化学業界向けマーケットプレイスのアジアなどグローバル展開のためBluePalletが5.7億円調達

メーカーと化学業界をつなぐオンラインマーケットプレイスBluePallet(ブルーパレット)が、石油化学製品販売会社Vinmar International(ビンマー・インターナショナル)の子会社であるVinmar Ventures(ビンマー・ベンチャース)が主導する資金調達ラウンドで、500万ドル(約5億7000万円)を調達したことを発表した。

また同社は米国時間10月19日に、Alibaba.com上で「正式に」運営される初のインダストリアルコマースプラットフォームとなったことを発表した。これにより、BluePalletの化学品メーカーや流通業者のネットワークが、eコマースサイトで調達を行う世界中の何百万人ものビジネスバイヤーの目に触れることになる。

今回の資金調達により、BluePalletの総調達額は1000万ドル(約11億4000万円)となる。また化学業界のベテランであるTerry Hill(テリー・ヒル)氏(Barentz[バレンツ]北米CEO)、Mathew Brainerd(マシュー・ブレイナード)氏(Brainerd Chemical Co.[ブレイナード・ケミカル]CEO)、Bruce Schechinger(ブルース・シェチンガー)氏(National Association of Chemical Distributors[NACD、全米化学流通協会]前会長)も投資に参加している。

BluePalletは、2020年に当時設立3年目の化学品マーケットプレイスEchoSystem(エコーシステム)とフィンテック企業Velloci(ベローチ)が合併して誕生した。BluePalletの目標は、その「マーケットネットワークモデル」を適用して、これまで技術的な意味で遅れをとってきた巨大産業の取引を近代化することだ(私は1990年代後半に石油化学業界を取材していたのでよくわかる)。

化学産業はおもしろみがないと思われがちだが、身近な消費財の製造や医薬品、農業など、私たちが依存している多くの分野を支えている。

BluePalletは、自身の電子商取引モデルが、産業界の買い手と売り手に対して幅広い市場へのアクセスを提供すると同時に、規制遵守と責任ある流通の要件を「厳密に厳守」しているという。その上で買い手と売り手がサプライチェーンをよりコントロールできるのだと主張している。

BluePalletのサイトでは、3つの製品が提供されている。TradeHub(トレードハブ)は、ユーザーがネットワークツールを使って商品を探したり、掲載したりすることができる許可制のマーケットプレイス。TradePass(トレードパス)は、膨大な運営上、商業上、財務上のリスクデータポイントを「継続的に」確認することで「ネットワークの完全性」を確保することを目的とした「独自の」ビジネス検証技術。そしてTradeCart(トレードカート)は、決済処理、認証、物流を統合した独自のチェックアウトシステムだ。

また、今回の資金調達に合わせて、BluePalletは本社をシカゴからテキサス州オースティンに移転することを発表している。その理由は、化学産業が盛んなヒューストンに近いことと、オースティンの「活気ある技術と起業家精神の溢れる環境」を利用できることにある。

(かつてEchoSystemsを設立した)BluePalletのCEOであるScott Barrows(スコット・バロウズ)氏は、今回の資金調達は、同社の提供するサービスが認められたことを意味すると述べている(バロウズ氏は、現在LiveNation[ライブネーション]とTicketMaster[チケットマスター]に採用されているチケッティング・プラットフォームのEpic Seats[エピック・シート]とZeroHero[ゼロヒーロー]を、共同創業した経験も持つ)。バロウズ氏はAustin Britts(オースティン・ブリッツ)氏、Kevin Fuller(ケビン・フューラー)氏、Brian Perrott(ブライアン・べロット)氏と共同でBluePalletを設立した。

バロウズ氏はさらに「成長を続ける中で、東洋に目を向け、アジア地域でのプレゼンスを迅速に確立することを目指しています」と付け加えた。

スコット・バロウズCEO(画像クレジット:BluePallet)

世界の化学品市場では、アジア太平洋地域が最大の地域であり、2020年には3兆3400億ドル(約382兆4000億円)規模の市場の49%を占めている。なお北米は2番目に大きい地域で、市場の17%を占めている。BluePalletはNACDと提携しており、NACDの会員企業250社とその顧客75万人にアクセスできるため、バロウズ氏はこのスタートアップに大きな成長の余地があると考えている。

バロウズ氏は「このようなB2B取引で何ができるのか、その限界に大いに挑戦しています」とTechCrunchに語っている。

同社はマーケティングネットワークプラットフォームの構築を進める中で、既存のフィンテック企業との提携を試みてきた。

バローズ氏はTechCrunchに対し「最大手の企業でも1回の取引の上限は10万ドル(約1145万円)に設定していたり、もしくは化学業界との取引はしたくないと考えていることがわかりました。これは馬鹿げた話です」と語る。「なので、5兆ドル(約572兆5000億円)の化学産業のために、この問題を解決して、自分たちでこの技術を開発しようと決めたのです」。

バロウズ氏が強力な差別化要因と考えているのは、BluePalletが最大10億ドル(約1145億円)の取引に対応できることだ。

「このようにお金を動かすことができるようになった今、私たちはますます多くの国際市場に進出していきます」と彼はいう。「私たちは、これこそが鍵であり、多くのスタートアップ企業が新たに提供するものの中に欠けているものだと考えています」。

またバロウズ氏は、BluePalletが単なる「マッチメイカー」ではないことも強調している。

「他のほとんどのサイトは、文字どおりマッチングをするだけでおしまいです。彼らには実際の取引を完了させる能力がなく、代わりに当事者同士がオフラインで取引を完了させる仕組になっています。なので、私たちは業界の人々の商取引のやり方を真に変え、改善していくのです」。

画像クレジット:seksan Mongkhonkhamsao/Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:sako)

化学製品製造をコストを1桁削減する高速な酵素工学プラットフォームで変革するAllozymes

原材料を洗剤、化粧品、香料のような最終製品に変える複雑なプロセスの一端は、化学変換を促進する酵素に依存している。しかし、新規または開発中の薬剤や添加物に適した酵素を見つけるには、時間のかかる、ほとんどランダムなプロセスが必要となる。Allozymesは、業界に新たな基準を打ち立てる可能性の高い画期的な新システムでこのプロセスを変えようとしており、商用展開を見据えて500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を調達した。

アミノ酸が鎖状に連結している酵素は、DNAにコードされている数多くの情報を含む「生命の構成要素」である。この大きく複雑な分子は、他の物質と結合して化学反応を促進する。例えば、細胞内の糖をより有用なエネルギーに変換する。

また、製造業の世界でも酵素発見のアプローチがなされている。大手企業は、安価な成分を取り込んでより有用なかたちに化学結合させるといった価値ある仕事をする酵素を特定し、単離している。自然界に豊富に存在しない特定の化学物質を大量に販売したり、必要とする企業は、おそらく、より多くの化学物質を作り出すのに役立つ酵素プロセスを有しているだろう。

しかし、すべてのものに対応する酵素があるわけではない。新薬や香料のような新しい分子をゼロから作り出そうとするとき、それらに反応したり、それらを生成したりする天然の酵素が存在すべき理由はない。アレルギー薬を細胞内で合成する動物は存在しないため、企業は必要なことを行う新しい酵素を見つけたり、生成したりする必要がある。問題は、酵素は一般に少なくとも100単位の長さがあり、その単位は20種類のアミノ酸から選ぶことができるという点にある。これは、最も単純な新規酵素を求めたとしても、数え切れないほど多くのバリエーションがあることを意味する。

既知の酵素を出発点として、直感的に有効であると思われるバリエーションを系統的に研究するという方法で、研究者は新しい有用な酵素を見つけるに至ってきた。しかし、そのプロセスは複雑で、完全に自動化されている場合でも時間を要する。最高レベルのロボット研究室を持っていても、1日に多くて数百程度である。

このことから、Allozymesが1日に最大1000万件のスクリーニングが可能だと主張するのを聞くと、その変革のレベルを想像できるだろう。

画像クレジット:Allozymes

Allozymesは2人のイラン人化学エンジニア、Peyman Salehian(ペイマン・サレヒアン)氏とAkbar Vahidi(アクバル・ヴァヒディ)氏によって設立された。サレヒアン氏はCEO、ヴァヒディ氏はCTOを務める。両氏はシンガポール国立大学(National University of Singapore、NUS)でPhD取得を目指す中で知り合った。商用製品に至るまでの3年間の研究は、特許を保有し同社に独占的にライセンスしているNUSでも行われた。

「この20年間、当技術の最高水準は変わっていません」とサレヒアン氏はいう。「大手の製薬会社と話をしてみると、製薬会社はこのための部署をたくさん有し、200万ドル(約2億2000万円)相当のロボットを抱えていながら、新しい酵素を手に入れるのに1年もの歳月がかかっているという現状があります」。

サレヒアン氏によると、Allozymesのプラットフォームはプロセスを数桁高速化し、コストを1桁削減するという。これらの推定が立証されれば、酵素の探索は効果的に矮小化し、数十億ドル(数千億円)もの投資やインフラは無効なものとなる。さらにお金をかけることで得られるメリットとはいかなるであろうか。

伝統的に、酵素は細胞にDNA鋳型を導入することを含む多段階プロセスを経て単離および選択される。細胞を培養して標的酵素を産生し、特定の増殖状態が達成されると、ロボットを用いた分析が行われる。有望な結果があれば、より多くのバリエーションでその道を進み、そうでなければ最初からやり直す。小さな培養皿を採集したり設置したりする作業を頻繁に行い、細胞が十分な量の素材を産生するのを待つ必要がある。

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ヴァヒディ氏の他、NUSの研究者たちが設計したプロセスは、ベンチトップデバイスに完全に組み込まれており、無駄をほとんど発生させない。このデバイスは、培養皿を使用する代わりに、必要な細胞、基質、その他の成分をマイクロ流体システム内の小さな液滴に入れる。反応はこの小さな液滴の中で起こり、この液滴を培養し、追跡する。そして最終的に、より大きなサンプルが必要とする時間の何分の1かで採取され、試験される。

ただしAllozymesはこのデバイスの販売は行っていない。それはサービスとしての酵素工学であり、今のところパートナーや顧客はそのことに満足しているようだ。主なサービスは、プロジェクトのニーズに応じてサイズを調整できることにある。例えば、ある企業はすでに有効な酵素を保有しており、合成が容易であるか、特定の高価な添加物に依存しない変異体を望んでいるかもしれない。出発点はしっかりしていて、目標には柔軟性があり、小規模なプロジェクトになる可能性もある。また別の企業は、製造過程におけるハードな化学プロセスを完全に置き換えたいと考えており、そのプロセスの始点と終点を把握している一方で、ギャップを埋めるための酵素を必要としているかもしれない。より広範囲で費用のかかるプロジェクトになることも想定される。

左からペイマン・サレヒアン氏、アクバル・ヴァヒディ氏

目標は酵素工学を「民主化」することではない、とヴァヒディ氏は説明する。酵素工学は依然として、主に大企業が行うことになるような高価かつ大規模なものであるが、今や投入した研究開発費から10万倍に相当する成果をもたらし得る。Allozymesが提供するスピードと価値は競合他社よりも優れているとサレヒアン氏は語る。Codexis、Arzeda、Ginkgo Bioworksなども酵素バイオエンジニアリングを手がけているが、速度は劣り、優先順位も異なるという。

同社は、時には知的財産や製品の所有権を一部取得する契約を結ぶこともあるが、それは真のビジネスモデルではないとサレヒアン氏は語っている。初期の段階では実際に最終化合物を作ることもあったが、最終的にはコア製品はサービスであると目されている。(とはいえ、100万ドル[約1億円]の注文は侮れない)。

仕事をする過程で、Allozymesが何億もの酵素を選別する可能性もある、と思われたかもしれない。ご安心を、同社はそれらがもたらす価値を十分に認識している。このサービスは、必然的なデータ処理にシームレスに移行する。

「『このアミノ酸を変えれば、この機能が実現する』ということを示すビッグデータセットがあれば、工学的に解析する必要もなく、それを(検討事項から)排除できます。十分な情報を持ち合わせていれば、酵素を設計することさえ可能です」とサレヒアン氏はいう。

今回の500万ドルのシードラウンドは、Xora Innovation(シンガポールのソブリン・ファンドTemasekによる)が主導し、SOSVのHAX、Entrepreneur First、TI Platform Managementが参加した。サレヒアン氏によると、同社は米国のベンチャー企業の関心を受けて米国での法人化を計画したが、Temasekのアーリーステージの投資家が同社にそれをとどまるよう説得したという。

「バイオトランスフォーメーションは、世界のこちら側で大きな需要があるということです」とサレヒアン氏。「化学、農業、食品企業はこれを行う必要がありますが、そのためのサービスを提供できるプラットフォーム企業は存在しません。そこで、私たちはそのギャップを埋めることに取り組んだのです」。

画像クレジット:Allozymes

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)