NASAのリアル「アルマゲドン」ミッション、小惑星軌道変更「DART」が11月24日13時すぎに打ち上げ

NASA(米国航空宇宙局)にとって、ここ数年で最も刺激的で風変わりなミッションであるDouble Asteroid Redirection Test(DART、二重小惑星方向転換試験)は、地球から数百万km離れたところからやってくる巨大隕石に衝突し方向転換させるべく米国時間11月23日夜(日本時間11月24日13時すぎ)に打ち上げられる。飛行の様子はライブで見ることができるが、実際に大衝突が起きるまでにはしばらく時間がかかる。

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DARTは、宇宙を旅する生物にとって、飛来する小惑星の経路を意図的に変える初めての試みだ。心配はいらない、今回のケースは我らの貴重な惑星に危害を加えるものではく、将来そんな危機が訪れた時に必要となる介入の理想的な実験台だ。

「惑星防衛組織はこの問題に、実際、数十年にわたって取り組んできました」とNASAのThomas Zurbuchen(トーマス・ザブーケン)科学局長が説明した。「一連のツールを合体させるときがきました。このミッションはあらゆる利害関係者にとってますます重要になっています。本プログラムへの支持が高まったのはわずかこの5年間に過ぎません。そして、標的はその5年以上前から存在しています。地上から成功を見届けることができるこの完璧な機会について人々は語り合っています。追加調査は必要ありません」。

問題の小惑星は、太陽系を新婚カップルのように旅する二重小惑星の小さい方だ。大きい方の小惑星Didymos(ディディモス)は直径約780mで惑星キラーというわけではないが、近所に落ちてほしくないことに変わりはない。そしてディディモスを周回しているのが今回の標的、Dimorphos(ディモルフォス)で、長辺170mほどのピーナツ型をしている。ちょうど自由の女神がボルダリングするくらいの大きさだ。

DARTがやろうとしているのは、ディモルフォスがディディモスの向こう側から回ってきたその時を狙って飛んで行き、できる限り強く衝突することだ。宇宙船は質量約550 kg で、新しいイオンエンジンが秒速約6.6kmという目から涙が出るような(宇宙船に目があって空気があったとすれば)速度で飛ぶことを考えると、相当に強い衝突だ(衝撃の大きさを計算するのは専門家にまかせておく)。

ディモルフォスの軌道が衝突後にどう変わるかを表す模式図(画像クレジット:NASA/JHUAPL)

ディモルフォスが爆発して当たり一面に破片を飛ばすようなことはない。むしろその正反対で、影響はほとんど目に見えない。しかし、衝撃はディディモスを周回する軌道周期にわずかな影響を与え、速度を落とし、強力な望遠鏡で観察できる程度に周期を拡大する。この変化を観察することによって、科学者らは対象物の質量を知り、重い物体に別の物体を衝突させるこの精緻な技術がどれほど効果的だったかを知ることができる。

ロケットに搭載される前の防護壁の中にいるDART(画像クレジット:NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman)

それがわかれば、将来たとえば2倍の大きさの小惑星が衝突コースに現れたとき、何が必要になるかを情報に基づいて判断することができる。「この」大きさの力を「この」角度で「この」時間と距離(できる限り遠く、とメンバーの1人が私にいった)から加えることで、地球に衝突しないために必要なだけ惑星の方向を変えられる。DARTはこうした惑星防衛技術の基盤となるだろう。できれば必要にならないことを願うが、石油掘削員を集めて土壇場で小惑星を爆発させるよりも、準備を整えておいたほうがいいことには誰も異論はない。これは、TechCrunchの貴重な年長読者を掴んでおくための「アルマゲドン」への言及だ。

「私たちが今回本当にやりたいのは、迫りくる脅威のサイズに応じてインパクター(衝突体)のサイズを決める方法を知ることです。高い精度をもった衝突体モデルが必要なのです」とザブーケン氏は言った。1回のミッションでは足りないかもしれないし、次の衝突ミッションの計画はまだないが「別のタイプの小惑星に向けた追跡試験が計画されることは容易に想像できます」と同氏は語った。

衝突は比較的小さいかもしれないが、それでもワクワクする。そのために、NASAは衝突前にDARTから分離されるキューブサット、LICACube(リシアキューブ)を送り込んで近くから観察し、宇宙の山にアタックするところのデータと大衆受けするビデオを記録する。それは一陣の埃か瓦礫かソーラーパネルの破片のようなものかもしれないが、見るまでわからない。小惑星には何かが暮らしているかもしれない。もしそうであっても、1094万kmの彼方のことなので差し迫った危険はない。いずれにせよ、小惑星に宇宙船をぶつけるところをカメラに収め「ない」ことなど想像できない。

「これはリスクも衝撃も大きい探査です」とザブーケンしがキューブサットについて言った。キューブサットは衝突の瞬間を綿密に監視するための理想的な位置に置かれる。「これがなくても成功を確認することはできますが、あの映画を見たいんですよ、そりゃあ」。

DARTはSpaceX(スペースエックス)のFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットを使って、米国太平洋標準時11月23日午後10時20分(日本時間11月24日13時20分)頃からの打ち上げ予定で、ヴァンデンバーグ空軍基地の天候は最新予報で90%良好だ。打ち上げ後、宇宙船がディモルフォスと破壊ランデブーを行うまでには1年近くかかる。衝突は2022年9月末に起こる見込みだが、正確な時間はさまざまな要因が確定するまでわからない。

打ち上げ前中継はNASA Liveで1日中行われるが、直前準備とカウントダウンは午後7時(日本時間24日正午)頃が見どころだ。こちらのリンクから見ることができる。

画像クレジット:NASA/JHUAPL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アラブ首長国連邦が2028年にアステロイドベルトに探査機打ち上げ、小惑星への着陸を目指す

アラブ首長国連邦(UAE)の宇宙機関は、火星と木星の間にある小惑星帯に探査機を送り、2030年代初頭には最終的に小惑星に着陸させることを目指している。これはアラブ首長国連邦の民間宇宙企業にとって、大きな弾みがつくミッションとなることは間違いない。

このミッションは2028年に打ち上げが予定されている。そこから宇宙機は、長く曲がりくねった旅に出る。5年間で36億キロメートルの距離を移動し、金星と地球をブーメランのように回りながら十分な速度を得て、最終的には2030年に火星の先にある小惑星帯に到達する予定だ。UAEでは、2033年に探査機を小惑星に着陸させることを目指している。これは2014年に宇宙機関を設立したばかりの国にとって、野心的な目標だ。

これまで、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、そして日本の宇宙機関であるJAXAが、宇宙機を小惑星に着陸させている。今度のミッションが成功すれば、UAE宇宙局はこれらの少数のグループに加わることになる。その明確な科学目標は来年発表される予定だが、探査機が収集するすべてのデータは、宇宙の起源についての理解を深めるのに役立つ可能性がある。これらの小惑星は、太陽系が形成されたときの天空の残り物であると考える科学者もいるからだ。

今回のプロジェクトは、国内の宇宙産業の発展を目指しているUAEにとって、最も新しく最も意欲的な取り組みとなる。重要なのは、UAEが契約や調達の優先権を与えるとしている首長国連邦の企業が、このプロジェクトから利益を得られる立場にあることだ。

UAEは2020年7月、Emirates Mars Mission(エミレーツ・マーズ・ミッション)の「Hope(ホープ)」探査機を打ち上げ、2021年の2月には火星周回軌道へ乗せることに成功した。この探査機は火星を1年(687日)かけて周回し、火星の大気に関するデータを収集することになっている。

また、UAEは2022年に「Rashid(ラシッド)」と名付けられた重量10キログラムほどの小型月面探査車を、月へ送ることも予定している。この探査車は、カナダの民間企業3社の技術とともにペイロードとして、日本の宇宙ベンチャー企業であるispace(アイスペース)の「HAKUTO-R(ハクトR)」ミッションのランダーで月面に輸送される予定だ。

関連記事:日本の宇宙企業ispaceの月着陸船がカナダ宇宙庁とJAXAからペイロード輸送を受託

UAE宇宙庁のSarah Al Amiri(サラ・アル・アミリ)長官によれば、この最新のミッションは、火星へのミッションに比べて「5倍ほど複雑になる」という。その新たなレベルの難しさについて、UAEは声明の中で「宇宙機の設計とエンジニアリング、惑星間航行、複雑なシステム統合」に加えて、宇宙機の通信システム、電力システム、推進システムに求められる性能も高くなると述べている。

画像クレジット: ESA/Rosetta/NAVCAM Flickr under a CC BY-SA 3.0 license. (Image has been modified)

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAが「アルマゲドン」のような小惑星軌道変更ミッションの打ち上げを11月23日に予定

NASAが、最もハリウッド的なミッションである「Double Asteroid Redirection Test(二重小惑星軌道変更実証実験)」の打ち上げ日を決定した。これは基本的に映画「Armageddon(アルマゲドン)」の予行演習だ。映画とは違って、核兵器や石油掘削機、Aerosmith(エアロスミス)は登場しないものの、これは小惑星の軌道を大幅かつ予測可能な方法で変化させることができるかどうかについての実践的なテストとなる。

惑星防衛調整局(!)が管理するこのDARTミッションでは、比較的近くにあるディディモス(Didymos)連星と呼ばれる二重小惑星に、一対の宇宙機を送り込む。この二重小惑星には、直径780メートルの大きな惑星(これがディディモス本体)と、その軌道上に直径160メートルの小さな惑星がある。

この小さい方の惑星が、地球に衝突の脅威を与える典型的な種類の小惑星(この大きさの小惑星は増えており、観測が難しい)であるため、これに約500kgの宇宙機を6.6km/sの速度で衝突させ、その軌道を変更させる可能性を試すのだ。これによって小惑星の速度はほんの数パーセント変わるだけだが、その軌道周期には大きな影響を与えることになる。それがどの程度の影響を与えられるかを正確に把握することは、いつか将来、地球への衝突を避けるために小惑星の軌道を変更させるミッションに役立つが、当然のことながら、宇宙に浮かぶ岩石に宇宙機を衝突させることに関する既存の科学はあまりない。

小惑星に衝突させるDART機に同行するもう1台の宇宙機は、LICIACube(Light Italian CubeSat for Imagine Asteroids、小惑星画像用軽量イタリア製キューブサット)と呼ばれ、先週最後の仕上げが終わったばかりだ。こちらは作戦の直前に切り離され、衝突の瞬間に飛行しながら「結果として生じる噴出物と、おそらく新たに形成される衝突クレーター」の撮影を試みる予定だ。

これが非常にエキサイティングで興味深いミッションであることは間違いないが、当初予定されていた2021年夏の打ち上げウィンドウは延期され、11月23日が新たな打上げウィンドウの初日となった。DARTは米国太平洋標準時の11月23日午後10時20分に、南カリフォルニアのバンデンバーグから、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットで打ち上げられる予定だ。

「Osiris-Rex(オサイリス・レックス)」や日本の「はやぶさ2」など、地球の宇宙機関は小惑星に手が届くようになってきた。ディディモス連星攻撃計画については、打ち上げに向けてより詳細な情報が得られるようになるだろう。

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画像クレジット:NASA

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)