トロント市はLocal Motors(ローカル・モータース)と契約し、2021年春からオール電化の自動運転シャトルフェリー「Olli 2.0」を乗客に開放し、試験的に自動運転シャトルバスの運行を開始する。試験は交通事業会社のPacific Western Transportationとの共同実施となり、トライアル期間中は、2名の常駐スタッフ、Pacific Western Transportationのオペレーター、トロント交通局(TTC)またはMetrolinx(メトロリンクス)のカスタマーサービス担当者が参加する。Metrolinxは、トロントは通勤輸送サービスの大半を担っている鉄道公社だ。
Olli 2.0の車両は、一度に8人まで乗車可能で、車椅子用のスロープや固定ポイントなどのアクセシビリティ機能も備える。また、乗客に情報や最新情報を提供するためのAVシステムも搭載する。さらに、安全上の懸念やその他の理由で必要が生じた場合には、車両に搭載されている安全オペレーターがいつでも手動制御を引き継ぐことができる。
今回策定されたパイロットルートは、West Rouge(ウェスト・ルージュ)とRouge Hill GO(ルージュ・ヒル・ゴー)駅間でサービスを提供する。Rouge Hill GO駅は、トロント市の西に位置するGreater Toronto Area(グレーター・トロント・エリア)のコミュニティである Scarborough(スカーボロー)の近隣地域だ。このサービスは、通勤者を同地域の主要な長距離輸送用ライトレール・ネットワークの1つに接続するように設計されている。市によると、新型コロナウィルスを考慮して、自律型シャトルがその時点でどのような清浄度や消毒基準で維持されているかを確認することも目標の1つだという。
Olli 1.0は、2016年にメリーランド州のNational Harbor(ナショナル・ハーバー)で発表され、デビューした。ワシントンDCからわずか数マイル南にある、多目的の開発都市だ。それから2年、OlliはオートモビリティLAなどのイベントに登場し、TechCrunchを含むさまざまなメディアにも取り上げられてきた。なんと、あのJames Cordon(ジェームズ・コーデン)でさえ乗ったことがあるという。
Local Motors自体は2007年に設立された。その製品、Olli 1.0シャトルとともに、新興の自動運転車業界では、よく知られた存在だ。しかし、これまでは、Argo AI、Cruise、Uber、Waymoといった、市街地を走るロボタクシーの実現を目指す大きな会社の影に隠れることが多かった。
Olli 2.0では、航続距離がかなり伸びていて、スペックシートによると、1回の充電で最大100マイル(約160km)走行できる。Olli 2.0の製造プロセスも進化し、全体の80%が3Dプリンターで製作できるようになった。またOlliが車軸ホイールモーターを搭載しているのに対し、2.0はハブモーターとなっている。さらにOlli 2.0では、座席も2つ増加し、室内の照明もプログラム可能なものになった。
Olli 1.0では、IBMのAIプラットフォームであるIBM Watsonを利用して、言語の発声と聞き取りを実現していた。Olli 2.0では、選択肢が増えている。自然言語の処理には、AmazonのディープラーニングによるチャットボットサービスのLexと、IBM Watsonが使用できる。顧客は、そのうちの1つを選択するか、あるいは組み合わせて使うこともできる。いずれについても、変更を加えて、システムをOlliにとって使いやすいものにすることも可能だ。
Local Motorsでは、Olliをどこに配備するか決める際にも、コンテスト形式を採用している。
Olliや、その他の製品のUIとサービスを改善するために、新しいデザインコンテストが定期的に開催されている。しかし、それだけでは、共創によって得られる成果を完全には捕獲できない。Local Motorsは、何十もの企業や研究機関と提携している。3Dプリンターの技術は、オークリッジ国立研究所(Oak Ridge National Laboratory)から提供されたもの。他にもOlliには、センサー、AV技術、サプライヤーコミュニティなどについて、有力な協力者がいる。
Local Motorsによれば、たとえば、スタートアップのAffectivaが、Olliの認知システムを提供している。乗客の顔や感情を認識したり、ダイナミックな経路の最適化にも貢献する。また、Velodyne、Delphi、Robotic Research、Axis Communicationsといった企業は、自動運転シャトル本体の知覚スタックを担当している。NvidiaとSierra Wirelessは、ヒューマン・マシン・インターフェイスの主要な部分を担っている。その他、主なところを挙げるだけでも、Bosch、Goodyear、Protean、Eastmanといった会社が、Olliにさまざまな部品を供給している。