昨年からスタートアップ界隈でも注目を浴びていた「民泊新法(住宅宿泊事業法)」が施行される6月15日まで、1ヶ月を切った。
2017年から2018年にかけて、民泊領域の新会社や新サービスの発表が相次いだ。TechCrunchでもリクルート住まいカンパニーがAirbnbと提携して民泊事業を展開することを始め、関連する話題を紹介してきたが、新法の施行を皮切りに各サービスが事業を本格化していくことになるだろう。
宿泊予約サービス「Relux(リラックス)」を運営するLoco Partnersもそのうちの1社だ。2017年の時点で新法施行後に新たなサービスを展開することを発表し、2018年1月には町家や古民家などを紹介する「Vacation Home」をリリース。6月15日以降は、このサイトに民泊物件も掲載されるようになる予定だ。
それを見越して同社では本日5月29日より、Vacation Homeに掲載される施設を対象としたコンシェルジュサービスを開始した。
ユーザーの要望に応じた宿泊施設を提案、代理予約まで
今回Loco Partnersが始めたのは、コンシェルジュがユーザーの要望にあったVacation Homeを提案し、代理予約(一部店舗を除く)までしてくれるというサービスだ。
ユーザーはReluxの公式LINEの他、電話や専用の依頼フォームを通じてコンシェルジュに無料で相談が可能。以前からRelux内で提供していた「Reluxコンシェルジュ」の対象をVacation Homeの施設にまで広げる形で運営する(少なくともリリース時点ではReluxコンシェルジュと切り分けず、ひとつのサービスとして提供)。
今回コンシェルジュサービスの対象を広げるに至った背景には、旅行者と宿泊施設のベストマッチを実現するという意図はもちろんのこと、旅行者が民泊物件に対して危険や不安といったイメージを抱いていることがあるという。
たとえばマクロミルが全国の20~69歳の男女1000名を対象に実施した「民泊に関する意識調査」では、民泊に対して「安い」、「外国人向け」、「利用者のマナーが悪い」といった印象を持つ人が多いという結果がでている。
そのイメージもあってか、全体の7割が民泊利用に抵抗感を示しているようだ(民泊の利用意向について、43%が全く利用したくない、27%があまり利用したくないと回答)。これはあくまで参考程度にしかすぎないが、口コミなどが少なければ余計に不安を覚えるユーザーも多いことが想定されるため、安心して宿泊できるようにコンシェルジュサービスの拡張を決めた。
現在Vacation Homeでは旅館業法における簡易宿所の許可を取得した町家や古民家、貸別荘など約200施設を掲載。家族旅行など大人数の宿泊客や外国人観光客から特に人気があるそうで、価格帯はだいたい1万円〜20万円と幅も広い。
今後はここに民泊物件も掲載される予定だが、Loco Partnersの広報担当者によると「通常のホテルや旅館では100項目にもおよぶ審査基準をクリアした施設のみが掲載されている。民泊物件の場合は別途独自の基準で審査をすることになる」ため、当初から膨大な数の民泊物件が並ぶということはないという。
“チャットでまるっと旅行相談” のニーズが広がる
普段からスタートアップやWebサービスのトレンドを追うのが好きな人なら、もしかすると最近話題になった「ズボラ旅(ズボラ旅 by こころから)」に似ていると感じたかもしれない。
ズボラ旅は旅行へ行きたい日付と出発地を伝えれば、専門のスタッフが旅行プランを提案してくれるというLINE@のチャットサービス。リリースから数時間で数千件の相談が寄せられ、運営がパンクしたことも記憶に新しい。
Loco Partnersの広報担当者にズボラ旅について聞いてみたところ、やはり社内でも話題になったそう。実際Reluxコンシェルジュのユーザーもある種丸投げに近い形で、ふわっとした要望から自分にあった施設を探して欲しいというニーズが多いとのこと。
ただ「Reluxの場合は厳選された宿泊施設のみを紹介しているのが特徴。また年間100泊以上している審査委員会とコンシェルジュが密に連携をとっているため、その知見も生かした提案ができるのが強み」(Loco Partners広報担当者)であり、民泊などに対象が広がってもこの特徴を軸にしていきたいということだった。なおReluxでは2015年5月よりLINE@でのコンシェルジュサービスを開始。電話とメールではそれ以前より、同様のサービスを提供している。
民泊新法が施行された後の民泊市場の行方はもちろん気になるところだが、チャットなどをベースにした新しい旅行サービスの形も今後広がっていきそうだ。