ボストンから真東のおよそ200マイルあたりで、ロボットボートが、人が歩く程の速度で、大西洋横断という歴史的な快挙に向かって航行中だ。「Solar Voyager」は友達同士の2人が空いた時間を利用して作った船だが、大西洋を横断する最初の自動船舶となるだろう。さらには全ての大洋を含めても、ソーラー・パワーのみでの横断なら世界初だ。
Isaac PennyとChristopher Sam Soonは足掛け4年このプロジェクトをこつこつと続け、船は6月1日に進水まで漕ぎ着けた。現在のところ、ボートが大西洋を横断し切るにはまだ長い道のりが待っているが、プロジェクト自体は多くの意味で既に成功したと言っても良いだろう。
「よく言っているんだけど、たとえ少人数でも情熱を持ってやればどんなことができるか、ということです」と、Pennyは電話で言った。「Christopherと私が飛び抜けた天才とかじゃないんです。私たちは海育ちですらないんです。私なんか育ちはカンサスです!」
そうは言っても、二人はSolar Voyagerを一から作り上げた。彼らが既製品で利用したのはソーラーパネルと標準的なモーターの部品のみだ。18フィートのボートはGPS上の2点間をゆっくり進行中で、順調に行けばポルトガルに今秋到達するだろう。
彼らのボートが大洋を横断する最初の自動船舶というわけではない。 Liquid Roboticsが作ったWave Glidersが遡って2012年にその偉業を達成した。しかし、彼らの船はソーラーではなく波のエネルギーを利用していた。また、Pennyが指摘する通りそのプロジェクトは経験を積んだ大企業が資金、人材ともに供給したもので、そのプロジェクトで得たテクノロジーについては特許が取られた。
「Wave Gliderを作れるのはLiquid Roboticsだけですが、私たちのしたことは誰にでもできます。私たちはガレージすら持ってないんですから!」とPennyは笑った。
これまでの4年間に渡って、ボートは応急装備のプラスチックでできたカヤックから完全にカスタム装備のアルミボディーへと進化し、自家製の自分たちでチェックした推進装置と電子機器が装着されている。280ワットのソーラーパネル、特製の付着物耐性プロペラ、フジツボが付かないコーティングやたくさんのちょっとした工夫改良など、全てはボートが目的地に着くまでの4ヶ月間、無事航行し続けるためのものだ。
「耐久性が問題だというのは明らかですが、それには良い解決策はありません」とPennyは言う。「丸1日動くものを作るということと、何ヶ月も動く物、それもとても厳しい環境で故障しても直す人もいないという状況でも動き続けるものをデザインするということは、全く違います」
彼らにはチャンスは一度しかなく、一発必中が要求される。Liquid Roboticsとは異なり、作れるのは一隻のみ、リスボンまでの中間地点で船を整備してもらうことも出来ない。もしモーターが故障しバッテリーが駄目になったら、それで4年間と1万ドル強がフイになる。しかもサメが襲ってこず、大型客船が突っ込んでこないことが条件だ。実際、ボートはレーダーに映り、派手な塗装が施してあるし、一般航路は避けて航行しているんだけどね、とPennyは付け足した。
一旦ポルトガルに着けば、Solar Voyagerは最後のウェイポイントの周りを周回し続けつつ、PennyとSam Soonが回収に来るのを待つことになる。
「私たちは実はリスボンでボートを持っている人たちを探しているのです。これは多分人々がテックニュースで読みたいことではないでしょうね」と彼は付け加えた。この言葉が示す通り、これは2人の人間が余暇を利用して行ったことで、スポンサー付きのXPRIZEのエントリーや海軍支援によるプロトタイプ作製ではない、という点がとても素晴らしい。ポルトガルのTechCrunch読者諸君、もし彼らを助けてあげられるのであれば、是非コンタクトをとってあげてほしい。
何より、プロジェクトの目的は、このような試みにはソーラー・パワーが適していることを広く知ってもらうことだ。
「私たちは常に代替エネルギーとしてのソーラーを考えていますが、化石燃料では、今回はうまくいかなかったでしょう。それでは、永遠に動くものは作れません」Pennyは言った。「それが長期滞空ドローンだろうと海洋保安のためのデータ収集だろうと、はたまた野生動物保護区の監視であろうとも、ソーラーは単なる代替エネルギーではなく、最適な解決法なのです。他では出来ないことがソーラーであれば可能です」
Solar Voyagerの進行状況はプロジェクトのウェブサイトでチェックできる。場所と主要な活動数値は15分ごとに更新される。10月に戻って来れば、うまくいけばPennyとSam Soonがプロジェクトの成功を祝福しているだろう。そしてちょっとばかりの歴史が作られることになる。
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(翻訳:Tsubouchi)