オンライン個人認証の需要がCOVID-19により急上昇

COVID-19のパンデミックの中、従業員をテレワークに切り替える企業が増え、ビデオ会議やZoomなどのコミュニケーションツールが爆発的な需要の伸びを記録している。

その他のタイプのスタートアップでも、世界的な健康危機の中、さまざまな用事をオンラインで済ませようと考える消費者や企業の間で利用者が急激に高まっている。Telehealth(テレヘルス)はその最たる例だ。2020年3月初旬に米国のトランプ大統領は、連邦政府による公的医療保険制度「メディケア」での遠隔医療サービスの規制を撤廃し、保険適用として急増する米国人向け遠隔診療に扉を開いた。

一方、COVID-19の感染が確認された人の増加率が最も高い欧州でも、遠隔検査の需要が高まっている。

スウェーデンに拠点を置くビデオ診療のスタートアップKRY(クリー)は、本日、そのすべての市場(スウェーデン、ノルウェー、イギリス、フランス、ドイツ)で需要が増大しており、それは現在進行中の新型コロナウイルスのパンデミックの影響だと報告した。ウイルスの感染症状に関する診察だけで、2月1日から240%も増えている。

いくつかのオンライン個人認証スタートアップも、この数週間で需要が増大しているという。そのひとつは、個人の機密情報を伴う患者の本人確認が大変に重要となる遠隔診療の需要と並行して伸びている。

デジタル認証のスタートアップPassbase(パスベース)は、消費者が使いやすい本人確認方式に幅広く対応し、接続や統合を簡略化するAPIを開発者に提供しているが、ここもまた、この2週間強の間に、医療技術分野で活動する欧州と北米の企業からの需要が、ウイルスの拡散を防ごうと遠隔診療の道を探る人たちの増加に伴い、「前例のない」急上昇を見せていると話していた。

Passbaseの顧客にはドイツの遠隔医療プラットフォームTeleClinic(テレクリニック)があるが、同社はドイツで最初にCOVID-19の感染が見つかった自動車工場の従業員の診察に直接協力している。

「私たちのサービスにおいては、医療とデジタル製品の信頼性が不可欠です」とTeleClinicの創設者でCEOのKatharina Jünger(カタリーナ・ユンガー)氏は、Passbaseを利用する企業が急速に増えた要因を解説した声明の中で述べている。「個々の患者が医療の専門家と話をして、信頼に足る情報を即座に受け取れるという事実が、特に現在のような時期には、きわめて重要なのです」

Passbaseは、最優先事項を統合した支援とCOVID−19の危機と戦う個人への支援に専念するすべての企業に対して、利用料金を免除するとしている。「このような前代未聞の事態においては、進行する感染拡大に対してともに戦いつつ、各々が自分のやるべき仕事に専念することが大切です。そうした企業をいち早く参加させることで、私たちは新型コロナウイルスに感染した人たちを少しでも助けられるようになります」と、共同創設者でCEOのMathias Klenk(マティアス・クレンク)氏は言い添えた。

また、同社のウェブサイトなら15秒で本人確認ができると謳うデジタル認証スタートアップのOnfido(オンフィド)は、医療分野での需要が一気に増大したと私たちに話してくれた。

「オンラインの遠隔診療を提供している私たちの顧客企業では、2019年の同時期と比較して利用申し込み数が370%も増えています」と同社の広報担当者は言う。「明らかに、病院や近所の医院の待合室でウイルスに感染する心配をしなくて済むという利点によるものです」

同社はまた、非常にニッチではあるが、旅行関連でも大きな需要の伸びがあるとも話している。レンタカーだ。

この分野では、3月に利用を開始した顧客の数は、2019年の同じ時期に比べて26%以上も増えているという。「車を所有していない人たちが、混雑する電車やバスでウイルスに感染するのを恐れて、公共交通機関を使わずに自分で車を運転して通勤する方法を選んだ、という説明が当てはまると思います」と広報担当者は話す。

オンラインバンキングやフィンテックでも需要が高まり、今のところ同社ツールの利用者を急増させていると広報担当者は言う。「今月の登録者数が21%増加したことが、最初の兆候のようでした。金融機関の店舗へ赴くことなく、自宅から金融サービスを利用できるためだと想像できます」と同社は話している。

先週、入力された認証情報の自動と手動の分析方法を組み合わせた「エンド・ツー・エンドの認証サービス」を提供する、この分野の別のスタートアップVeriff(ベリフ)は、認証製品が「着実な伸び」を見せていると報告した。COVID-19の大流行と部分的に関連しているという。

だが、彼らのサービスへの問い合わせ件数が急増していることから、今後さらに大きな伸びが期待できるとのことだ。

「新型コロナウイルスは、新たな使用事例と遠隔個人認証の必要性をもたらしました」と創設者でCEOのKaarel Kotkas(カーレル・コットカス)氏は言う。「たとえば、私たちは遠隔試験の可能性を模索している大学からの問い合わせがありましたし、テレワークを支えるアカウントの回復や資格情報のリセットを行う大手ハイテク企業からも連絡がありました」

「現在の顧客の間でも、2020年3月に個人認証で着実な伸びがありました。全体でおよそ20%の増加です。すべて新型コロナウイルスの影響とは言い切れませんが。それでも、欧州と米国で新型コロナウイルスの感染が大幅に拡大したこの2週間を振り返ると、電子公証人やデジタル医療など、新型コロナウイルスにまつわる数多くの統合の引き金にはなっています。そのため、来月の4月は50%パーセントの急増を予測しています」

デジタル認証分野の古参であり、オムニチャンネルの個人認証やKYCサービスを販売しているAuthenteq(オーセンテック)もまた、需要の急増を認めている。

「テレワーク市場の需要に応える企業ばかりでなく、テレワークにや自宅勤務の方針に大きく移行したい企業の両方からの問い合わせが増えています」と、共同創設者でCEOのKari Thor(カリ・ソア)氏は言う。

「私たちは大手多国籍企業と、我々の個人認証ソリューションを統合する計画を進めていましたが、数週間前、それを従業員のテレワークのための認証という使用事例に切り替えることにしました。会社のイントラネットなどにアクセスできるようにするだけでなく、Authenteqの技術を使って自宅で仕事をする人が電子的に書類や契約書にサインできるようにするものです」

「これまでそれは、私たちの本筋の価値提案ではなく、しかも特殊な状況で従業員の電子IDを取り扱うだけのものでしたが、この不確実な時期に企業に提供できるこの製品に重点を置き始めました」

「アジアや欧州に比べて、米国がやや遅れているのは明らかなようです。今週あたりから米国企業も、この10日の間に欧州が取り組んできた自宅勤務の方針と同じ方向に進むものと気づき、興味を持ち始めるでしょう」と彼はつけ加えた。

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(翻訳:金井哲夫)