フィンテックで新たに大規模なイグジット、SoFiが銀行・支払いプラットフォームのGalileoを約1300億円で買収

SoFi

フィンテック戦争はこの分野で新たに実行される大規模なイグジットによって相変わらず熱気を帯びている。

コンシューマー向け金融サービスプラットフォームのSoFiは米国時間4月7日、支払い・銀行口座インフラ企業のGalileo(ガリレオ)を現金と株式により総額12億ドル(約1290億円)で買収すると発表した。この買収は慣習的な買収完了条件を満たしたのちに成立する。

ソルトレイクシティを拠点とするガリレオは、Clay Wilkes(クレイ・ウィルクス)氏により2000年に創業され、自己資金による起業からこれまで20年間にわたり利益を生み出し続けている。ガリレオについては、昨年11月のJon Shieberの記事で、同社が外部からの資金調達の第2ラウンドとして、成長パートナーのJohn Locke(ジョン・ロック)氏が主導するシリーズAでAccel(アクセル)から7700万ドル(約80億円)を調達したことが報告されている。同社はそれまでに2014年4月のシリーズAラウンドでMercato Partners(メルカートパートナーズ)から800万ドル(約8億6300万円)を調達していた。

ガリレオはその数あるサービスの中でも、Monzo(モンゾ)やChime(チャイム)などのフィンテック企業が簡単に銀行口座を開設したり、プラスチックカードやバーチャルカードを発行できるAPIを提供している。理論的にはシンプルだが、銀行業務への規制や金融規定によってフィンテック企業に課される負担は大きく、ガリレオはプラットフォームの機能の一部としてこの規制負担を引き受ける。

同社は英国で目覚ましい成功を収め、同国の大手フィンテック企業5社のすべてが顧客になっている。世界全体で、先月は年換算にして450億ドル(約4兆8540億円)に相当する取引高を処理した。この取引高は2019年10月の260億ドル(約2兆8050億円)から、わずか6か月でほぼ倍増している。

戦略的な視点から見ればSoFiの目標は、拡大を続ける同社の金融商品をガリレオの協力を得て前進させ、コンシューマーサービス以外の新たな収益源を得ることである。SoFiは10年前に、学生ローンの借り換えサービスを提供して創業されたが、現在はローン、投資商品や保険商品、現金・資産管理ツールなど、コンシューマーファイナンスのさまざまなサービスを提供している。ガリレオの買収で、同社は明確なB2Bの収益要素も手に入れたことになる。

現在、Twitterの元COOであるAnthony Noto(アンソニー・ノト)氏がトップを務めているSoFiも、近年カタールなどから数億ドルの新規資本を調達している。同社の直近の企業価値は43億ドル(約4640億円)と評価されている。今後ガリレオはSoFiの独立した一部門として運営し、創業者のウィルクス氏が最高責任者として留任する。

近年フィンテック企業の価値評価が急速に上昇していることから、投資家たちの戦略はフィンテックにサービスを提供する企業に向けられている。今年に入ってVisaはPlaid(プレイド)を53億ドル(約5720億円)で買収したが、これは金融インフラ企業として極めて重要なイグジットと見なされていた。このイグジットが投資家の関心と戦略的な興味をこの分野に強く引き寄せ、ガリレオへの関心もまた日増しに膨らんでいたことは確実だ。そう考えれば同社のイグジットが昨年の資金調達ラウンドから比較的早い時期に行われたことにも説明がつきやすい。

アクセルは長年の戦略として、大部分を自己資金で創業した企業への投資を行ってきた。これらの企業には創業から10年以上経っているものもあり、ガリレオ以外にも1Password(ワンパスワード)、Qualtrics(クアルトリクス)、Atlassian(アトラシアン)、GoFundMe(ゴーファンドミー)、Tenable(テナブル)などがある。また、アクセルはこのようなタイプの資金調達ラウンドを支払いプラットフォームのBraintree(ブレインツリー)でも主導した。そのとき出会ったブレインツリーのゼネラルマネージャーであるJuan Benitez(ホアン・ベニテス)氏も、アクセルのロック氏とともに昨年11月にガリレオの役員となった。

この取引でのアクセルの価値評価は11月には公表されなかったが、現在、買収の情報筋によれば同社のリターンは4倍を越えるという。アクセルが株式を保有したのが約半年であることを考慮すれば、マクロ経済が世界的に困難な状況では、かなりのはIRR投資倍率だ。ガリレオの買収は現金と株式によることから、アクセルは今回SoFiにも出資することになり、リターンの少なくとも一部は未実現となる。

今回の買収で、ガリレオのアドバイザーはQatalyst(カタリスト)が務めた。

画像クレジット: Drew Angerer / Getty Images

[原文へ]

(翻訳: Dragonfly )

GPS戦争勃発

あなたはどこにいるのか? これは、単なる純正哲学的な問ではなく、地政学的にますます重要な問題となってきた。それによって、AppleやAlphabetのようなIT系の大企業が厳しい立場に追いやられようとしている。

中国、日本、インド、イギリス、そして欧州連合を含む世界中の国々が、独自の測位システムを構築するための研究、実験を行い、実際に衛星を打ち上げている。

これは、ここ何十年もの間、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)によって、物体の位置を測定する機能を実質的に独占してきたアメリカにとって、とてつもなく大きな変化となる。GPSは、冷戦時代にアメリカ空軍 が軍事目的で開発し、2000年の半ばに民生用にも開放された(GPSの簡単な歴史については、この記事を、詳しい歴史が知りたければ、一冊の本となった情報もここにある)。

GPSを支配することには、多くの利点がある。その中で、第一の、そしてもっとも重要なことは、軍用、商用に関わらず、世界中のユーザーがアメリカ政府が提供するサービスに依存するということだ。いわば、ペンタゴンの慈悲によって位置を決めさせてもらっているわけだ。この技術の開発と測位衛星の打ち上げが、宇宙産業に利益をもたらす波及効果もある。

現在のところ、そのシステムに対する代替手段となるのは、世界規模では唯一ロシアのGLONASSだけだ。これは、ロシア大統領ウラジミール・プーチンの肝入で進められたアグレッシブなプログラムによって、数年前に全球をカバーするようになった。ソビエト連邦の崩壊後に衰退していたものを再構築したものだ。

今では、他にも多くの国々が、米国への依存度を下げ、独自の経済的な利益を得たいと考えている。おそらく、それがもっとも顕著なのは、GPSに代わる世界的なシステムの構築を国家の最優先事項としている中国だ。そのBeidou(北斗−「Big Dipper」)ナビゲーションシステムは、2000年以降ゆっくりと構築されてきており、主にアジアでのサービス提供に焦点を当てている。

しかしこのところ中国は、Beidou衛星の打ち上げを加速し、世界規模の測位サービスの提供をもくろんでいるFinancial Times紙の数週間前の記事によれば、中国は今年だけで11個のBeidou衛星を打ち上げた。それは、そのネットワーク全体のほぼ半分に当たる数であり、2020年までには、さらに十数個の衛星を追加する計画だという。完成の暁には、世界でもっとも規模の大きなシステムの1つとなるだろう。

2017年11月5日、中国は西昌の衛星打ち上げセンターから発射されるLong March-3B型の打ち上げロケット。第24号と第25号のBeidouナビゲーション衛星を搭載している。写真は、Getty Imagesから、Wang Yulei /中国通信社/VCGによるもの。

中国は、衛星を軌道に乗せるだけでなく、自国のスマートフォンメーカーに、Beidouに対応した測位チップを各社のデバイスに搭載するよう要求している。すでに、HuaweiやXiaomiといった大手メーカー数社のデバイスは、GPSとロシアのGLONASSに加えて、Beidouのシステムに対応している。

それはAlphabetや、とりわけAppleのようなアメリカのスマートフォンのリーダーを苦境に陥れる。たった1種類に統合されたiPhoneデバイスを世界中に供給していることを誇りにしているAppleにとって、GPSに関する独占の崩壊は頭の痛い問題だ。中国市場にだけBeidouに対応した独特なデバイスを供給することになるのか。あるいは、世界市場向けの携帯電話にもBeidouチップを搭載するのか。それによって、米国の国家安全保障当局とトラブルになるのではないか?

やっかいな問題は、それだけではない。GPSに代わるシステムを立ち上げることに、もっとも積極的なのは中国で、世界中を網羅することに強気の姿勢を見せているが、独自のシステムを追求しているのは中国だけではないのだ。

日本は、宇宙開発を、中国に対抗し、経済を回復させるための国家的な優先事項と位置づけており、そのプログラムのもっとも重要な要素の1つとなっているのが、ポジショニングシステムの構築だ。そのQuasi-Zenith Satellite System(準天頂衛星システム)には、現在までに1200億円(10億8000万ドル)の費用をつぎ込んでいる。GPSを補強して、日本国内のカバー範囲を拡大するように設計されたものだ。それによって、推定2兆4000億円(2155億8000万ドル)の経済効果を見込んでいる。

この新しいシステムを利用するには多大なコストがかかる。生産規模が小さいためだ。Nikkei Asian Reviewの数週間前の記事は、「受信機の価格が高いことがハードルになる。三菱電機が木曜日に発売した受信機は、誤差が数センチ以内という精度を持っているが、その価格は1台が数百万円、つまり何万ドルもするのだ。」と指摘している。自律走行車には、日本国内でのより高い位置精度が必要なのかもしれないが、その技術を車に取り入れたいのであれば、自動車メーカーは直ちにコストを下げる必要がある。

日本と同様に、インドもGPSを補完するIRNSSというシステムの実現を目指している。すでに7つの衛星を打ち上げ、インド亜大陸でのカバー範囲を拡張している。一方、Brexitをめぐる国民投票の結果、3月に欧州連合から脱退することになっている英国は、EUのGalileo測位システムにアクセスできなくなる可能性がかなり高い。そのため、独自のシステムの立ち上げを計画している。そのGalileoは、2019年には完全な運用状態になると期待されている。

かいつまんで言えば、世界は1つのシステム(GPS)から、おそらく7つのシステムに移行したのだ。中国のメーカーは、GPS、GLONASS、そしてBeidouを1つのチップに実装することを促進しているが、それは中国という国家規模でしか成立しないだろう。たとえば日本では、スマートフォン市場は飽和状態にあり、人口は中国の10分の1にも満たない。そのため、価格を下げるために必要な量産効果は見いだせない。同じ理由で、英国ではさらに厳しいだろいう。

理論的には、1つの測位チップを、それらのさまざまなシステムすべてに対応するように設計することは可能だ。しかし、特にGLONASSとBeidouに関しては、米国の国家安全保障法に抵触する可能性がある。つまり、インターネットが異質な極に分断されているのと同様に、スマートフォンの測位チップも、そうした地域ごとの市場に対応するため、細分化を余儀なくされることが、すぐに明らかになるだろう。それは最終的には、消費者にとって、より高い価格を意味し、製造業者にとっては、より厳しいサプライチェーンを意味することになるのだ。

画像クレジット:AFP/Getty Images

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)