がんばれAereo, ついに最高裁判所が最終裁定に乗り出す

メディア界の大御所Barry Dillerが後ろから支えているストリーミングTVサービスAereoは昨年の時間の大半を、既存の全国ネットワークテレビ局との法廷闘争に捧げてきた。

しかしこの裁判もやっと、最後の直線コースに入ってきたようだ。最高裁判所が今日(米国時間1/10)、この問題に最終決着をつける、と決断したのだ。

Aereoは、放送局が常時オンエアしていて一般に自由な視聴が可能な放送信号を小型のアンテナでとらえ、小額の月額料金でそのコンテンツをインターネットからストリーミングする。これまでアメリカの世帯の多くが、かなりの額の料金でケーブル企業と契約してテレビを視聴しているが、その長年の慣行をディスラプトする最初の大きな一歩がAereoだ。

ケーブル業界や、そこと長年癒着している放送業界は、Aereoに顧客を奪われることになるからおもしろくない。しかし一方裁判所は、Aereoを、クラウド上のDVRおよび消費者が使用するテレビアンテナの一種として、合法とみなしている。

これまでは、裁判でのAereoの勝訴は、ニューヨーク、ボストンなど、毎回市場が限定されていた。そこで放送局は次から次と新たな市場に関して訴訟を起こしてきた。事の本質に関する議論を棚上げして、Aereoをきりのない消耗戦でつぶすことがねらいだ(下の声明文参照)。

しかし上訴で負けてばかりいることにそろそろうんざりした放送局側は、最高裁の介入を要請し、そしてやや意外にもAereoは、この訴訟の最高裁行きに同意した

最高裁がこれまでの各地での判例を尊重してAereoに有利な判決を下せば、それは包括的な決定となるので今後は地域ごとの面倒な裁判の繰り返しがなくなる。つまり、最高裁の裁定は最終決定である。

この訴訟を審理することに同意した最高裁判所は、メディア産業の未来の形を決めるための重大な決定を行うことになる。Aereoの長期的な目標はコンテンツクリエイターが作品を視聴者に直接売れるようなマーケットプレースを作ることだ。テレビ局、ケーブル企業といった、既得権の上にあぐらをかく中間搾取者が不要になり、消える。だからもちろん、そのお値段も安くなる。今目指している既存テレビ放送のストリーミングは、過渡期的な形にすぎない。

Aereoの操業が合法と決定されれば、顧客には最終的に、無料の放送信号へのアクセスが提供される。そして最高裁は、よりオンデマンド中心型の、メディアの未来への扉を、開くことになる。

この件でAereoのCEO Chet Kanojiaは次のような声名を発表した:
[以下、英文ママ]

We said from the beginning that it was our hope that this case would be decided on the merits and not through a wasteful war of attrition. We look forward to presenting our case to the Supreme Court and we have every confidence that the Court will validate and preserve a consumer’s right to access local over-the-air television with an individual antenna, make a personal recording with a DVR, and watch that recording on a device of their choice.

This case is critically important not only to Aereo, but to the entire cloud computing and cloud storage industry. The landmark Second Circuit decision in Cablevision provided much needed clarity for the cloud industry and as a result, helped foster massive investment, growth and innovation in the sector. The challenges outlined in the broadcasters’ filing make clear that they are using Aereo as a proxy to attack Cablevision itself and thus, undermine a critical foundation of the cloud computing and storage industry.

We believe that consumers have a right to use an antenna to access over-the-air television and to make personal recordings of those broadcasts. The broadcasters are asking the Court to deny consumers the ability to use the cloud to access a more modern-day television antenna and DVR. If the broadcasters succeed, the consequences to consumers and the cloud industry are chilling.

We remain unwavering in our confidence that Aereo’s technology falls squarely within the law and our team will continue to work hard to provide our consumers with best-in-class technology that delights and adds meaningful value to their lives.

〔訳注: 自前のアンテナによるテレビ視聴の多い日本では、このAereo訴訟の問題点がややもすれば分かりにくいが、(1)Aereoの主張は、消費者にテレビを見るためのアンテナの一種を提供してわずかな使用料を得ているにすぎない、となり、(2)既存テレビ局やケーブル業界は、Aereoは放送の勝手な(ノーライセンスの)再放送により利益を得ようとしている(ケーブルの領分を犯している)、と主張する。これまでの各地裁の判決では、すべてAereoが勝訴している。ただしAereoのようなサービスの真の将来性は、実は、既存テレビ放送受信のための新型アンテナの提供がその中心ではない。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))