未公開株式投資会社KKRがクラウドコンテンツ管理のBoxに546.8億円の命綱を投入

Box(ボックス)は、未公開株式投資会社のKKRが同社に5億ドル(約546億8000万円)を投資したと発表した。アクティビスト投資家(物言う投資家)のStarboard Valueからの圧力に苦しむクラウドコンテンツ管理会社を救う行動だ。

同社はこの資金を「オランダ式オークション」と呼ばれる方法で、オークションで決められた価格で一部の投資家から株式を買い戻すために使用する計画で、2021年5月に次の決算を報告した後実施する予定だ。そこには、2019年に同社株式の7.5%を取得したStarboardからの買い上げも含まれていると思われる。

2021年3月にReuters(ロイター)が報じたところによると、Starboardは6月のBox取締役会で、役員の過半数を専有しようとしている。その結果Starboardは何らかの行動を起こすことが可能になり、売却を強いる可能性が高い。

ここから何が起きるかははっきりしないが、この現金によってBoxはStarboardの攻撃から逃れられる可能性があり、KKRの関与によって長期的展望が可能になる。BoxのCEOであるAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏は、今回の動きはBoxの方針に対するKKRの信任票であると考えている。

「KKRは世界有数のテクノロジー投資家として、当社の市場に深い造詣があり、企業と手を組んで価値を生み出し成長を促進してきた確実な実績があります。同社の支援を受け、私たちはクラウドコンテンツ管理分野をリードするBoxの地位をいっそう確かなものにし、全世界の顧客に価値を提供し続けていきます」。

契約条件の一環として、KKRの米国テクノロジー未公開株式責任者のJohn Park(ジョン・パーク)氏がBoxの取締役に就任する。また同社は、社外取締役のBethany Mayer(ベサニー・メイヤー)氏を5月1日付けで取締役会会長に任命することも発表した。

2021年2月、Boxは電子署名のスタートアップSignRequest(サインリクエスト)を買収し、市場拡大に向けて一連の新たなワークフローを提供しようとした。KKRの出資によって、黒字キャッシュフローのBoxが、将来に向けたプラットフォーム拡大の新たな一歩を踏み出すことは不合理であるとはいえなくなった。

Boxの株価は時間外取引で8%以上下落しており、おそらくこれはウォール街がこの発表をあまり喜んでいない証だが、この現金流入はBoxに、リセットして再び前進するための猶予を与えるだろう。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

KKRがアジアの消費と都市化をターゲットにアジア太平洋地域最大級となる1.7兆円のファンドを組成

KKRが、アジア太平洋地域を含む新規および既存のグローバル投資家からの強い支持を受けて、当初の目標額を上回る150億ドル(約1兆6569億円)のアジア向けプライベートエクイティファンドの組成を行った。

今回のファンドは、KKRが4年前にAsian Fund IIIを93億ドル(約1兆円)で組成して以来のことで、このニューヨークを拠点とするオルタナティブアセットマネジメントの巨人がアジアに関心を持ち続けていることを示している。またKKR Asian Fund IV は、アジア太平洋地域に特化した最大級のプライベートエクイティファンドとなった。

KKR自身は、同ファームとその従業員のコミットメントを通して、他の投資家と並びFund IVに約13億ドル(約1436億円)を投入する。新ファンドでは、企業のカーブアウト、スピンオフ、統合などとともに、消費や都市化のトレンドに向けての投資機会を探していく。

KKRは、16年前にアジア太平洋地域に進出して以来、プライベートエクイティ、インフラ、不動産、クレジットなどの多面的なアプローチで、この地域に積極的に投資してきた。現在、同地域で300億ドル(約3兆3138億円)の資産を運用している。

同ファームは新型コロナ禍でも活躍してきたが、その一方で、パンデミックはオンライン活動への移行を加速させ、健康に対する危機の中でも、粘り強い力を発揮したハイテク企業を浮かび上がらせてきた。また、2020年の市場の混乱により、評価額が魅力的になり、企業は新たな資本源を求めるようにもなった。全体としてみれば、これらの力は「KKRのような柔軟な資本提供者にとって、ますます興味深い機会を提供しているのです」と、同社広報担当者であるAnita Davis(アニタ・デービス)氏はTechCrunchに語っている。

パンデミック以降、KKRはアジアで複数の戦略を展開し、約70億ドル(約7732億円)を投入してきた。

KKRはアジア全域で案件を探しているものの、各市場は経済状況に応じた違うかたちの機会を提供している。消費のアップグレードに関しては、KKRは中国、東南アジア、インドなどの新興市場の企業を探しているとデービス氏はいう。これに対して、日本、韓国、オーストラリアなどの先進国では、ROE(株主資本利益率)を重視した継続的なガバナンス改革により、コングロマリットからのカーブアウトや多国籍企業からのスピンオフを進めていると、デービス氏は付け加えた。

具体的には、KKRのアジアにおけるプライベートエクイティポートフォリオは、11カ国の約60社の企業で構成されている。代表的な案件としては、TikTok(ティックトック)の親会社であるByteDance(バイトダンス)が急成長する中で2018年に30億ドルの資金調達を共同で主導したことや、2020年にReliance Jio(リライアンス・ジオ)に15億ドル(約1647億円)の資金提供を行ったことなどが挙げられる。

関連記事:TikTokのByteDanceが世界最大のスタートアップに――Uberを抜く会社評価額で資金調達完了

KKRのアジアパシフィックプライベートエクイティ部門の共同責任者である平野博文氏は「アジア太平洋地域におけるプライベートエクイティ投資のチャンスは驚異的です」と語る。「各市場にはそれぞれ特徴がありますが、地域の成長を支える長期的なファンダメンタルズは一貫しています。消費のアップグレードに対する需要、中産階級の急速な成長、都市化の進展、破壊的技術の登場などです」。

今回のAsian Fund IVは、KKRが2021年1月に行ったアジアに特化した他の2つのファンド、39億ドル(約4308億円)のAsia Pacific Infrastructure Investors Fund17億ドル(約1878億円)のAsia Real Estate Partners Fundに続いて組成されたものだ。

関連記事:セコイアキャピタルがインド・東南アジア向けに1450億円、ベンチャーファンドとグロースファンドを設立

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

楽天と投資会社KKRがウォルマート保有の西友株の大半を取得、ウォルマートは日本事業からほぼ撤退

Walmart(ウォルマート)は米国時間11月16日、12年前に買収した日本のスーパーマーケットチェーン「西友」の株式の大半をKKRと楽天に売却すると発表(楽天リリース)した。西友の評価額は約16億ドル(約1670億円)で、ウォルマートは日本での事業からほぼ完全に撤退することになる。

今回の合意では、投資会社のKKRが西友の65%の株式を取得し、日本最大のeコマース企業である楽天が子会社の楽天DXを新たに設立して20%の株式を取得する。ウォルマートは西友の15%の株式を保有する。

ウォルマートは2019年、国内での競争激化や利益率の低さに苦しんだ後、西友やその持ち株会社であるウォルマート・ジャパン・ホールディングの再上場を検討したと報じられている(Markets Insider記事)。

楽天が西友の事業に精通しているのは、2018年にウォルマートと戦略的提携を結び(Walmartリリース)、オンライン食料品配達サービスを日本で開始したためだ。​「楽天西友ネットスーパー」 と呼ばれるこのオンライン配送サービスでは、西友のスーパーの在庫からの集荷に加え、専用の配送センターも利用される。

出資後に西友はRakuten DXの一部となり、楽天のeコマースやキャッシュレス決済チャンネルを通じて、より多くの実店舗をオンライン化することを目指している。

日本の食料雑貨のオンライン配送市場は、買い物客が生鮮食品をオンラインで購入することに消極的なこともあり、他国に後れを取っている。​しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行は消費者の習慣に急速な変化をもたらした。​The Japan Timesの7月4日の報道によると、食料品の総売上高に占めるインターネット売上高の割合は、パンデミック前の2.5%から約5%になった。

楽天のライバルには、イオン(Ocadoと提携)、Amazon(アマゾン)、イトーヨーカドーなどが運営する食料品宅配サービスがある。

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter