セレブによる特別講座を提供するMasterClassが107億円調達、コンテンツ拡充へ

著名人が教える講座(クラス)を販売するスタートアップであるMasterClass(マスタークラス)がシリーズEラウンドで1億ドル(約107億円)を調達した。本ラウンドは、Fidelity Management & Research Companyがリードし、新規投資家としてOwl Ventures01 Advisorsが、既存投資家からはNEA IVP Atomico NextEquity Partnersが参加した。

同社が間もなく資金調達するとのニュースを今月初めにスクープしたBloomberg(ブルームバーグ)によると、本ラウンドでのバリュエーションは8億ドル(約860億円)となる。同社は新たなバリュエーションの公開を却下したが、8億ドルを上回るとは述べた。

MasterClassは、コンテンツライブラリーへのアクセス料金として年間サブスクリプションとして180ドル(約1万9000円)を課している。同社の売上高にサブスクリプションが占める割合は2018年に80%だったが、いまは100%だ。

同社は、エンターテイメントと教育が交差するところに自社は位置するとの認識だ。同社はこれまでにセレブや専門分野の「名人」が教える85講座を制作した。同社のプラットフォームは著名人を引きつけてきた。いかに事業を成長させるかについて語ったAnna Wintour(アナ・ウィンター)氏、料理法について話したGordon Ramsey(ゴードン・ラムゼイ)氏、ユーモアであることについてがテーマだったDavid Sedaris(デイビッド・セダリス)氏など、そうそうたる名前が並ぶ。講座の予告は「トレイラー」と呼ばれている。

著名人がどのように考えて取り組んでいるのか、人々が生まれながらに持っている好奇心をくすぐる。そうした好奇心に少し応えつつ、根本的に「デジタル化」はあり得なかった講座を提供している。かなり接触するスポーツ、例えば、Serena Williams(セリーナ・ウィリアムズ)氏のテニスのレッスン、Steph Curry(ステフィン・カリー)氏のバスケットボールのレッスンを考えてみてほしい。あるいは、RuPaul(ルポール)氏の自己表現についての考えや、Neil deGrasse Tyson(ニール・ドグラース・タイソン)氏の科学的な考えとコミュニケーションといった一般教養など。

燦然としたスターぞろいにもかかわらず、MasterClassはセレブへのアクセスではなく、セレブたちの取り組みの一部を販売する。セレブたちは日常的に生徒と交流しないし、まったく交流しないセレブもいる。

コンテンツがプラットフォームにアップされた後はセレブは特に大きな責任は負わない。もちろんコンテンツ制作はMasterClassが声をかけた人が対象となる。サイトには数多くのレッスンが用意されており、20〜30分のビデオとダウンロード可能なワークブックに分けられる。各講座の生徒はコミュニティハブに集ってバーチャルのクラスメートと話すことができる。セレブたちが生徒と交流する機会はあるが、それは契約には含まれていない。

同社では「セレブが自分の講座でお気に入りを選ぶという例外がある」とも宣伝している。電子音楽プロデューサーであるDeadMau5(デッドマウス)氏は一緒に曲を録音するためにMasterClassの生徒の1人を招待したとされている。セリーナ・ウィリアムズ氏も生徒の1人と試合をしたようだ。

セレブにどのように払っているかについては同社は明らかにしなかった。売上高はというと昨年倍増した。同社はコンテンツがかなり魅力的なために、カリー氏のバスケットボールのワークショップ目的で登録した人が、その後ラムゼイ氏の料理セッションものぞくというふうになっていると話す。

何百万という人がやることなく家で過ごしている最中に同社は資金を調達した。CEOで共同創業者のDavid Rogier (デイビッド・ロジャー)氏は「講座の中で最も視聴されているものは、前FBI交渉官Chris Voss(クリストファー・ボス)氏による戦術的な共感について考えを語るものだ」と話した。

この逸話を紹介した後、ロジャー氏はMasterClassの使用が新型コロナウイルス(COVID-19)が始まってからどのように変化したかを示すデータを共有することは繰り返し却下した。エドテック業界の競合他社が最近騒がしいため、MasterClassの沈黙は目立つ。リモート教育への移行は、エドテック企業の資金調達をあと押ししていて、新たなユニコーン(未訳記事)の誕生につながったものもあればシードステージでの調達(未訳記事)だったものもある。

沈黙はまた、MasterClassが純粋に教育にフォーカスしているというより、エンターテイメントの要素が大きいコンテンツと位置付けているからかもしれない。同社はクオリティーの高いドキュメンタリースタイルのコンテンツを制作している。そのため、新型コロナウイルスによる活動停止でエンターテイメント業界(外部英文記事)が現在直面しているように、制作面で困難を抱えているのかもしれない。

ただ、他のエドテック企業と同様、MasterClassは新たな資金調達は必要に迫られてというより機会に恵まれてのものだったとしている。

資金は生徒向けの新しい講座の制作、そして1週間に1つの講座という制作ペースにアップするのに使う、とロジャー氏は話した。同社はまた音声のみのモード、短いバージョン、拡張現実(AR)も試している。「想像してみてほしい。ステフィン・カリーの講座があるが、もしスマホにARがあったら、実際にどこに足を置くべきかがわかる」とロジャー氏は述べた。

MasterClassのマーケティング戦略は、現在アグレッシブに展開されていることから、このところ話題となっている。YouTubeビデオを観るたびに、コマーシャル時間にMasterClassの広告が入るという感じだ。

ロジャー氏はマーケティング予算を明らかにしなかったが、戦略は手応えのあるもののようだ。MasterClassはYouTubeと競合せず、YouTubeプラットフォーム上に広告を出している。人々はクオリティの高いセレブによる講座を望んでいて、そのために喜んで払うのは確かだ。「もし広告をより頻繁に目にしていたら、それは広告が機能しているからだ」と同氏は話した。

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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