新型コロナの感染拡大で深刻化するカリフォルニアのデジタル格差

もし十分なインターネット接続環境にないカリフォルニアの学生を集めて州をつくるとしたら、住民の数はアイダホ州やハワイ州よりも多くなる。

カリフォルニアの幼稚園生から高校生まで、計152万9000人(Common Sense MediaのPDF)が遠隔教育を十分受けるのに必要なネット接続を持たない。

非営利団体Common Sense Media(コモン・センス・メディア)はまた、ネットに十分に接続できる環境にない学生は一般に、デバイスも十分に持たないと指摘している。ネットに十分接続できる学生と、デジタル格差で反対の側にいる学生を隔てるホームワーク・ギャップ(学生が自宅でネットに接続できず宿題をできないこと)は、大胆で早急な介入がなければ深い淵となる。

いまものすごいスピードで広がっているデジタル格差に対する注意を喚起するために、筆者はサンフランシスコでNo One Left Offline(NOLO)を始めた。スタッフ全員がボランティアの非営利団体で、学生や高齢者、身障者に高速で手ごろ料金のインターネットアクセスを提供することに取り組んでいるベイエリアの組織の協力体制を作っている。

7月27日の週に、NOLO連合はデジタル格差の隅にいる家庭のブロードバンド料金を直接カバーするのに使われる資金5万ドル(約534万円)を調達するためのBridge the Divideキャンペーンを立ち上げる。

新型コロナウイルス(COVID-19)への対応として、現時点では緊急策はホームワーク・ギャップがさらに深刻になるのを阻止しただけだ。これこそが、学生の十分なインターネット接続とデバイスの欠如を解決する新たな方法が必要な理由だ。デジタルを「使える状況にあること」は、ブロードバンド費用をカバーし、そして「使えない状況にある人」が必要とするアップグレードに対応できることであるべきだ。直接提供するこの形は、インターネット接続を最大限利用するためにあらゆる学生に高速インターネットとデバイスを提供する最も効果的で効率的な方法だ。

しかしデジタル格差の間違った側の暮らしがいかに悲惨なものかを認識している人はあまりにも少ない。だからこそ筆者は、デジタルを「持てる者」である読者に、筆者と共に7月17日にオフ(ライン)を取ることを希望する。より多くの米国市民が安定したインターネット、デバイス、十分なレベルのデジタルリテラシーなしに成功するのはもちろん、生き残ることすらいかに難しいかを認識するのに、デジタルなしで1日過ごすことが必要だと確信している。

このデイオフ(ライン)で引き出すデジタル格差への注意の高まりは、ホームワーク・キャズム(宿題の隔たり)の形成阻止に向けて、より全体的で目覚ましい対応に駆り立てるはずだ。

ホームワーク・ギャップを埋めるためのこのところの取り組みは称賛すべきものだったが、限定的だった。たとえば、インターネット・サービス・プロバイダー(ISP)による料金の抑制や、延滞料金の免除、データ上限の撤廃などは称賛に値する。しかしそうした取り組みは、学校が始まる数カ月前、そして経済的危機が増大する最中の6月末で終了した。

多くのISPが助けを必要としている人々をサポートしようとこれまで以上に取り組んでいる。Verizon(ベライゾン)が、ホームレスとなっている人が愛する人と連絡を取れるよう非営利団体のMiracle Messagesに電話を寄付しているのがいい例だ。しかし、こうした一時的な取り組みは、何十万ものカリフォルニア州民がかつてない経済不安を体験しているという事実に十分に対応するものではない。人々は、パンデミックの最中に終わるような任意の貢献ではなく、デジタル面のニーズに対する長期的なソリューションを必要としている。

同じように、ベイエリアの多くの教育委員会が、助けを必要としている学生や家庭に無線インターネットやデバイスをすぐさま貸与した。実際、新型コロナの前ですらオークランド統一学区と1Million Projectは必要とする学生に無線インターネットを提供していた。ただ、こうした種の取り組みは、ホームワーク・ギャップの間違った側にいる学生に、反対側の学生に与えられているものと同じデジタル・リテラシーを高めるための機会を与えられるものではない。反対側の学生は自分のデバイスを所有し、宿題をやる以上のことができるだけの十分なインターネット接続を有している。

全ての学生が自分のデバイス、そして安全かつスムーズにインターネットを使用する点においてエキスパートとなれるようなネット接続を手にする権利がある。

直接の提供はソリューションとなる。ベイエリアの経済的ゆとりのある個人は、助けが必要な家庭のためにインターネット契約とデバイスを「支援」することができるし、そうすべきだ。家庭の高速インターネット契約を1年もしくはそれ以上支援することで、支援者はパンデミック中の暮らしに伴う他の困難に注意を振り向ける必要のある学生や保護者に安全のようなものを提供することになる。しかも、提供されるデバイスは縛りや「お古」のラベルなしだ。

学生は自分のものにできるフル装備の主要機能を備えたラップトップを手にすることになる。これは寄付デバイスでは一般的なことだ。

インターネットへのアクセスは人権であり、政府はホームワーク・ギャップを解決すべきだ。これまでのところ、この課題に十分に向き合っていない。そのため、民間でのソリューションが当面必要となる。我々が全体としてこのタスクに向き合っているというのは素晴らしいことだ。Fidelityによると、ほとんどの慈悲深い支援者は今年、そうした取り組みを維持するか増やす計画だ。

ミレニアル世代の46%が慈善行為を増やすつもりであることを考えて欲しい。残念ながら、慈善行為を阻害する要因は、新型コロナによる惨禍を解決するための取り組みを効果的にサポートするのに必要な情報を持っているというふうに多くの提供者が感じていないという事実だ。

だからこそ、NOLOや他の組織がこの問題に取り組み、注意喚起している。行政はホームワーク・ギャップを埋めていない。子供たちが成功するのに必要なネット接続とデバイスを確保できるかどうかは我々にかかっている。NOLOはまた、Bridge the Divideキャンペーン中にこの問題に取り組む手段を提供している。支援者は、サンフランシスコ・テック・カウンシル、BMAGIC、そしてMission Merchants Associationの組織がサービスを提供しているコミュニティのブロードバンド費用を肩代わりすることができる。

全体的な課題としてはホームワーク・ギャップが最優先事項だ。期日が迫っている。最初のタスクは7月17日にオフ(ライン)を取ること。そして7月27日の週に Bridge the Divideキャンペーンに寄付することだ。

共に取り組もう。

【編集部注】筆者Kevin Frazier(ケビン・フレイザー)氏はハーバード・ケネディ・スクールで公共政策を学ぶ大学院生。カリフォルニア大学バークレー校法科大学院にも在籍し、より良い行政について考えている)

画像クレジット: Catherine Delahaye / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

パンデミックで浮き彫りになるリモートラーニングビジネスのチャンスと課題

バーチャル科学実験室を提供するエデュテック企業であるLabsterは、米国時間4月14日、カリフォルニア州のコミュニティカレッジネットワークと提携して、そのソフトウェアを210万人の学生が利用できるようにすることを発表した。

California Community Colleges は、国内で最大の高等教育システムであるといわれている。Labsterとの提携は生物学、化学、物理学、および一般科学に向けの130種類のバーチャルシミュレーションを115の学校に提供するというものだ。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が学校の閉鎖を余儀なくしているために、多くのエデュテック企業たちは、自社のソフトウェアを無料で提供したり、無料トライアル期間を延長したりすることで対応をしてきた。4月14日に発表されたLabsterの提携の中で、新しくて注目に値するのは、現在の情勢がビジネス上の取引にどのようにつながるかを示す、いくつかの最初の兆候を示している点だ。

コペンハーゲンを拠点とするLabsterは、バーチャルSTEM実験室を教育機関に販売している。Crunchbaseのデータによれば、Labsterはこれまでにベンチャーキャピタルから、知られている限り3470万ドル(約37億3000万円)を調達している。Labsterの顧客にはカリフォルニア州立大学、ハーバード大学、グウィネットテクニカルカレッジ、MIT、トリニティカレッジ、そしてスタンフォード大学などが名を連ねている。

実験装置は大変高価であり、予算の制約により各学校は最新のテクノロジーを導入するのに苦労している。従ってこれまでLabsterの提案してきた価値は、より安価な代替案であるということだった(学生がバーチャル実験室で試薬をこぼしても、掃除の手間が省けるが)。

だが、新型コロナウイルスによるパンデミックの拡大を制限するために、世界中の学校が閉鎖を余儀なくされている中で、その訴求ポイントは少々変化した。現在それは科学実験室に代わる唯一実行可能な手段として、自分自身を売り込んでいるのだ。

多くのエデュテック企業にとって、リモート学習の急増は大規模な実験となった。学校がその運営を完全にデジタル化するために奮闘する中で、エデュテック企業たちは、しばしば自社の製品とテクノロジーを無料で提供している。

例えば先週、セルフサービスの学習プラットフォームであるCodecademy、Duolingo、Quizlet、Skillshare、そしてBrainlyは、生徒と教師のためにLearn From Home Club(在宅学習クラブ)を立ち上げた。それに先立ち、Wizeは同社の試験コンテンツと宿題サービスを無料で利用できるようにしている。また、ZoomはK-12スクール(高校以下の学校)にビデオ会議ソフトウェアを無料で提供したが、その結果は功罪の入り交じるものとなった

Labster自身は、全国の学校に500万ドル(約5億3700万円)分のLabsterクレジットを無償で提供した。こうしたリストは枚挙にいとまがない。

Labsterの今回の新しい取引は、今ならエデュテック企業が大きな費用をかけることなく、新しい顧客を確保できることを示している。

LabsterのCEOで共同創業者であるMichael Bodekaer(マイケル・ボデカー)氏は、この取り引きの価格についての詳細は明かさなかった。彼はLabsterが各々の学校と協力して、それぞれが教師のトレーニングとウェブセミナーのサポートにどれだけ投資できるか、または投資したいかの理解に努めたことを明かした。彼はまた、Labsterがこの取り引きから利益を得ていることは認めている。

「私たちはパートナーをサポートするための準備をしっかり整えたいと思いますが、同時に営利組織としてのLabsterが自分たちに給与を支払えることも確実にしたいのです」とボデカー氏は語る。「しかし、繰り返しになりますが、私たちのコストをカバーできる程度までの大幅な割引を提供します」。

他の多くのエデュテック企業と同様に、Labsterにとっての長期戦略は今回のような短期的な措置が長期的な関係へと発展していくように、学校に彼らのプラットフォームを気に入ってもらうことだ。

「会社として維持できる限り、これらの割引を維持するつもりです」と彼は語る。「当初は8月まで割引を行うつもりでしたが、現在は年末まで延長する予定です。状況によっては、さらに延長する可能性があります」。

価格設定はさておき、Labsterそして実際のところリモートラーニングに焦点を合わせたいかなるエデュテック企業にとっても、本当の実現上の困難はデジタル格差(digital divide)だ。ビデオ会議用のコンピューターや、演習用のインターネット接続さえも利用できない学生もいるのだ。

新型コロナウイルスのパンデミックは、リモート学習に必要なテクノロジーへのアクセスが、アメリカ全土でどれだけ不足しているのかを浮き彫りにした。カリフォルニア州では、Googleは支援を必要としている学生たちに、無料のChromebookと10万箇所のWi-Fiアクセスポイントへの無料アクセス権を提供した。

ボデカー氏によれば、Labsterは現在、モバイルデバイス上でのソフトウェアの提供に取り組んでおり、またGoogleと協力して、自社の製品がChromebooksなどのローエンドコンピューターで動作することを確認している最中だ。

「私たちは、ハードウェアにとらわれず、学生がすでに持っているシステムやプラットフォームをサポートしたいと考えているのです」と彼は言う。「持っているハードウェアが障壁にならないようにしたいのです」。

今回の提携によって、210万人の学生がLabsterのテクノロジーにアクセスできるようにはなったものの、その集団の中でコンピューターにアクセスできない可能性がある学生の割合については直接把握されていない。エデュテックにとっての試練そしておそらくその成功は、ハードウェアとソフトウェアの、どちらにも偏らない真のハイブリッドに依存したものになるだろう。

画像クレジット:doyata / Getty Images

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(翻訳:sako)