米実業家マーク・キューバン氏、ジェネリック医薬品を低価格で提供するオンライン薬局を開設

Mark Cuban(マーク・キューバン)が先週末に発表した、100種類以上のジェネリック医薬品を原価に近い価格で販売するオンライン薬局は、まったく思いもよらないものだったが、薬を買うのに苦労している何百万人もの人々に歓迎されることだろう。この億万長者はTechCrunchの取材に対し、このビジネスモデルは清々しいほどシンプルだと語った。「低価格化が患者のストレスを減らし、それが顧客の増加につながるのです」。

このCost Plus Drug Company(コスト・プラス・ドラッグ・カンパニー)の目的は非常にシンプルで、できるだけ多くの一般的な医薬品を、ジェネリック医薬品として、できる限り低価格で提供することである。すべて現金で、IP取引も保険会社も使わず、製造コストに15%を加えた価格で薬を購入するだけだ。

ROI(投資収益率)について質問されたキューバン氏は、それほど高くないことを認め、これは意図的なものであると答えた。

「薬を買える人の数を最大限に増やしながら、損益分岐点を超えたい」と、キューバン氏は語った。「まあ、少しでも利益が出て、他で売られているジェネリック医薬品の価格を大幅に下げることができれば嬉しいね」。

「私たちの課題は、価格を下げ続けること」であり、誰かと競争することではないと、同氏は続けた。「私たちのKPI(重要業績評価指標)は、ジェネリック医薬品を購入する患者のストレスをどれだけ軽減できるかです。人々は薬代を大幅に節約できたら、同じ問題を抱えている知人に教えることがあるでしょう。 そのような口コミが、私たちの成長に最も影響を与えます」。

同社は現在、偏頭痛の薬からHIV、避妊薬まで、あらゆる薬のジェネリック医薬品を提供しているが、扱う薬には、より安く提供できる、あるいは提供すべきであるということ以外、特に優先順位はないと、キューバン氏は説明する。また、どのよう症状に対する薬を次に扱うかということを決める委員会のようなものもない。

「プロセスとしては、世の中に出回っているものよりも安い価格で提供できる薬を選ぶだけです」と、キューバン氏は簡単に答えた。「これはどんなビジネスでも同じです」。

中間業者を排除し、実績のある製品を誰よりも安く提供するという極めてわかりやすいビジネスプランは、今では古めかしく感じられるが、キューバン氏は自分のやっていることを、よく理解している。少なくとも全般的(ジェネリック)には。オンライン薬局に参入しようとしているスタートアップ企業へのアドバイスを求められたキューバン氏は、肩をすくめるように答えた。「私には何もありません。私はまだ学んでいる最中ですから」。

画像クレジット:BRENDAN SMIALOWSKI/AFP

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

登録者数9万人以上のかかりつけオンライン薬局「YOJO」が2.5億円を調達、処方薬市場に本格参入

登録者数9万人以上のかかりつけオンライン薬局「YOJO」が2.5億円を調達、処方薬市場に本格参入

LINEを使って「女性の一生涯の健康をサポート」するかかりつけオンライン薬局「YOJO」を展開するYOJO Technologiesは7月7日、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ANRIを引受先とする第三者割当増資2億5000万円の資金調達を実施したことを発表した。これにより累計調達額は、融資を含めて3億9000万円となった。

順天堂医院で臨床と研究に従事していた医師の辻裕介氏(代表取締役)と、東京大学大学院農学生命科学研究科を卒業し経営共創基盤で新規事業開発などに携わっていた上野彰大氏(取締役、開発責任者)は、「患者満足度世界一の医療機関になる」というミッションを掲げて2018年にYOJO Technologiesを創業した。主に不定愁訴で悩む女性を対象に、LINEで薬剤師と相談しながら体に合った医薬品が買えるオンライン薬局「YOJO」を運営している。2021年7月7日時点で登録者数は9万人以上。20~50代の不定愁訴で悩んでいる女性が中心という。2021年2月には保険薬局の指定を受け、本格的なオンライン服薬指導による処方薬の提供も行っている。

高効率・高品質なチャットオペレーション構築

今回の資金調達の目的は3つある。1つ目は高品質なチャットオペレーションの構築。薬剤師とエンジニアが共同でCRM(顧客関係管理)ツールをすべて社内で開発し、チャット対応の効率化により薬剤師1人あたりの1日の対応者数を500人まで可能にしているという。これにさらに開発投資を行うことで、自動化の促進・返信内容のリコメンド機能などを拡充する。また顧客から継続的に得られる定量/定性データを基に、医薬品やアドバイスのパーソナライズ提案の質を自動で改善するアルゴリズム開発を行う。

処方薬をはじめとするSKU(単品管理)拡大

2つ目は、処方薬をはじめとするSKU(単品管理)の拡大。不定愁訴に悩む女性は、処方薬のほかに市販薬やサプリなどの健康食品も併用していることが多く、YOJO利用者の75%が、それらを含めた飲み合わせなどの服薬フォローを望んでいるという。これに対応すべく薬剤師を「健康パーソナルコーチ」に位置づけ、そこで重要となるSKUを拡大する。

薬剤師のリモートワーク体制を構築

3つ目は、薬剤師のリモートワークによる新しい働き方の創出。出産や子育てなどで離職を余儀なくされた薬剤師が在宅で活用できる場を提供し、薬剤師が働きやすい環境を整える。

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カテゴリー:フェムテック
タグ:オンライン薬局(用語)YOJO Technologies(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

医療テックのRoは遠隔および自宅初期診療プラットフォームの拡大に544億円を調達

医療テックスタートアップRo(ロー)は、遠隔医療と自宅初期診療を提供する同社のハイブリッド型医療プラットフォームをさらに拡大するために、5億ドル(約544億円)を調達した。計画には、薬局事業も含まれている。同社は、薬の配達の最適化と患者の医療負担削減のための垂直統合戦略を追究している。今回の投資はシリーズDラウンドだ。これにより2017年の創設以来の調達額は8億7600万ドル(約870億円)を超えた。

かなりの金額に感じられるが、Roの共同創設者でCEOのZachariah Reitano(ザッカリア・レイタノ)氏が私に話したところによれば、医療業界ではほんの「はした金」だそうだ。最初に企業を立ち上げたのは、そのためでもある。

「テック企業が医療業界の土俵に上がることが、どれほどすごいことかと語る人がいます」とレイタノ氏は話す。「医療は4兆ドル(約435兆円)市場だ、大変な規模だよと言われます。しかし、そこは世界でいちばん過酷な場所なのです。とにかく大き過ぎます。私は、テクノロジーでそれを半分に分けることができると考えています」。

今回の資金調達の第1の目的は、そこにあるとレイタノ氏はいう。つまり、医療サービスとテクノロジーを垂直統合させる取り組みを加速し、その過程で実現される効率化によって患者の医療負担を軽くするという最終目標に向かうものだ。

「私にとって一番うれしいのは、そのインフラへの投資が続けられることと、さらに増資できることです」とレイタノ氏は私に言った。「私たちは今後も遠隔医療に投資を続け、流通と薬局業務に投資を続け、自宅医療に投資を続け、さらにその3つの結合に、その後は診療科目の拡大、患者の遠隔モニターに投資します。デバイスを集めて患者に配布し、受動的な医療から積極的な医療へと移行させます」。

Roのモデルは、保険者、雇用主の資金提供、ガイデッドケアプログラムを介さず、消費者に直接、初期診療を届けることに重点を置いている。目的は、垂直統合とその他の効率的なエンジニアリングの取り組みにより医療費を軽減し、実質的に一部負担額と自己負担額を同等にすることを目指す。レイタノ氏によれば、現在の米国の保険制度は、個人の負担額を巧妙に隠しているだけだという。そのため、税金で補われているにせよ、職場が手取りの給与を削って医療費に回しているにせよ、とにかく自分のポケットからどれだけ医療費が出ているのかが、わかりづらくなっている。

画像クレジット:Ro

それが、同社が独自の薬局事業を展開し、常に足がかりを広げようと力を入れている理由になっている。同社は、2021年末までに薬局を10店舗、来年末までに15店舗を米国のほぼ全土に開設し、すべて地上ルートでの患者宅への翌日配達が可能になる戦略的な地点に配置する予定だとレイタノ氏は話す。

こうした垂直方向の最適化により、Roは一般的な医薬品500種類を月5ドル(約540円)で提供できるようになった。これには心臓疾患、不安障害、うつ、糖尿病などの薬も含まれる。2021年末までには、同じ価格で1000種類の医薬品を買えるようにするとのことだ。これで、多くの保険会社が同等の薬代として請求する一部負担金と、ほぼ同額になる。

またレイタノ氏は、新型コロナのパンデミックにより、Roのモデルに都合がよい方向に医療システムの大変革が起こり、ハイブリッド医療プランが加速されたとも話している。

「パンデミックは、医療システムに有意義な影響を2つもたらしたといえます」とレイタノ氏。「1つは、私たち全員が気にかけていたまさにそのとき、パンデミックが国全体のあらゆる不公平を照らし出したことです。その影響を日々被っている人たちには、ある意味よく知られた問題でした。地理的不公平、経済的不公平、人種的不公平などです。そうした不公平を感じた人は、それを誰かに話したくなりますが、みんなが同じぐらい高い関心を持っているとは限りません。しかし、その巨大なスポットライトが医療システムに当たったのです。もう1つは、すべての人の医療がオンライン化に進み始めたことです。途中から対面の直接診療に移行するにしても、オンラインから始まるようになるでしょう」。

Roのモデルは、遠隔医療、ほぼ毎日必要となる予約管理、場合によってはそれに続く自宅での直接診療という今の医療提供のかたちを、ずっと進めてきた。これが医療を大幅に効率化したことは確かだ。同時に、高齢者や移動が困難な患者が家に居ながらにして、診療所の医師から15分間の診察が受けられる。これは動画では叶わないことだ。

左から、Roの共同創設者Rob Schutz(ロブ・シュッツ)氏、ザッカリア・レイタノ氏、Saman Rahmanian(サマン・ラーマニアン)氏

ほとんどの業界オブザーバーは、レイタノ氏の考えはほぼ正しく、パンデミックが終わっても医療はもう、初期診療から対面で行う昔ながらの非効率なモデルには戻らないだろうと考えている。新型コロナ禍がもたらした建設的な効果に、遠隔医療は、従来方式に比べて、特に遠隔モニターと継続的で積極的な健康対策を組み合わせることで、大勢の患者の大量の初期診療の需要に対処する能力が高いと証明された点がある。

現在、Roは保険会社とは協力体制にないが、レイタノ氏は、それを完全に拒んでいるわけではないと語る。ただ今ある医療保険が高額で、不確かで、希有な結果に対するリスクプールを目的としたものであり、彼の意図するように機能しないだけだという。いずれは、さまざまな形が組み合わされた医療全体に医療保険が参入できる場所ができると彼は信じている。しかしその前に、そのインセンティブ構造を、実際のコアカスタマー、つまり患者本人に再び合わせるための方策作りに正面から取り組む必要がある。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Ro資金調達遠隔医療オンライン薬局

画像クレジット:Ro

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)