Instagramのアカウント・リンクはFacebook Loginの後継になるのか?

十代のFacebook離れは同社のフィード広告収入を損なうだけでなく、個人認証プロバイダーとしての支配にも影響を及ぼす。Facebook Loginは、他のサービスに別のユーザーIDとパスワードを使うことなくログインできるようすることでアクセスを容易にして、ユーザーの囲い込みを狙っている。しかし、Instagramを選んでFacebookを捨てた(あるいは無視した)若者ユーザーについては、ITの巨人はわれわれの生活に打ち込まれた最強のくさびを失いつつある。その一方でInstagram愛好者は、個人用、サブ、ビジネス用など複数アカウントの個人認証を使い分ける面倒を強いられている。

しかし、現在開発中の新機能は、複数のInstagramアカウントの扱いを楽にすると同時に、InstagramをFacebook Loginの後継にしようとしている。Instagramは、ユーザーが自分のプロファイルの1つを主アカウントにして他のアカウントにリンクできるようになる「メインアカウント」機能のプロトタイプを作った。メインアカウントにログインすると、他のアカウントにも自動的にログインする。その後はメールアドレス/ユーザー名とパスワードの組み合わせを1つだけ覚えていればよい。ログインの簡易化によって、Instagramでのアカウント切り替えや投稿が増え、愛着も深まる。

アカウントのリンクはInstagramの現在のログインプラットフォームのパワーアップにもなる。現在同プラットフォームを使っているサードパーティーアプリは、フィード投稿とストーリーズを作成してInstagramでシェアしたり、ビジネスアカウントのアクティビティーやメンションを測定することができる。Instagramはこのログインプラットフォームを拡張して、Facebook Loginと同じようにユーザーの個人情報やプロファイル情報を他のアプリに今以上に提供する可能性がある。これでサードパーティーアプリにInstagramのメインアカウントを通じてログインしたあと別のアプリからシェアするときにどのプロフィールを使うかを選べるようになれば、もっとうまく行くかもしれない。

TechCrunchは、Android版InstagramアルファバージョンのAPKファイルの中に “Account Linking” のコードが入っていることを、ソーシャルメディア研究家のIshan Agarwalから情報提供を受けた。コードには次のような記述があった。「1組のIDとパスワードで、ユーザーの全Instagramアカウントに素早く安全にログインする…アカウントの1つをメインアカウントにすると、それを使って他のアカウント全部に同時にログインできる…アカウントは別々のまま、ログインは早く簡単になる…メインアカウントのパスワードを知っている人なら誰でも、そこにつながっているアカウントをアクセスできるようになる」

Instagramは本機能についてのコメントを拒んだ。これは何かのプロトタイプを作って社内でテストしているが外部テストをまだしていない会社としては、標準的対応だ。しかし、この段階でアプリのコード内で見つけられた機能の多くが結局一般公開されている。Instagramビデオ通話ネームタグサウンドトラックなどがそうだった。

Facebookはそのログインプラットフォームを使ってウェブを植民地化し、同サービスのロゴをさまざまなサイトにばらまくことによって、サービスごとに新規アカウントを作らずにすむようにした。これがFacebookのユーザーベース拡大を助け、ユーザーを囲い込むことで、Facebookがフィードコンテンツの新たな情報源を開拓し、ユーザーがウェブ界隈で何をしたかのデータを集めることを、やめさせるのを困難にしている。Facebookでヘビーな投稿や閲覧をやめたユーザーの多くが、その後もつながり続けているのはSpotifyやNetflixなどのサービスへのログインをFacebookに頼っているためだ。

実際、Facebookのログインプラットフォームは、同社にとって最も価値の高い機能の一つであり、強力なライバルもいない。Googleは独自の認証プラットフォームを運営しているが、Gmailアカウントを守るために2要素認証などのセキュリティー機能を使うユーザーが増えていることから、使うのが少々面倒に感じることがある。SnapchatもPoshmarkと提携して独自のログインプラットフォームSnap Kitを普及サせようとしているが、アカウント作成に採用している主要アプリはほとんどない。

Instagramはその他の個人認証関連機能にも手を出している。同社はストーリーを親友だけにシェアするための親しい友達機能を公開したほか、独自の2要素認証オプションや、フィード投稿を自分が管理する複数アカウントに同時配信する機能を追加した。ユーザーにメインアカウントを確立させることで、Facebookが自分とInstagramとWhatsAppを横断する暗号化メッセージ機能を提供する計画もスムーズになる。InstagramがFacebookと異なり実名ポリシーを強制していないことから、メインアカウントを真のアイデンティティーの代用として使うことも考えられる。

Instagramを単なるFacebookの類似品ではなく、避難所か後継のどちらかと考えはじめると、Facebookの中核をなす資産がどうやって変遷を乗り切るのかを考えることが重要になる。最近のプロフィールのデザイン変更によって、既にFacebookはInstagramプロフィールを個人のオンライン・パーソナリティーの中心に据える実験をしている。あちこちに散らばったアイデンティティーをアカウント・リンクを通じて統一できれば、ウェブを横断して1つのパーソナリティーを使えるようになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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