テレビ、映画、CM制作会社の給与支払いのDXを進める「Wrapbook」がシリーズAで29.4億円調達

Wrapbook(ラップブック)はテレビ、映画、CM制作会社の給与支払いを簡単にするスタートアップだ。このほどシリーズAで2700万ドル(約29億4000万円)調達した。ラウンドにはテック、エンターテインメント双方の世界から著名人が参加した。

リードしたのはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)でEqual VenturesとUncork Capitalも参加した他、エンターテインメント業界からDreamWorksとQuibiのファウンダー / 共同ファウンダーであるJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏率いる投資・持ち株会社WndrCoとCAAの共同ファウンダーであるMichael Ovitz(マイケル・オーヴィッツ)氏も出資した。

「今こそ制作会社の会計業務を21世紀にするときです」とカッツェンバーグ氏が声明で語った。「制作会社のますます複雑化する研修、給与、キャスト・クルー確保などの業務が新型コロナでさらに悪化する中、改善するためにはITソリューションが必要です。私はWrapbookが解決してくれると信じています」。

Wrapbookの共同ファウンダーでCEOのAli Javid(アリ・ジャビッド)氏は、エンターテインメントの給与支払いはほとんどが紙ベースで旧態依然としていて、1年に最大30回もプロジェクト間を移動するキャストやクルーを追跡するのは特に大変だと説明した。Wrapbookはそのプロセスをデジタル化によって簡略化する。必要な書類や署名は制作開始時に電子的に集め、給与処理自体を代行して支払い状況を追跡するダッシュボードを作り、必要な保険を簡単にかけられるようにする。

Wrapbookの共同ファウンダーであるキャメロン・ウッドワード氏、アリ・ジャビッド氏、Hesham El-Nahhas(ヘシャム・エル・ナハス)氏、Naysawn Naji(ネイソーン・ナジ)氏

スタートアップは2018年に設立されたが、ジャビッド氏によるとパンデミック中に制作が再開すると需要が劇的に増え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は業界のカルチャーを「根底から」覆し、制作会社に「おい、これを自宅でできる早くて簡単な方法はないのか、やってみようじゃないか」と言わしめた。

ジャビッド氏はWrapbookプラットフォームについて「業界で急速に成長しているバーティカルフィンテックソリューションで、我々は非常によく理解しているが考えてみたことのある人は多くない分野」だと説明した。実際、会社の売上は2020年に7倍に増えた。

また、Wrapbookの直接顧客は制作会社だが、共同ファウンダーでCMOのCameron Woodward(キャメロン・ウッドワード)氏(以前は映画製作保険とコマーシャル制作の仕事をしていた)は、同社プラットフォーム経由で給与を受け取っているキャストやスタッフのために良い経験を作り出すことにも力をいれていると語った。Wrapbookプロフィールを使って複数のプロダクションから支払いを受けている人も増えている(現在12%)。

画像クレジット:Wrapbook

スタートアップは以前シード資金360万ドル(約3億9000万円)を調達している。将来についてジャビッド氏とウッドワード氏は、Wrapbookのソリューションはいずれプロジェクト・ベースの他業界にも採用されるだろう、と語った。しかし現在は、エンターテインメント業界だけで十分成長を続ける余地があると見ている。現在この業界で年間2000億ドル(約21兆7500億円)の支払いが行われている、と彼らは推測している。

「まずエンターテインメント業界で顧客から依頼されたことを中心とした業務とものづくりに注力していくつもりです」とジャビッド氏は語った。「そのために、次の1年間で100人を新規雇用する計画です」。

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カテゴリー:その他
タグ:Wrapbook資金調達エンターテインメントDX

画像クレジット:Wrapbook

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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