京浜急行電鉄は8月27日、ベンチャーキャピタルのサムライインキュベートと共同で開催中のスタートアップ支援の取り組み「KEIKYU ACCELERATOR PROGRAM」(京急アクセラレータープログラム)のデモデイ(成果発表会)を東京・品川で開催した。
今回は同プログラム第2期のデモデイとなり、手荷物預かりサービス「ecbo cloak」を運営するecbo、タクシーの相乗りのマッチングサービスを運営するNearMe、傘シェアサービス「アイカサ」を運営するNature Innovation Group、AIチャットボットを活用したホテルのカスタマーサポート支援サービスを提供するtripla、ヘリコプターのライドシェアサービス「CodeShare」などを展開するAirXの5社が採択企業として登壇した。
審査の結果、社長賞にecbo、オーディエンス賞にNearMeが輝いた。
ecbo cloak(ecbo)
ecbo cloakはコインロッカー難民を救済するサービスで、駅構内やカフェなどの特設スペースに荷物を預けられるのが特徴。京急との実証実験では、品川駅に設置されているコインロッカー数の50倍の荷物を預かることに成功。羽田空港にあるTIS(外国人観光案内所)での認知向上にも力を入れており、TICでecboのサービスを知って実際に利用する訪日観光客が増えているそうだ。今後は、羽田のTICから品川TIC、ecbo加盟店へのデリバリーなどを計画。最終的には、京急沿線すべてに配送可能なデリバリーサービスを提供を目指す。
nearMe.(nearMe)
NearMeは、同じ方向にタクシーで移動する人々をマッチングして、1人で利用するよりも実質的に安価なタクシー料金を実現するサービス。京急とは8月21日~8月27日に、品川、高輪、東銀座、秋葉原にある東急EXホテルから、羽田空港や都区内(中央区、港区、千代田区)の任意の場所に行ける相乗りのオンデマンドシャトル運行の実証実験を行った。今後は京急沿線と地域を繋ぐシャトルバスの実証実験も検討している。
アイカサ(Nature Innovation Group)
Nature Innovation Groupでは今回のプログラムの採択により、沿線11カ所にアイカサスポットを設置したほか、品川駅高輪口にある商業施設、ウィング高輪のB1Fにある京急ストア限定のクーポンとアイカサの連携、京急プレミアムポイントとの連携、京急オリジナルデザイン傘の製造などを実現。実証実験を行った7月は、品川エリアでの利用回数が同月の渋谷の133%という好成績を収めたそうだ。利用時間は10時間以下が60%、1時間以下の利用が17%という結果が得られたほか、品川エリアから駅前のSHINAGAWA GOOSまでの3分程度の利用もあったそうだ。渋谷はアイカサのサービス開始当時のサービスエリアで利用者も多く認知度も高いはずだが、京急との実証実験がそれを上回ったかたちだ。
tripla(tripla)
AIチャットボットを活用した多言語対応の宿泊予約サービス。ホテルのウェブサイトに予約機能を実装することで、オペレーションコストの削減を実現する。京急との実証実験では、京急EXの浜松町・大門前、品川・新馬場駅北口にtriplaを導入。導入後は予約件数が月あたり300件増、予約コンバージョンは業界平均が2.2%のところ、大門が3.8%増、新馬場が8.6%増になったとのこと。
SKY RESORT MIURA(AirX)
ヘリコプターのライドシェアサービスを提供。京急の実証実験では、三浦半島のコンテンツの充実や交通課題の解決をテーマとして新木場から三浦半島へのヘリコプター移動を計画。今後は三浦半島と都心部の新たな移動プラットフォームを開発していくという。
京急の取締役社長代表取締役を務める原田一之氏は、今回のデモデイについて「第1期からの成果が継続しており、どこも素晴らしいサービス」と言及したうえで、「ecboは京急沿線で3000件のスポットを開発し、荷物を携行しての移動を本気で少なくしていこうという取り組みを進めている。TISを活用して訪日観光客に積極的にecboを推進している点も評価した」と社長賞の評価ポイントを話した。
「京急を大企業だとは思っていないが、今回のスタートアップ企業の皆さんと一緒に事業開発した際に感じたのはやはりスピード感の違い」と原田氏。「今後も我々にもっと刺激を与えてほしい」と締めくくった。