HubSpot上場で考えるインバウンドマーケティングの実力

インバウンドマーケティングで有名なHubSpotがIPO申請を行ったようですね。当サイトでも創業者が運営するブログの記事を定期的に紹介していることもあり、その内容が気になったのですが、早速、SEO Japanでも別途翻訳紹介しているConvince & Convertの筆者がHubSpotの事業状況の分析、そして彼がインバウンドマーケティングについて思う所を記事にしてくれたので紹介します。 — SEO Japan

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どの時点で、HubSpotの財務パフォーマンスが、インバウンドマーケティングの有効性を証明すると考えられるのだろうか?

昨日、「インバウンドマーケティング」と言う用語を作ったサイト、HubSpotが、IPOの申請を行った

IPO(株式公開)を申請する際、会社は「S-1」と呼ばれる文書を提出し、投資家に財務情報を提供する。これは、初めて、HubSpotの金銭面の状態を詳しくチェックする機会であり、実際に同社のS-1に慎重に目を通した結果、挑発的な疑問を私は持つようになった。

この文書を読めば、誰でも同じ疑問を持つ可能性がある。

Hubspotは、2006年に開設され、S-1には2009年から2014年の第2四半期までの財務情報がこと細かく記載されている。今でもスタートアップに分類されるものの、開設から8年間を経過し、そして、数回の資金調達を受けているため、かなり成熟したスタートアップだと言うことが出来るだろう。そのため、HubSpotが、いまだに多額の収益を失っている事実は、少々意外であった — 昨年、HubSpotは、7700万ドルの売上があったが、3400万ドルの赤字だった

たとえ設立してから8年が経過していても、様々な理由で、企業が赤字が続けている可能性はある。Amazonの収益(待っているので、リンクをクリックして実際に確認してもらいたい)に、この現実が如実に表れている。HubSpotにとっての、競合者、そして、切磋琢磨する同業者に該当する会社においても、この矛盾が起きている。例えば、2012年、ExactTarget(註:メールマーケテイングで有名なB2B企業)の収益は、2億9200万ドルの売上に対し、2100万ドルの赤字だった(その後、Salesforce.comに買収された)。また、Marketo(註:マーケティングオートメーションで有名なB2B企業)の2013年の収益は、9400万の売上に対し、4600万ドルの赤字であった。

しかし、HubSpotは、インバウンドマーケティングの有効性を信条に掲げている。それでは、S-1から、同社が採用するアプローチの有効性について、どのような事実が見えてくるのだろうか?

HubSpotの財務情報から、インバウンドマーケティングの有効性について、何が分かるのか?

そこで、私は同社の粗利益(収益-サービスを提供するために必要なコスト)を販売コストおよびマーケティングコストと比較してみた。すると、次の点が明らかにになった:

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HubSpotの粗利益 vs 販売コスト & マーケティングコスト(100万ドル単位)

2012年においては、正しい方向に向かっているように見えるものの、2013年になると、販売とマーケティングのコストが再び上がり、この傾向は2014年の前半も続いている。

私の意見を取り入れる前に、次の点に注意してもらいたい:

  1. 私はMBAを持ち、投資家であるものの、株の専門家ではない。
  2. かつてスタートアップを1社経営したことがある。あまりうまくいかなかった。
  3. HubSpotには友人が務めており、これから投げ掛ける問いは、私の友人を非難するものではない。私にとっては、掛け替えのない仲間である。

それでは、私の意見を聞いてもらいたい:

  • HubSpotは、インバウンドマーケティングの原則を土台にしている。
  • HubSpotは、間違いなくインバウンドマーケティングを世界で一番巧みに実施している企業である。同社のコンテンツマーケティングの質とスピードは、圧倒的であり、右に出る者はいないと言っても過言ではない。
  • HubSpotは、また、大量のディスプレイ広告、動画広告を含む、その他のタイプの広告でインバウンドマーケティングを補っている。
  • インバウンドマーケティングは、顧客獲得コストを削減するはずである。しかし、アウトバウンドマーケティングを追加したとしても(あるいは、これが原因かもしれない)、HubSpotの販売コスト & マーケティングコストは、引き続き、粗利益を上回っている。

挑発的な問いを投げ掛ける前に、S-1が販売とマーケティングを区別していない点を指摘しておく。つまり、マーケティングコストが増加していると断言することは出来ない — ただ単に顧客の獲得と維持にかかるコストが増えているだけなのかもしれない。また、HubSpotは、今でもスタートアップに分類され、スタートアップにおいて、顧客の獲得と維持が利益を減らす減少は、異常ではなく、むしろ、日常茶飯事である。その上、IPO直前に販売 & マーケティングのコストを増やすアプローチ自体もよく見られる。

しかし、いずれこの傾向を変える必要がある。インバウンドマーケティングに焦点を絞る会社に携わっているなら、HubSpotのパフォーマンスから、すぐに利益を得られるわけではない点を見出すことが出来る。

最後に、インバウンドとアウトバウンドのROIの差のデータも提供されていない。ただし、アウトバウンドマーケティングが必要される事実が、インバウンドマーケティングの限界を物語っている。

それでは、私の脳裏に浮かんだ疑問を提示する:

どの時点で、HubSpotの財務パフォーマンスが、インバウンドマーケティングの有効性を証明すると考えられるのだろうか?

この問いは、顧客が買いたいと思い、進んで料金を支払う製品をHubSpotが持っていることが前提である — インバウンドマーケティングと言えども上辺だけではやっていけない。

(上辺だけではなく)中身があり、顧客数が継続的に増加しているため、しっかりとした製品を提供していると仮定すると、どのような結論が導き出されるのだろうか?HubSpot自身が発表したインバウンドマーケティングの現状レポート(2013年版)によって、インバウンドのマーケッターにとって、ROI(投資に対する利益)の証明が難しいことが明らかになっている中(調査の参加者の25%が言及)、このデータをどのように解釈すれば良いのだろうか?

皆さんの意見を聞かせてもらいたいが、この疑問を問う目的が、HubSpotを非難することでも、インバウンドマーケティング自体を中傷することでもない点を理解してもらいたい。この記事を読み、内容に納得し、私の力を借りたいと思ってもらえれば幸いだ。それが、インバウンドマーケティング(おまけにコンテンツマーケティング)である。

ここでは、インバウンドマーケティングの一般的に信じられている能力に疑問を投げ掛ける会話を始めたい — 友人のジェイ・ベーアが言うように、この際、効果の誇大な宣伝は不要だ。インバウンドマーケティングの役割、そして、効果を正確に評価することを私は望む。

(情報公開: Hubspotは、ジェイ・ベーアが執筆した書籍「Youtility」で取り上げられており、また、同社はこの本のために宣伝目的の資料を提供している。ExactTargetは、Convince & Convertのスポンサーである。ジェイ・ベーアは、Marketoの2つのイベントで講演を行った。また、Amazonの株主でもある)


この記事は、Convince & Convertに掲載された「Is Inbound Marketing Actually Profitable or Just a Slogan」を翻訳した内容です。

特にこの数年は急成長して勝負をかけてきたHubSpotですし、赤字の財務状況は上の他者の事例見ても、米国のB2B系のテック企業にはよくあるパターンですから珍しくもないとは思いますが、確かにインバウンドマーケティングをあれだけ推奨し、その投資対効果を謳っていてこの数字では「自社はどうなのよ?」「アウトバウンドに相当お金をかけているのでは?それともインバウンドマーケティングに費用対効果が悪いのでは?」という突っ込みをしたくなるのはわからなくもないですけどね。SEO会社も電話営業すると「SEO会社が電話営業してるなんて矛盾してるだろ!」と突っ込まれますし笑(一応、弊社は特に電話営業はしていませんが)

ちなみにこんな記事を紹介してしまいましたが、インバウンドマーケティングにしてもコンテンツマーケティングにしてもその重要性と効果は誰以上に信じている私ですので誤解なきようお願いいたします。それより個人的には、この手のB2B企業のパターンとしてはIPOするにしろしないにしろ、最終的には大手企業の参加に収まることが一般的とは思いますが、HubSpotの場合、独特の企業文化を売りにしている点もありますから、求められる会社の持続的な成長、買収へのプレッシャー含め、IPO後のHubSpotの企業文化がどう変化していくのかが気になる点ではあります。 — SEO Japan [G+]

投稿者:

SEO Japan

002年開設、アイオイクスによる日本初のSEOポータル。SEOに関する最新情報記事を多数配信。SEOサービスはもちろん、高機能LPOツール&コンサルティング、次世代SEOに欠かせないインフォグラフィックを活用したコンテンツマーケティング等も提供。 SEOブログながら、ウェブマーケ全般。アドテク、ソーシャル、スタートアップ、インフォグラフィック等。