親になるというのは、ときに孤独なプロセスだ。ハッピーアワーよりも子どもの遊びの約束を優先しなければならず、スケジュールや物事の優先順位が違う友だちと過ごす時間が減ってしまうこともある。新たにローンチされたPeanutというiOSアプリは、そんな新米ママをサポートしようとしている。このアプリを使えば、近くに住む趣味趣向が似たママ友を見つけることができるのだ。
これは、母親のためのTinderといっても間違いではないだろう。
Peanutの共同ファウンダーであるMichelle Kennedyがこれまでデーティングサービスに関わっていたことを考えると、Tinderとの比較はむしろふさわしいものだと言える。
Kennedyはオンラインデーティング企業のBadooに、法務顧問(後にCEO代理)として6年間勤務していた。さらに彼女は、Badooを大株主に持つデーティングアプリBumbleの開発にも携わっており、BumbleファウンダーのWhitney Wolfeのアドバイザー、そして取締役を務めていた。
もう一人の共同ファウンダー(兼Peanutの生みの親)であるGreg Orlowskiも、Deliverooの共同ファウンダー兼CTOとしての経験から、スタートアップ界をよく知る人物だ。彼は昨年Deliverooを去り、現在はシカゴで働いている。一方Kennedyはロンドン在住で、Peanutにはニューヨークで働くスタッフもいる。
友だち探しのためのアプリ
アプリを使った友だち探しというのは、現在大手デーティングアプリが進出しようとしている分野で、BumbleにはBFF、TinderにはSocialと呼ばれる機能が備わっている。
Peanutも一般的なデーティングアプリのように、友だち候補を見つけるのにスワイプメカニズムを採用しており、友だちになりたいと思う人は上に、その人のプロフィールをスキップしたければ下にスワイプするだけでいい。しかし、Tinderのように見た目だけで判断するのではなく、Peanutは共通点を持った友だち探しにフォーカスしている。そのためユーザーは、相手が話せる言語やフルタイムで仕事をしているか、アウトドアタイプかといったポイントを確認しながらスワイプしていく。
さらに子どもの年齢も表示されるので、子どもの遊び相手を見つけるのにもぴったりだ。
各ユーザーの特徴は、登録時に選ぶシンプルなステッカー上に、「mom boss(活発なママ)」「firness friend(フィットネス好き)」「fashion killa(ファッション大好き)」といった短い言葉で表現されているので、自己紹介文を読み込まなくてすむ。ステッカーはプロフィール設定から追加・削除することも可能だ。
一見すると、この共通点にもとづいた友だち探しというのは、上手く機能するように思える。もしも、ハイキングやダンスより、ショッピングやリラックスするのが好きな人であれば、自分と趣味が似通った人と友だちになりたいと思うだろう。さらに、もしもフルタイムで働いていて、いつも忙しい人であれば、お手製のベビーフードを作るような専業主婦とは上手く仲良くなれないかもしれない。
しかし逆を言えば、この共通点にもとづいた友だち探しの結果、ある一定の社会経済的な輪にユーザーを閉じ込めてしまい、彼女たちの友人関係が多様性に欠けてしまう恐れもある。特に今の時代、人との違いを理解するというのは重要なことだ。現在の政治の様子を見ても、私たちがこれを上手くできているとは言えない。
考え方の違う人と友だちになるのは難しいことだが、新しいことを学ぶチャンスでもある。しかしKennedyは、むしろ自分と似た人と友だちになる方が重要だと考えているようだ。
「政情を見ていると、私は考え方の似た、同じ価値観を共有できるような女性同士を結びつけることが、これまで以上に重要になってきていると感じています」と彼女は話す。「そして、Peanutでその手助けができればいいなと思っているんです」
数年前に息子が誕生したKennedyは、母親になった女性の友だちづくりの難しさをよく理解している。
多くのママコミュニティが、少し「古風な」形をとって、アプリよりもウェブサイトやオンライン掲示板を利用しているということに彼女は気付いた。最近母親のユーザーが増えているFacebookグループでさえ、現代版オンライン掲示板のようなもので、友だちを作る場には適していない。
イギリスのMushやサンフランシスコのWinnieなど、Peanutに近いサービスを提供している企業も存在する。しかしMushは依然アメリカへは進出しておらず、Winnieはどちらかというと、母親向けYelpのようなサービスを提供している。つまり、まだまだPeanutのようなサービスには、市場開拓の余地が残されているのだ。
スッキリとした現代的なデザインのPeanutアプリは、とても使いやすく、登録、スワイプ、ママ友との約束設定まで、全て片手で行うことができる。
目的の見えないチャットが続きがちなデーティングアプリとは違い、Peanutのゴールは母親同士を実際に会わせることにある。そのため、ユーザーが誰かとマッチしたら、マッチスクリーンからそのままチャットを開始できるようにつくられている。
さらにPeanutにはグループチャットも備わっており、みんなでやりたいことを相談したり、投票機能を使って会う日を決めたりすることもできる。日程が決まったら、投票を開催したユーザーは画面をタップするだけでインビテーションを作成でき、他のユーザーは自分のカレンダーに約束を追加できる。
既に公開中のPeanutだが、同社の課題はどのくらいユーザー数を伸ばせるかということだろう。大都市でない限りは、主に口コミに頼ってアプリを広めていくしかないし、新しいアプリをインストールしたくないという不満の声も忙しい人からよく聞く。ここがPeanutの頑張りどころだ。
一方で、NEAやFelix Capital、Partech、エンジェル投資家らが参加したシードラウンドで、予想よりも多額の資金(まだ調達額は開示されていない)を調達できた同社の手元には、まだまだ資金が残っているのも事実で、まだ時間は残されている。
Peanutは今日からiOS向けに公開されており、無料でダウンロードできる。現状ベータ版だが、来週水曜日にはバージョン1.0の公開が予定されている。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)