トヨタベンチャーズ、トラクターを自律走行車に変えるAgtonomyのシード拡張をリード

Agtonomy(アグトノミー)の共同創業者でCEOのTim Bucher(ティム・ブッチャー)氏は農場で生まれ育ち、自らも農場経営に深く関わっていたが、カリフォルニア大学デービス校在学中にコンピューターのコースを取り、その魅力にとりつかれた。

その農業とテクノロジーのパラレルキャリアが、Agtonomyの起業につながった。同社は自律と遠隔アシストのハイブリッド型サービスのスタートアップで、トラクターやその他の装備を自律型マシンに変え、そうしたマシンを管理するための労働力を、テクノロジーを駆使して低コストで地方の農場に提供する。

同社は2021年9月にGrit Ventures、GV、Village Globalを含む支援者グループから400万ドル(約4億5000万円)のシード資金を得て、ステルスモードから脱却した。

GritとGVは、南サンフランシスコに拠点を置くAgtonomyに再び投資すべく、500万ドル(約5億7000万円)のシードエクステンション(追加拡張投資)に出資した。Toyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)がシードエクステンションをリードし、Flybridge、Hampton VC、E²JDJ、Momenta Venturesも参加した。今回の資金調達により、Agtonomyの累計調達額は900万ドル(約10億円)になった。

資金調達をしたばかりだったため、ブッチャー氏はこんなに早く再び資金を調達するとは思っていなかったが、2022年の展望として、アグテックが2022年以降の「ホットな分野」としてトップになると、追加の資金調達に踏み切った。

「5年前は、アグテック関連のVCはなかなか注目されませんでしたが、ちょうど投資家から圧倒的な関心が寄せられました。当社はまだスタートしたばかりですが、地方の農業は今、助けを必要としています」と同氏は付け加えた。「今回の資金調達は、試験やパートナーの追加を加速させ、チームの拡大も含めた取り組みのスピードを倍増させる活動や能力を増強します」。

ブッチャー氏は、今後数カ月の間に50の試験を行い、20人の従業員を倍増させることを期待している。

Agtonomyは、Uberドライバーを呼ぶくらい簡単なものだと同氏は話す。携帯電話のアプリを使って、農家はトラクターに畑の草刈りなどの仕事を割り当てることができる。このような自動運転技術や、John Deere(ジョンディア)のような他社が行っていることは、世界中の農場が直面している数十年にわたる労働力不足を解消するのに役立つ、と同氏は考えている。

Agtonomyは、ブッチャー氏が「概念実証」と呼ぶ電動車両を少台数保有し、自身のTrattore Farmsで1年間稼働させている。同氏の農場での農作業は、ほとんどこれらの車両で行われているという。

ブッチャー氏は2023年に商業展開を見込んでいて、差し当たっては数百台のトラクターでスタートする予定だ。参考までに、トラクターは毎年30万台ほど販売されている、と同氏は付け加えた。トラクターの価格は50万〜100万ドル(約5700万〜1億1500万円)で、John Deereのような企業は通常、大規模農場を狙っている。

これに対し、Agronomyの自律走行車両の価格は5万ドル(約570万円)程度で、この価格設定により大規模農場は24時間稼働し、環境にやさしく、土地を荒らさない小型機械を購入するようになるとブッチャー氏は考えている。

トヨタ・ベンチャーズの創業マネージングディレクターで、Toyota Research Institute(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)のエグゼクティブアドバイザーであるJim Adler(ジム・アドラー)氏は「完全自律走行車は、都会の道路で実現するよりもずっと早く、より切実に必要とされている農場で現実のものとなるでしょう」と書面で述べている。

同様に、ブッチャー氏は、今日の自律走行車の多くは、より「便利な技術」に対応している一方で、アグテック分野の企業は同氏が「必要な技術」と呼ぶもので同様の車を作っていると信じている。

「消費者の需要、気候変動、電動化、農業分野における労働力不足など、一種のパーフェクトストームです」と同氏は付け加えた。「我々は、他の種類の自律走行技術を生活に取り入れるよりも、アグテックでこうした問題をずっと早く解決することができるのです。当社の技術で、私たちみんながおいしいものを食べることができるのです」。

画像クレジット:AnneCN / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタのTRIが家庭内の透明・反射面にひるまず対応して家事をこなすロボットを披露

米国時間6月21日朝、現代自動車がBoston Dynamicsの買収を完了したという発表に続き、別の自動車会社からもロボティクス関連のニュースが発表された。今回のToyota Research Institute(TRI、トヨタ・リサーチ・インスティテュート)の発表は、そのような大ニュースに比べると衝撃的なものではなく、むしろ同部門が取り組んできたことの進捗状況を確認するものといえる。

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もちろんロボティクスに関しては、段階的な更新が最も肝心な部分であることが多い。今回の発表は、TRIが家庭内で行ってきた研究に興味深い光を当てている。同社は、家事労働を行うために設計されたロボットの重要な進展を発表した。

「TRIのロボット研究者たちは、さまざまな状況下で透明または反射する表面を認識して反応するなど、他の多くのロボットが困惑するような複雑な状況を理解して動作するようにロボットを訓練することに成功しました」と、同研究所はブログ記事で書いている。

画像クレジット:Toyota Research Institute

キッチンのような環境では、ロボットはさまざまな透明表面や反射面に出くわすが、これは従来のビジョンシステムにとってはハードルが高いものだった。特にキッチンでは、透明なガラスや反射する家電などが問題になる。

TRIロボティクスの副社長であるMax Bajracharya(マックス・バジュラチャリア)氏は、研究について次のように述べている。「この問題を解決するために、TRIロボティクスの研究者たちは、物体や表面を検出しながら同時に、環境の3D形状を知覚するための新しい学習方法を開発しました。この組み合わせにより、研究者は大量の合成データを使ってシステムを訓練することができます」。また、合成データを使用することで、時間やコストのかかる実用的でないデータ収集やラベリングの必要性を軽減できるという。

日本では高齢化が進んでいることから、トヨタはロボット研究を進める上で、高齢者介護を重要なテーマとしている。そのため、このようなロボティクスの課題が分野の研究の中核をなしていることは非常に理に適っているし、同社のWoven Cityでの研究にもつながる。Samsung(サムスン)のような企業がロボット製品分野に声高に参入する前に、トヨタがこの分野に力を入れていたことは評価されるべきだろう。

画像クレジット:Toyota Research Institute

「自分の家により長く住み、自立した生活を送ることだけが目的ではありません」とバジュラチャリア氏は最近インタビューに答えてくれた。「そういう面もありますが、日本では20~30年後には、65歳以上の人口と65歳未満の人口がほぼ同数になると言われています。これは労働力という点で、社会経済的に非常に興味深い影響を与えるでしょう。トヨタでは、このような人々が仕事を続け、仕事をすることで充実感を得たり、より長く家に住めるようにするにはどうしたらよいかを考えています。ただ人を置き換えるだけではありません。当社は、人間を中心に据え、人間を増幅させることを考えています」。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Toyota Research Institute日本家事

画像クレジット:Toyota Research Institute

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)