バーチャルイベントのスタートアップRun The Worldが約12億円を調達

カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置き、中国と台湾にも小さなチームを抱え、創業1年になるRun The Worldが、既存投資家であるAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)と新規投資家であるFounders Fund(ファウンダーズファンド)からシリーズAで1080万ドル(約11億6000万円)を調達した。

両ファンドがRun The Worldに関心を持ったことを理解するのは簡単だ。同社のプラットフォームはパンデミックのこの時期だけでなくその後であっても、会議の主催者が必要とするすべての機能を備えている。多くの会社が、遠方からの参加者を呼ぶイベントをどう開催すべきか長期的な視野で考えている。ビデオ会議、チケット発行、双方向性、ネットワーキングについて検討しなければならない。

TechCrunchは数カ月前に同社について書いた。AndreessenのパートナーであるConnie Chan(コニー・チャン)氏がリードした430万ドル(約4億6000万ドル)のシードラウンドの時だ。Pear Ventures、GSR Ventures、Unanimous Capitalなどの多数のシードステージの投資家が参加した。「現在の状況を考えれば、Run The Worldはその後十分な支持を得たといえる」とFacebook(フェイスブック)とInstagram(インスタグラム)の両方でプロダクトをリードした共同創業者兼CEOのXiaoyin Qu(シャオイン・チュー)氏は述べた。

「2020年2月の立ち上げ以来、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受けたイベントについてはすべて、セットアップ料金を免除した。その後、毎日数百件のイベントリクエストが来ている」とチュー氏はいう。同社はコアチームの規模を2倍にして現在30人の従業員を抱えており、現時点で2000以上のイベントがさまざまな国で主催されている。

ウェブセミナーの開催にZoom(ズーム)を使っていた多くのイベントプランナーが、エンゲージメントとソーシャル機能を重視するためRun The Worldに乗り換えているとチュー氏は話す。例えばイベントの参加者はプラットフォーム上でInstagram Storyに似たビデオプロフィールを作成して、他の参加者に自分のことを知らせることができる。また「カクテルパーティー」を開催し、1回あたり数分間参加者同士を会わせ、参加者が後でフォローする相手を選べる機能もある。

ソーシャルネットワーキングに重点を置いているのは偶然ではない。チュー氏はフェイスブックで共同創業者のXuan Jiang(シュアン・ジアン)氏に会った。同氏はフェイスブックのイベント、広告、ストーリーのテクニカルリードを務めていた。

Run The Worldはチケット料金の25%を受け取り、イベントで使うテンプレート、支払い処理、ストリーミングなどのすべてを提供する。もちろんRun The Worldは、現在Zoomと非常に激しい競争を繰り広げている。創業9年目を迎えるZoomは2月以来ユーザーの利用者が急増しており、4月末現在、毎日3億人の会議参加者がこのサービスを利用している。

こうしたネットワーク効果に対抗するのはもちろん難しいが、Run The Worldだけがイベント主催者を取り込もうとしているわけではない。例えば今週初めに、起業家イベントを主催するStartup Grindの創業者が共同で創業したイベントソフトウェアビジネスのBevyは、AccelがリードしたシリーズBで1500万ドル(約16億1000万円)を調達したと発表した。同様に最近数カ月間投資家からの支持を集めている新興のオンラインイベントプラットフォームには、ロンドンを本拠とするHopin(最近のラウンドも興味深いことにAccelがリードした)やパリを本拠とするEventmakerがある。

それでも、新たな資金は役に立つはずだ。Run The Worldはこれまで「口コミを通じて完全にオーガニックに」成長してきたが、同社はチームの拡大を計画しており、多少はマーケティングに資金を使い始めると思われる。ソーシャルメディアに詳しい投資家がこの点をサポートする可能性は十分にある。

a16zとFounders Fundに加え、シリーズAの多くの投資家の中にはWill Smith(ウィル・スミス)氏のDreamers VCとKevin Hart(ケビン・ハート)氏のHartbeat Capitalの名前もある。

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(翻訳:Mizoguchi

注目が集まるオンラインイベントのプラットフォームを提供するRun The Wolrd

このところ毎日、イベントがキャンセルされたニュースを聞く。もちろん新型コロナウイルスに対する懸念が原因だ。Microsoftはゲーム開発者のカンファレンス、GDCへの参加を取り止めたと発表した。Facebookも5月に予定されていたF8 2020の開催をキャンセルした。

F8はFacebook最大のイベントであり、毎年大勢の参加者を集めてきただけにキャンセルの影響は極めて大きい。 Facebookはイベントのオフラインで行うものを中止したものの、他はオンラインでストリーミングする計画だ。

Facebookであれば、こうした大規模イベントのオンライン化は社内のテクノロジーを利用して行えるだろう。しかしそうしたリソースを社内にもたない場合、新しいオプションがある。社員18人、創立1年半になるRun The Worldは台湾と中国にもエンジニアのチームを持つマウンテンビューのスタートアップだ。

Run The Wolrdはオンラインイベントの組織、運営に必要な参加登録、チケット販売、ビデオカンファレンス、ソーシャルネットワークなどを含むプラットフォームを提供する。パンデミックに対する懸念からイベントのオンライン化を考えている主催者には理想的なサービスだ。

このスタートアップに対する最大の投資家はシリコンバレーを代表するベンチャーキャピタル、a16nとして知られるAndreessen Horowitzで、すでに430万ドル(約4億6500万円)のシード資金を投じている。株主にはGSR Ventures、Pear Ventures、122 West Ventures、Unanimous Capitalに加え、エンジェル投資家でFacebookグループのCalibraのバイスプレジデントであるKevin Weil(ケビン・ワイル)氏、Patreonの共同ファウンダー、Sam Yam(サム・ヤン)氏、Jetblue Airwaysの会長であるJoel Peterson(ジョエル・ピーターソン)氏らが参加している。

写真左のRun The Worldの共同ファウンダー、CEOのXiaoyin Qu(シャオイン・ク)氏はFacebookとInstagramでエンタテインメント関係のプロダクトのリーダーを務めた。ク氏によれば「エンタテインメント分野のインフルエンサーやクリエーターに関係あるすべて」を扱ったという。

ク氏はスタンフォード大学のMBAを中退して、写真右のXuan Jiang(スアン・チアン)氏とともにこのスタートアップを始めた。チアン氏はFacebookでク氏の元同僚でジョージア工科大学のコンピュータ科学の修士だ。Facebookではイベント、広告、ストーリーの上級エンジニアだった。

Andreessen Horowitzのジェネラル・パートナーのひとりででこの投資をまとめたConnie Chan(コニー・チャン)氏にク氏について教えられ、私はク氏に2月27日にインタビューすることができた。

ク氏によれば、このスタートアップを始めたきっかけは中国で医師、医療研究者として働く母親の体験だった。2018年に髄膜炎の専門家としてシカゴのカンファレンスに参加したとき、やはり髄膜炎を研究しているドバイの医師と知り合い、貴重な知見を交換することができた。

シリコンバレーの起業家やジャーナリストのようにいつも世界を飛び歩いている人間にはさほど特別な経験には思えないが、ク氏の母親にとっては大事件だった。中国からの出国手続き、アメリカのビザ取得の煩雑さはいうまでもなく、チケットの購入や宿泊にはひと財産が必要で、旅行時間も非常に長い。しかもこの旅は35年の医師生活で初めての海外出張だったという。

ク氏は「スタンフォードだったら毎日のようにカンファレンスが開かれているので、キャンパスを歩いていれば避けるのが難しいくらいだ」とジョークを言う。

多くのファウンダーと同様、ク氏も自分自身や身近な人々が現実に遭遇した「痛点」を解決するために創業した。ク氏の場合は、母親が中国にいながらリモートワークで参加し、髄膜炎の研究に役立つ情報を得られるオンラインで行われるカンファレンスのプラットフォームを作ろうとした。

このプラットフォームの提供は図らずも絶好のタイミングとなっている。現在、多くの人々が集まるイベントを計画している主催者はRun The Worldが提供するようなオンラインイベントへの切り替えを真剣に検討しているところだ。

ク氏のスタートアップが実際にサービスの提供を始めたのは4カ月前に過ぎないが、すでに数十回のイベントをホストしており、予定されているイベントは数百にも上る。ク氏によれば、ユーザーの1社は wuhan2020という武漢のオープンソースコミュニティーで、新型コロナウイルス対策に役立つソリューションを求めて3000人以上のデベロッパーがリモートワークによるハッカソンを実施している。

このプラットフォームはラオスにおけるゾウの保護に関するカンファレンスを実施し、2週間で15カ国から3万ドル(約324万円)の寄付を集めることができた。主催者は乏しい予算しかなかったが、まったくムダのない低予算でオンラインイベントを開催し、経済的に余裕ある人をはじめとした多くの人々から寄付をつのることができた。

Run The Worldはこうした小型、低予算のイベントを効率的にホストできるのも強みだ。たとえばエンジニア向けにデートのテクニックをコーチするというイベントではわずか40人を対象にしたワークショップを開催することができた。ク氏によれば主催者は1300ドル(約14万円)の収入を得ることができた。

このスタートアップのビジネスモデルはごく単純で、カンファレンスのチケット販売額の25%を得るのと引き換えにイベントの主催に必要なサービス一切を提供する。これにはカンファレンスの紹介、告知のテンプレートから参加登録、チケットの販売と支払い(Stripeを利用)、カンファレンスのストリーミング、専用のソーシャルネットワーク、イベント終了後のフォローアップなどが含まれる。さらに現実のカンファレンスにおけるカクテルパーティーをオンライン化した参加者同志をマッチングして数分間親しく会話できる機能も含まれる。

【略】

Run The Worldが規模を拡大すれば「(副作用を取り除くための)新しい方法を考えねばならないだろう」とク氏は言う。

FacebookとInstagramにおける経験が、プラットフォームの構造や成長を勢いをづけるビジネスモデルについての洞察を与えたことは間違いない。ともあれク氏は「200万人を集めるイベントを扱いたいとは思わない。むしろ50人が集まるイベントを200万回扱いたい」と述べた。

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滑川海彦@Facebook