク)」に出演したときのこと。キューバン氏は60万ドル(約6600万円)の投資と引き換えに、同社の9%の株式を取得したのだ。同社が詐欺であるという主張があったにもかかわらず、キューバン氏はその背後にある科学を支持し、最新のラウンドにも資金を投入している。

Eternevaのダイヤモンドは「大切な人との繋がりを維持するための、ユニークで社会的に責任のある方法」だとキューバン氏は TechCrunchへのメール中で語っている。

「同社にはまだまだ成長の余地があり、前途有望です。それが今回の投資の理由です」。

愛する人の髪の毛や遺灰からダイヤモンドを作るというのは「とても個人的な思い入れが強い行為」だと同氏はいう。

「Eternavaは非常に感情的で困難な時間を、他の誰にも真似できないような信頼できる方法で、人々が人生を歩み続ける手助けをしているのです」とキューバン氏は付け加えている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Eternevaダイヤモンド資金調達

画像クレジット:Eterneva

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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