オンライン言語学習システムのFluent ForeverはデンバーのベンチャーキャピタルであるStout StreetCapitalがリードしたラウンドで490万ドル(約5億1000万円)の資金を調達した。このスタートアップは新しい学習システムを開発して短期間で効率的に新しい外国語をマスターできるようにすることを狙っている。このラウンドにはThe Syndicate、LAUNCH、Mana Ventures、Noveus VC、Flight.VC、Insta VC、UpVentures、Firebrand Ventures、Cultivation Capital、Spero Ventures、LoftyVenturesが参加している。
Fluent ForeverのライバルにはDuolingoやBabbelを始めとして多数のオンライン言語学習サービスがある。Fluentが主張する特長はユーザーごとにカスタマイズされたリスニングのトレーニングが提供されることだ。またビジュアル、間隔反復法的な反復によって単語やフレーズを覚えるのを助ける。Fluentは有料サブスクリプション(14日間の無料トライアルがある)で、料金は月額10ドル(約1040円)からとなっている。長期契約すれば割引が適用される。
ファウンダーでCEOのGabriel Wyner(ガブリエル・ワイナー)氏は、語学学習のために広く利用されているフラッシュカード式暗記アプリのAnkiを使い、このアプローチによる言語学習法について本を書いた。またAnkiシステムを利用した言語学習のワークショップも開催した。しかしワイナー氏が指摘するとおり、Ankiは高度なツールであり、利用方法を学ぶためだけでも相当の時間とエネルギーが必要だ。
ワイナー氏は取材に対して「大勢の人々が言語学習に失敗しています。そしてまず『うん、やり方がまずかったんだ。オーケー、ではこのオンライン学習ならどうだろう?』と考える。そしてもっと効果的にできそうなツールを発見して興奮する。ところがまた失敗するのです。その理由はテクノロジー上の問題です。そんなことで学習者がまた失敗するのを見るのは非常にいらだたしい」と述べた。
Fluent Foreverは全体的にワイナー氏のフラッシュカード方式を利用する。学習用フラッシュカードデッキをユーザーが自分の作成する。これが学習システムの中核であり、作成されたデッキはユーザーのニーズに適合した使いやすいアプリケーションとなる。
「ユーザーが望むのはボタンを1つ押すだけで学習できるツールでしょう。しかしそういう近道はありません。これに対しては断固としていわねばならない。声を大にしますが、答えはノーです。絶対にない。適切なツールはユーザー自身が構築しなければならないのです。これが私が一番強調したい点です」とワイナー氏は述べている。
ワイナー氏は言語学習に対する自分のアプローチをDuolingoと比較して「(母国語の単語と対照させる)2言語翻訳的な手法は、長期的には実際に使える言語スキルを生みません」と主張する。Duolingoのユーザー体験、ゲーム化等々の出来栄えはFluentよりもはるかに優れていることを認めるが、Fluentのシステムのほうが学習者ははるかに良い結果を得る確信している。
「我々は ユーザーに『Fluentを使う理由は何ですか Duolingoなら無料なのになぜFluentにお金を払うのですか?』と尋ねることがあります。すると『このサービスはあちこち荒削りだ。いろいろ修正してほしい部分がある。しかしFluentのおかでたった2週間でスペイン語で考えることができるようになった』という答えが返ってくるのです。Fluent Foreverは現在、日本語、フランス語、ロシア語、スペイン語(メキシコ、スペイン)、イタリア語、韓国語、ドイツ語、ブラジル・ポルトガル語の9言語をサポートしています。現在、チームが取り組んでいるのはオランダ語です」とワイナー氏。
ワイナー氏が語ったところではFluentは2019年に資金調達に苦しんだ。当時Fluentの規模が横ばいだったことも一因だった。「残念ながら投資家は言語学習に非常に懐疑的です。いわゆる『セクシー』な分野ではない。言語学習サービスは好かれていません。その上、市場を支配しているように見えるDuolingoがライバルになるというのでは魅力的な投資対象ではありませんでした」という。しかし2020年に入ると新型コロナウイルス(COVID-19)によるリモートワーク化の進展以前に成長が回復し始めた。同時にFluent Foreverは著名なエンジェル投資家であるJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏のLaunch Acceleratorに参加した。
ワイナー氏のビジョンは、Fluent Foreverが言語を教える講師をライブでシステムに登場させることだった。オンライン上のライブ個別指導は以前から行われており、Preplyのようにこれに特化している会社もある。しかしFluentが目指していたのはオンライン言語学習サービスに短いライブセッションを組み込みんで、ある種のコンポーネントを作成することだった。間隔伸張反復法の手法により、ユーザーは一定時間後にまたそのセッションに戻ることができる。ライブサービスを利用するのは原則として有料のサブスクリプションユーザーであり、ライブ指導の時間を使用してそれぞれのニーズに合わせた独自の文章を作ることができる。Fluentのシステムは、この文章を多くのユーザーが共有できるコンテンツにすることができるわけだ。これがFluentの手法の大きな利点の1つだという。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Fluent Foreverm、言語学習、資金調達
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)