顧客生涯価値(CLV)から考えるSEMのポテンシャル

SEMの効果検証を行う際、一般的にはコンバージョンを元にした比較的単純な計算を行うケースが多いと思います。一部の大型商品を除けば、顧客生涯価値(CLV。。日本ではLTVの方が一般的でしょうか)、その顧客がその後行う取引も考慮することがより深い・正しい効果検証には必要になりますよね。今回は顧客生涯価値を踏まえたSEMのプランニングについて考えた勉強になる記事をサーチエンジンランドから。 — SEO Japan

理髪店の外に立ち、お客さんを呼び込む仕事を与えられたと仮定しよう。ぼさぼさ頭のサラリーマンが歩いていたら、大声で呼び込むものの、スキンヘッドの男性を見ても、熱心にアピールする気にはならないはずだ。

この例は、Google Adwordsが、Enhanced cost-per-click(エンハンストコストパークリック)機能を説明するために用いたものである。この機能は、コンバージョンに導く可能性が高いオークションを特定し、自動的に入札額を上げて、売り上げを獲得するために投じた資金に「身を粉にして働かせる」ことを意図している。cpaclvwee 強力なコンセプトであり、当然のことながら、SEMコミュニティでは、支持者が増えつつある。

この論理をさらに前に進めることが出来ると仮定しよう。素晴らしい顧客 — 忠実で、長期間にわたり、繰り返し買い物をする可能性が高く、初回のコンバージョンを最終的に大幅に上回る買い物客 — を集める確率が高い広告グループ(またはキーワード)を特定することが出来たら、どうするだろうか?

このような顧客を獲得するために、進んで支出を増やす気はあるだろうか?その可能性は高いはずだ。

今年の1月、PPCは、コンバージョン全体の15%を占め、昨年の1月からは1%シェアを増やしていたものの、有料検索のチャンネルは、自然(2013年:26% -> 2014年:30%)やeメール(2013年:12% -> 2014年:15%)等のその他のチャンネルの爆発的な成長により、輝きを失っている。 ちなみに、これは、無料で米国のオンラインショッピング業界を調査し、100以上の米国のオンラインショッピングサイトからデータを集めるCustora Pulseが計測したデータを、オンラインショッピング分析サービスのCustora情報開示: 私の勤務先)が作成し、更新したスタッツである。

つまり、PPCは今でも成長を続けているものの、有望な新しい顧客を無限に獲得しているわけではない。そのため、有料検索プログラムでは、獲得を後押しする顧客の長期的な価値に焦点を絞ることが肝要である。

検索マーケッターが得られるチャンス

SEMの管理への従来のアプローチでは、コンバージョンの価値を、そのコンバージョンを獲得するために費やすコストに対して、追跡することで、具体的な広告グループやキーワードへの見返りを改善する取り組みを行う。私達は、このプロセスを、即時の見返りの管理とイメージする。以下に、シンプルなスタッツの例を挙げていく:

  • 平均のコストパークリック(CPC): $3.00
  • コンバージョン率: 20%
  • コスト/コンバージョン(トランザクション): $3.00/20% = $15.00
  • 価値/コンバージョン (=トランザクションの量): $30.00

利益: $30.00/$15.00 = 2x

コンバージョンが、新しい顧客に該当すると仮定してみよう。通常、初回の購入では、ビジネスにおける長期的な価値の一部のみを得ることになる。そのため、初回のコンバージョンを得るための金額を$30以下に抑えたくても、顧客の長期的な価値を考慮すると、この金額は$45、そして、$50へと跳ね上がる可能性がある。

顧客の生涯価値(CLV)を考慮する

抜け目のないデジタルマーケッターは、顧客獲得戦略を顧客の生涯価値(CLV)に合わせる重要性を以前から心得ている。CLVは、特定の顧客から「生涯」得られる収益の全額を指す。CLVには、初回のコンバージョンだけでなく、今後行う可能性がある購入も含まれる。

全ての顧客が同じではない点は、マーケッターなら分かっているはずだ。一度きりしか購入しない顧客もいれば、忠誠心の高い、常連の買い物客になる顧客もいる。そして、高い価値の顧客を集めているチャンネル、アフィリエイト、そして、広告ネットワークを特定することが出来れば、そのチャンネルに対する投資を増やしたいはずである。これは、単なる机上の空論ではない。事実、各種の有料検索の用語で獲得した顧客の長期的な価値が、最大で30%も異なるケースは日常茶飯事である。

その上、この違いの多くは、初回の注文の金額ではなく、今後、繰り返し購入を行うかどうかの可能性に左右される。つまり、SEMプログラムを即時の見返りのみを考慮して編成すると、利益をみすみす見逃してしまうのだ。最高の価値を持つ顧客をもたらす広告グループを特定することが可能なら、新たな顧客の獲得から十分に見返りを得られることを把握し、支出を増やすことが出来るのではないだろうか。

CLVを考慮して有料検索を最適化

それでは、CLVを活用して、顧客獲得マーケティングプログラムの利益を増加させるには、どうすればいいのだろうか?まずは、様々なキャンペーンで獲得を試みている顧客、広告グループ、キーワードに対する見解を得て、この見解を使って、SEM戦略を導くことが重要である。その方法を伝授しよう。

ステップ 1: トランザクションの計測基準から顧客中心の計測基準に変更する

Google Analyticsのeコマースタグを用いると、固有のオーダーIDに関連するデータを引き出することが可能になる。このデータをデータベース内のオーダーIDと一致させることで、顧客とオーダーを関連付けられるようになる。つまり、「キーワード Xから幾らの収益を得たのか?」等の問いから、「キーワード Xを介して得た顧客は誰か?」等の問いにレベルアップすることが可能となり、有料検索を介して獲得したそれぞれの顧客を、当該の顧客を獲得したキャンペーン、広告グループ、そして、キーワードと照合することが出来るのだ。shutterstock_84816412-measuring-tape

ステップ 2: 顧客の生涯価値を特定する

コホート分析等のツールを使えば、過去の顧客の各種区分への支出に関する見解を得ることが出来る — 例えば、ある広告グループで獲得した顧客の1年間の支出額の平均と、別の広告グループで獲得した顧客の1年間の支出額の平均を比較することが可能だ。生涯価値を推測する機能を持つマーケティング分析ソフトウェアもある。このツールは、各種の有料プログラムで獲得した新しい顧客のCLVを — キャンペーンやキーワードを最近立ち上げたばかりであっても — 素早く、そして、正確に特定する(顧客の生涯価値、そして、その計算方法の詳細は、Custora Uの顧客の生涯価値コースを参考にしてもらいたい)。

ステップ 3: 顧客単価(CPA)を考慮する

各種広告グループの顧客のCLVを特定したら、次に、それぞれの顧客を獲得するために現在支払っている金額を把握する。一定の期間内(例えば、前四半期)のキャンペーン、広告グループ、キーワードへの支出額を、当該のルートで獲得した新たな顧客の人数で割ってもらいたい。例えば、ある広告グループに前四半期で$2,500を投じ、100名の顧客を新たに獲得したなら、CPAは$25になる。

ステップ 4: 望ましい比率を探し出す

続いて、平均のCLV:CPAの比率が高い広告グループやキーワードを特定する — つまり、新しい顧客の生涯価値が、獲得のコストを遥かに上回る広告グループを探すのだ。 特定の広告グループが、著しく価値が高い顧客を引き寄せている可能性がある。あるいは、特定の広告グループに対する競争が少なく、平均のクリック単価の低下につながっていることもあり得る。もしくは、特定の広告グループのコンバージョンの大半が新しい顧客であり、新しい顧客の獲得を支えるために、リピーターに費やす「経費」を抑えることに成功したのかもしれない。いずれにせよ、高いCLV:CPAの比率は、有料検索への支出額を増やす機会を示唆していると言える。

ステップ 5: 真の機会を特定する

CLV:CPCの比率が高い広告グループを特定したら、支出を増やすと実際に効果があることを確認する作業に入る。見返りの多いキャンペーン、広告グループ、キーワードからより多くの顧客を獲得することが目標である。特定の広告グループが、既に必ず上位に入っているなら、入札額を上げたところで、顧客の獲得にはつながらない(ブランドの検索用語が、「幻」の機会として現れることが多いのは、このためだ)。真の機会とは、入札額を上げると、平均のポジションを上げるポテンシャルを持つ機会を指す — 例えば、平均の入札順位が、1.5、またはそれ以下。

shutterstock_177128498-experimentステップ 6: テストして、学習する

チャンスのある広告グループに対して、最高のCPA(または最高のCPC)を10%ずつ上げ、平均のポジション、CPA、そして、CLVへのインパクトを計測していこう。テストと結果の計測の最終段階は、CLVベースの有料検索戦略を成功に導く上で非常に重要である。SEMの支出の投資対効果を時間の経過とともに計測することで、継続して、入札のアプローチを次第に調節し、新しい機会をもたらす広告グループを発見し、戦略の総合的な効果を裏付けることが可能になる。

始動

CLVを中心とした有料検索戦略の最適化は、簡単な取り組みではない。そのままの状態で、生涯価値を基に自動的に入札額を設定し、管理することが可能なソリューションは存在しない(ただし、最高で30日間クッキーの期間を融通することが出来るツールは存在する)。しかし、CLVを使って、SEMプログラムを導くと、顧客を獲得する取り組みの利益は増えていく。見返りの高いキャンペーン、広告グループ、キーワードに投資することで、SEMに投じる資金を有効に活かし、長期的な価値をもたらすようになるだろう。

画像: Custora

この記事の中で述べられている意見はゲストライターの意見であり、必ずしもサーチ・エンジン・ランドを代表しているわけではない。


この記事は、Search Engine Landに掲載された「6 Steps To Boost The Profitability Of Your SEM Acquisition Program」を翻訳した内容です。

キーワードや広告で変わるのは単純なコンバージョン率だけでなく、コンバートした顧客がその後行う取引回数にまで及ぶ可能性は十分にあるわけですし、それを考慮しつつSEMを展開していくと、SEMの費用対効果はさらに上がりそうですね。 — SEO Japan [G+]

投稿者:

SEO Japan

002年開設、アイオイクスによる日本初のSEOポータル。SEOに関する最新情報記事を多数配信。SEOサービスはもちろん、高機能LPOツール&コンサルティング、次世代SEOに欠かせないインフォグラフィックを活用したコンテンツマーケティング等も提供。 SEOブログながら、ウェブマーケ全般。アドテク、ソーシャル、スタートアップ、インフォグラフィック等。