グーグルが広告の重要性を強調し、AndroidにPrivacy Sandboxを導入する計画を発表

Google(グーグル)のChrome(クローム)ブラウザに導入されたPrivacy Sandbox(プライバシー・サンドボックス)のイニシアチブは、必ずしも完璧な成功を収めているわけではないものの、オンライン・プライバシーに関して、そして広告エコシステムにおけるGoogle自身の役割について、健全な議論を巻き起こしたことは間違いない。現在、Chromeにおけるこの取り組みの多くは依然として流動的だが、Googleはこれらのツールの多くをAndroid OSにも拡大することを計画している。これは広告業界に重大な影響を与えることになるだろう。

とはいえ、まだ広告エコシステムに関わっている人たちが絶望する必要はない。Googleによると、これらの新しいシステムをテストする間、現行のシステムは「少なくとも」あと2年間は有効のままになるとのこと。

通常、Androidでは、広告主はGoogleの広告IDを利用して、パーソナライズされた広告を提供したり、アプリケーション間でユーザーの行動を追跡したりする。これによって広告主は、例えば、あなたが商品を購入したのは、あなたがクリックした広告によるものだと、判断することができるというわけだ。簡単に言えば、広告IDはAndroid版のCookieと考えてよいだろう。ユーザーはAndroidの「広告」設定から、広告IDを削除することにより、この機能をオフにして、パーソナライズされた広告を拒否することができる。広告IDを削除すると、Googleは親切にも、広告が多くのサービスの無料化に貢献していることを気づかせてくれる。そしてそれこそが、Googleが今回の変更を行う理由でもある。

この発表に先立って行われたブリーフィングで、GoogleのAndroidセキュリティ/プライバシー担当プロダクトマネジメントVPは、特に広告の重要性を強調した(もちろん、広告はGoogle自身の収益においても大部分を占めている)。

「このエコシステムにとって重要な機能を強調することは有益なことです」と、VPは語った。「広告IDのようなツールは、より適切な広告体験の提供や不正行為への対処などに役立ちます。また、現在私たちがモバイルアプリで楽しんでいる無料コンテンツやサービスの多くを可能にするためにも役立っています。ですから、次世代のモバイル技術を構築する際には、こうした機能が確実にサポートされるようにすることが重要なのです」。

ここで問題となるのは、もちろんApple(アップル)だ。アップルは、Googleのチームが極めて露骨な手段と見なすようなものを使って、本質的にトラッキングを不可能にしている。これはプライバシーにとっては好都合だが、広告主は絶望の中から必死に這い上がって、あなたの行動やデバイスを追跡する新しい方法を考え出し、有益なトラッキングデータを手に入れようとするだろうと、Googleは主張する。しかし、Meta(メタ)が、アップルのポリシー変更によって、2022年には100億ドル(約1兆1500億円)の広告収入を失うだろうと述べたという事実は、Googleの主張を否定するようにも感じられる。Metaがこの問題を回避する良い方法を見つけられないのであれば、他の誰が見つけられるというのだろう?

そこで、Chromeと同様に、Googleはユーザーのプライバシー保護と広告エコシステムの維持という両方を実現しようとしているのだ。念の為にはっきりさせておくと、Googleは自社の広告システムも、サードパーティの広告主と同じルールに従うとしている。

今回の提案の中には、GoogleがChromeで行ってきたことをベースとするものがある。その中には、FLoC(フロック、コホートの連合学習)に代わって最近導入されたTopics(トピックス)や、個体識別子に依存することなく、広告主が独自に定義した「カスタムオーディエンス」に基づいて広告を表示することができるシステムのFLEDGE(フレッジ)が含まれる。

アトリビューションレポートなくして現代の広告エコシステムはありえないため、Googleはここでも新しいシステムを提案し、広告主が必要とするデータを提供し続けながらも、ユーザーのプライバシーを改善することを約束している。

また、開発者向けのSDKでは、サードパーティの広告コードを分離し、アプリ自体のコードとは別に実行されるようにする予定だ。現時点では、これはAndroid 13のみの機能になるようだ。なぜなら、これらの新しいプライバシー機能に加えて、あらゆるSDKに追加のセキュリティ保証を提供するという両方を重視した、全体的に異なるSDKアーキテクチャが必要だからだ。

Googleは、この新しいシステムについて、広告業界と連携していきたいと述べている。これまでのところ、これをサポートする意見は、広告エコシステムではなくアプリ開発者から多く寄せられている。

画像クレジット:rylan9 / Getty Images
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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米民主党議員、ターゲティング広告を大幅に制限する新プライバシー法案を提出

米連邦議会の民主党議員3人が米国時間1月18日、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)、大量に蓄積した個人情報を活用しターゲティング広告で収益を上げているその他のデータブローカー企業に不利益をもたらし、オンライン広告のあり方を劇的に変えようとする新しい法案を提出した。

この法案「Banning Surveillance Advertising Act(監視広告禁止法)」は、カリフォルニア州のAnna Esho(アンナ・エシュー)議員とイリノイ州のJan Schakowsky(ジャン・シャコウスキー)議員によって下院に、ニュージャージー州のCory Booker(コリー・ブッカー)議員によって上院に提出された。テック企業がユーザーに広告を提供する方法を大幅に制限し、個人情報の使用を全面的に禁止するものだ。

この法案が可決された場合「人種、性別、宗教などの保護された区分情報、およびデータブローカーから購入した個人データ」に基づくターゲティングはすべて禁止される。ただしプラットフォームは、都市や州レベルの一般的な位置情報に基づいて広告を表示することができ、また、ユーザーが利用しているコンテンツに基づく「コンテキスト広告」も認められる。

この法律が施行されれば、米連邦取引委員会(FTC)と州検事総長が違反行為を取り締まる権限を有することになり、故意に違反した場合には1件につき最高5000ドル(約57万円)の罰金が科される。

エシュー議員はこう述べている。「『監視広告』のビジネスモデルは、広告ターゲティングを可能にするために個人情報を収集し囲い込むという不適切な行為を前提としています。この悪質な慣行は、オンラインプラットフォームが社会に多大なコストをかけてユーザーのエンゲージメントを追い求めることを可能にし、誤った情報、差別、ライバル陣営を支持する有権者の弾圧、プライバシーの侵害など、多くの害悪を助長しています」。

本日、私は「監視広告禁止法」を@RepAnnaEshooと@RepSchakowskyとともに提出しました。この法律により、広告主は個人のオンライン行動を利用して利益を得ることを止めざるを得なくなり、その結果、私たちのコミュニティはより安全になります。

ブッカー上院議員は、ターゲット広告モデルを「略奪的で侵略的」と呼び、ソーシャルメディアプラットフォーム上で偽情報や過激主義を悪化させる慣行であると強調した。

また、検索エンジンのDuckDuckGo(ダックダックゴー)や、ProtonMailを開発したProton(プロトン)など、プライバシーに配慮した企業が、Electronic Privacy Information Center(EPIC、電子プライバシー情報センター)、Anti-Defamation League(名誉毀損防止同盟)、Accountable Tech、Common Sense Media(コモン・センス・メディア)などの団体とともにこの法案を支持した。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)