2年半ほど前にRose Broomeは、サンフランシスコの住民なら誰もが知っている、ある経験をした。彼女は路上にいるホームレスの女性のそばを通り過ぎたが、その一瞬、彼女に何をしてあげたらよいのか、分からなかった。多くの人はそんな考えを次の瞬間には忘れてしまうが、Broomeは忘れなかった。
“みんな、困っているし、途方に暮れている。ホームレスの人たちは、自分が人の目に見えない透明人間、誰からも世話してもらえない人間になった、と感じている”、と彼女は語る。“でも本当は、何かしてあげたいと思っている人がとても多い。何をどうやればよいのか、分からないだけだ”。
Broomeにとってそれは、自分が社会起業家になっていく長い道のりの第一歩だった。彼女はProject Homeless ConnectのようなサンフランシスコのNPOとパートナーして、HandUpという名のクラウドファンディングサイトを立ち上げた。人びとはそこへ行って、ホームレスの人たちを助けるための資金提供ができる。
HandUpは、立ち上げから今日までのほぼ2年で、88万6000ドルを集めた。ほとんどがサンフランシスコでだ。このサイトの上には、おむつのためのお金を求めているママたちもいる*。退役軍人のAdamは、歯の治療費数千ドルを求めている。Gladysというお母さんは、二人の息子を動機不明の自殺で失い、彼女の住居であるバンの修理費を求めている。HandUpのパートナー組織に属するソーシャルワーカーやケースマネージャたちが、そういう人たちのためにお金を配分する。〔*: アメリカの都市のホームレスは、日本よりも多様。〕
でも、これまで寄付者からのリクエストがいちばん多かったのは、毎日のように路上で見かけるホームレスの人たちに、直接渡せるようなギフトカードだった。そこでBroomeらは、上記のProject Homeless Connectで食べ物などと交換してもらえる、額面25ドルのギフトカードの、テスト配布を始めた。
“そんなもの、みんなが欲しがるかしら”、と彼女は自問した。しかし、結果は良好だった。“欲しがらない人もいたけど、それはそれでよい。ほとんどの人が、ギフトカードをもらって喜んでいた”。
今日(米国時間8/27)からそれは一般公開され、ここで登録すると、誰でもカードを1枚もらえる(郵送される)。カードの代金(25ドルの寄付金)は、Googleが負担する。カードはもちろん、町で出会ったホームレスの人に進呈すること。
Broomeによると、ギフトカードの利点は二つある。ひとつは、寄付者の寄付方法が増えること。もうひとつは、ホームレスの人たちがケースワーカーなどと接触するきっかけになることだ。後者の支援活動も、やりやすくなる。
Broomeの将来展望は、市の行政が変化の激しいホームレス人口のための福祉行政を管理するためのツールとして、彼女のサイトを利用することだ。すでに同社は、Marc Benioff(Salesforce)やEric Ries(lean startup運動)、SV Angelなどから85万ドルのシード資金を得ている。
“まだ各都市にホームレス人口の統一的なデータベースがないから、彼らが民間や行政の福祉窓口にやってくるたびに、ソーシャルワーカーたちは何度も何度も彼らにゼロから対応しなければならない。まだ、身近なところにやるべきことがたくさんあるし、もっといろんなものを作らなければならない。最大の目標は個人など民間のお金を配ることだけではなくて、行政が行う福祉もっと効率良く分配できるようにすることだ”、とBroomeは述べている。